10年前によくあったオリ主がフェイトを持ち帰るお話   作:yukimichi

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08-オリ主、自分の事ばかりでSEKKYOUタイミングを逃す痛恨のガバ

人であるならば。

人であらざるとしても。

 

心臓の鼓動が動き続ける限り、誰もがその内に獣を持つ。

例えどれほど押さえつけられ、痛めつけられ、踏みにじられても。

 

目覚めた獣は吠える。

本能と呼ばれる獣は吠える。

 

「生きろ」と。

 

どれほど辛いことがあろうが、不幸が幸福を上回ろうが。

 

「生きろ」と。

 

ライオンの群れに囲まれた1匹のシマウマが居たとして。

たったそれだけの事で、諦めてその場に座り込むだろうか。

喉笛に噛みつかれ、引き倒され、命を断たれるその時まで。

足掻き続ける、藻掻き続ける。

例えどれだけの絶望が目の前を覆い隠そうとも。

生きようとする意志は、何よりも強く、心臓が止まるまで折れることは無い。

 

思い出したように1度、咳き込むように2度、走り出すように3度、4度、5度。

心臓は鼓動を取り戻す。

肝臓は蓄えていたエネルギーを根こそぎ吐き出し。

肉は血を食らい。

魔臓は輝きを取り戻す。

 

【(認証  パスの接続を確認)】

 

回せ、回せ、魔力を回せ。

 

【(システムをセーフモードで再起動....スタンバイ)】

 

【(オートプログラム実行 リジエネイト)】

 

 

血は流れ、あるいは止まり、固まる。

邪魔な壊れた細胞を自己消化で分解し、あらたな細胞を作り出し続ける。

 

早く、早く、もっと早く。

危機は通り過ぎ去っていない。

早く治さなければ、早く立ち上がらなければ。

 

逃げるにしても、戦うにしても。

 

彼女が目覚めるまでには、それでもやはり今しばらく時間が必要だった。

 

 

 

フェイトの体にはいたる処に薬剤を塗ったガーゼが張られ、その上から包帯が巻かれていた。

処置をしていた最中には出血が止まらず包帯を占める赤い面積が広がり続けていたが、いつからかそれはピタリと止まっている。

 

「そんな……」

 

地下室でフェイトの容態を診ていた月村家メイドのノエルは、その優秀さ故に隣で同じく様子を見ているカズフサよりもその異常を明確に察知していた。

目の前の診察台には心肺が完全停止するという、衰弱という言葉すら通り過ぎた死体同様の状態だった少女。

心臓の鼓動を取り戻せたとしても、すぐにでもまた停止してしまうはずの少女。

 

それがどうだろう。

5分も経たぬうちに出血は完全に収まり、処置を後回しにしていた小さな傷は盛り上がり再生の兆しを見せ、点滴すら先ほどの揺れでやめているというのに肌の血色まで取り戻しつつある。

 

これでは、これではまるで、そう―――

 

「まるで魔法、か」

 

何かを知っているのであろうカズフサに視線が飛ぶ。

魔法、魔法だ。まさしくこれは理の外側。

 

 

「何が起きているのでしょうか。目の前で、この街で」

 

「あるいは……あぁ」

 

カズフサは頭を振る。

崩れる様に床に座り込んでしまった。

 

何かをしなければならない。

行動しなければならない。

すぐにでも。

………………何をしろと?

 

「少しだけ、時間をください。ほんの、少し」

 

呼吸10回。

頭から何もかも追い出す、空っぽにする。

何も考えずに、大きく呼吸を10回。

数えながら、1度、2度。

意味もなく呼吸を止めたくなる。

本当に意味がない。

さぁ、10回目が終わるぞ、息を吸い込んだぞ。

吐き出した。

黄金よりも価値があるかもしれない10回。

何の意味も無いかもしれない10回。

 

自分が見て感じ取れるのはこの部屋だけ。

 

優しい世界は狭い。

 

でもその外には家があって、月村家の屋敷があって、町があって、国があって…

地球があって、宇宙があって、管理世界があって。

 

残酷な世界は広い。

 

立ち上がろう、自分に許した休憩はもう済んだはずだろう?

何をすべきかなんてわからない、覚悟とやらもわからない。

けど時計の秒針は、今この時も動いているのだから。

最後に息を大きく吸い込んで、立ち上がった。

頬を叩く。前を見ろ。

 

「状況を――やるべきことを、やりましょう」

 

「はい」

 

「お嬢は――」

 

「ご無事のようです」

 

ノエルさんは右耳を差し出して指先でトントンと叩く。

小さな無線のイヤホン、いやインカムだろうか。

 

「ですがお屋敷も辛うじて形を残しているだけのようです」

 

そりゃあそうだ。

大震災クラスでも30秒、いや15秒で都市機能が壊滅すると言われるんだ。

体感で10分近く続いたあの揺れで、倒壊していないほうがどちらかというとおかしい。

街中もほぼガレキの山だろう。

ウチは1階建ての木造平屋だからいくらかマシかなってだけで、ここが地下のコンクリートだから無事にみえるけど。

地下室のドアの先がどうなっているかもわからない。ドアの先、階段の先がガレキに埋もれていて、ここから出れないかもしれない。

 

「貴重品の持ち出し…なんてみんなやってるか。ひとまず出口を確保しましょう。こっちが助けられる側じゃやるべきもなにもない」

 

「では」

 

地上へ続く階段には光が差し込んでいた。

さて、地上が崩れていても、どかすか潜り込めればいいのだけれど。

 

ポケットに入れたままだった待機状態のバルディッシュを取り出してみる。

光の明滅すら消えて、何も反応を返さなくなったそれを、フェイトの胸の上にそっと置いた。

 

結果から言うと、俺の住いはあっさりと倒壊していた。

木造神話とはなんだったのだろうか。

ただ潰れるというよりは倒れるように壊れた事、その方向が運がよかった事により、壁1枚分のガレキをなんとか2人でどけた先には青空が待っていた。

 

こんな時でも空は青く、ただそこにある。

空も、星も、宇宙も。

ただそこにある。

誰が生きても、死んでも。

戦争が起きても、人類が死に絶えても。

そこにあり続ける。はずだった。

 

結局、あの揺れはなんだったのだろうか。

ありそうなのは覚えている限りでは、海中に眠るジュエルシードを無理やり反応させた1回と、アルハザードへの道を開くための1回と。

前者であればここまで被害が出るのとは違う気もするし、いや後者であってもここまでじゃないだろう。

まだ見ぬ車椅子のあの子は、そもそも生きているのだろうか。

 

目線を落とせば、敷地の向こうには随分と低くなった街並み、そしてお嬢と高町家 -1(なのは)。

いや、無事だとは思ってたよ。

それがどうにもおかしくて、おもわず笑ってしまった。

ところでお坊ちゃん。ヒートテックの長袖の上に半袖のYシャツって、めっちゃダサイっすね。

 

ご存知ならお聞きしたいのですが、妹さんはご無事なのでしょうか。

 

開口一番に口に出して、言えるはずもなかった。

 

 

 

「どうして」

 

子供の世界は狭い。

だから勘違いしてしまうこともある。

自分を取り巻く環境が、全て過去の「たられば」で変わったかもしれないと。

どうにもならない事はどうにもならない。

それを理解せず、「違う」と言い切れるのは、言い返せば若さなのかもしれない。

 

先に明らかにしてしまうが。

 

「どうして、こんな事になっちゃったんだろう」

 

高町なのはは、五体満足に生きていた。

 

砂浜に体育座りで座り込み、目の前には杖の形となったレイジングハートが寝かされていた。

所々ヒビが走っているが、しばらくすると勝手に治るらしい。

まるで魔法みたいだ。

そういえば魔法の杖だった。

 

魔法って、なんだったんだろう。

 

仕組みとか、原理とかそういうのじゃない。

良い事に使うとか、悪い事に使うとかじゃない。

 

私と魔法って、私にとっての魔法って、何だったんだろう。

ずっと胸の中にあった、暖かな、確かにあったそれが――――

大切なものだったはずなのに、今はそれが思い出せない。

 

 

すぐ横には、浜辺に座礁した次元航行艦アースラ。

 

彼女は、彼女たちは―――――

つい先ほど、負けてはならない戦いに、負けてしまった所だった。

 

 

どこかで、信じていた。

どこかで、思い込んでいた。

きっとそうであると。

多分そうであると。

そうであると、いいなと。

私にも、何かできることがあるって。

自分にしか、できないことが。

 

つい先日まで少女が触れる魔法は、ほとんど誰もがそうであるように、TVのアニメや絵本の中の話だった。

アニメの中では、大けがなんてしないし、例えしても血がドバドバと出たりしないし、骨も折れない。

ちょっと頬や魔法のドレスが汚れるだけで、だれも本当の怪我なんてしていなかった。

そして、頑張れば、頑張れば、頑張れば……何もかもが解決していた。

 

だから、私も。

頑張れば、なんとかなるって。

そう、思っちゃったんだ。

レイジングハートと一緒に作るバリアは頼もしくて、私は大けがなんて一度もすることはなかった。

だから――

 

夢を――そう、夢を。

キレイすぎる夢を、見てしまった。

そして、夢と現実の区別が、つかなくなってしまった。

どこかふわふわとした、絵本の中に迷い込んだような気分のまま。

そのまま「ここ」まで来てしまった。

 

膝の中に顔を埋める。

人に涙を見せたがらない性分が、そうさせていた。

 

今から目をそらし、過去に想い向ける。

意味のない事だと、どこかでわかっているけれど。

 

何処で、間違ってしまったのか。

何か取返しのつかないことをしてしまったのか。

 

ハッピーエンドへの道から、ズレてしまった場所が思いつかずにいる。

 

今ここに至っても、未だ。

思い出してみよう。

最初から、最初から。

 

きっと見つかる。

どうして、こうなったのか。

 

きっと、まだやり直せる。

きっと、きっと――――――――――

ほんの少し、目線をあげた。

 

レイジングハートの赤い宝玉が、きらりと一度、輝いた。




誤字脱字の報告、ありがとうございます。
感想もすべて読ませていただいておりますが、急に大量に来たので精神(誤字でない)が追い付かず返信ができていないことをここにお詫び申し上げます。

リリカルでは短編『リリカルデッドエンド』も公開しています。
まぁ、タイトルの通りな内容のお話です。
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