ヤバい大海賊に出会ってしまった北条響さんの話。   作:スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐

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作者の妄想シリーズ第八弾


葛藤する黒猫と襲来する最強生物

走る。

 

 

 

「ハアッ、ハアッ…!何で………私が…!」

 

 

 

雨が降る街の通りを、セイレーンは1人走る。

傘も差さず、ずぶ濡れになりながら走る彼女を行き交う人々が奇異の目で見るが、セイレーンにはそんな事を気にする余裕も無い。

暫く走ると、近くの路地裏に駆け込み変身を解いて息を整える。

 

 

「私が、プリキュアになるだなんて…そんな事がある筈………!」

 

 

セイレーンは、自身がプリキュアになったという事実を受け入れられず困惑する。

 

 

「見つけたドド。セイレーン、こんな所で何をしてるドド?」

 

「…………」

 

 

額を抑えて蹲るセイレーンの近くに、彼女を密かに追いかけて来たキュアミューズが現れた。

ミューズの肩に乗っているドドリーが、セイレーンに話しかけるも彼女は答えず、沈黙を続ける。

 

 

「ハミィや皆の所に戻らなくていいドド?皆、セイレーンの事を探してるドド」

 

「………今更、どうやって戻れって言うの?皆を傷付け、ハミィを手に掛けようとまでした私が、プリキュアになったから仲間面して戻るなんて、余りに都合が良すぎるわ」

 

 

そう言って、セイレーンは顔を伏せる。

あれだけの事をして、プリキュアになったからと言って全部帳消し?

そんな事があっていい訳ないし、自分のやった事は許されるべきじゃない。

 

 

「ハミィは、今もセイレーンの事を心配して探し回ってるドド」

 

「一々ハミィの事を話に出さないでよ!私は、ハミィなんてどうでも良いの!どうなったって………構わないわ」

 

 

ハミィを話題に出されたのが気に障ったのか、セイレーンが語気を強める。

ドドリーは、そんなセイレーンの態度にもめげる事なく更に話しかけた。

 

 

「なら、どうしてあの時ハミィを助けたドド?」

 

「分からないわよ、そんな事!アンタには関係ないでしょう⁉︎」

 

「確かに関係ないドド。でも、一つだけ確信を持って言える事があるドド。あの時、セイレーンはハミィを守りたいと思った筈。その友達を想う心が奇跡を起こして、プリキュアに変身した。だからこそ、セイレーンはその気持ちと向き合いながら、正義のプリキュアとして戦う運命なんだドド!」

 

「運命………」

 

 

セイレーンは、プリキュアとなった自分がメロディやリズムと肩を並べて戦う姿を想像するが………あり得ない、と同時に思った。

自分が今まで何をしてきたのか、自分自身が一番よく分かっている。

 

 

「ご都合主義が過ぎるのよ、そんな話は………ね」

 

「なら、セイレーンはこれからどうするんだドド?」

 

「そうね。私は裏切り者だからマイナーランドにはもう戻れない。だからと言ってアンタ達プリキュアと一緒に戦うのも無理だわ。いっそ、自由気儘に生きるのもいいかもね」

 

 

ドドリーの問い掛けに、セイレーンは自嘲気味に笑いながら答えた。

最早、マイナーランドにもメイジャーランドにも自分の居場所はない。

正直な話、自分の事なんてどうでも良いと思っているくらいなのだ。

 

 

「………セイレーンの意志は良く分かったドド。でも、これだけ言っておくドド。どれだけ目を逸らしても、必ずいつかは自分の運命に向き合う時が来るドド。後悔だけはしないようにするドド。失ってからでは遅いドド………」

 

 

ミューズとドドリーは、少しだけ悲しげな顔をしながら、そう言い残してその場を立ち去っていく。

 

 

「失う前に…か。もう、私が失う物なんて何もないのよ………」

 

 

去っていくミューズの背中に向かって、セイレーンは1人呟くと何処へともなく歩き出す。

降り続ける雨は、まるで彼女の心情を表すかのように益々勢いを増していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨は一向に止まない。

冷たさを含む雨が身体を打ち、体温を奪っていく。

しかし、今はそんな事も気にならない程にセイレーンの心は凍り付いていた。

俯きながら宛ても無く歩き続けていると、突然身体に降り掛かっていた雨の感覚が消える。

雨が止んだのだろうか?と思い、俯いていた顔を上げる。

 

 

「やっほ、セイレーン。こんなビショビショのまま、歩いてたら風邪引くよ?」

 

 

顔を上げた先には、傘を差して自分を見つめている北条響が居た。

 

 

「アンタは………」

 

「んー…取り敢えず、此処で立ち話するのもなんだから一旦私の家に行こっか。ハミィも、貴方の事心配して待ってるしね。一緒に来て欲しいの」

 

「何で…それに「拒否権はないよ?」ちょっ…!」

 

 

響の誘いにセイレーンは困惑しながら断ろうとするが、ガシっと手を掴まれ、半ば強引に連れて行かれる。

 

 

「は、話しなさいよ!」

 

「ヤダ。ハミィ以外の皆からもセイレーンを探して欲しいって頼まれてるし、私だって聞きたい事が沢山あるんだから。それに、その様子じゃ行く宛もないんでしょ?」

 

 

響はそう言って、セイレーンを腕を掴んだまま家へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

響の家に連行?されたセイレーン。

雨で濡れてしまった服は、ハンガーにかけられて乾き待ちとなっている。

取り敢えずシャワーでも浴びなよ、と勧められたのでシャワーを浴び、乾くまでの間、代わりとして響の私服を借りる事に。

 

 

「うんうん、よく似合ってる。私と背丈も体型も似てるから大丈夫みたいだね」

 

「………何のつもり?私はアンタ達の敵だったのよ?それを、家に招いて服まで貸したりして…訳が分からない。私が今まで何をやって来たか分かってるでしょう?それとも、私がプリキュアになったからかしら?」

 

 

セイレーンは敢えて挑発するような物言いで話すが、響はそれを特に咎める事もなく微笑みながら答えた。

 

 

「別にセイレーンがプリキュアになったから、そうしたって訳じゃないよ。確かに、街の皆を傷付けたりハミィを何度も騙したりしたのはよくないと思う。けど、だからってそれを理由にして、今困ってる貴方を放っておくのも違うと思うんだ」

 

「………甘いわね」

 

「まあ、自覚はあるよ。ロックスにもよく言われたしね」

 

「(ロックス………?)」

 

 

ロックスという聞き慣れない単語に眉を顰めるセイレーン。

気にはなったが、何かを懐かしむように語る響の姿を見て無用な詮索はしない事にした。

 

 

「そう言えば、ハミィは何処に?」

 

「ハミィは今日、奏の家に泊まってるよ。奏ったら、『今日は一日ハミィの肉球を堪能できる〜!』って凄い嬉しそうだった。取り敢えず、積もる話は明日ラッキースプーンに行ってからにしよう。………ああ、そうだ!ベッドは一つしかないから、私と一緒に寝る事になるけど大丈夫だよね?」

 

「ちょ、ちょっと…何でゆっくり私の方に近づいてくるのよ。ま、待っーーーー!」

 

「大丈夫大丈夫!諦めて身を委ねれば何の心配もないよ!」

 

「やっかましいわ!今のアンタを見て、大丈夫と思える訳ないでしょうがっ‼︎」

 

 

ニヤァ…!と笑うと、響は手をワキワキさせてセイレーンに躙り寄る。

嫌な予感がセイレーンの全身を駆け抜けるが、時既に遅し。

武装硬化された響の両腕が彼女を拘束し、言い知れぬ恐怖を抱いたセイレーンは『悪魔の実』の能力を発動させる。

  

 

 

その日の夜、北条家の一室は俄に騒がしくなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

 

加音町から少し離れた灯台にあるアジト。

其処では、メフィストとトリオ・ザ・マイナーが集まって会議をしていた。

セイレーンに裏切られた挙句、楽譜に揃っていた音符全てを失ってしまう結果になってしまったマイナーランド陣営。

辛うじてプリキュアや、その妖精達に音符を奪われる事はなかったものの、状況はまたも振り出しに戻ってしまった。

 

 

「おのれ、セイレーンめ!我々を裏切った上に、プリキュアになるとは!だが………あれは、本当にプリキュアなのか?」

 

 

メフィストはプリキュアらしき姿に変化したセイレーンを思い出しながら、疑問を口にする。

寧ろ、メフィストからすれば巨大な猫の怪物に変化したという方が驚きだった。

自分が知る限り、セイレーンには他人に変化する能力があったとは言え、あのような怪物に変化する力はなかった筈。

もし、あれ程の力を手にしたセイレーンがプリキュア側に味方するとなれば更に面倒な事になるのは必至。

次々と降り掛かる問題に、メフィストは頭を抱えそうになった。

そんなメフィストの気を知ってか知らずか、トリオ・ザ・マイナーの1人であるバスドラがメフィストの前に進み出る。

 

 

「メフィスト様。別にセイレーンがプリキュアになった件に関しては、もう良いのでは?何れにせよ、奴が裏切ったという事実は変わらないのです。これからは如何にしてプリキュア共の目を欺きながら、音符を集めて楽譜を完成させるのかが重要なのではないですかな?」

 

「そんな事は言われんでも分かっておるわっ‼︎そう言うなら、バスドラ!お前には何かこの状況を打開するような策があるのだろうな⁉︎」

 

「ええ、勿論ですメフィスト様。さすれば、私バスドラをリーダーにして頂きたく…!」

 

 

恭しく頭を下げながら、バスドラは笑みを浮かべる。

サラっとリーダーになる事を要望する辺り、野心が見え見えではあるが。

 

 

「なっ⁉︎1人抜け駆けは卑怯ですよ、バスドラ!」

 

「そうだそうだ!この卑怯者!バカドラ!」

 

「煩い!ならお前達に、俺の考えた策以上の何かがあるのか⁉︎ええ⁉︎言ってみろ!後、誰がバカだっ!次そんな事言ったら許さんぞ!」

 

「そ、それは………」

 

「むぅ………」

 

 

バスドラを除くメンバーの2人…バリトンとファルセットが抗議するが、バスドラの返しの言葉に反論出来ずに黙ってしまう。

 

 

「下らん言い争いなどしている場合かっ!今回はリーダーをバスドラ、お前に命じる!だが、抜かるんじゃないぞ⁉︎さあ、策とやらを聞かせてみろ!」

 

「ええ、勿論です。では………」

 

 

自信気に話始めるバスドラ。

マイナーランド側は、再び音符を手に入れる為に今日も悪の道に邁進するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで少し話を変えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて、北条響が一時期居た世界には『空島』と呼ばれる空に浮かぶ大地が存在する。

勿論、空の上にあるので万が一下に落ちたりすれば命はない。

 

 

 

 

 

 

その空島で今、1人の男が佇んで下を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

男はーーーー『死に場所』を探していた。

 

 

 

彼について語るならば…海賊として7度の敗北………‼︎

 

 

とある歴史の影に葬られた海賊団では、見習いという身でありながら、その凶暴性と元来からの異様なタフネスさで名を知らしめる。

 

 

同じ仲間である筈の『白ひげ』『ビッグマム』『金獅子』『銀斧』『王直』『キャプテン・ジョン』『音奏』………果ては彼らを纏め上げていた船長にまで喧嘩をふっかけては半殺しになる事、110回………‼︎

 

 

 

 

その海賊団が壊滅した後は、1人で海軍及び四皇に挑み…捕まる事18回………‼︎

 

  

 

 

1000度を越える拷問を受け、罪人として………生きてきた。

 

時に死刑宣告され、首吊りにあうも鎖はちぎれ、はたまたギロチンにかけられるも刃は砕け、それが40回。

その全てが彼には通じなかった。

 

 

 

 

 

その結果、1人で巨大監獄船を9隻沈める。

 

 

 

 

 

 

そんな経歴を持つ彼は…何を思ったか、島から身を投げ出す。

 

 

 

 

そう…彼は今まさに、『自殺』をしたのだ………‼︎

世に珍しい『空島』からの『飛び降り自殺』である………‼︎

 

 

 

 

猛烈な速度で落下していく男。

 

 

このまま下に落ちる筈だった彼を、予想外の出来事が襲う。

 

 

 

突然ピシピシピシッ…!と空間が裂け、落下する男を吸い込んでしまったのだ。

 

 

彼が何処に消えたのか、それは誰にも分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで、バスドラが話している場面へと戻ろう。

 

 

 

「つまりですな、メフィスト様。私の作戦というのは………グボェアッ⁉︎

 

 

 

得意気に自分の策を語っていたバスドラ。

突然、ドズゥン‼︎と轟音を立てて降って来た男に、彼は哀れにも押し潰されてしまった。

 

 

「な、何事だ⁉︎まさか、プリキュア共にアジトの場所がバレたか⁉︎」

 

 

メフィストは唐突に目の前で起こった光景に、思わず狼狽する。

バリトンとファルセットも、何が起こったのか分からずにバスドラが居た場所を見た。

よく見ると、床には巨大な穴が空いている。

 

 

「こ、これは………見る限り人の形のようにも見えるな」

 

「まさか、あの時の巨大な婆さんじゃ………?ていうか、バスドラ生きてるんですかね?」

 

 

メフィスト達は、前に現れた怪物のような老婆を思い出して身震いする。

 

 

 

だが………その予想は間違っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強き者が生き…弱き者は死ぬ。

 

 

 

 

この世はただ…それだけだ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、穴から伸びて来た巨大な手がドン‼︎と床を叩く。

 

 

そして、その穴から巨大な男が現れる。

 

 

 

 

 

 

その男こそ、先に『空島』から飛び降りた人物。

 

 

 

 

 

 

趣味は『自殺』

 

 

 

男の名は

 

 

 

 

 

「くそ………!頭、痛ェ…!死ねねェもんだな………!」

 

 

 

 

百獣海賊団 総督

 

 

 

 

百獣のカイドウ

 

 

 

 

 

 

懸賞金額46億1110万ベリー

 

 

 

 

 

 

 

一対一(サシ)でやるならカイドウだろう。

 

 

人々は口々にそう言う。

 

 

 

 

 

陸海空…生きとし生ける全ての者達の中で、最強の生物と呼ばれる海賊………‼︎

 

 

 

 

 

 

メフィスト達は、現れた怪物を前に立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

ラッキースプーンを訪れた響とセイレーン。

響が勢いよく扉を開けると、丁度ケーキを作っていた奏がエプロン姿で出迎えた。

  

 

「おはよー、奏ー!」

 

「お早う、響。セイレーンもお早う………って何か凄くやつれてない?」

 

「………ナニモナイカラシンパイシナイデ」

 

「そ、そう………」

 

 

何故だかゲッソリした顔のセイレーンに、奏が不思議そうに問い掛けるが、セイレーンは引きつった顔をしながら何もないと言って顔を逸らす。

  

 

「皆は来てるの?」

 

「響達以外は、早くから来て外のテラスで待ってるわよ。私も今作ってるケーキが出来上がったらそっちに行くわ」

 

 

そう言うと、奏は忙しそうに厨房へと戻っていく。

 

 

「じゃ、行きますか。………どうしたの、セイレーン?」

 

「えっと…その、やっぱり私行かない方がいいと思うのよ。どんな顔して、ハミィ達に会ったら良いのか分からないし…その」

 

 

言葉に罪悪感を滲ませながら、ハミィ達に会う事を躊躇うセイレーン。

やはりまだ、彼女の心の中で整理がついていないのだろう。 

昨日の今日なので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 

 

「うーん…セイレーンの気持ちも分かるけどさ。こういうときは、当たって砕けるくらいの気概で行こうよ!何とかなるって!」

 

「何とかって………ハァ、分かったわ。ここまで来たら逃げる訳にも行かないし、向き合ってみる」

 

「いいよ、セイレーン!その意気だ!」

 

 

響に励まされたセイレーンは、軽く息を整えるとゆっくり屋外テラスへ続く扉を開けてーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

「ハ〜ハハハママママ!白ひげェ!覚悟しなァ‼︎」

 

 

 

 

「お前のカップケーキなんざ、知らねェって言ってんだろうがァ!ちったァ、人の話を聞きやがれ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー秒で扉を閉めた。

 

 

「ちょっと、どうして閉めたの?」

 

「無理無理無理無理無理無理‼︎絶対無理‼︎何であのお婆さんが居るのよ⁉︎」

 

「お婆さん…?ああ、リンリンの事?大丈夫だって!今は『食いわずらい』発症してないから魂抜かれる事はないよ」

 

 

過去にリンリンに魂を抜かれかけた経験から、怯えてガクブルしているセイレーンを尻目に、響は扉を開けると外に出る。

 

 

「リンリン、ニューゲート!何で朝っぱらから喧嘩してるの⁉︎」

 

「あァ⁉︎響かァ⁉︎どうもこうもねェよ!白ひげの野郎が、おれが食おうとしてたケーキを食いやがったんだ!許さねェぞ、白ひげェ〜!」

 

「だから知らねェって言ってんだろォが!」

 

 

どうやら、リンリンが食べようとしてしたケーキが無くなり、それを白ひげが食べたと勘違いしたリンリンがキレているらしい。

白ひげは食ってないと主張するも、リンリンは信用していないのか怒りを露わにした。

 

 

 

 

「ナポレオン…!」

 

『はい、ママ!』

 

 

「ったく…!ここで事を構えたくはねェんだが、仕方ねェ………!」

 

 

 

 

リンリンは『ナポレオン』を取り出し、白ひげも『むら雲切』を構える。

一触即発の空気が漂い、今にもぶつかり合おうとしたその時だった。

 

 

 

「ね、ねぇ………何か、こっちに来るんだけど」

 

 

 

リンリンと目を合わせるのが怖くて、空を眺めていたセイレーンが何かに気付く。

セイレーンの言葉に釣られて響も空を見上げると、確かに何か巨大なモノがラッキースプーン目掛けて接近して来ている。

 

その姿は、まるで御伽噺に登場する東洋の龍のような姿をしていた。

 

 

 

「おいおい、アレはまた…面倒なのが来たな」

 

 

 

白ひげが眉間に皺を寄せて顔を顰める。

 

 

「アレが何か知ってるの、ニューゲート?」

 

「あァ、そうか。お前は知らねェんだったな。アレはカイドウだ」

 

「ええ⁉︎カイドウ⁉︎あの見習いの、喧嘩っ早くていつも皆に半殺しにされてたカイドウ⁉︎」

 

 

響の問い掛けに白ひげが答えると、響は驚きの表情で巨大な龍を見つめる。

 

 

「ハ〜ハハハママママ…!カイドウか……懐かしいねェ!ゼウス!プロメテウス!」

 

『『はい、ママ!ここに!』』

 

 

リンリンもまた、楽しそうに笑うと雷雲ゼウスと太陽プロメテウスを呼び出す。

どうやら戦う気マンマンらしい。

というか、リンリンとカイドウが街中で戦ったりすれば間違いなく大変な事になる。

 

 

「響!テレビを見て!何か大変な事になってるわよ⁉︎」

 

 

その時、バタン!と勢いよく扉が開けられ、中から奏が焦りながら飛び出して来る。

奏に連れられ、店内にあるテレビを見ると画面の向こうでは大変な騒ぎになっていた。

 

 

 

 

 

『信じられません!全く、信じられません!前代未聞、世紀の大事件です‼︎』

 

『この巨大不明生物は、加音町上空に突如として現れ現在ーーーー』

 

 

 

 

 

テレビ局のアナウンサーが、マイクを手にして興奮した様子で捲し立てる。

それを見た響は、踵を返して慌てたように店を飛び出して行く。

 

 

「響⁉︎何処に行くの⁉︎」

 

「ちょっと、あの龍と話してくるよ!アレ、私の知り合いなの!直ぐ戻ってくるから!リンリン、私も行くから連れてって!」

 

「マ〜ハハハハ!おれとお前の仲だ、良いだろう!しっかり掴まってなァ!」

 

 

響に頼まれたリンリンは、豪快に笑うと雷雲ゼウスに飛び乗る。

 

 

「ちょ、ちょっと!響ってばー!………ハァ」

 

 

後から追いかけて来た奏にサムズアップをしながら、響はリンリンの背に乗ると巨大な龍目掛けて飛び去っていく。

奏は段々と小さくなっていく2人を見ながら溜め息を吐いた。

 

 

「ねぇ、あの2人あのまま行かせて良かったの?大変な事になるんじゃ………」

 

「………大丈夫よ、多分。響に加えてリンリンさんも居るんだから、何とかなると思うわ」

 

 

去っていく2人を眺めていたセイレーンが問い掛けるが、奏は慣れた様な顔で言うと、セイレーンの方に向き直る。

 

 

「それより、セイレーンにもケーキ作るの手伝って欲しいんだけど…良いかしら?」

 

「まあ…良いけど。私、ケーキなんて作った事ないわよ?」

 

「それなら大丈夫ニャ!ハミィ達も、お手伝いするニャ〜♪勿論、セイレーンも一緒にニャ〜♪」

 

「ハミィ⁉︎アンタ、どっから現れたのよ⁉︎ええい、私の頭に乗るなー!」

 

 

ドッタンバッタン!と慌しく厨房へと入っていくハミィとセイレーン。

その姿を、奏は微笑ましいものを見るような目で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あァ〜!ここは一体何処だってんだ…ヒック!」

 

 

加音町の空を飛ぶ巨大な龍………カイドウは、つまらなさそうに呟く。

いつもの様に空島から日課の自殺をしたら、よく分からない空間の裂け目のようなものに飲み込まれ、見た事もない世界に来てしまっていた。

おまけに酒を飲みながらの突発的な行動であったが為に、思考が定まらない。

そんな彼の耳に、何処からか声が聞こえてくる。

その声は、昔見習いとして所属していた海賊団にいた頃を思い出させる懐かしい声だった。

 

 

 

「カイドウ〜‼︎」

 

 

「ハ〜ハハハママママ!カイドウ、相変わらずだね…!」

 

 

「響とリンリン………だと⁉︎」

 

 

 

信じられないものを見たかのような目で、響とリンリンを見るカイドウ。

あり得ない光景に、酒の酔いも一気に吹き飛んでしまう。

特に響に関してはゴッドバレー以来だ。

あの戦いで死んだのかと思っていたが、どうやら生きていたらしい。

 

 

「アハハ…久しぶりーーーーと言いたい所ではあるけど。取り敢えず、一旦その姿を解いてくれない?町が大騒ぎになってるしさ」

 

「あァ⁉︎何で俺がお前の言う事を聞かなきゃならねェんだ!黙ってろ!」

 

「ママママ…!何を言っても無駄さ、響!あの船に乗ってた海賊は誰かの言う事に従えるような奴等じゃねェ!お前やおれも含めてなァ!ハ〜ハハハ!」

 

 

カイドウは不機嫌そうに反発し、リンリンはナポレオンを構えながら笑う。

 

 

「そう………聞いてくれないなら仕方ないね。だったら、私も久し振りに、海賊のやり方で言う事聞かしてあげる!」

 

 

そう言うと、響の顔付きがガラリと変わる。

彼女の纏う空気が、ミシミシと唸りを上げ海賊のそれへと変化していく。

響はリンリンから離れると、カイドウの頭に向かって能力を発動させた。

 

 

 

 

 

音響砲(ハイパーボイス)!」

 

 

 

 

 

響が突き出した両手から強烈な衝撃波が放たれる。

その威力は、龍に変化しているカイドウの巨体に影響を与える程。

 

 

 

「オォ………⁉︎」

 

 

 

カイドウは身を震わせると、響を睨み付けながら口を開く。

 

 

「舐めやがって…!そんな下らねェ攻撃が俺に効くとでも思ってんのかァ⁉︎」

 

「今のは本の挨拶代わり!これでも食らいなよ、カイドウ………!」

 

 

響の両腕が武装色で黒く染まり、拳が引き抜かれる。

 

 

 

 

 

「ロックス直伝ーーーー『武装色パンチ』ッ‼︎」

 

 

「グッ………⁉︎オオオオオオオオォッ⁉︎」

 

 

 

 

 

メキャアッ!と音を立てて、カイドウの頭に拳が減り込む。

カイドウは白目を剥き、龍の姿から人間態へと戻りながら街中へと墜落した。

 

 

「マハハハハ!珍しい事もあるもんだ!カイドウが殴り倒されるなんてなァ‼︎」

 

 

ゼウスに乗りながら一部始終を眺めていたリンリンは、愉快そうに目を見開きながら呟く。

一方、殴り落とされたカイドウは直ぐに起き上がると、額から流れてきた赤い液体を見て僅かに驚いたような顔をしながら、楽しそうに響を睨み付けつつも笑う。

 

 

「ウォロロロ!久し振りだ、血を流すなんてな…!そうだ、もっと俺を楽しませろ!『ロジャー』『白ひげ』『赤髪』『リンリン』『おでん』…そしてお前。俺と戦える実力があるお前となら、少しは楽しめる!」

 

「相変わらず耐久力凄いよね、カイドウは。昔、ロックスから教えて貰った『武装色を応用した内部破壊』も大して効いてないし…!」

 

 

ロックス時代も異様な耐久力を持っていたカイドウ。

どれだけ打ち倒そうとも、不死身のように起き上がってきたあの頃より更に強大になった彼に、響は思わず冷や汗を流した。

 

 

 

 

 

その時。

 

 

 

 

 

「おい!其処までだ、お前らァ‼︎」

 

 

 

 

「ニューゲート…⁉︎」

 

 

「白ひげのジジイ…⁉︎」

 

 

 

再びぶつかり合おうとしたカイドウと響の間に、白ひげが割って入った。

カイドウは見る筈のないものを見たような顔をしながら、白ひげに問い掛ける。

 

 

「白ひげのジジイ…!死んだ筈だろう!何故生きてやがる⁉︎」

 

「グララララ…!悪いが、そう言う話は後だ。これ以上暴れりゃ、街がもたねェからな。一旦戦うのはやめにしておけ。ただでさえ、騒ぎになってやがんだ」

 

「カイドウ、取り敢えず一時休戦しない?私もお腹空いちゃってさ、アハハ………」

 

 

白ひげの言葉に乗っかるように、響も武装色の覇気を解除してカイドウに言った。

カイドウは軽く舌打ちをして、やる気なさ気に構えていた金棒を下ろす。

 

 

「………チッ、仕方ねェ。お前らの言う事なんざ聞く必要ねェが、興が削げちまった。さっさと連れてけ」

 

「ハ〜ハハハママママ!もう殺し合いは終わりかい?つまらないねェ………!それじゃ、おれは先に戻ってケーキを食べるとしよう!」

 

 

リンリンは詰まらなさそうに言うと、ゼウスに乗ったままラッキースプーンに帰っていく。

 

 

「リンリン………行っちゃった。まあいいか」

 

「別にアイツは居なくてもいいだろ」

 

「ウォロロロ…!それに対しては同感だぜ、白ひげのジジイ」

 

 

残された3人はそう言いながら、ラッキースプーン目指して歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『白ひげ』『ビッグマム』『金獅子』『カイドウ』………。

 

 

役者は揃いつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




セイレーン………前話にて、プリキュアに覚醒するも現実を受け入れられず逃亡。街中を彷徨っていたが、北条響に説得されて彼女の家でお泊りする事に。
その日の夜は一悶着あった模様。
翌日に、響に連れられラッキースプーンに顔を出すも、リンリンの姿を見て⁉︎となる。過去に魂を抜かれかけている為にリンリン恐怖症になっているが、その内慣れる。慣れって怖いね。
奏やハミィと一緒に、ラッキースプーンでケーキを作っている。
次話にて、本当の意味でプリキュアに覚醒予定。


北条響………加音町に現れたカイドウと、ちょこっとだけ戦闘。
カイドウが能力者になっている事を知って驚いた。
武装色の覇気の応用を駆使し、カイドウを殴り落として傷を付けた。
ロックス時代の仲間がまた増えた。


南野奏………今回はほぼ出番無し。次話に期待。
ケーキを作っている時、偶々テレビで龍形態のカイドウを目撃して驚くが、響の知り合いと分かったので考えるのをやめた。ラッキースプーンに、またヤバそうな奴が増える気配を感じ取ったが、デカい龍が増えた所で今更と開き直った。
今はセイレーンとハミィと一緒にケーキを作っている。


白ひげ………ラッキースプーンに集まるヤベー奴等の保護者ポジションに収まりつつある。俺はお前らの保護者じゃねェぞ!


ビッグマム………カイドウにデカい貸しがあるババア。彼が来た事でテンションがちょっと上がった。因みに、今話で白ひげと揉める原因となったケーキが無くなった事件だが、リンリンの物と知らずに食べてしまったファリーが犯人だった。
バレると殺されそうなので全力で知らんふりをしている。


カイドウ………最強生物。酔った勢いで空島から自殺をしたら、スイプリ世界に転移。
バスドラを押し潰しながら着地した。
死ぬ事は出来なかった模様。
その後は龍形態で加音町を彷徨いていたが、響とリンリンに出会ってしまう。
響に武装色パンチを喰らわされ、久しぶりに怪我をした事でテンションが上がる。
しかし、白ひげの乱入と響が戦う気をあまり見せなかった為やる気を無くした。
響はともかく、リンリンに会うのは気乗りしない。


トリオ・ザ・マイナー………被害者。主にバスドラが。
カイドウに押し潰されたが、ギャグ補正で無事だった。
哀れなり。


メフィスト………もうやだなー、人間界。


ラッキースプーン………ヤベー奴等の溜まり場となります。強く生きろ。




〜今後の予定〜

次回は、響達がカイドウの所へ行ってしまった後のラッキースプーンの話(主にセイレーンとハミィと奏。そして…あの男)と、ヒーリングチェスト回の予定です。
ヒーリングチェスト、お前寝てばっかり居ると大変な事になるからずっと起きといた方がいいぞ?

その次でミューズ加入回、更に次で………皆様お待ちかねの回です。
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