ヘパイスに転生してTSアフロディと仲良くなった 作:あっかーまん
「来月から韓国に留学する事になったんだ」
たった一言で目の前が真っ白になるとはこの事だったのか。
この世界に生まれて9年と少し、親に捨てられ、怪我もしたが乗り越えて行けたのは叔父さんやアフロディが側にいたからだ。
「でも大丈夫!ずっと向こうに住むわけではないし、パパの仕事が順調に進めば年内には帰ってこれるからさ」
そんな俺を気遣ってから話を補足してくれるアフロディ、どうやら俺の顔色はそんなに良くなかったらしい。
「ずいぶん急じゃないか?」
心配させたくはないから取り繕うように質問する、それにしても来月には引っ越しってことはかなり急だと思うのも本音だし。
「…」
バツの悪そうな顔をするアフロディはゆっくりと話し始めた。
どうやらアフロディの父親はかなり医療に対して研究熱心らしく、これまでも海外の医療を学びに世界中飛び回っていたらしい。
そして今回、韓国での研究にアフロディの父親が招待されたのが半年前との事。
そこからはアフロディは俺に留学の事を言おうと思っていたが、中々言い出せずにいよいよ来月になってしまった。
「ごめんね、直前で言って…」
俯きながら暗い表情で話すアフロディを見ると、コイツが来月には居なくなってしまうという現実が押し寄せて来るのがわかる。
「…じゃあ、残りの1ヶ月めちゃくちゃサッカーやらないとな!!」
俺も悲しいけど日本生まれ日本育ちのアフロディが地元を離れて生活するのは不安が大きいはずだ。
なのにこのままお通夜みたいな雰囲気で見送るなんて絶対に嫌だ!
笑顔だ見送って、また笑顔で再開する!
これ以上アフロディに暗い表情はさせたくない、俺は自分の心の中でこの気持ちを強いものとした。
「…うん!そうだね!一生離れ離れではないし、すぐに戻ってくるようにパパにも言っておくから!!」
「その意気だ!それにしても韓国かぁ行ってみたいな俺も!」
「アハハ、じゃあ一緒に行くかい?」
笑顔になら、冗談をいうアフロディ。
うん、やっぱりコイツには不敵に微笑んでいてもらったほうが俺も嬉しい。
その後俺たちはいつものようにサッカーをやったが、白熱しすぎて泥だらけになり終わった後には疲れて10分くらい動けなくなっていた。
来月から小学3年生、それよりも俺は友達が遠くに行ってしまうという不安を拭うように今日はサッカーをしていた気がする。
そして意識していても日々が流れるのは早く、期限の1ヶ月はとっくに経ってしまった。
今日は日曜日、出発の前日の土曜日は準備のためアフロディに会っていない。
なので見送りのため俺は今アフロディの家に向かっている。
アイツがいつ日本に戻るかはわからない、早くて年内とはいっていたが確実とは言えない。
正直、俺は笑顔で見送れるかわからなかった。
でもアイツを不安にはさせたくはない、しかしもう会えないかもしれないという不安はこの1ヶ月で日に日に増していき、昨日は飯が喉を通らずに叔父さんを心配させてしまった。
そんな事を考えながら歩くともうすでにアフロディ宅の前までついてしまった。
しかし怖くてチャイムが押せなかった、このチャイムを押したらアフロディとの別れが始まってしまう気がして。
家の前でウロウロしていると後ろから声をかけられた。
「こんにちは、部灰君」
振り返るとアフロディの父が立っていた。
「あ、おじさんこんにちは、ご無沙汰してます」
「大きくなったね、会うのは怪我が完治した後の夕食パーティー以来かな?」
「そうですね」
「今日は晴れて良かった、引っ越しの準備も順調だしフライトも上手くいきそうだよね」
アフロディの親父は軽やかに言いながらこちらを見る
「…」
俺はまだ気持ちの整理がつかず、気の利いたことも言えないまま黙り込んでしまった。
するとアフロディの親父は真剣な顔をして腰を屈めて目線を合わせて言った。
「部灰君、照美と仲良くしたくれてありがとう、今回は僕の仕事の関係で君と照美を離れ離れにしてしまって申し訳ない。
最初は妻と照美を置いていこうとも考えたんだけど、照美はあぁ見えても寂しがりやだからね…」
「でも必ずまた日本に戻ってくるからその時はまた照美と仲良くしてもらってもいいかな?」
と言ってきた。やっぱりアイツは今日居なくなってしまう、そう思うと俺は感情が抑えられなくなり。
「…知ってますよ」
「?」
「アイツが寂しがり屋なのも、強がりなのに時々恥ずかしがり屋なのもサッカーが大好きなのも全部…!!」
抑え切られない感情は言葉で、目からは滴が溢れる。
「そうか、ありがとうね部灰君…」
アフロディの親父はそう言うと頭に手を乗せガシガシと撫でてくれた。
ゴツゴツした手で撫でられた頭はすこしボサボサになったが、暖かかった。
すぐに涙を吹いた俺は揺れていた気持ちを再確認した、笑顔で送って笑顔で再開する。
そのためにもアフロディにお別れを言わなくては。
「照美なら部屋で君を待ってると思うよ、呼んでくるから少し待ってて」
そういうと家の中に入って行った。
しばらく待つと大きな玄関の扉が開いて人が出てくるのが見える。
長く綺麗なブランドの髪、大きい深紅の瞳は見る物を魅了する宝石のような輝きを持つ、しかしキャップを深くかぶっていてその瞳はこちらからは見えない。
近づいてくるアフロディの表情が読めないまま俺は問いかけた。
「あ、アフロディ?だよな?」
「う、うん…」
暗い声音のまま返事をする。
「どうしたんだよ帽子かぶって、お別れ前に顔くらい見せてくれよ」
そう言って帽子を取ろうとする俺から素早く逃げるアフロディ、そんな動き練習でも見たことないぞ…
「い、嫌だ…」
バツの悪そうに答えるアフロディ
「なんでだよ!?もう顔も見たくないっていうのかよ!」
そんな奴だとは思わないが理由を知りたいためにカマをかける。
「…笑わない?」
頭を抱えながらそういうアフロディ、笑う?なにを笑うっていうんだ?
「あたりまえだろ!今日はお別れを言いにきたんだぞ、顔を見ずにお別れなんて方が俺は嫌だぞ!」
「わ、わかったよ…約束だからね…?」
そう言いながらゆっくり帽子を取ったアフロディの顔は少し赤くなっているもののいつものアフロディの顔だ。
「あ…」
思わず声が出てしまった、その理由はアフロディの髪にある。
前髪がぱっつんになっているのである、しかもちょっと切りすぎてる感のある…
「い、いや似合うと思うよ、イメチェンか?」
笑いはしないものの動揺した俺は引き立った顔のまま言った。
「お別れのためにオシャレしようと思って美容室にいったらこうなった…」
まさか俺に良く見せるために髪を整えに行ったら思ったより切られたのか!
俯きながら耳まで真っ赤にするアフロディ。
「アハハ!そうだったのか!可愛いじゃん!!」
なんだかお別れで意気込んでいた俺は気が抜けて笑ってしまった。
「あ!笑ったな!」
「いや可愛いって言ったじゃん!!」
「ボクを笑ったことは許さない!!」
掴みかかってくるアフロディから逃げながらなだめてなんとか普通に話をする事ができた。
その後はいつもの雰囲気で談笑していたら出発の時間になってしまった。
「色々あったけど楽しかったよアフロディ、向こうでもサッカーやるんだろ?観光しまくって下手になるなよ?」
「フフッ、キミこそボクがいないからって練習サボってまた会ったときにボクの相手にならないなんて事ないようにね?」
最後までからかいう俺たちは不思議とそこに寂しさは無かった。
「じゃあまたなアフロディ!」
俺はそう言って手を出して握手を求める
「…うん!」
一瞬迷ったアフロディは俺の手を取り
「ッ!?」
引き寄せ抱きしめて
「…早く帰ってくるから忘れないでね」
と消え入りそうな声で呟いた。
「たった1人の親友を誰が忘れるんだよ」
俺は強気にそう言って、抱きしめ返したが目が熱くなっているのがわかった。
「…ボクの名前を呼んで欲しい」
泣きそうな声だった、きっと泣いてるんだろう、抱き合っているから顔は見えない。
「…照美」
ハッキリとした声でアフロディの名前を呼ぶ。
数秒経って離れたアフロディは腕で顔を拭って、
「…うん!」
はにかんだような笑顔でこちらを見た。
そんな顔をみて俺は確信した。
あぁ俺は神様に恋をしてしまったんだと。
「またね、部灰君!」
車に乗り込んで窓から話すアフロディ。
エンジンがかかり、走り出す車。
窓から顔と手を出して手を振るアフロディ。
俺はアフロディの最後の笑顔を思い出しながら車に向かって手を振り叫んだ。
「またなー!照美ーー!!!!」
桜の舞う並木道を帰りながら俺は照美との日々を思い出し空を見上げた。
青春といえば出会い、別れ