淋しがりやのオレたちは   作:ひいろ@支部民

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Happy End 最終話です!
ただこの後に後日談とエピローグもあります。


2人の想い

翌朝。

 

先に目を覚ましたのは真純だった。

 

なんだか暖かいものに包まれているなあ、と思って目を開けた彼女は、まず目に飛び込んできたシャツに、まばたきを数度繰り返した。

シャツから上へと目線を上げ、安らかな寝息を立てる整った顔に辿り着いた数秒ののちに事態–––昨夜久方ぶりのひとりの家で魘されていた自分を宥めてくれた新一を自分がベッドに引き摺り込んだ為に一緒に眠っている事、そして何故か抱き締められていること–––を把握した彼女は、ボンっという音が聞こえそうな程、一瞬にして真っ赤になった。

 

魘されていた後であり寝ぼけていたとはいえ、自分のしてしまったことによる羞恥、

そしてかつての想い人であり、整った顔立ちと比較的線の細くも鍛えられた身体を持つ‥つまり俗な言葉で言ってしまえばイケメンで初恋の相手な新一に抱き締められていると言う事実から、どうにか逃れようと真純はもがいた。

 

だがいくら彼女が鍛えているとはいえ男性の力に敵うわけもなく、むしろ眉根を寄せて不機嫌そうな顔になった新一に抱き締めなおされた真純は息の仕方を忘れたように口をぱくぱくと開けては閉じを繰り返した挙句、ここから抜け出すことは不可能だと諦めて新一におずおずと声をかけた。

 

「あの‥新一君?」

 

「‥ん」

 

眠そうな瞼を開けた新一は、ぼんやりとした目を優しく細めて、真純の頭をくしゃっと撫でた。

 

それだけで再び赤くなった真純の顔を眺めながら、全く覚醒していない頭で新一は「かわいいな」と考えていた。

 

考えたままの言葉を口に乗せれば、目の前の顔が更に赤くなったことで漸く夢現の状態から覚醒した新一もまた、たった今自分が言ったことを思い返して赤くなった。

 

「あ、いや、今のは、えっと、」

 

「あ、ああ、と、とりあえず離してもらってもいいかな?ベッドから出たくて‥」

 

「!わ、悪い。」

 

真純に離してくれと言われて初めて抱き締めていた事に気づいた新一は余計しどろもどろになりながらも回していた腕を外し、ベッドから出た。

 

「え、と、じゃあ、オレ着替えてくるから‥」

 

「うん、ボクも着替えたら降りるから‥」

 

 

 

「その、昨日はごめん。ありがとう。」

 

「ああいや、大丈夫だ。」

 

「そ、それより、依頼はどうだった?」

 

「ああ、奥さんの死に疑問を抱いている人からの依頼ってのは話したよな?それが結局‥」

 

そこからは普通通りに2人は話すことができ、真純は依頼があり出かけていき、新一は昨日の依頼の資料などをまとめる為、家に残った。

 

が。

 

「あー‥どうすっかなあ‥」

 

真純が出かけてすぐ椅子にずるずると座り込んだ新一は資料以外のことで頭がいっぱいだった。

 

さっき、本当についさっき自覚してしまった想いのことで。

 

「真純を好きなのは、家族とかに向けるのとは違う、好き、だよなあ‥」

 

元々これは、失恋で眠れなくなっていた同士、安眠の為始めたルームシェアだ。

新一が真純にそれ以上の感情を抱いてしまった以上、それを黙って共に暮らし続けることはできない。

、 、

かといって、たった一夜家を空けただけでああなった昨夜の彼女を見てしまえば、

 

「今ルームシェアやめようってのも言えないよな‥オレもまだ独りじゃ眠れないし。」

 

どちらもできない。

新一にとって、想いを告げるという選択肢は無かった。

今だにあれから独りでは眠れない‥つまり恐らくまだ志保のことをひきずっている自分が、あれ以来男性に触れることができなくなった真純に告白するなど、真純の気持ちを考えれば有り得ない。

 

「‥コーヒー淹れるか。」

 

立ち上がって扉の方を見た新一は固まった。

 

「ま、すみ‥」

 

カバンを抱えた真純がそこに立っていたからである。

 

「新一君、今のって‥」

 

「‥どこから、聞こえてたのか?」

 

「ボクのことを、その、好きって言ったとこから‥」

 

真純の答えに、新一は目眩がした。

 

(聞かれていた。きっと、嫌われる。いや、怯えられるかもしれない。)

 

「あの‥今のって、本当?」

 

俯いた真純の顔色を窺い知ることはできない。

 

ここで、友や仲間に向けるものと同じ好きだ、と言ってしまうことは簡単だ。

しかし、想いを隠したまま、このままの日々を続けるのは裏切りでしかない。

 

「‥本当だ。気づいたのはさっきだけど、多分、もっと前から真純のことが好きだった。」

 

「‥そっか。それは、ボクに対する同情やそこに自分を重ねてるだけじゃなくて?」

 

「それは違う!」

 

志保に対しもう一片も想いが残っていないか、と言われれば自信は無い。だが、真純に対する想いは確かに本物だと言える自信があった。

 

肩を静かに震えさせる真純に、新一はとうとう見放された、と覚悟した。

 

「悪い。‥オレと一緒に住み続けることはできないって言うなら、いや、勿論そうだろうけど、それなら、オレは引き止められな–––「いやだ!」‥っえ‥?」

 

ぼろぼろと涙をこぼす真純に新一は狼狽えることしかできない。

 

「そんなの、いやだ。」

 

「‥じゃあ、まだ一緒に住んでくれるのか?でも‥」

 

「新一君がボクにそう思ってくれたからって、なんで一緒に暮らせなくなるんだ?」

 

「いやだって、これは、お互いに好きな人がいた、同士だから成立してたんであって、オレが‥その、真純を、好きになった以上、男女で同じ家っていうのは‥真純だって嫌だろ?」

 

「嫌じゃない。それに、男女で同じ家に住んでる人たちだっていっぱいいるよな?

‥コイビトだったら。」

 

「‥え?‥あ‥え、それって‥」

 

新一には、真純の言ったことが飲み込めない。

いや、ある一つの可能性には辿り着いているが、そんなわけない、と否定してしまっている。

 

「‥だから!ボクは、確かにまだ男の人は怖いし、まだ新一君のことをちゃんと好きか、はわからないけど、でも、新一くんなら触れられるし、少なくとも、新一君がボクを好きだって知った時は、驚きだけじゃなくて、喜びも大きかった!だから‥その、新一君の、恋人に、してくれないか‥?」

 

鞄を落として駆け寄って来た真純は、新一の服の裾をぎゅっと握りしめる。

最後は尻すぼみになった言葉を、それでも新一は理解した。

 

「‥本当に?オレの、恋人になって、くれるのか‥?」

 

「‥うん。」

 

新一が嬉しさから抱きしめようとして、それでも一度躊躇した事を察した真純は、自分から抱きついた。

 

「‥!真純、好きだ。」

 

抱きしめ返した新一が耳元で囁いたので、真純は顔を真っ赤にさせて俯いた。

 

「新一君のそういうとこ、ほんとズルいよな‥」

 

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