猫に極振りした男の末路   作:猫を愛でる

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アニメをチラッとしか見てないので続きません。


キャラメイク

 

 ここに、一人の哀れな男がいる。

 33歳独身、彼の本名に関してはこの物語には一切関係ないためカットする。

 

 彼は猫が好きだった。

 小さい頃から自由気儘で愛くるしいその動物が好きで好きで堪らなかった。

 彼が学生で実家暮らしだった頃は、その近くを彷徨いていた野良猫を観察するのが趣味だった。大人になって実家から離れても趣味であった猫の観察は変わらず、道行く猫を見掛けては後ろから距離を取って眺めていた。

 ……そう、彼は眺めることしか出来なかった。

 

 猫アレルギー。それも重度の。

 

 彼は過去に一度猫に触れたことがあるが、それはもう大変なことになった。鼻水とかくしゃみとか目が腫れるとか、それらを通り越して呼吸困難に陥った。発熱も発症し、生死を彷徨うにまで至ったことがある。

 医者からは「動物には触れないように」という、男にとっては地獄に突き落とされたかのような衝撃の言葉を突きつけられてしまった。

 彼はそれ以来、猫、ましてや動物に触れる機会は消え去ってしまった。

 

 男は絶望した。正直首吊って人生リセットでもしてやろうかと思うぐらいには絶望していた。

 それでも男は、いつかは触れることができるかもしれないという、天から垂れてきた蜘蛛の糸より頼りない希望を胸に生きてきた。

 

 それから暫し時間を飛ばして彼は33歳になった。

 流石に心が折れていた。

 心折設計とはこのことを言うのか、悲しみに暮れた男が太い縄を購入し、天井から吊るす準備を始めていた。

 そんなときだ。男に歪んだ光が舞い降りた。

 

 New World On-line

 

 最近のゲーム界隈でも名を轟かせていたゲームソフトのCMが、付けたままのテレビ画面に流れ始めた。

 男は死んだ魚の目をしてそれを眺めていたが、突如として彼の脳内に電流が走る。

 

「……もしかして、アバターを弄れば猫になれる?」

 

 突飛な発想。限界に達していた男の脳から絞り出された生きるための偽りのエネルギー。

 彼は「駄目だったら死のう」と決心しながら、早速購入画面を開いた。

 

 

 購入ボタンを押してから数日後、届いたソフトを一緒に購入したハードにぶちこみ、早速プレイを開始した。

 視界いっぱいに広がる電子空間。男はキャラメイクの場へと辿り着いたのだ。

 男はドキドキしながら入力を始めた。名前は猫を飼ったときにつける予定だった「タマ」をそのまま使った。

 ステータスに関してはクッソ適当に割り振った。興味が微塵もなかった。

 

 そんなこんなで、彼はアバター設定に辿り着く。彼は早速自身の身体を弄り始めた。

 

 さて、ここでひとつ。昨今話題のバーチャルリアリティなゲームには、全てのゲームを通してとあるルールというか、ご法度みたいなものがある。

 それは、アバターの過度な変更である。

 なぜ駄目なのか、その説明は簡単だ。『現実と仮想が混同してしまう』ためである。

 例えば、一般的な男性が仮想空間で女性になろうとする。身長等のアバターを弄って良し完成、さあゲームの世界へ!と一歩踏み出せば、その身体に慣れていない体と脳はバランスが取れずズレが生じて、そのまま転倒。男が動けるようになるまで多大な時間を要するだろう。

 じゃあその多大な時間を要すればいいじゃん、と思ったそこの方。甘すぎる。

 時間掛けて慣らしたということは、体と脳はそのアバターに慣れてしまったということ。では、いざゲームを終えて、動こうとすれば、ズレが生じてまた転倒。

 この問題に関しては、バーチャルリアリティ系のゲームが出た当初から問題視されており、基本的には過度なアバターの変更は制御されていた。これに関してはプレイヤー側も納得し、しかたないと一言、過度に変更せずにプレイすることになった。

 

 しかし、このNew World On-lineでは、その過度なアバターの変更が可能だった。

 最新ソフトであったNWOは身長程度の変更であれば違和感なく動かせるように密かに調整されており、それを自慢するために開発陣営はアバターの変更を限度なしに設定してしまっていた。

 

 おお、なんと哀れな開発班。その設定のために『例外』が解き放たれてしまった。

 

 

 アバター設定から三〇数時間、彼はガッツポーズをした。猫の姿で。

 

 そう、猫の姿で。

 

 彼は成し遂げてしまった。人間のアバターから猫へと変身を遂げた。身長を下げ、顔を小さくし、骨格を変更に変更を重ね、体毛を生やし、見事な三毛猫へと変わっていた。

 彼はキャラメイクの空間で身体を動かす。猫の体はその通りに動いた。それもそうだ。彼は自身の身体を動かして骨格を確認しながら作業していたのだから、体の変化にも既に馴れている。

 ウロウロと回るように歩いたあと、また心の中でガッツポーズをした。

 

「ニャア」

 

 猫の鳴きマネは元から得意だったため、彼は猫のように鳴いた。

 もう、人間を捨て去っていた。

 

 

 初期装備を脱ぎ捨てて、人間をやめた猫は、いざNew World On-lineの世界へと足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

 

 後に彼は言う。

 

「NPCに猫出るから、それを愛でれば解決したのでは?」

 

 ーーと。

 

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