ヘパイスに転生してTSアフロディと仲良くなった   作:あっかーまん

22 / 25
よかったらみてやってください


準決勝

U-12全日本サッカー選手権準決勝、天ノ使FCは「星辰エアリアルSC」と対戦することになった。

 

空中戦術を駆使する強豪チームだが、その中でも注目されるのはエースプレイヤー 経流背 有珠(へるせ ありす)4年生でありながら、チームの戦術の中心に立つ彼のプレーは、天ノ使FCの選手たちにとって未知の脅威だった。

 

試合前、星辰エアリアルSCの映像を見た天ノ使FCの選手たちは、経流背 有珠の巧みなプレースタイルに目を奪われていた。

 

「相手のエースって、これ4年生なんだよね?小さいけど、動きがえぐいな…」

箕田が感嘆とともに呟く。映像には、ゴール前で華麗にジャンプし、頭上を超えるディフェンスを振り切る経流背の姿が映し出されていた。

 

「空中戦…青蓮、アンタがしっかりしないと崩れるわよ」

戒が冷静に指摘する。

 

「大丈夫、俺が必ず止めるよ」

青蓮は静かな声で答えた。

 

「でも、空中だけじゃないみたいだね〜。足元もかなり巧みだし、視野も広い」

愛音がパスの流れをじっと見つめながら言うと、炎が頷く。

 

「奴は、ただボールを運ぶだけじゃなくて、攻撃の基点を作り続けてる。それをどう抑えるかが鍵だな」

 

そのとき、監督が口を開いた。

「そうだ。ただし注意しろ。星辰エアリアルSCは空中戦にこだわりすぎない柔軟性を持っている。そして経流背くんは、勝負どころで『覚醒』するタイプの選手だ」

 

「覚醒?」

識野が尋ねると、監督は静かに頷いた。

「彼が試合中にさらなる力を引き出してきたとき、その本当の実力が見えるはずだ」

 

選手たちは一瞬緊張感に包まれるが、カオルがチーム全体を見回して微笑んだ。

「どんなに強い相手でも、僕たちは自分たちのサッカーをするだけだよね」

 

その言葉に、天ノ使FCの選手たちは頷き、気合いを入れ直した。

 

 

 

 

ーーー

 

試合開始直前、ピッチに整列した天ノ使FCと星辰エアリアルSCの選手たちは互いに視線を交わした。

 

その中で、経流背 有珠は真っ直ぐに天ノ使FCのキャプテン、波久奴 カオルを見据えていた。

 

(絶対に勝つ。この試合で俺の力を証明する…)

 

経流背の青い瞳には強い意志が宿っていた。彼の視線に気づいたカオルが軽く頷くと、経流背は少しだけ口角を上げた。

 

「よろしくお願いします」

握手を交わすとき、経流背は静かに言葉を添えた。

 

「…必ず、勝ちますよ」

 

 

試合開始のホイッスルが鳴ると、天ノ使FCは序盤から猛攻を仕掛けた。愛音が中盤で華麗なターンを見せ、素早くパスを散らして攻撃の起点を作る。

 

「箕田、いって!」

愛音のパスを受けた箕田が前線に駆け上がる。

 

「クリムゾンブル!」

箕田の力強いボレーシュートがゴールを突き破らんばかりの勢いで飛び、相手GKは反応する暇もなくネットが揺れた。

 

「いよっしゃぁ!」

箕田の雄叫びがスタジアムに響き渡り、天ノ使FCが開始5分で先制点を挙げる。

 

「まだ序盤よ、油断しない!」

戒が冷静に声を張り上げ、選手たちの士気を高める。

 

 

星辰エアリアルSCはすぐに反撃に出た。経流背が中盤でボールを受けると、軽やかなステップで木舞をかわし、味方の前線へとスルーパスを通す。

 

「くっ、速い…!」

木舞はその正確なパスと動きに驚きを隠せなかった。

 

「まだまだだ。俺に勝てるなら、挑んでみろ!」

経流背は挑発的な言葉を残し、再び前線へ駆け上がる。

 

その言葉に火をつけられた木舞は、拳を握りしめた。

(4年生だからってなめるなよ。絶対に追いついてみせる!)

 

 

 

前半10分、星辰エアリアルSCの猛攻が天ノ使FCのゴールに迫る。経流背が左サイドからクロスを上げると、相手FWがヘディングで合わせようとする。

 

戒の力強いパンチングがゴールを守り、ボールは大きくクリアされた。

 

「甘いわ!!」

 

「ナイスセーブ、戒!」

カオルが声をかけると、戒はクールに頷いた。

 

「当たり前でしょ。これが私の仕事よ!」

 

 

星辰エアリアルSCの攻撃を凌ぎ切った天ノ使FCは、再び攻勢に出る。愛音が中盤でボールをキープし、相手DFを引きつけたところで、絶妙なタイミングでカオルにパスを通す。

 

「行くよ!」

カオルはボールを巧みにコントロールしながらゴール前へ進む。そして、一瞬の隙を見逃さずに右足を振り抜いた。

 

「ディバインアロー!」

ボールは何度も蹴りを浴び、まっすぐの軌道を描き、ゴールネットを揺らした。

 

「よし!」

カオルは拳を握りしめ、仲間たちと喜びを分かち合う。スコアは2-0となり、天ノ使FCがリードを広げた。

 

 

天ノ使FCにリードを許した星辰エアリアルSC。

しかし、経流背は諦めていなかった。

 

(こんなところで負けるわけにはいかない…)

 

彼の脳裏には、自分を信じてくれる監督や仲間たちの顔が浮かぶ。経流背はチームの中で最年少でありながら、その才能を認められ、戦術の中核を担ってきた。

 

しかし、それは同時に大きなプレッシャーでもあった。

 

「有珠、落ち着け。焦るな」

同じく星辰エアリアルSCのキャプテンが声をかけるが、背有珠は首を振った。

 

「俺が…絶対に取り返します。次のゴールは俺たちのものです!」

 

彼の瞳には勝利への渇望が浮かんでいた。そして、その決意が彼のプレーをさらに鋭くしていく。

 

 

その後も経流背は天ノ使FCの守備陣を翻弄し続けた。しかし、木舞は彼に食らいつき続けた。

 

「絶対に通さない!」

木舞は果敢にタックルを仕掛けるが、経流背はその都度軽やかにかわしていく。

 

「その程度じゃあ、俺は止められない!」

経流背の軽口に、木舞は悔しそうに歯を食いしばる。

 

(くそ…でも、俺だって…!)

 

 

試合はその後も星辰エアリアルSCの攻撃が続いたが、炎の堅実な守備や青蓮の鋭いカバーリングが光り、追加点を許さなかった。

 

そして前半終了のホイッスルが鳴ると、スコアは2-0のまま天ノ使FCがリードしていた。

 

「あと1点でも取れれば、楽になるんだけどなぁ」

箕田が息を整えながら呟くと、愛音が肩をすくめた。

 

「それより、相手のエースがさらに本気出してきそうな気がするけど?」

 

「確かに、あいつ…まだ何か隠してそうだ」

カオルも同意しながら、経流背の背中を見つめた。

 

ピッチを出る際、経流背がカオルに一瞬視線を送った。その瞳には焦りと悔しさ、そしてそれを乗り越えようとする意志が宿っていた。

 

「このまま終わらせるつもりはありませんからね…」

経流背の小さな独り言は、誰にも届くことなく消えていった。

 

後半、さらなる激闘が待ち受けているのは明らかだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

後半開始のホイッスルが鳴った。

 

ピッチに立つ俺の耳には、観客の歓声と心臓の鼓動が混ざり合って響いていた。2-0というリードは頼もしいけど、正直言って油断できない。相手の本当の実力がまだ出し切れていないってことは、前半の動きで感じてたからだ。

 

経流背 有珠(へるせ ありす)。

 

奴はまだ、何か隠している。それが何かは分からない。でも、きっと後半で牙を剥く。俺の感覚がそう告げていた。

 

(このまま勝ち切れるほど甘い相手じゃない…)

俺は気を引き締め直し、ゴール前で守備に集中する。この試合、絶対に負けられない。

 

 

 

後半が始まると同時に、星辰エアリアルSCの動きが一変した。経流背を中心に、より速く、より緻密な連携を見せてくる。まるで彼らのギアが一段上がったようだった。

 

「来るぞ!」

戒 カオルの声が鋭く響く。経流背がボールを持った瞬間、チーム全体が彼を軸に動き出した。

 

前半で見せていたトリッキーな動きが、さらに洗練されている。

 

「覚悟してください!」

経流背が宣言するように叫びながら、木舞を軽やかにかわして前線に駆け上がる。

 

「木舞、戻れ!」

俺が叫んだが、木舞は悔しそうに拳を握り、経流背の背中を追うしかなかった。

 

「くそ…速いだけじゃない、判断が的確だ!」

 

経流背は迷いのないプレーで次々と天ノ使FCの守備陣を抜いていく。

 

(ここで止める!)

俺は彼に向かって体を寄せた。絶対に抜かせないという気迫で間合いを詰める。だが、経流背はほんの一瞬でスピードを緩めたかと思うと、タイミングを外して方向を変えた。

 

「天空の刃!」

彼のシュートが低い弾道を描きながらゴール右隅を狙う。

 

「チェイン・オブ・ヘブン!」

戒はボールの軌道を完全に読み切ることはできず、弾かれたボールはそのままゴールネットを突き刺した。

 

「くそっ…!」

 

観客席から大きな歓声が沸き上がる中、経流背は静かに拳を握り締めた。

 

「これで終わりじゃありませんよ!」

彼の目には、勝利への執念が燃え上がっていた。

 

 

「まだ1点リードだ、焦るな!」

カオルが声を張り上げ、俺たちを鼓舞する。

 

けど、相手の勢いは止まらない。経流背のプレーが星辰エアリアルSC全体を牽引していて、彼らの攻撃は加速していくばかりだ。

 

「炎くん、次は俺が止める!絶対に通さない!」

木舞が隣で歯を食いしばりながら言った。

 

木舞は経流背と同じ4年生だ。そのせいか、木舞はいつも以上にプレーに気合いが入っているように見えた。

 

だけど、その気負いが空回りしているのも分かる。

 

「木舞、深追いするな。冷静に動け!」

俺が注意するが、木舞は首を横に振る。

 

「俺だってあいつに負けたくないんだ!」

その言葉に、俺は何も言い返せなかった。木舞の気持ちは痛いほど分かる。自分よりも同じ学年の相手が活躍しているのを見るのは悔しい。

 

そして、それが経流背のような実力者なら、なおさらだ。

 

だが気合いだけでは物事が好転しないのもわかっていた。

 

 

 

後半15分、俺たちの守備は徐々に崩れ始めた。経流背を中心とした攻撃の波に、俺たちは押し込まれていく。

 

「天空の刃!」

またしても経流背のシュートが放たれる。

 

「チェイン・オブ・ヘブン!」

戒が声を上げ、今度は完全に軌道を読み、チェイン・オブ・ヘブンで威力を殺しパンチングでボールを弾いた。

 

「ナイスセーブ!」

俺たちは声を上げるが、相手はすぐにリバウンドに反応してボールを拾い、再び攻撃を仕掛けてきた。

 

「くそ、何でこんなに速いんだ…!」

箕田が悔しそうに吐き捨てる。

 

俺たちは必死に食い下がるが、ついに経流背の正確なクロスから味方FWのヘディングシュートが決まり、2-2の同点に追いつかれた。

 

 

 

同点ゴールが決まった瞬間、経流背の目にはさらなる炎が灯っているように見えた。

 

「俺たちは、まだ終わらないぞ!」

そう叫ぶ彼の姿には、自信と情熱が満ち溢れていた。

 

(さすがに強いな、簡単には勝たせてくれないか…!)

 

俺は拳を握り締め、再び守備の体勢を整える。ここからが本当の勝負だと感じていた。

 

試合は完全にヒートアップし、経流背の動きはますますキレを増していく。さらに、彼の味方も彼のプレーに触発され、次々と全力を出してきた。

 

(けど、俺たちだって負けられない!)

 

俺は燃えるような感情を胸に、次のプレーに備える。

試合はまだ終わらない。次の一瞬が、運命を決める――そう思いながら、俺はフィールドを見据えた。

 

(ここからは俺たちのターンだ!)

 

 

試合は熱を帯び、星辰エアリアルSCの経流背有珠が見せる覚醒したプレーに、天ノ使FCの全員が真っ向からぶつかっていく。

 

逆転への道は険しいが、俺たちにはまだ力が残っている――そして、その力を信じて戦う時が来た。

 

そしてサッカーはやはりこんなにも楽しいのだと実感した。




作者はアレスの天秤をまったくもって知りません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。