10年前によくあったオリ主がフェイトを持ち帰るお話 作:yukimichi
巨大ネコの日?
この前すずかお嬢がお茶会開いてたからそん時じゃないかなぁ。
俺?アサシンクリード2で忙しかったから……
いやだって、ヒーロー君怖いし、フォトンランサーとか死ぬっしょ。
~フェイト初登場を全力で見逃した日について 山近カズフサ~
主人公はいろいろ立て続けに起こり過ぎて冷静なつもりでも実はテンパってたりします。
困難にぶつかった時、混乱して目標を見失った時。
最も大事な物が何なのかをまず初心に立って思い出し、優先順位を付ける。
出来る事と出来ない事を見定めて、できる事からこなして行く。
しかしそれでも、最善の正解を選び続けたとしても成功するかどうかってのは別の話で。
特に、俺みたいな出来る事からして全く思い浮かばないようなヤツは。
「この辺にしましょうか」
「此処には随分来ていなかったけど……こんな趣味があったのね」
「いや、根っこが素材になるんで」
「だと思ってた」
「人が悪い」
俺達2人が来たのは俺ん家の裏にある小さい花畑。
解ってると思うが観賞用ではなく、勿論薬の材料としてだ。
根っこがニンニクの成分に似ていて、滋養強壮の効果がある薬を作れるのだ。
といっても使った高町の坊ちゃん曰く、戦闘時には気休め程度だとか。
カフェインの錠剤をガブ飲みしたほうが意識がハッキリすると言われた時には泣けた。
それでも月に1度渡してるんだけどね。
興奮が戦闘じゃなくて性欲にも行くらしく、まぁホラ……ウチのお嬢と……な。
ちょっと前に「彼のエッチが急に激しくなった」と相談された時には対応に困ったもんだ。
結局体力の付くような似たような薬を渡したけど。
その材料が目の前にあるとは……流石に気付いて無いだろう。
根っこ以外は価値が無いし、普段見ない筈だ。
「で、何処から話してくれるのかしら?」
「いやもう……何処から話したモンでしょうか……」
「貴方ねぇ……」
「ホントですって。ヒトの歴史を話せって言われて聖徳太子かキリストから話を始めるか、原始人の話を始めるか、そんなありさまで。元々墓まで持ってくつもりだった話もありますし」
「ならそうね、リクエストするわ。私が知りたいのは次の3点。あの少女は誰でなんであんな怪我をしているのか、貴方が彼女について関わっている秘密、そして最後に貴方がこれからどうしたいか……今はそんな所ね」
確かに、判断材料が無い今だと浮かぶ疑問はその3つだろう。
最も、俺が説明したらそこから更に別の疑問が浮かぶ……というのは間違いなさそうだけど。
「……まぁ俺の今後は決まってますよ。死にたくない、のんびり生きたい。ガキの頃からそれだけはブレてないつもりです」
「解らないわ。兎に角話すべきと思った事を全部話して」
「んー……俺が小学生の頃の事覚えてます?お嬢が低学年だった頃の」
「勿論。貴方が天才児として誰からも一目置かれていた時期だもの。今じゃ見る影も無いけど」
「辛口だなぁもうお嬢は。んじゃ何であの時俺は天才なんて言われてたでしょうか、ご存知で?」
「小学校高学年で連立方程式や二次関数、確率の問題を難なく解いていたからでしょう?正直、確かに凄いとは思うけどあそこまで持ち上げる必要は無かったと思うわ」
だって、私にも出来たし。
そう言ってお嬢はニヤリと哂った。
笑うのでは無く、哂った。
こえーよ。
いや、確かにお嬢が小学校高学年の頃には、同じ年の俺と同じ問題が解ける様になっていたんだが。
低学年の頃は俺と比較されて辛い目に遇ってたみたいだしなぁ。
高校生になって俺の知識があんまし役に立たなくなって凡人化し、高町ラブラブ大作戦とか企画してようやく仲が良くなったのだ。
それでも思う所はあるのだろう。
月村家から見れば本来は俺なんて、使用人以下の穀潰しだしな。
「ちょっと惜しいって所です。お嬢は俺という先人が居た。親に言えば参考書も買えて貰えた、勉強する事ができた。けど俺は?」
「………そうね、この辺りに年が近い年上は……貴方には居ないわね」
「そ、勉強もせずに、公式も知らずに、全くの無の状態からサラリと解いてしまったのが不味かったんですよ。世に居る数学者を纏めてコケにするようなモンですからね」
「………とても興味が出てきたわ、ソレ。特に天才だった貴方が高校の途中辺りから急に凡人に成り下がった辺りがね」
「答えは簡単。知ってたから。デジャブっていうか他人の記憶っていうか、俺は高校卒業程度の知識を最初から持ってたんです。だから高校生になったら化けの皮が剥がれた」
「ふぅん……」
「いやホントなんですって。だから話したく無かったんだよなぁ………」
「失礼ね、信じるわよ。………2%くらいは」
「低いか高いかは聞かないほうがよさそうだ」
「高いわよ?正直、他に色々考えてたけどどれも1%以下だったもの」
「あー」
ポケットからタバコを出して咥え、少しお嬢から距離をとって火を点ける。
さっき吸ってからあんまり時間が経っていないせいか、あんまり旨く感じない。
「でまぁ、その知識の中には色々よくわからん知識もあったんですよ。例えばお嬢が18の頃には既に高町の坊ちゃんと付き合っていて、家族ぐるみの付き合いがあったとかね」
「ふーん…え?ちょっと貴方今なんて」
「だから知ってたんですよ。上手くいくって。俺がデートとか告白作戦をしたのは、まぁちょっと後押しになって付き合い始めるのが数ヶ月早くなったくらいの誤差です」
「頭痛くなってきたわ。あぁもう、確かにそんな話をするなら長くなるわね……恭也にも聞かせられないの?」
「まぁお嬢から話す分にはいいんですけどね。俺から話せるのはお嬢とノエルさんだけです。ちっと歩きましょうか」
そう言って俺は歩き出す。
目的地は決まっている。
どの道、そろそろ始末をつけなければ成らない。
「ちょ、ちょっと!」
「んでまぁその知識の中にはもっと奇天烈なのがありましてね、なんでも世の中に魔法があるんですって。メラとかルーラとか使えちゃったり」
呼び止める声を無視してずんずん進む。
長くダラダラと説得してる時間も、無いのかもしれない。
最悪、話の流れによってはフェイトを殺して山に埋めに行くなんて事態になってもまるでおかしくないのだ。
どうする?
いや、どうしたい?
フェイトの戦力化?
魔法の解析?
PT事件はどこまで進んでいる?
今後の影響は?
こっちもじっくり考える時間が無かった。
フェイトを拾ってからまだ5時間も経過していないのだ。
何が起こってるのか解らない、対処の方法も解らない。
全てに備える事は出来ず、たった一つの事に備えるにも俺は余りに無力で。
「あの少女は魔法使いなんですって。で、なんか魔法使い同士でやりあって行き倒れてたのを俺が拾ったんですよ」
「カズフサ貴方………記憶操作でも受けたの?それを本気で言ってるなら、私もちょっと貴方への接し方を考えないといけなく………何……この臭い」
「何って、さっきの少女からも臭ってたでしょう?」
「でも、こんな、いや、何それ、ねぇ………幻覚使いの攻撃でも受けてるのかしら?」
たどり着いた先は俺の軽トラ。
朝日の下で見ると、ドアやら荷台やらが血まみれでホラーな事になっているのが見て取れた。
そしてこの、むせ返るような死臭。
「幻覚でも作り物でもドッキリでもない………彼女の使い魔ですってさ」
血まみれになっているシーツを引き剥がす。
液体を吸って重くなっているシーツはバサリではなく、ジュリュリと粘着質な音を立て、その下に隠していたモノを白日の下に晒す。
「ヒッ……な……」
こちらも明るい場所で見たのは初めてだが、酷い有様だった。
右前足が根元から無い、毛並みは所々黒く焼け焦げ、眼球も片方は破裂してしまっており、瞼ごと無くなって窪みになっていた。
アバラから下腹部に掛けての裂傷は深く、骨の無い下腹部からは腐った内臓が……
「マジでヤバイんですよ。こういう怪我を負うような殺し合いが、今この街でまかり通ってる」
世界、或いは補正、或いは運命、或いは……フラグ?とでも呼べばいいのだろうか。
何故俺に見せ付ける。
そんなに死にたいのなら俺の居ない所でやってくれ。
アルフの死体が俺に訴えて来ている様な錯覚を受ける。
バカな、錯覚だ。
そんな事……あるものか、あってたまるか!畜生が!
今更だ。
余りに今さら過ぎた。
何かサインがあったのだろうか。
俺はこの世界で、何かしておくべきだったんじゃないのか?
この結果は、俺が何もしないでただダラダラと生きていた事に対するツケだとしたら……
その時。
「あれ?」
その声は、今までの流れを容易に断ち切るほどに軽くその口からこぼれた。
純粋な、疑問。
「ん?」
「ねぇ……コレって」
最初は一度、大きくぐらりと。
そして、二度、三度、四度とどんどん大きく。
地面が揺れ始めた。
「おい、おいおいおいおいふっざけんじゃねぞ。オカシーだろコレはいくらなんでも……くそっお嬢!!屋敷へ!!」
「貴方は!?」
「自分ち!!あいつをほっとけねぇ!!」
揺れはどんどん大きくなる、大きくなり続けている。
思い当たるフシは1個しかない。
「そんなに死にてぇなら首でもくくれ!こっち巻き込むんじゃねぇよ!!!!」
次元震だ。