淋しがりやのオレたちは   作:ひいろ@支部民

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今回は真純について、そこから2人が遭遇します。


真純の場合

組織を壊滅させ、家族全員で集まることができたときは、真純にとってこれまでにない幸せの日々だった。

 

だがそれも長くは続かなかった。

 

組織戦中から想いを寄せていた降谷に想いを告げるも、職を理由に恋人を作る気は無いと断られた。

家族に慰めてもらいたい時だったのに、その頃からまた家族はひとりずつ減っていった。

 

長兄の秀一はまた新たな任務の為渡米し、次兄の秀吉は無事八冠を手にしたことにより恋人の由美と結婚し新しく建てた家に住み棋士として忙しい生活を送っている。

今までは唯一側にいた母メアリーも、元の姿に戻れたことによりMI6に復帰し、イギリスに戻った。

敵に狙われる弱味になる、とのことで長兄や母についていくことはできず、さりとて(2人はいつでも来るよう言ってくれたが)新婚生活を仕事によって満喫できてはいないであろう次兄の家に邪魔する訳にもいかず、真純は与えてもらったマンションで独り、暮らしていた。

 

それでもなんとか普通に大学生活を送っていた矢先、真純は志保とデートする降谷を見かけた。

たまたま用事などで一緒にいたのではないとわかる、真純には見せたことのない表情(かお)だった。

 

「なん、で‥どうして?降谷さん、恋人は作らないって言ってたのに。

あれは、ボクをことわる為の、(てい)の良い嘘だったのか‥?」

 

茫然自失となっていた真純は、その後偶然出会った大学の友達に数合わせで連れて行かれた合コンで、声をかけ優しくしてくれた、降谷に少し容姿の似た男に、ついそのままついていってしまった。ヤケのように飲んだお酒で、酔ってもいた。

 

(何を言われているかよくわからない。

でも、この人はボクを必要としてくれている‥)

 

やがていわゆる〝ホテル街〟に入っていったことはわかったが、どうでも良かった。

今夜を、独りで過ごさなくて済むなら。

このままこの人とそうなるんだろうか、なんてぼんやりした頭で考えていた時。

 

「世良!」

 

(工藤、くん‥?)

 

かつての想い人の声に我に帰った真純は、唐突に自分の肩を馴れ馴れしく抱いている男が恐ろしくなった。

 

「やっ‥!」

 

思わず男の腕を振りほどき離れた真純を自分の後ろに回した新一は、真純を庇うように男に向き直った。

 

「なんだよ‥今いいとこだったのに。わかんない?工藤新一。真純チャンだってわかってて同意してついてきたんだよ。ほら。邪魔だから。」

 

大学でも有名人である工藤新一の顔に男は一瞬驚いたものの、すぐに下卑(げび)た笑いを浮かべて言った。

 

新一は後ろの真純の顔を見たが、真純は怯えた表情でかぶりを振る。

 

「嫌だって言ってるだろ。第一酔っていてまともな判断ができないのを分かっていて連れてきたんだろう。」

 

「っ‥!とにかく、嫌がってなかったんだよ。お前が現れるまで!」

 

苛つき語気を強めた男に、新一は近づき耳元で言った。

 

「いいから帰れ。そして二度と世良に関わるな。もしまた世良に近づいたら‥」

 

新一はそれまでとは打って変わって笑顔で、しかし視線だけは鋭くその男にのみ殺気を放っていた。

普通の堅気の人間には到底できない芸当をこなせたのは、幾多の死線を潜り抜けてきた賜物か。

 

「ひっ‥わ、わかったよ!」

 

当然男がそれに耐えられる訳もなく、恐怖を顔に滲ませて捨て台詞と共に去っていった。

 

「大丈夫か?世良。あいつに何もされてないよな?」

 

少年のように快活で元気な真純しか見たことのなかった新一は驚きつつも、それを顔に出さないようにして優しく話しかけた。

 

「‥大丈夫。ちょっと触られて、気持ち悪かっただけ。」

 

「‥そうか。オメーが酒に酔ってあんなのについていくとか、何かあったんだろ?

言いたくないってんなら訊かねーけど、またこのまま帰ると危ねーし、家に送ってく。」

 

 

やっと蹲っていた身を起こし立ち上がる真純を新一は見守りながら言った。

 

「家に帰りたくない‥」

 

「おま、それあの男にも言ったのか‥?それじゃ同意だって言われるって‥

とにかく、帰りたくないっつったって帰らないわけにいかねーだろ‥メアリーさん家に帰ってるか?」

 

「ママはSISに‥イギリスに帰っちゃった‥独りの家に帰りたくない。」

 

このままここで押し問答をしていても仕方ない。人に見られても面倒だ。

確かにこの状態の真純を一人にするのも心配だった新一はひとまず自分の家に連れて帰ることにした。勿論、先程男に触られて怯えていた真純に対し下心など無かった。

 

「っ‥」

 

立ち上がりかけた真純の足が震えていることに気づいた新一は一瞬の逡巡(しゅんじゅん)の後に、腕を差し出した。

 

「触るのが嫌だったら、服の上からでもいいから‥掴まっとけ。」

 

「‥ううん。工藤君は大丈夫‥」

 

「じゃあ、ホテル街(ここ)出たらタクシー乗って、取り敢えずうちに来い。」

 

「うん。‥ありがとう。工藤君が声をかけてくれなかったら‥きっと、今ごろ‥っ。

工藤君がいてくれて、良かった。」

 

新一は自覚していなかったが、この一言は、おそらく、新一の渇いた心に最初に垂らされた一滴だった。

 

 




【必読】

必ずこの後書きを読んでから次話を読んでください。お願いします。

ここから、話は分岐します。
目次を見てくださればわかると思いますが、このまま次話に進むと、Happy Endとなります。
新一くんも世良ちゃんも幸せになります。降志は出てきませんがそのまま幸せに恋人です。
蘭ちゃんも出てきませんがきっと幸せにしています。

一方、ここで一度目次に戻っていただき、Merry Bad End の章に進んでいただくこともできます。
新一くんと世良ちゃんは、苦しい日々からは抜け出せますが、救われません。志保さんも降谷さんと恋人だけど真に幸せとは言えない状態、そして降谷さんは黒いです。蘭ちゃんはこちらでも出てこないのでわかりません。

私のおすすめとしては、お好きな方を読んでから、もう一方も読んでいただくことです。
また両方の章の最初の話「夜、明けて」は同じもののように見えますが、実はちょっと違います。なので片方の章を読み終わってからもう一方の章も読んでくださる場合でも、必ずきちんと両方最初から最後までお読みください。
お願いします。  

以上のことを踏まえて、それでは、どうぞ。
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