エーリカ・ハルトマンのD-DAY~個人の戦闘力で戦争を終わらせる方法~   作:両生金魚

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一度筆が止まると中々進まなくてずるずる伸びていってしまうのが自分の悪い癖……なので、とりあえず書けた所を出していこうかと思いこういう形で公開となりました。
後から文章がちゃんと思いつけたら途中やら戦闘描写も補完して行こうと思いますのでどうかご容赦の程を……


カランドロ大佐の東部戦線(仮)

私は今日この日この瞬間に誓ったのだ。決して祖国にライヒとの戦端を開かせぬ事を、その為にあらゆる手段を尽くす事を。

 

――― イルドア王国軍 観戦武官 ヴィルジニオ・カランドロ大佐 回顧録より抜粋 ―――

 

 

 

 国家間に永遠の友情というものは存在しない。全ての国家間は潜在的に敵国足り得るのだ。例え、今は友情を保っていたとしても。故に我がイルドア王国としても選ばねばならない。このまま暫くの間帝国との友誼を保ち続けるか、それとも()()()()()を迎えるか。我らが友人である帝国は今の所よくやっているように思える。いやこれはあまりにも過小評価か。あまりにも()()()()()()()()()()と言うべきだ。共和国と協商連合を打ち破り(近代国家とも呼べぬおまけも居たが)、その後も連合王国と連邦と二つの国家との戦線を抱え、それでも尚押されているのではなく安定して押し返しているのだ。それも第三者の心温かい支援を受けた彼の二国相手に、だ。

 如何に強大な帝国とは言え、常識的に思えば考えられぬ善戦振りである。そこまでの強さの秘密は有るのか、それとも我が国の諜報機関でも見破れぬ欺瞞が有るのか。先日我が国が起こした()()()()への反応を見れば酷い慌て振りの様だったが……さりとてこの目で見るまでは確かめられぬ事も有る。

 よって我がイルドア王国は正確な情報得るための目として私が観戦武官として東部戦線を訪れることとなった。

 

 

【そこで見た光景は、広漠な東部戦線、少数ながらも精鋭な帝国軍に、『支援』を受けた膨大な連邦軍。だが、そんな数をあざ笑うかのようにサラマンダー戦闘団は、そして何より三人の少女はあらゆる戦力を薙ぎ払う。軍団・旅団・師団すらも、敵では無く、むしろ死体の片付けや鹵獲品の接収などの方が苦労しているのでは?という有様だった。連邦軍の死体はやせ細っており、そしてなんと一人一丁の銃すら持っていない場合すら有ったのだ】

 

 

 

「しかし、本来ならば中佐達はこんな所ではなく学び舎で同学年の友人達と青春を過ごしているのだろうに」

 

 戦場での苛烈な姿や部下の前で見せる規律の正しさと、勤務時間外での少女たちの交流は、あまりにも落差が有り。故に、カランドロ大佐はこの様な事を()()()()()()()

 

「……大佐殿は、『カルネアデスの板』と言う問題をご存知でしょうか」

 

「多少だが。確か自分が助かるために小さな板切れに他の男を掴まらせないようにし、結果的に相手を水死させてしまったという……」

 

「ええ、その通りです」

 

 わずかに首肯し、エーリカは持っているカップに目を落とす。深いオレンジ色の水面に彼女の目が映るが、何故だかカランドロ大佐には彼女の目が酷く濁っているように思えてならなかった。穏やかな空気が、いつの間にか重苦しく……そして恐ろしい物に変わってしまったかのように錯覚する。

 

「私も、ターニャも、ハンナも……ただ生き延びたかっただけなのですよ」

 

「それは……」

 

 およそ少女……いや幼女とすら呼べるような年齢の子供が発するとは思えない言葉。相手の見た目と態度から油断してしまったのか、触れてはいけない領域に踏み込んでしまった愚を悟るが、時は既に遅かった。

 

「私も、ターニャも育ちは孤児院です。神の下で、日々それは慎ましやかな暮らしを営んでいました。……しかし、私達には幸か不幸か魔導師としての才能が有り、不安定な情勢では徴兵される事はほぼ確定的でした。ヴィクトーリヤ中尉の様に」

 

 帝国軍の台所事情は伝え聞いていた。魔導師としての才能があるものは若年でも男女問わず徴兵され、また徴兵範囲も次々と広まっていると。

 

「せめて徴兵されるならば、予め学んでおいた方が生き延びる確率は高い。そう思いました」

 

 とても少女とは思えない、冷徹な思考と判断力。でなければこの歳でエースにはなれないのだろうと内心で納得しつつも、話に聞き入る。この話を聞き逃してはいけないと観戦武官としての理性と本能が叫んでいた。

 

「そして軍人として、魔導師として出来得る限りの知識と技術を詰め込まれた私達は、ラインの空へと放り出されました」

 

 ライン戦線は地獄だ。月並みな言葉だが、イルドアの他の観戦武官が呟いた言葉だ。ありとあらゆる口径の砲、銃弾、そして魔導が飛び交う地獄。塹壕の中と外ですり減らされ続ける命。常に隣り合わせの死。劣悪な環境、乏しい食事。【地獄】。これ以上の表現は無いだろう。そんな地獄に、目の前の少女は放り込まれたのだ。

 

「魔導師の砲撃の観測は、主な使い道の一つです。空からの観測は地上のそれよりも正確で、それ故によく狙われます」

 

 これも、観戦武官達からの報告の通りだ。それがあまりに有効で有るが故に――

 

「初めてラインの空から見た光景は、まるで世界の総てが敵になったかの様でした」

 

 魔導師ではない自分にはおよそ知ることが出来ないであろう、しかしどれだけ過酷かは筆舌に尽くしがたいであろう場所であることは容易に想像がつく。そんな場所にだ、もし少女が放り込まれたとしたら。

 

「向かってくる多数の敵魔導師。そしてHQから届く、『増援は出せない』との言葉。あの時、私は総てを悟ったのです」

 

 聞きたくないと心が悲鳴を上げる。目の前の、最も新しい伝説、最も新しい英雄のその胸の内を知るのがこれ程までに恐ろしいものだったとは。

 

「そう。敵は総て殲滅せねば、私達に平穏は訪れないのだと」

 

 あどけない微笑みと共に紡がれた言葉に、得心が行く。彼女たち三姉妹の挙げた膨大な戦果の数々。敵の士気も勇気も継戦能力も全てをへし折る様な苛烈な破壊のその根源を。

 

「それ、は……」

 

 一文明人として、幾らでも否定の言葉を出したい。しかし、これまでの帝国(ライヒ)に対する他の国々の反応により、それを否定する言葉を何一つ浮かべられない。この戦争は、全て他の国々が帝国を恐れ戦争を仕掛けたのだから。そして中立を嘯き利益を貪る第三国の国々。それは、少女を絶望させるにどれ程の不足が有ろうか?

 

「私もかつて大佐の祖国に訪れた事が有ります。そこでの暮らしはまるで別世界の様でした。色と笑顔に満ち溢れた町並み、豊富な物資に、とても美味しい料理やお菓子の数々。イルドアの食事はそれはもう、軍の支給品とは比べ物にならない味でした」

 

「そ、そうですか。気に入って頂けた様ならなによりです」

 

「ええ、とても。是非、私もああいった暮らしをしてみたいです。美味しいご飯を食べて、銃ではなくお人形を取り、上司や部下や同僚でなく、お友達と遊べる暮らしを」

 

 真っ直ぐ向けられる憧憬。当たり前を知らない少女の、焦がれる想い。それなのに、自らの胸には哀れみよりも先に恐ろしさが湧き上がる。

 

「だから、そんな暮らしをする為にも……連邦であろうと、連合王国であろうと、例え合衆国であろうとも――敵は総て、消し去ろうと誓っているのです」

 

 そう微笑みかけてくる少女の、裏の声がはっきりと聞こえる。もし、我が祖国も敵に回ったのなら……一切の容赦も無く、殲滅するのだと。そして、それがハッタリと思える訳が無い。目の前のエーリカ中佐やハンナ中佐が空を舞うだけで航空機も・戦車も・野砲も、そして何より歩兵や魔導師も根こそぎ吹き飛ばされるのだ。あの膨大な量のレンドリース(他国の親切)与えられた物資は、軒並み鉄屑になるか鹵獲されて帝国に再利用されるか、だ。前線で見る連邦兵の平均年齢も、徐々にだが下がっている。

 もし、イルドアが帝国へと戦争を仕掛ければ……あの光景は、間違いなく我が軍でも再現がされる。そうなれば、最悪南部と北部が割れるかもしれない。未回収のイルドアどころか、イルドア自体が四分五裂になりかねない。

 

「あ、ああ……。中佐、ありがとう。よく分かったよ」

 

 もし、敵に回れば慈悲など期待できない。なればこそ、私の役目は唯一つ。絶対に帝国との戦端を開かせない事。自分には、イルドアが帝国軍に勝利する光景が――帝国が、他の国々に負ける光景が全く想像が出来なかったのだ。

 まずは、未回収のイルドアを諦めさせる事。その難事に頭が痛くなりそうだが、目の前の少女に比べれば遥かに楽な仕事ではないかと、ふとそう思った。




エーリカ「まあこれだけ言っておけば納得してくれるよね?(テヘッ)」

という訳で、この後終戦まで慢性的な胃痛に悩まされることになったカランドロ大佐のお話でありました。この後国に戻った大佐は何が何でも戦争を阻止しようと大立ち回りをする事になります。あんまり強硬的な事言う奴には一度サラマンダー戦闘団で見学して貰うと皆180度意見を翻してくれるようになります。流石に何度も訪れられると流石に面倒なので、何回か後には撮影者エーリカによるルーデル独演会のフィルムを送りつけられる事になりました。

ちなみに史実米帝様がソ連に送ったレンドリースは

航空機 14,795
戦車 7,056
ジープ 51,503
トラック 375,883
オートバイ 35,170
トラクター 8,071
銃 8,218
機関銃 131,633
爆発物 345,735 トン
建物設備 10,910,000 ドル
鉄道貨車 11,155
機関車 1,981
輸送船 90
対潜艦 105
魚雷艇 197
舶用エンジン 7,784
食糧 4,478,000 トン
機械と装備品 1,078,965,000 ドル
非鉄金属 802,000 トン
石油製品 2,670,000 トン
化学物質 842,000 トン
綿 106,893,000 トン
皮革 49,860 トン
タイヤ 3,786,000
軍靴 15,417,001 足
という頭のおかしい量なのですが、勿論この世界だと全部無駄になった上に連邦がボロッボロなので取り立てすらロクに出来ない有様です。

そして他の短編ネタなのですが……他の戦線の話より、戦後の【三姉妹ショック】と呼ばれた各国の狂乱の話ってネタの方がたくさん溢れてくるのですが……需要有りますかね?

見てみたい話の傾向としては

  • ライン戦線での伝説の始まり
  • 東部戦線での死神部隊
  • 戦後、【三姉妹ショック】の狂乱
  • 後方やら政治家達やらの戦争の裏側
  • サラマンダー戦闘団や203部隊のあれこれ
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