ヘパイスに転生してTSアフロディと仲良くなった 作:あっかーまん
後半20分。スコアは2-2。星辰エアリアルSCの猛攻によって追いつかれた俺たち天ノ使FCは、試合の行方がわからなくなるほどのプレッシャーに晒されていた。
経流背 有珠(へるせ ありす)のプレーは、まるで翼を持つ伝説の英雄そのものだった。全てを見通しているかのような視野と正確なパス、そして鋭く切り込む突破力。星辰エアリアルSCの選手たちも彼を信じて一丸となり、さらに攻撃の勢いを増している。
「炎、木舞!もっと集中しろ!」
戒の声が響く。俺も木舞も、必死で経流背を止めようとしていたが、奴の動きは予測不能だった。
「くそっ…なんなんだ、あいつのプレーは!」
木舞が悔しそうに歯を食いしばる。
俺は木舞の横顔を見ながら、自分自身も焦りを感じていることを認めざるを得なかった。俺たちは確かに強くなっている。だけど、経流背のプレーを前にして、俺たちの力が届いていない気がした。
(こんな時、照美ならどうしたんだろう…)
照美の姿が脳裏をよぎる。彼女と一緒にサッカーをしていた頃、俺は何度も壁にぶつかり、何度も助けられた。けれど、彼女はいつも俺にこう言ったんだ。
「炎君、君は君らしくプレーすればいい。サッカーはもっと自由で楽しいものだろ?」
俺はその言葉を思い出し、目の前のピッチに視線を戻した。
(そうだ、サッカーは楽しいんだ。勝つために必死になるのも大事だけど、それ以上に俺たちが好きなサッカーをすることが大事なんだ…!)
拳を握りしめた俺の中で、何かが弾けた。
「木舞、俺たちで経流背を止めるぞ!」
「え?」
木舞は驚いた顔をしたが、俺の言葉にすぐ頷いた。
「…分かった。絶対に止めてみせる!」
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星辰エアリアルSCの猛攻は続いていた。経流背は相変わらず軽やかにボールを運び、俺たちのディフェンスラインを何度も切り裂こうとする。
「ここだ!」
木舞が経流背に正面から突っ込んでいく。その姿には、もう迷いはなかった。
経流背は巧みなフェイントで木舞をかわそうとするが――
「ボルケイノカット!」
木舞の足元に炎を纏うようなエネルギーが広がり、相手の進路を塞ぐ。まるで燃え上がる壁がそこに立ちはだかるようだった。
「なんだと…!」
経流背が驚き、バランスを崩す。その瞬間、木舞がボールを奪い取った。
「よっしゃ、ナイスだ木舞!」
俺は木舞に声をかけ、すぐにボールを受け取った。
「炎くん、頼む!」
木舞の信頼がこもった声が背中を押す。
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俺はボールを持って一気に前線へ駆け上がる。星辰エアリアルSCの選手たちが追ってくるのがわかるが、俺は振り返らない。
(今の俺には、みんながいる。カオルも、戒も、木舞も、みんなが力を貸してくれてるんだ。なら俺がやらなきゃいけないのは――)
全身の力を込めて、俺は右足を振り抜いた。
「トライデントアロー!」
ボールが鋭い三つの軌道を描き、相手GKの動きを完全に封じる。そのままゴールネットに突き刺さった。
「ゴール!」
観客席が歓声に包まれる中、俺は拳を握りしめた。
「よっしゃあ!」
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3-2と再びリードを奪った俺たちだったが、星辰エアリアルSCは最後の力を振り絞って攻め込んでくる。
「まだだ…まだ終わらないぞ!」
経流背の叫びが響く。
しかし、俺たちも全員が一丸となってボールを守り抜いた。木舞が経流背の突破を再び「ボルケイノカット」で封じ、青蓮が跳躍力でクロスを弾き返す。
「ここから繋げ!」
カオルが叫び、愛音がボールを拾う。
「いくよ!」
愛音の正確なパスが箕田に渡り、箕田が力強く駆け上がる。
「最後は…カオルに任せる!」
箕田がカオルにボールを託すと、カオルはゴール前で冷静にボールを捉えた。
「これで決める!」
「ディバインアロー!」
カオルの放ったシュートがゴールネットを揺らし、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
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試合終了のホイッスルが鳴り響いた瞬間、俺たちはその場に崩れ落ちた。足がガクガクと震え、もう立っていることすらできないほど全力を尽くした。芝生の感触が妙に冷たく心地よく感じられ、俺はそのまま仰向けに倒れ込んだ。
「…勝ったのか?」
空を見上げながら、俺は誰にともなく呟いた。青空が視界に広がる中、心臓の鼓動がまだ耳の奥で響いている。
「そうよ、炎」
戒の声が耳に届く。ふと顔を横に向けると、戒も同じように座り込んでいて、珍しく微笑んでいた。普段は厳しい表情が多い戒のその表情に、思わず俺も笑みをこぼした。
「やったな…」
俺はかすれた声で呟き、目を閉じた。達成感と疲労感が全身を包み込み、体中がずっしりと重い。それでも、胸の奥にあるこの熱い高揚感が俺を満たしていた。
近くでは箕田が大の字になって倒れ込みながら叫んでいる。
「おっしゃああ!俺たち、やったぞ!!」
「うるさいわよ、箕田…アンタまだ体力、まだ残ってるんじゃないの?」
戒が呆れた声を出すが、その口調にはどこか柔らかさがあった。
少し離れたところでは、木舞が息を切らしながら芝生に手をついていた。汗で濡れた前髪を払いながら、静かに呟く。
「俺も…ちゃんと止められたんだな…」
「お前、最高だったよ、木舞!」
青蓮が少し離れた場所から笑顔で声をかける。その言葉に、木舞は照れたように小さく頷いた。
俺たちは全員、地面に横たわるか座り込むかして動けない状態だった。試合の間、最後の力まで振り絞り、燃え尽きるほどに戦い抜いた。
「カオルもさすがだったな…ディバインアロー、最高だったぜ」
俺が横目でカオルに声をかけると、彼は少しだけ顔を赤らめた。
「僕だけじゃないよ。みんなが繋いでくれたからこそのゴールだ」
そう言いながら、カオルは穏やかな笑顔を見せた。その笑顔を見て、俺は改めて思う。
このチームでプレーできることが、どれだけ幸せなことなのか。
「…それにしても、本当に疲れたな」
射矢須が芝生に寝転びながらぽつりと漏らす。
「わかる。もう動けないよ〜」
愛音が苦笑いしながら隣で横たわっている。
識野も腕枕をしながら呟いた。
「まあ、こうやって倒れるほど全力でやったんだから、満足じゃない?」
その言葉に、俺たちはみんな微かに笑った。倒れるほどに戦ったからこそ、この勝利は特別だった。
ふと、視界の端で星辰エアリアルSCの選手たちが肩を寄せ合いながら立ち上がるのが見えた。その中心には経流背 有珠がいる。
彼もまた、全力を尽くした疲労が顔に滲んでいるが、その瞳には確かに次を見据えた光が宿っていた。
「炎、次は決勝よ。ここで倒れてる場合じゃないわ」
戒がそう言って、手を差し伸べてきた。俺は少し笑いながらその手を掴む。
「そうだな。決勝も…絶対に勝つ」
一歩ずつ、俺たちは未来へ進んでいく。燃え尽きた体の奥に、次への意欲がじわじわと沸き上がっていた。
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試合後、フィールドの熱気が冷めていく中、木舞はピッチ中央に立つ経流背に歩み寄った。彼もまた、試合の疲労が見えるものの、その青い瞳にはまだ強い意志の光が宿っている。
「いい試合だったな、経流背くん。正直、君のプレーは手強かったよ」
木舞が少しだけ息を切らしながら言うと、経流背は小さく笑った。
「君もね。あの最後のブロック、正直驚いたよ。あれがなかったら、俺たちが勝ってたかもしれない」
そう言いながらも、悔しそうな表情を見せる経流背。その顔を見た木舞は少し気圧されるような気持ちになったが、それ以上に心が熱くなるのを感じた。
「またやろう、経流背くん。次は俺、もっと強くなってくるからさ」
木舞のその言葉に、経流背はピタリと目を合わせた。
「…俺もだ。次は負けない。絶対にな」
その声には、自分を信じる強い決意と、木舞への敬意が込められていた。
木舞はその言葉を聞いて、自然と笑みがこぼれた。普段はあまり感情を表に出さない経流背が、ここまでまっすぐに感情を見せることに驚きつつも、どこか誇らしく思えたからだ。
「なら、楽しみにしてるよ。そのときは、今以上に熱い試合をしようね」
木舞が右手を差し出すと、経流背は一瞬ためらったものの、すぐにその手を力強く握り返した。
「もちろんさ。俺も全力で挑む。負けたままで終わるつもりなんてないからな」
青い瞳が静かに燃えるような輝きを放ち、木舞の心にも再び火が灯った。
二人の手が離れると、経流背は少しだけ微笑み、背を向けて歩き出した。その後ろ姿を見つめながら、木舞は拳を強く握りしめた。
(経流背、有珠…絶対にまた会うからな。そして次は、もっとお前を追い詰めてやる)
それは、ただの対戦相手ではなく、互いを高め合うライバルとしての宣言だった。経流背もまた、木舞との再戦を胸に刻みながら去っていった。
こうして、天ノ使FCの木舞と星辰エアリアルSCの経流背は、新たなライバルとしての一歩を踏み出した。
ありがとうございました!