鍛冶師、神に愛され、数年経過 ~鍛冶師失格の烙印を押された私は、神に愛されていたので、偶然出会ったコレクターの家で神様達と共に同居することにしました~   作:那須び

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休憩感覚で書いた小説です!
宜しくお願いします。


1:追放されて、女神と出会う

「武器を作らない!? どういう意味だテメェ」

「……」

 

 鍛冶師ギルド『レヴィテルム』。

 その中のある職人部屋から、けたたましい怒号が響く。

 まあそれは、私の部屋なんだけれど。

 

「何事だ!?」

「アンタがここのマスターか?」

(面倒なのが来た)

 

 周囲の皆からは『鍛冶師に似合わぬ好々爺』と呼ばれる老人――マスター・ハーレスが驚いた様子で部屋に駆けこんでくる。

 コイツが速いとこ帰ってくれたら、マスターが来ることも無かったんだけれど。

 

「コイツが俺の武器を作らねぇって言うんだ! 鍛冶師は作るのが仕事だろうが!」

「何? ……どういう意味だ、シリア」

「はあ……意味もこうもないよ」

 

 ため息を一つこぼし、私は席を立つ。

 背後にある棚を覆った布の前へ歩き、それを勢いよく取り払う。

 

 そこに飾られていたのは、私が鍛えた数多くの傑作。

 鞘は数日かけて織った布で拵えた物を使用、そして刀身も普通の鉄を使ったとは思えない程の輝きを見せ、周囲の景観をも映し出している。

 これは私独自の鍛え方をした結果の産物であり、勿論門外不出の技術である。

 

「確かに、それは間違ってない。でもさ、鍛冶師にとって、鍛えた作品は私の子供のような物なの。それなのに」

 

 私は男の腰につけていた鞘から、ヒビの入ったボロボロの剣を引き抜く。

 

「テメ――」

「まだ使える剣を捨てて、新しい剣へと変える? 意味が分かんない。自分の子供を捨てられた気持ちってのはね、最悪なんだよ!?」

「ふざけるのもいい加減に」

「そこまでだ」

 

 ハーレスはマメだらけの手をパンと叩いて制止する。

 私達は互いにハッとなり、黙り込んだ。

 

「客人、お前さんの剣は私が鍛えよう。マスター名乗ってる通り、腕は確かだ」

「は? 俺はコイツの――」

「代金に関しては、少しおまけしよう。それで、どうだ?」

「……ッチ、仕方ねぇ。下で待ってるぞ」

 

 マスターの説得で納得したのか、男は部屋を去った。

 やはりそう。結局は金だ、それに物を言わせて強い武器を使うような男だったのだ。

 愛着もって振るわれた剣にヒビなんか決してつかない。

 そのような剣は大抵小さく刃毀れした末に折れて壊れる物。

 その時の折れ目程、美しい物はない。

 

「さて、シリア。お前の言い分もわかるが、頼んできた依頼はしっかりと受けてほしいのだが」

「受けたい仕事を決めちゃいけないの?」

「鍛冶師は仕事がなければ生きていけないだろう。贋作でも良いから、せめて作るってことを」

 

 マスターがそこまで言い切った所で、勢いよく机を叩く。

 

「贋作じゃいけないの! 私は、自分が納得する武器だけを作りたい! それも、剣が折れるその最期まで、ずっと使ってくれる人に!」

「――そうか、なら」

 

「シリア。お前は鍛冶師失格だ」

「え?」

 

 突然のセリフに、私は言葉を失った。

 何故だろう? 私は何か間違った事を言っただろうか?

 

「なんで、ですか?」

「それを知らないお前は、ここにいる資格なぞない」

 

 その顔は冗談を言っているような物ではなかった。

 

「……意味が、わかりませんよ」

 

 棒にかけていた上着を掴み、マスターを睨みながら部屋を後にする。

 受けたくない仕事を拒否して、何が悪いのだろうか。

 一体私は、何を知らないのだろうか。

 

 こうして私は、鍛冶師失格の烙印を押されたのだ。

 

 

 〇

 

 

 武器、それは冒険者にとっての必需品である。

 

 遥か神の時代、世界に闇をもたらさんと魔王が現れた時、集まった人間数人達が武器をとり、魔王を打ち果たしたという伝説が残っている。

 その武器こそが、原初の業物とされている。

 

 剣、弓、槍、槌、斧、杖、短剣の7種が主な武器の種類とされている。

 派生を含めるならば、数えられない程沢山の種類があるだろう。

 

 そして、それらの武器を鍛え、冒険者に提供しているのが我ら、鍛冶師というわけである。

 

 その鍛冶師は、先ほど私が追放された場所、鍛冶師ギルドで仕事をするのが殆どである。

 勿論野良もいるが、その鍛冶師は値段こそ安いが、出来の悪い物が殆どであるため、大体は鍛冶師ギルドの人に頼んでいる。

 

「なあ見ろよ、この武器さっき鍛えてもらったんだぜ! 綺麗だろ?」

「羨ましいな。俺も速く金を稼いで、今使ってるボロ剣とおさらばしたいぜ」

「――ッ」

 

 通りすがった冒険者の会話を聞き、拳を握りしめる。

 どうしてあんな奴が、武器を握っているのだろうか?

 

 〇

 

 私は幼い頃、ある冒険者に助けられた。

 故郷が魔物に襲われ、親が惨殺されていくのを目の当たりにした。

 いよいよ私も殺される――そう思ったとき、一人の女剣士が魔物たちを斬り倒し、窮地から救ってくれたのだ。

 

 『ありがとう』と私が言うと、あの人は『お礼なら、この剣に言ってほしい』と返した。

 曰く『自分はただ剣を振っているだけで、倒したのはこの剣だから』との事らしい。

 

 それがきっかけとなり、私は鍛冶師となった。

 

 当時から力のなかった私は、あの人のような剣士になる事はできなかった。

 それでもどうにかして、あの人のような冒険者の力になりたい。

 そんな時に、私は鍛冶師という職がある事を知った。鍛冶師となり、剣を作ってあげたならば、力になれるかもしれないと私は思ったのだ。

 

 その後は、ただひたすら努力し、技術を磨き、正式に鍛冶師となった。

 その時は野良で活動していたのだが、マスター・ハーレスが私の技術を見て感心し、ギルドにスカウトしてくれたのだ。

 

 当時は、凄い感謝した物だ。ギルドに入れば、もっと役に立てるかもしれないと思ったから。

 結果、私はそこで、酷い現実を知る事になったのだが。

 

 

 〇

 

 

 追放され、上着を羽織った私は、街の中央通りを歩く。

 

「これからどうしようかなあ」

 

 追放され、今の私はもはや野良の鍛冶師であった。

 こうなってしまったからには、誰かから依頼を受けなければならない。

 

 でも、アイツらみたいな冒険者に武器を鍛えるのは真っ平御免だった。

 

 仕方なく私は、街の中央広場に置かれているクエストボードに立ち寄った。

 

 冒険者への魔物討伐やら、行方不明者探しやらの依頼が多いと思うだろうが、たまに鍛冶師への依頼も張られているのだ。

 理由は単純、ギルドに払う金がないからである。

 

 そういう人は主に『どんな物でもいいから剣をくれ』という人が多く、ギルドにやってくる人よりは、まだ武器を大切に扱ってくれる。

 勿論、本当にそうかどうかは、会ってみないとわからないのだが。

 

「ど~れか、ないかな」

 

 私は端から端まで、虱潰しに張り紙を見ていった。

 

 すると、一つ興味深い物を見つけた。

 

「ん、これは?」

 

 手に取ってみる。

 依頼はもちろん武器を作ってくれ、という物だ。だが、その下に書いてある言葉に、私は興味を持った。

 

 『戦う用ではない』

 紙には確かに、そう綴られていた。

 

 

 〇

 

 

 街の郊外に位置する森にある館、そこが依頼主のいる場所だという。

 馬車でやってきた私は、森に入ってすぐにその館を発見し、玄関をノックする。

 

「いらっしゃい、連絡をくれた鍛冶師さんかな? 初めまして、ギルラッシュ家当主の、ロイド=ギルラッシュです」

「鍛冶師、シリア=メーテルハイドです、初めまして」

 

 彼と握手を交わした後、部屋に招き入れられる。

 中はとても広く、玄関先だけでも相当な広さをしていた。

 

(階段ってこんな所にあるんだ……しかも螺旋状)

『……来……冶師……?』

(?)

 

 館に入るな否や、どこから掠れたような声が聞こえた。

 が、余り聞き取れなかったので、空耳という事にした。

 

 階段を上り、2階の応接室へと招き入れられる。

 私は促され、テーブルを挟み、向かい合わせで椅子に座った。

 面接という奴だろう。

 

「さて、依頼の件ですね――」

「戦わない用の武器――とだけ聞いてますが」

「ええ、まさにそうです」

 

 ロイドは頷きながら、話を続ける。

 

「率直に聞きますが、戦わない用の武器ってどういうことですか?」

「実は私、こう見えて武器の収集――コレクションが趣味でね」

「コ、コレクション?」

「ええ。世界各国から綺麗な武器を集めては、一つ一つ大切に保管しているんですよ。それはもう我が子のように、ね」

「そういえば、何かそういう人もいるって聞いたことありますね」

 

 私はふと、ハーレスの言った言葉を思い出す。

 

『依頼人には、戦わない人もいるが、そういう人にもしっかり対応してほしい』

 

 当時は意味不明だったが、今思えばこれは、依頼主みたいな人の事を指していたのだろう。

 

「それで私は、鍛冶師ギルドのある街に依頼を出したのですが、どうも送られてくるのは、私望むような品ではなく。大切にこそしてはいるのですが、いまいちピンと来ないのですよ」

「成程、まあギルドは『作ればいい』みたいな所ありますから」

「ええ。なので、私は一度野良の鍛冶師さんに賭ける事にしたのです。もしかしたら、凄腕の鍛冶師さんがいるかもしれない、そう思って」

「そうですか、受けた私が言うのもアレですけれど、野良の鍛冶師は余り期待が出来ない人ばかりなんですよ」

「は、はあ」

「一先ず、内容は把握しました。あ、もしよろしければ、貴方のそのコレクションを、見せてくれませんか?」

「勿論です。では、こちらへ」

 

 ロイドに案内された私は、館の地下へと案内される。

 ボロボロの地下に似合わず、綺麗に手入れされた扉の前へと歩み、それをゆっくりと開ける。

 

「……す、すごい」

 

 私は予想以上の光景を目の当たりにした。

 そこに飾られていた武器は、私が本気で鍛えた様な武器と同等又はそれ以上の輝きを放っていた。

 思わず、魅入ってしまう。

 

「集めるのも、大変苦労しましたね。特にこの原初の剣とか……」

「原初!?」

 

 私は飛びつく。

 質素な造りではあるが、その輝きは一際目立つ程の物であった。

 

「ほ、本物ですか?」

「さて。鑑定士が言うには本物との事でしたので、私はそう願ってはいますがね」

「す、すごい」

 

 レプリカでも相当の値が張るだろう。

 私の手は既に汗が出ていた。

 

「……ん。でもこの剣……なんか見た事あるような」

『来た、鍛冶師さん』

「!?」

 

 やっぱり空耳じゃなかった。

 なんか聞こえる、ハッキリとこの剣から声が聞こえる。

 

「あ、あの」

「はい?」

「この剣、喋るんですか?」

「? ハハハ、剣が喋る訳ないじゃないですか、まあ喋る事が出来たなら、どれほど良いか、って良く思いましたけれど」

「そ、そうですか…」

 

 空耳? いや、絶対に声がした。

 鍛冶師やってると、鉄を鍛える音にも集中しなければならない為、耳も常人よりは優れていた。なのでそれは、間違い等ではなかった。

 

「あの。その剣、すこしお借りしても?」

「え? あ、はい。どうぞ」

 

 私は原初の剣(?)を拝借し、少し倉庫の奥へと移動する。

 

 私は小声で話しかけた。

 

「あの、もしかして貴方、喋れます?」

『え? 私の声が聞こえるの?』

「凄いバッチリ」

『嘘、私の声が聞こえる人がいるなんて』

「聞こえちゃ不味い?」

『いえそんな! むしろラッキーです』

「ラッキー?」

『はい。貴方って鍛冶師ですよね? 手のマメを見たらわかりますよ』

「そうだけど」

『もし今、鍛冶ハンマーを持っているのなら、それで私の刀身を強く叩いてくれませんか?』

「原初の剣を!?」

 

 何と凄い罰当たりな。

 鍛冶ハンマーは鍛冶師にとって命のような物。故に常備している人が殆どである。

 にしたって、これはちょっと気が引ける。

 

「無理だよ無理無理! 凄い貴重な剣を叩くなんて!」

『お願いです、どうか! 心の底から魂をこめて!』

「で、でも……」

『叩いてくれたら、ん~~、何でもお手伝いします!』

「アバウト! ……ん、で、でも、何でもって言うなら……」

「あの? 先ほどから誰と会話を?」

『ありがとうございますっ、ほんと何でも手伝います!』

「……あの、ロイドさん」

「はい?」

「ごめんなさい!」

 

 私は懐に隠していた鍛冶ハンマーを取り出し、それを勢いよく叩く。

 

「なっ、お、オイお前! 何を!!」

『もっと、剣に対する想いを込めて!』

「剣への、想い――ッ、えい!」

 

 剣、いや、武器に対する全ての想いを、私はハンマーに込める。

 たすけてくれた冒険者の剣、そしてこれまで出会い、鍛えた、全ての武器を思い浮かべながら。

 私は――叩く。

 

 パキンッ

 

 その刹那、原初の剣の刀身は良い音を鳴らして折れる。

 それは眩い光を放ち、その姿を変化させていく。

 

 光晴れると――そこに立っていたのは、一人の女性。

 白い服に白黒チェック模様のスカート。そして、先ほど折れた筈の原初の剣を、腰のベルトにつけていた。

 

「ふぅ、やっと出れました」

「……あ、貴方は?」

「ど、どういうことだ!? 剣から人が出てきたぞ!?」

 

 驚く私達を見た女性は、振り向き、そして微笑んだ。

 

「改めて、初めまして。 キリアと言います。剣の女神――とも呼ばれてたりしますけれど」

「……あの、時の?」

 

 女性は、剣の女神と名乗った。

 ――が、その容姿は、当時私を助けてくれた女剣士と、瓜二つであった。




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