ーー僕を好きだって証明出来たら信じてあげる。
オミの言葉にヨージは即答する事が出来なかった。オミの言う通り自分は確かに多くの女性と関係を共にしてきた。そんな自分が突然『お前が好きだ』だなんて言った所で信じ難いだろう。現に先ほどの触れるだけのキスでも足りなかったようだ。
だからーーヨージはそれ以上の行動で示す事にした。
「オミ、今から俺がどんなにお前を想っているのか痛いほど分からせてやるよ」
そう言ってから小柄な体を抱き締めるヨージ。オミは驚いて腕の中でもがいた。
「ヨージくん!離してよ」
ヨージの腕へ指先を食い込ませ、その腕から逃れようとするがヨージは腕の力を緩めようとはしない。
「嫌だね。好きだって証明しろって言ったのはお前だろ?」
頭上から降ってくる低い声にオミは唇を噛む。そうは言ったけれど、せめて心の準備くらいさせてほしい。
「そうだけど……いきなりは恥ずかしいよ」
オミは顔を俯かせ、ぽつりと呟く。表情は覗う術がないが耳と項が薄く朱に染まっていた。
「じゃぁ、いきなりじゃなきゃ良いんだな?」
オミとヨージ以外に誰かーー、ケンかアヤがいればそう言いながらヨージが口角を吊り上げている様子を見る事が出来ただろう。しかし、この場にいるのは幸いというべきかヨージとオミの二人のみ。ヨージはオミを抱き締める腕をするりと解くと、『好き』を証明すべく裏口の鍵を開けたのだった。
「とりあえず俺の部屋でメシにしようぜ」
ふう、と息を吐いてからそう提案するとオミの腹が空腹を訴えて鳴く。タイミングが良すぎる腹の虫に二人は声を上げて笑った。
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「オミ、何食いたい?」
くわえ煙草で冷蔵庫の中を覗き込みながら、居間のソファに座っているオミへ声をかける。オミは物珍しそうに部屋の中を見回していたがその声にハッとしてヨージの方を見た。
「そうだなぁ……じゃぁ、オムライスで」
少しの間考えてからそう答えると了解、と返ってきた後調理する音が聞こえ始めてオミは内心安堵する。リクエスト内容から絶対お子様だと馬鹿にされると覚悟していたのだ。
「ねぇ、ヨージくん」
部屋の中を見渡しきってする事が無くなったオミはヨージの背中へ呼びかけた。先程まで聞こえていた野菜を刻む音は消え、今は何かを炒めている音が聞こえる。
「何だ?」
ヨージの返事に被さるように何かを炒める音は続いていた。そしてほどなくしてケチャップの甘い香りがそれに加わる。
「ヨージ君って自分でご飯とか作るんだね」
ヨージの部屋に入れて貰ってからずっと気になっていた事を聞いてみる。普段デート三昧なヨージは外食ばかりしているイメージがあった為で嫌味のつもりは毛頭なかったのだが、ヨージは少なからず気分を害したらしい。
「何だとコラ!そんな事言う奴のオムライスには旗たてるぞ!」
首だけオミの方へ向けると、脅しになっているのかなっていないのか分からない事を怒鳴ってヨージは再びフライパンへと視線を戻す。
「ふーんだ、ヨージ君の意地悪!毎日デートだからいつも外食なのかなって思っただけだもん」
ヨージの背に向かってぷりぷりしながらそう言うと、ヨージはわざとオミには聞こえないようにこそっと呟く。
「……デートなんてしてねぇよ」
オミに視線を送られるようになってからヨージもオミを見るようになった。
そうすると今まではただの仲間としか意識していなかったのにオミが気になって仕方なくなってしまった。そのせいかデートにも身が入らず、女性には袖にされてばかり。仕方がないので自室で晩酌を兼ねた夕飯を取る日々だった所に予想外の告白を受けた、という訳だ。
(俺に想いを寄せてくれてるとは思ってたけど、まさか告白してくれるとは……)
フライパンの中、香ばしい匂いを漂わせ始めたチキンライスに気付かずヨージは店で受けたオミからの告白シーンを反芻していたーー。