10年前によくあったオリ主がフェイトを持ち帰るお話   作:yukimichi

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05-オリ主、意識の無いフェイトさんを抱きしめる事案が発生する

世界が違えばルールが違う。

俺はただ致命的なまでに、その事に気付かなかった。

そしてきっと、今この時も。

 

 

 

「ノエルさん!」

 

「彼女を抑えて下さい!」

 

 

なんとか手術室に飛び込むと、ノエルさんが俺に叫んだ。

大地震と言って誰も否定しないクラスの地震は数分経過した現在も続いており、手術室の中も酷い有様だった。

棚やその扉は全て固定やフック付きであるため倒れて中をブチ撒けるような事にはなっていないが、治療に使っていた器具を乗せた車付きの作業台がいくつか地面に倒れ、ノエルさんは点滴を抱えて手術台になんとかしがみついている状態だった。

今投薬をやめるとフェイトは間違いなく死ぬ。

安定したってのは点滴を続けているのが前提なんだ。

それも崖っぷちにおいてあるバランス台の上で、両手を広げているだけ。

 

今も傷口からは体の維持に必要な成分が漏れ続けているだろう。

文字通り穴の開いたバケツに後から後から水を入れてごまかしているのが現状。

 

その状態で大人の腰の高さからとはいえ固い床に転げ落ちるなんて考えたくも無い。

手で押さえるような余裕も無く、俺はフェイトに覆いかぶさって手術台ごと抱きしめる。

苦しそうにしてるのは若干心が痛いが、今はそれどころじゃない。

 

そして、暗転する室内。

 

 

―――――配電システムのどっかがイカレやがった!!

 

発電所か、送電線か、変圧器か、この家の中の配線か、ブレーカーか、どうでもいい、どの道どうにもならん。

 

 

「いつまで揺れる気だ?クソ、ノエルさん。本家の屋敷は?お嬢はどうなりました?」

 

「先程ファリンと連絡が取れました。お怪我も無く保護できたようです。現在は揺れが収まるのを……ぐっ」

 

「こっちに!!なりふり構ってらんねぇでしょう!!」

 

「はいっ!!」

 

 

揺れが更に酷くなり、抱きしめるようにしていた点滴がぶんぶんと揺れる。

姿勢が維持出来なくなったノエルさんをフェイトの足ごと手術台に抱きつかせる。

俺は点滴台から点滴のパックを毟り取ると、台を蹴飛ばしてフェイトの体の保持に戻る。

心電図計?んなモンとっくに部屋の隅っこにころが……やべぇ。

フェイトの体が……さっきよりも冷たい。

もちろんこの部屋の気温には気を使ってたし、治療後の彼女には電気毛布を掛けていたが、いまはもうそんなものはどこかに行った。

薄暗い部屋じゃ見つけるのに時間がかかるだろうし、そもそもどんなモノが付着してるかわかったもんじゃない。

ただでさえここの床は水で軽く流しただけ……くそ。

 

体が小さすぎる。

クソ、もっとメシ食っとけ畜生が。

体力の無い状態での体温低下は……複数臓器の機能不全……すなわち死を容易に招く。

 

 

「ちょっと頼む!すぐ戻るから!!」

 

「カズフサ様ッ!!」

 

 

ノエルさんにパックを押し付けてフェイトの腰の辺りに移動してもらい、俺は手術台を突き飛ばすように離れてドアに向かう。

別にこの建物は収容所ってワケじゃない。

手術室にこそ窓は無いが、それ以外は特別な作りってわけじゃない。

つまり、朝の今なら最低限の光量がある。

夜じゃなかった事に感謝しつつ、そもそもこんな事態を引き起こしたどこぞのアホを呪い、つまづくように廊下を走る。

 

 

「だぁクソ、アホが!!ざけんなハゲ!!死ね!!百回位死ね!!もしくは死ね!!!」

 

 

中途半端にゆっくり移動すると揺れに翻弄される。

跳ねる様に走りドアが……開かない、蹴り開ける。

家中からミシミシと悲鳴が聞こえるが、まさか崩れやしないよな?

一階建てでホントよかった。

これがヘタに高い家だったら…………オイ。

もう10分以上たってんぞこの地震。

 

波なんてもんじゃねぇ、ずっとマックスの揺れでだ。

市街地は……考えたくもねぇ。

万単位で死人が出るなんざ………いや、そもそも5分後に地球があんのか?それすら怪しい。

 

タオルケットを数枚掴んで手術室に戻る。

 

 

「戻った!!」

 

「カズフサ様!!おか」

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴン、と。

 

 

 

 

 

 

 

明るい通路から真っ暗な手術室に目が慣れるまでのほんの一瞬。

 

何か重くて硬いものが当たる音がした。

 

続く破砕音、プラスチックや金属やガラスが砕ける音。

ノエルさんの悲鳴。

 

こちらに転がってくる金属の塊。

手術台の上にあった照明だ。

恐ろしく頑丈に出来てるはずなんだが、想定外の長時間の揺れについに耐えられなくなったようで千切れてしまったんだろう。

 

おい、こいつは何処にあった。

その下に居たのは………

 

 

「ノェルゥッ!!!!」

 

 

部屋に飛び込む。

揺れに翻弄される彼女の上半身を起こし、手術台に背中を押し付けて座り込み、ノエルさんに呼びかける。

反応が無い、新しい血の臭い、頭に重い衝撃、何だ?

 

「っつあぁぁぁああああ!!!!!」

 

 

手術台から転げ落ちてきた、フェイトだった。

 

俺の体の上を跳び越して目の前で頭から落ちかけているフェイトの肩を掴んで、無理やり手繰り寄せる。

近くに落ちていたタオルケットを掴み、そのまま2人を抱きしめる。

肩に掛けてやる余裕なんてない、ただ抱きしめるその手に持っているだけ。

 

俺に出来る事は、余りにも少なかった。

 

出来る事は、ただ足を突っ張って背中をひたすら手術台に押し付けて体を固定し、2人を抱きしめるだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁクソ、神様。

 

 

 

どうか。

 

 

どうか―――――――

 

 

 

 

 

 

どうか俺たちのこの足掻きが、無駄になりませんように。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして死ね、クソが。

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