首だけ吸血鬼とてきとう少女   作:シノルア

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理由

 

「で、本当に、なんでこんなもの必要なんですか?」

 

ごそごそと興味深そうにミルが取り出したかごの中身は武器。

それも小さな短剣。切れ味はそう悪くは無さそうだが、大きさ的に戦闘には使えなさそうなもの。装飾も申し訳程度の粗悪品だ。武器と言ってよいかどうかも曖昧なレベルのそれ。ミルはそれを取り出しまじまじと見つめる。

やがて短剣を放り出し、ノアの首が置いてあるベッドの隣に無造作に置いた。

 

「ミル。貴様には――戦闘をしてもらう」

 

「……え?」

 

そしてしめしめといった様子で次の物を手に取ろうとしていたミルは、その姿勢のまま綺麗に硬直した。

 

 

◆◇

 

 

「行ってらっしゃいませー!」という元気な送り出しの挨拶を悲しげに受け取ったミルは、既に検閲を終え町を出ていた。

特に身分証すらないミルがなんの障害なく町を出れたのはノアの妙な力のお陰だ。

 

ノア曰く、所詮魔術と呼ばれる物の初歩も初歩――らしいが、正直ミルにはそういった知識はない。つまり初めてそう言うものを理解したミルが、それにいたく関心するのも当然の帰結だったのだろう。

多少の信頼と尊敬を取り戻したノアは、少し満足そうだった。まあいずれ失われる尊敬にならない無いことを祈るのみである。

 

そんな風に少し自慢気なノアを差し置いて、ミルは手を帽子がわりに呑気に額に乗せ後ろを見ていた。

 

少しだが待機の列があることをみるとそこまで貧しい町でも無さそうだ。いや、元々自分のいた村なんかとは比べるのもおこがましいくらいの差はあったか――夕暮れ時に日光浴を行うという、正直吸血鬼(ヴァンパイア)としてどこかとち狂った行動を行いながらボーっとそんな考えをしていると、手に持ったかごの中からくぐもった、しかし聞きなれた声が響いた。

 

「さて、これからだ……まずは、この街道をしばらく進め」

 

「……はい」

 

そうして、『戦闘』という言葉に無駄に緊張したミルは、有無を言わせぬノアの命令に従い淡々と道を歩き始めた。その素直な行動は、多少の敬意が戻ったのもあるが正直恐怖が大きそうである。

 

酷く強ばった動きに、今回はノアが突っ込まなかったのは優しさだろうか。

そしてそんな隠れた配慮も知らず、ミルは見栄を張ろうと「……た、楽しみです!」と威勢良く吠えていた。なんというか余りにも頼り無さげな様相に、しかしノアはチラリと後ろへ目をやった。そしてため息を着く。

 

だがそんなことすら知らずに、ガチガチに緊張したミルは壊れたロボットさながらの動作で動き始めた。

 

 

――後ろをつける影にも気づかずに。

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