10年前によくあったオリ主がフェイトを持ち帰るお話   作:yukimichi

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02-オリ主、フェイトを持ち帰る

臭い。

 

全国のファンに怒られそうだが、俺がフェイトに近づいて最初に抱いた感想である。

数日風呂に入っていないとか以前に、海にでも落ちたのか海水や何かが腐ったような匂いなど、兎に角彼女は臭かった。

なんかもうホンキでわからん、何があったし。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 

お互い、無言。

俺の方はまず何て話しかけるかわからず、それは向こうも同じようだった。

つーか、眼が死にすぎなんだけど。

何なの、何でそんなレイプ眼なの。

地面にぺたりと座り込んだままこっちを見上げる眼が怖すぎるんですけど。

プレシアさんにクローンがどうとか酷い事言われたんだろうか。

ちょっとしたホラーなんだけど。

あと臭いんですけど。

 

 

「…………えーと……パンは食ったのか?」

 

コクリ

 

「……立てるか?」

 

フルフル

 

どんだけ衰弱してんのアンタ。

参ったな、夜に少女抱えて長距離歩くなんて嫌だぞ。

職務質問的な意味で。

 

 

「あー……何だ。車っつーか……乗り物とってくるわ。待ってる気があるなら此処に居な」

 

 

一旦屋敷に戻り、白い軽トラの助手席にありったけのバスタオルを放り込んでコンビニの前に戻る。

割と大きな通りに面しているものの、日付はとっくに変わっているので交通量も少なく、気にせず路肩に止める。

フェイトは、まだそこに居た。

意識を失って。

仕方が無いので所謂お姫様抱っこで運ぼうとした時、気付いた。

汚れきって匂いも酷かった上に薄暗くて解らなかったが、この子怪我してるな。

触った瞬間パリパリと何かが崩れるような感触があったのは、間違いなくカサブタだろう。

なるべく慎重に持ち上げたが、腕の中で痛みに苦しんで呼吸が荒くなる。

顔色も最悪だし、体温も妙に低い。

なんとかタオルを敷いた助手席に乗せるが、後ろに荷台がある構造上、背もたれが殆ど倒せない。

慎重に運転しないと足元に転げ落ちてしまいそうだ。

 

 

「……う……うぅっ……ぁ……?」

 

「おい?!気付いたか?もう直ぐ手当てしてやるから、頼むから大人しくしててくれよ」

 

 

シートベルトをゆっくりと付け、運転席に戻ってキーを捻った瞬間、フェイトが眼を覚ました。

いや、覚ましたと言えるのだろうか。

目線は定まらず、ただ人形が瞼を開いただけのようにも見えた。

 

 

「ぁ…るぅ……」

 

「ん?何だって?」

 

 

フェイトの口から出る音の意味が解らず、俺は助手席に身を乗り出して音を拾おうとした。

 

 

「ぁ……るふぅ……」

 

「アルフ?アルフがどうかしたのか?名前か?」

 

「……奥に…………い……っしょ……」

 

「おい!眼を閉じるな!……クソがっ!」

 

 

『アルフ』『奥に』『一緒』

 

それだけを呟いてフェイトはまた気を失った。

明らかにさっき運んだ時にヤバイくらい軽かったし、ヘタしたら命に関わるぞこの子。

早く手当てを……ったく、アルフは何をやって…………

 

 

 

………待てよ?

 

 

「まさか、いや……ワリィ、スグ戻るわ」

 

再度キーを逆方向に捻ってエンジンを落とし、先ほどフェイトが居た場所まで戻る。

地面にぬちゃりとした感触、フェイトの血だろう。

そして、この違和感。

 

 

「やっぱりまだ全然クセェ……マジか、ホンキでヤバイぞこれ」

 

 

フェイトからする悪臭は当然フェイトが原因だと思っていた。

事実、彼女を抱えていた時、彼女の体からは異臭がした。

 

しかし、いくら血痕があるとはいえ、いくらフェイトが長時間ここに居たとはいえ………

これは糞尿の臭いなんかじゃない。

 

 

 

 

 

何故ここは、こんなにも腐敗臭がする。

 

 

 

 

 

ビルとビルの間の細い通路を進む。

左右の壁には窓も無く、ドアも無い。

裏口がある訳でもない、たまたま設計上出来たデットスポットなのだろう。

進めば進む程、弱くなってゆく光とは逆に腐敗臭が強烈になってゆく。

思わず胸元に、何時の間にか大量に出ていた汗を拭う。

粘着質でぬるぬるした、酷く不快な汗だった。

 

そして行き止まり。

 

暗くて見えないが、恐らく、すぐ、そこに、『ある』。

 

スライド式の携帯で明かりを確保すると、折りたたまれたダンボールがつまれていた。

高さは、俺の膝より少し高いくらい。

広さは、『大人をすっぽり覆い隠せるくらい』。

 

周囲にはハエが飛び交い、そこに何があるか容易に想像させた。

何故フェイトはあんな場所に居た?

理由はたくさんあるだろう。

そんな事は俺にはわからない。

 

何故フェイトは1人で居た?

決まっている、何らかの理由でアルフが一緒に居ることが出来なかったからだ。

 

ならば……その理由とは?

 

その答えが、恐らくここにある。

 

靴の先でダンボールをどかしてゆく。

1枚……2枚……

 

3枚目の裏には大量の血の跡、その下にあるのはボロボロの布がかぶせてある何か。

ますます強くなる臭い。

鼻呼吸なんざとっくにやめてるが、それでもなお強烈に臭う死臭。

 

布の端を持ってめくるとそこには……

 

 

「ジーザス……くそ……何なんだ、この世界は……」

 

 

薄汚れながら通常ではもありえないと解るオレンジ色の毛並み。

明らかに攻撃を受けたと解る肉体の損傷。

所々焼け爛れて焦げており、腹からは内臓の一部が飛び出て腐り始めている。

 

 

見つけたのは、見つけてしまったのは、アルフの死体だった。

 

 

 

 

「最悪だ、クソ。マジでどうなってる?」

 

 

 

 

一旦トラックに戻るとバスタオルと一緒に放り込んでおいたシーツを手にアルフへ向かう。

バサリと上から3枚シーツを掛け、包み込むように持ち上げる。

ぬちゃりと指が食い込む感触が吐き気を催すほど気持ち悪い。

 

持ち上げたアルフの体からはぴちゃぴちゃと何かは解らないが液体が滴り、一層異臭を激しくしていた。

小走りでトラックに戻り、荷台へ。

運転席のドアを開けようとして気付く、自分の手と、胸から腹に掛けてが、べったりと血で汚れている事に。

 

 

「後でファブリーズかな……これ」

 

服は捨てよう。

そう決意して運転席に戻り、キーを捻る。

タオルで拭きはしたが、ハンドルを握る手に残る脂が妙にぬめぬめとした感触を伝えてきて、気持ち悪い。

鼻なんざとっくに麻痺した。

 

こうして俺は、自宅である月村家の離れにフェイトを連れて帰ってきたのだった。

 

とりあえず生きている人間が優先なのでアルフはそのままに……つっても朝までに何とかしないと大騒ぎになるな。

とにかくフェイトを家に連れ込む。

俺が月村家から間借りしている家は、位置的には裏手の端にある塀沿いの内側にある。

裏手には林があり、そこを超えるとすずかお嬢がよく友達を招待してお茶を飲んでいる庭があると言えばわかるだろうか。

敷地面積はよくある一軒家とほぼ同じくらいあるが、1階建て。

はしごを上ると屋根裏になるが、全く使っていない。

冬は寒く夏は暑く、物を保管するのにも向いていないからだ。

ちなみに薬の材料などは地下室にある。

まぁ、そっちもあんまり使っていないが。

 

一応簡単な手当てや点滴をする部屋があるので、そこに運び込んだ。

未だかつて使ったことの無い手術台にフェイトを乗せ、明かりを付けてお湯を用意する。

その間に俺は手洗いや着替えなどを済ませ、さて手当てをするかとよくよくフェイトを見て絶句した。

 

 

 

やばい、コイツ、本気で死に掛けてる。

 

 

明るい所まで連れてきてようやく気付いたが、服が焦げて血が滲んでいた。

場所は左腕から肩、胸にかけて……そして見えないが恐らく、背中も。

そうだ、アルフが死ぬ程の攻撃を受けたのだ、近くに居ただろうフェイトも、同じ攻撃を受けた可能性があるのは自明……!!

 

内線で屋敷に連絡し、出てくれたメイドのノエルさんにすぐ来るよう頼んで俺はフェイトの衣服をハサミで切り裂いた。

元々ボロボロだった上に血糊が酷すぎたし、どの道もう服としては使えない。

 

 

「……チッ……クソが……やったのはプレシアか?!」

 

 

皮膚が広い範囲で焼け爛れていた。

だがこれは火じゃない……電気だ……それも強力な。

恐らく雷撃系の魔法だろう。

フツーの科学的な電気でこれだけ人体を破損させる出力を人間に流したら、普通に死ぬ。

そういう意味では魔法に対する抵抗力、デバイスが張ったであろうシールドに助けられたのだろう。

 

だが、広範囲で真皮までダメージを受けていたとしたら……

とっさにフェイトの手のひらのサイズを確認し、やけどの範囲を確認する。

 

手のひら13枚分……一般的に手のひらの面積は人体の1%……1割以上の皮膚が死んでいる計算になる。

まっとうな医療だったら皮膚移植をしないと……

管理世界の人間をか……?

怪我してるフェレットを動物病院に担ぎ込むんじゃねぇんだぞ。

後ろ暗い部分を持つ月村だからこそ、そんな怪しい人間のために本家に動いてもらう事が出来ない。

俺が例えば忍お嬢の実の兄妹だったりしたら話がまた別なんだが……

ようするに、コイツはここで何とかしないと……!!

 

酸素マスクを付けてやり、できたお湯にボトルごとつっこんだ生理食塩水のぬるま湯で傷口の汚れを落としてゆく。

擦り傷なんてレベルじゃないため、ヘタに消毒液も使えやしない。

出血自体は止まりかけていたのだろうが、ぬるま湯によってカサブタがはがれたのか徐々に血が流れ出した。

いや、少量なら出血はまだいいのだが……ねっとりとした、黄色い液体が染み出すようにそこかしこから出てきている。

体液が漏れ出してきている……まずい、広いだけじゃなくて深いぞ……!!

 

 

 

「お呼びでしょうか、カズフサ様……その子はッ?!」

 

「あぁいい所に来た!ノエルさん、この子の治療を!病院には連れていけない子なんだ!!」

 

「事情は……後でですね」

 

「見ての通りだ、ほっといたら……あと数時間で死んじまう!!」

 

「お手伝いします……これは……酷い……病院が駄目では……『地下室』を使わせて頂いてよろしいですか?」

 

「あぁ、そのつもりだった。持ってってくれ!」

 

俺は自分の首からシャツの内側に提げていたチェーンを引っ張り出し、その先についていた鍵をノエルさんに投げ渡した。

地下室、そこには月村一族に下ろす薬の材料や完成した薬、そして正規のちゃんとした企業製の薬剤も保管してある。

 

ダメージの少ない右腕を消毒し、点滴用の針を差し込む。

途中のチューブが枝分かれしているタイプを選択しており、栄養剤や抗生物質を点滴しながら太ももから採血。

試験管に血液を流しこんで初めて使う血液型検査機にマニュアルを横目で見ながらぶち込む。

まさか使う日が来るとは思っていなかった。

結果が出るのは最短で2時間後……それまでは輸血も出来ない。

そこまでコアなファンじゃなかった事が悔やまれる。

というかこっちの世界の人間用の血液を輸血して大丈夫なのだろうか。

 

まずは外気に触れてしまっている傷口を保護し、かつ体液の漏れを防ぐ処置……つっても大それた事はどのみち無理か。

ワセリンのビンを取ってヘラで適量を取り出して皿に移す。

そこに炎症を止める薬、皮膚の再生力を高める薬、抗生物質を何種類かぶち込み、かき混ぜてゆく。

自家製の薬?んな半分オカルト民間療法使えるか。

少なくとも俺はこんな緊急時に安心して使えるような秘薬は作れん。

なんならぶっちゃけノエルさんの方が詳しい。

自分の使えなさ加減に笑えてくる。

 

「用意できました。それは……そうですねそのままお願いします」

 

俺が薬を混ぜている間に戻ってきたノエルさんの手には、点滴用のパックが握られていた。

一見真っ赤で輸血パックに見えるが……恐らく増血剤を中心に俺の知らないレシピで作った秘薬の類だろう。

点滴のまだ使用していない枝分かれ部分に接続し、管の中を流れていた透明な液体に赤が混じり始める。

 

俺の方は綿で出来た布……というか大きめのガーゼに先ほどから混ぜていた薬を塗りたくり……所謂昔ながらの湿布を作っていた。

 

「悪いけど背中側の洗浄を頼めるかな、こっちはもうすぐ用意できるから」

 

「はい……なんて痛ましい……」

 

点滴の邪魔にならないようにフェイトの右腕を横にずらしてから、ノエルさんはフェイトを仰向けから右半身が下になるように体勢を変えた。

やはり、背中側も酷かったか。

 

「出来たのから張ってくれ……この分じゃまだ全然たりねぇな……」

 

べたべたとガーゼにヘラで薬を塗り、それをノエルさんがぺたぺたとフェイトに張ってゆく。

俺が最後の1枚に塗り終わって振り向いた時には、フェイトの患部は最後に張る箇所を除きガーゼに覆われており、心電図も接続がされていた。

流石だ、彼女は月村一族の戦闘にも駆り出されて治療する事もあると聞いている。

この程度じゃ修羅場にすらならないんだろう。

 

最後にガーゼがずれたり剥がれたりしないよう、包帯を巻いてゆく。

そして、ようやくひと段落ついた。

というか、あとはフェイトが回復するのを神に祈るしかない。

これで心臓が止まったら本気で打つ手が無くなって死体の処分方法を考えなきゃいけなくなる。

 

 

「検査を待たないと断言できませんが、失血が酷く栄養失調に伴い肺炎も併発しているようです……」

 

無くなった点滴を取り替えつつ、ノエルさんがフェイトについて聞きたそうにしていた。

何て話せばいいか……いや、どの道忍お嬢にはノエルさんから話が行くんだ。

月村家の庇護下にある俺に、嘘はつけない。

ヘタな嘘ついても調べられたら一発で割れるし。

 

「血液型出たか……A型……あぁその子なんですけど……忍お嬢も交えて説明したいんで、明日っていうか夜が明けたら朝イチで時間取れませんか?できればお嬢とノエルさんとの3人だけで」

 

「輸血開始します……これで持ち直してくれればいいんですが……そこまでですか?では余程の……」

 

「あー……多分、ちょっとした騒ぎになるんじゃないかなぁ……俺も身の振り方考えないといけないかもですよ」

 

「カズフサ様のですか?」

 

「俺の出生にも関わる話なんで……まぁまずは朝までこの子のバイタル監視してないとですけど」

 

「少し休憩なされては?」

 

「んにゃ……あぁ……そうですね。ちっと外でタバコ吸ってきますわ」

 

 

俺はタバコとボロボロになった金属片を持って外に出た。

空はやや明るい。

携帯を見たら5時を回っていた。

 

 

「クソッたれの世の中だぜ……お前もそう思うだろ?デバイスさんよ」

 

 

手にはデバイス、バルディッシュがそこにあった。

 




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