前話「真純の場合」の後書きは読みましたか?読んでいない方は必ずそちらを読んでからでお願いします!
工藤邸に帰ってきた2人、その翌朝のお話。
夜、明けて
「鍵出すから、ちょっと待て。」
「ああ。大丈夫だかっ‥!」
「あっぶね‥」
工藤邸についた新一は鍵を取り出す為鞄に入れていた手を出し、よろけた真純を慌てて抱きとめる。
「大丈夫じゃないだろ。廊下の右手に風呂場あるから、入ってこい。タイマーで沸かしてあるから、あったまってる。
着替えは母さんの寝間着が置いてあったと思うから、それを後で脱衣所に置いとくぞ。」
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「お風呂ありがとう、工藤君。でも着てから気づいたんだけどさ、この姿じゃ帰れないから、やっぱり服着てくるよ。」
風呂に入った事により少し酔いが醒めた真純は、申し訳なさと、これ以上世話になるわけにはいかないという気持ちでいっぱいだった。
「なんかあって独りの家に帰りたくないんだろ?泊まってけよ。
上の部屋に来客用の布団出してあるからそれでいいか?オレはそこの自分の部屋で寝るし、その部屋内側から鍵もかけられるから。」
「いいのかい?そこまでお世話になって‥」
「いーんだよ。
‥オレも独りの夜は最近うんざりだったんだ。同じ家に誰かいるってだけで違うだろ?」
「‥じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ。」
「ああ。じゃあもう寝ろ。しっかり身体と頭休めろよ。あ、これ外側から開けられる鍵。」
「ありがとう。」
ポーンと放られた鍵をキャッチした真純は、今日初めての笑顔を見せた。
新一もつられて笑みを浮かべる。少し心が暖かくなったのを感じていた。
「じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ。」
*****
コンコン
「世良、起きてるか?」
「‥もう、ちょっと‥だけ‥うわっ!!」
かけられた声に夢の中から返してから、真純は飛び起きた。
(そうだ、工藤君ちに泊めてもらったんだった‥)
「起きたか?」
「ああ。起きたよ。
‥この服、布団敷いてくれた時から横に置いてあるけど、着ていいのかい?」
寝言の恥ずかしさを誤魔化すように話を変える。
「ああ。母さんの服の中でも世良でも着そうなもの置いといたつもりだけど、他のが良ければ出すぜ?」
「ううん、これで大丈夫。じゃあ着替えたら行くから。」
「わかった。簡単な朝飯作ったからパン焼ける前に降りてこいよ。」
「ありがとう。」
ドアの前から気配が遠ざかっていくと、真純はパジャマから着替え始めた。
「このズボンお尻余る‥」
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「おはよう!工藤くん。」
一夜明け、眠った真純はいつもの真純と同じだった。
「おう、はよ。世良、ちょっとそこの皿取ってくれるか?」
「あ、これ?」
「ああ。よしっ。ちょうどパン焼けたから。
じゃ、持ってって。」
パンを乗せた皿を真純がテーブルへ持っていくと、そこには朝食が2人分用意されていた。
「工藤君すごいな‥ボク料理はほとんどしたことないからできないんだ。」
「オレもあんまできねーよ。目玉焼きとベーコン焼いてパンはトースター放りこんで、あと野菜切ってサラダにしただけ。スープは時間ある時に大量に作っといて冷凍しといたやつを、解凍しただけ。」
「へえ〜でもボクは台所にも立たないからなあ‥」
真純は純粋に賛辞の声をあげた。
「今日はなんか用事あるか?あったらそれに行く前に一回家帰る必要あるだろ?」
「ううん。ボクは無いけど‥工藤君は?」
「オレも今日は急な依頼が入らなきゃ、用事は無いな。」
「話を‥聞いてもらってもいいかな?」
「勿論いいに決まってるだろ。じゃあ、朝食片付けたらそうしよう。」
「うん。ありがとう。」
*****
ご飯まで作ってもらったんだから、と真純は皿を洗う事にしたのだが、3枚目の皿を割った時点で新一は自分が代わるといい、真純も従った。
「なんで洗剤つけた皿ってあんなに滑るんだよ!」
「いや、それでも普通あんな割らないから。」
「うう‥ごめん。せめてこれくらいは、と思ったんだけど‥」
「ま、やろうとしてくれたのはサンキューな。」
ポン、と自分の頭に乗せられた、細いけれどしっかりした大きな手に、いつだったか降谷が同じようにしてくれたのを思い出した真純は、少しだけ目を潤ませてから、ポツリポツリと話し始めた。
降谷に「恋人を作る気は無いから」と振られたこと、家族がだんだん散らばっていったこと、昨日、降谷と志保の姿を見たこと‥
「それであの人についていっちゃったんだ‥本当に、工藤君が声をかけてくれなかったら‥。次からはあんなことないように気をつけるよ。
でも、だって、あんな降谷さんの顔、見たことなかったんだ。きっと志保姉と恋人なんだ。工藤君は知ってる?」
「ああ‥。宮野と降谷さんは‥恋人だ。」
そう言った時の新一の声が微かに震えている事に真純は気づいた。
「工藤君も、何かあったのか?」
「何か、あったって程じゃない。ただ、オレも‥宮野が好きだったんだ。
それに、宮野はオレの相棒で、オレの理解者だと思ってたのに、それが降谷さんに奪われたような‥」
「そっか‥」
目を伏せた新一に、何もしてあげられないことが真純には歯痒かった。自分は助けられたというのに。
思わず、強く握られた新一の拳を取り、手でそっとほぐすように包みこむ。
そしてそのまま、何かを願うように、目を閉じて自身の額に当てた。
「‥悪い。」
「ううん。工藤君には感謝しても仕切り足りないくらいなんだからさ。」
「いや、オレの方こそ、夜はずっと眠れなかったのに、昨日はぐっすり眠れた。」
「ボクもだよ。昨日は魘されずに済んだ。本当に助かった。ありがとう。」
真純の柔らかな笑みに、新一は自分のどこかが救われたことを自覚していた。