10年前によくあったオリ主がフェイトを持ち帰るお話   作:yukimichi

7 / 11
07-もう一人の転生者、実家でベルカ式デバイスを見つけておおはしゃぎしてしまう

二つ目の名前はハルキ。

紅月ハルキが僕の新しいフルネーム。

 

両親に確認したところ、もし冬に生まれてたらフユキ、夏だったらナツキだったとのこと。

じゃあ秋は……と聞いたら笑って誤魔化された。

きっと考えてなかったんだろうなぁ。

 

 

3歳の誕生日を迎えた頃、遅まきながら紅月ハルキは思った。

 

僕んちはオカシイ、と。

 

なんていうか、都市部にあるにしてはデカイ。

日本家屋風の2階建ての自宅の裏に、なんとマンガやアニメみたいな道場があるのだ。

なんぞこれ。

婿養子の父に聞いたところ「ママの家は古い家系だから」とのこと。

言われてみれば年代物というか、全体的に古い。

廊下とか板張りだし。

っていうか畳みか板張りの二択だし。

しかも板張りでもそのままの部屋が多く、っていうか僕の部屋以外で絨毯を見たことが無い。

フローリング、という単語が脳裏によぎったけど。いやこれは板張りだよ。

 

で、道場の方だけど定期的に使っている様子。

というか護身術の教室開いてる、母が。

教え子が通り魔を返り討ちにして地方紙に載ったこともあるらしい。

その時は腰につけていたベルトを鞭のように使い、相手の顔を『ハネた』とか。

おま、鞭の先に金属(バックル)が付いたので顔面とか、鼻でも頬でも口でも目でも耳でもクリティカルヒットなんだけど。

馴れ初めを父に聞いたところ、初ボーナスを親父狩りされた所を助けてもらい、一目惚れしたとか。

父ェ……

おやじ狩りって、もう死語だぞ。

会社帰りのサラリーマンが不良に襲われてボコられて財布とられるのを昔はそう言ったんだよ…

 

 

いや……なんていうか……恋姫?っていうのが最初に抱いた感想。

ウチの一家は生まれてくる世界を間違えたんじゃないだろうか。

例えば外史の世界とか。

あれ?まさか修行フラグ?

 

 

……と最初は思ってたけど……むしろ武術?とかそういうのは教えないというか僕の生活環境は割りと普通。

道場にも入っちゃダメよって言われるくらい。

正直拍子抜けしたけどとりあえず今言えるのは、3歳のガキンチョにスパルタするような非常識な家系じゃなくてよかったって事。

イヤ、ホントに。

 

しかし、気になる。

父いわく、道場の倉庫には本物の日本刀とかがあるらしい。

なにそれ見たい。

どうせ模造刀か、本物だったとしても許可申請出てる居合い切り用とかのだとは思うけど。

それでもほら、男のロマンじゃない日本刀って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時僕は愚かにも思ってしまったんだ。

僕の住む街の名前が海鳴だって教えられてから、もしかしたらって……

両親に入るなと言われている建物、日本刀という武器がしまってある道場の倉庫。

もし、この世界に僕が生まれた事に何か意味があるのだとしたら。

きっとそこに『それ』があるんじゃないかって。

子供が抱くありきたりな空想だと頭の中では解っていても、どうせ現実はつまらない結末しか用意していないと思っていても……

 

 

 

 

 

 

こ の せ か い が こ ん な に も 

 

ぎ り ぎ り の ば ら ん す で な り た っ て い る こ と も わ す れ て ! ! !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、リーマン父は普通に仕事で不在で道場母は普通に主婦やってて夕飯の買い物に行っていた。

これはチャンス……という程でもないか。

週に3日はこうだし。

でも思い切ったが吉日だ。

 

台所の引き出しから鍵を取り出して道場の入り口を開ける。

1stミッションクリアー。

さて、問題は道場の中がどうなっているのかなんだけど。

なんせ入るの初めてだし。

サンダルを脱いで中に入ると、ひんやりしていうか、空気が張り詰めているというか、どこか神聖な……神殿?にでも入ったかのような気がした。

……のはきっと気のせいだろう。

所謂ものすごいテンプレというかステレオタイプのありがちな道場だった。

板張りの床に白塗りの壁、壁の下のほうと上のほうには木材の格子付きの木戸。

正面の壁には『心技体』の壁掛け。

 

うん、すごく………普通です。

なんというか、『ワザとらしい程普通』なのがちょっと気になるけど。

まぁアニメの世界かその類似世界?っぽいので気にしない事にする。

父がリアルに親父狩りに遭って初ボーナスをDQNに巻き上げられそうになるような世界だけど。

 

しかし、ビックリするほど何も無いな。

他に部屋っていうかドアも無いし。

確かに稽古の時は母は胴着?っぽいのに家で着替えてから道場に向かってるけど。

あぁちなみに護身術は平時でも使えるようにって理由で門下生は動きやすい私服で稽古するそうです。

 

 

……でもなぁ、外には倉庫っぽいの無かったしなぁ。

本物の日本刀があるっていうくらいだから管理しっかりしてるんだろうけど。

まさか父のガセネタだったんだろうか。

うーん……わかんないなぁ。

 

道場に居たのはまだほんの1,2分だったろうか。

見るところも特に無く、やはりガセかと帰ろうとした瞬間、カタンと何かが動く音がした。

 

「かあさん?!」

 

………帰ってくる声は無い。

風かな。

よく思い出してみよう。

音が聞こえた時に向いていた方向に顔を向けて、さてさっきの音はどの方向から聞こえてきたか。

 

たしか、左後方?

っていっても……あぁ、壁掛けがあるね。

そうだね、お約束だよねと壁掛けをペラリとめくると………はい、壁がありました。

ですよねー。

 

 

じゃあ何だろ?

確かに何かが動いた音なんだけど。

壁の向こう……外かな?

 

いや、なんだろうこの壁掛け。

何処にでもある壁賭けなんだけど、妙に気になる。

じー……っと見ていると……やっぱり何かヘンだ。

何だ?何がヘンなんだ?

ただ横に『心技体』って書いてあるだけなんだけど。

見ていると……何か……

 

腕が、指が、勝手に動く。

気付いたら文字の一部をなぞり始めていた。

 

 

 

あぁ、そうだ。

 

 

 

心の一番長い『し』の形をした部分

 

 

 

この部分だけなぜか

 

 

 

技の『支』の部分

 

 

 

まるで血液で書いたかの如く、ドス黒い瘴気を発しているではないか

 

 

 

体の本の部分の下半分、『Λ』と『|』と『-』を組み合わせた部分

 

なぞる、なぞる。

ひかれあう磁石のように。

 

 

 

ふと声が聞こえた。

掛け軸から、掛け軸そのものから。

 

 

「月の下 影のもと その同胞を討て」

 

あぁ、ようやく理解した。

 

「その同胞を討て」

 

ここは、確かに神殿だったんだ。

 

「討て」

 

そう、僕は、俺は、お前は、我は、私は…………

 

 

頭の中で知らない声が叫ぶ。

 

「討て!!!!!」

 

 

 

 

 

掛け軸が燃え上がり、赤い、赤い、血よりもあかい、くれないの、ほうせきに――――――

 

 

 

 

そして、僕は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

300年程昔、いずれ東京と呼ばれるかもしれない地にて。

 

1人の大工風の男が夜の花街をふらふらと歩いていた。

どこにでも居る男。

印象に残らない男だった。

 

男は約束を果たすためにここに居た。

男は契約を履行するためにここに居た。

男は義理を守るためにここに居た。

男は筋を通すためにここに居た。

 

 

男は矜持を捨ててここに居た。

 

 

彼の生まれはこの島国ではなく、この世界でも無かった。

今は亡きその地の名を、ベルカという。

 

彼はベルカを影から支える一族の最後の1人であった。

だがベルカはついに滅び、彼の主であり王族でもある姫と2人、この世界に落ち延びてきたのだ。

 

時の将軍は言った。

 

要らぬ。お前の異形の力などなくとも我は既にこの天津国を手中に収めている。

 

時の将軍は言った。

 

だが強き者よ、お前と同じ異形の力を持つ者がこの地に現れたらお前がそれを討て。

さすればお前の大切な女の1人くらい、いくらでも隠してくれようぞ。

 

この国には黒髪黒目の人間しか居ないが、それでも建物の奥に不自由なく人間を住まわせる事は時の将軍にとって容易いことだった。

そもそもこの国の人間ではベルカの姫を傷付ける事すらできない。

 

ならば王よ、この国の王よ。私は約束しましょう。ここに誓いましょう。

姫が笑っている限り、そして笑って死ねるならば、我だけでなく我が子、末代に至るまで。

 

 

 

 

 

この地に足を踏み入れた我が同胞から我が仇敵に至るまで、そして何も知らぬ隣人であろうとも、悉く討ち果たしてご覧に入れる。

 

 

 

 

男は約束を果たすためにここに居た。

男は契約を履行するためにここに居た。

男は義理を守るためにここに居た。

男は筋を通すためにここに居た。

 

 

男は矜持を捨ててここに居た。

 

 

あぁ匂いがする、この匂いは懐かしき、ベルカのものだろう。

 

男は歩く、ふらふらと歩く。

人ごみ中を、匂いの元に向かって、匂いの元を通り過ぎて。

 

後ろから、何かが倒れる音、悲鳴。

 

 

 

あぁ、今日も月がキレイだ。

 

姫もあの月を見ているだろうか?

 

 

 

 

ここは江戸、いずれ東京と呼ばれるかもしれない地。

 

男の名は、この地で与えられた名は、紅月 刃暮。

刃暮の音は、逸れ(ハグレ)と同じ。

異郷の地で刃を振るう者なり。

 

懐に忍ばせた短刀は、主と共に姿を変え、そして変わらず主と共にあるもの。

受け継がれてゆくもの。

 

月光

 

刃が多少伸び縮みする他は、使用者の記憶を記録しつづけるだけの――――――

 

騎士の記憶と技能の保存を目的としてベルカ末期に開発されたデバイスの、ファーストロットのうちの1振りである。




ベルカが滅んだのは江戸時代
古事記にも書いてある
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。