無人島を去る前に、少しだけ今日までの暮らしを振り返った。
永い永い夢を見ていた気がする。微睡を引きずりながら私が目が醒めた。
こいしは隣で眠っている。昨日の事が頭に蘇る。今思い出しても恥ずかしい。
今のままではこいしと顔を合わせられない。顔を洗って来よう。
朝露が宝石の様に輝いている。眩しくて思わず細目になる。
川で顔を洗って、水を少し飲んだ。今日でこの生活も終わるんだ。
長いようで短かった。沢山の事があった。
「お姉ちゃん…」
こいしがやって来た。私と同じで顔を洗いに来たようだ。考える事まで同じとは、やっぱり姉妹だ。ふふ。
「昨日凄かったね、私驚いたよ」
「や、やめてよ!」
私はこいしの背中を思い切り叩いた。彼女は痛がりながらも笑う。
すっかり目が覚めたのでこいしは鳥肉を、私は山菜を採って朝食の支度にかかる。お腹一杯食べると、後片付けをする。私達が去った後は元来たようになるだろうから意味はないのだろうが、まあ気持ちの問題だ。
一緒に拠点を眺める。
「…もうここへは帰って来れないんだね」
ここは外界。紫に頼めば来れるかもしれないが、安易に来ていい場所じゃない。おそらくもう来る事はないだろう。私は頷いた。
「もうちょっとだけ、ここにいる?」
私が連絡しなければ彼女らは来ない。ゆっくりする時間はあった。
「ううん、もういいの。色んな事あったけど…きっと忘れない。思い出の中に大切に仕舞うから」
「そっか」
私達は手をつないで浜辺に向かう。この辺り、雑草を抜いたり蔦を切ったりした。ここに来て初めの頃は水源を探したり食料になりそうな物を確保するのに必死だった。遭難したのがこの島で良かった。
浜辺に出ると、少しだけ散歩する。地下貯蔵庫の酒、瓶に少し入れた。家に帰ったら飲みたい。雨の日に中に泥水が流れ込んだ利してどうなるかと思ったが、酒樽は脚に支えられ無事で良かった。
やがて小さな漁船の前についた。
私の手を握るこいしの手が少しだけきつくなった。
私は携帯を取り出す。
「それじゃ、連絡するね」
「…うん」
八雲紫に電話する。もう準備はできてた様ですぐに出る。
話を済ませた。この漁船は印象に残っていたらしく、そう経たずに来るらしい。
こいしは私の腕を握る手を解いた。
お互い紫が来るまで一言も話さないでいた。
幻想郷に戻ると、こいしのサードアイが開いている事や無人島での生活など様々な事を聞かれた。しばらくは質問に応じていたが、私と違ってフットワークの軽い彼女は手短に紫にお礼を言うとさっさとどこかへ逃げた。
射命丸からのショットガン質問を何とか済ませると、疲れて自宅へ向かう。
地霊殿、どうなってるかなぁ…。
そう思ってると、急に起床ラッパが聞こえてきた。どこから?
…私の袖からだ。
この着信ランプはアラーム。こんな時間に起床する予定はなかった。
こいしに間違いない。取材を受けてる間に何かしたのだ。
ロック画面に未送信のメールが挟んである。それを開いてみた。
『私の携帯、返さなくて大丈夫?』
…あ、そうだった…。私の携帯は水没して壊れている。
これはこいしの携帯電話だった。
というか、分かっていながらわざわざこれを仕掛けて私に返したのか!!
「もう、こいし!!!」
私はこいしの飛んだ方向に向かって行った。
妹は今日も平常運転である。
…完
最終回は短くなりましたが、文字数だけ増やして冗長になるのもいかがなものかと思いカットしました。
なお、後日談の執筆を予定してますのでよろしければそちらまでお付き合いいただけたら嬉しく思います。
また機会があればお会いしましょう。ご愛読ありがとうございました。