ポケットモンスター カオス ~暗黒破壊神は陽の目を見たい~ 作:ディヴァ子
俺の名は「ダークザギ」。
M80さそり座球状星団に住む、後に「来訪者」と呼ばれることになる人型知的生命体によって造り出された、「ウルティノイド・ザギ」が前身だ。
知的生命体の恐怖心を糧に増殖と進化を繰り返す異形進化生命体「スペースビースト」の脅威に晒されてたM80さそり座球状星団の人間たちは、伝説の巨人「ウルトラマンノア」によって救われた後もそのトラウマが拭えず、“自分たちだけのウルトラマンノア”を造ろうとした。
ようするに、
「スペースビーストが怖くて夜も眠れないよー! だけど、ノアはもう眠りに着いちゃったし……ハッ、そうだ! 逆に考えるんだ、「作っちゃえばいいんだ」と! それさえあれば安心してグッスリ眠れるな!」
と考えたのである。
阿保なのだろうか。何でもういない相手を倒そうとしてんだよ。気が狂っとる!
そんなこんなで俺は造られたのだが、当然グレましたとも。それはもう盛大に。
いやね、ザギって名前つけた癖に「ああ、我らのウルトラマンノア!」とか毎日言われてみなよ。クソムカつくから。そもそも「ウルティノイド」って言葉自体が「ウルトラマンの模造品」って意味だからね。生まれた時から偽物呼ばわりされ続ける身になってみろってんだ。
まぁ、そんな感じで、元々厨二な設定が盛り込まれていたのも相俟って、ひたすらに悪方向へ目覚めてしまい、「だったら強くなればいいだろう!」とばかりに、僅かに残ったビースト因子から強化版スペースビーストを量産。強く育ったら倒し、生き残りが更に強くなってからまた倒すという、自分を中心とした蟲毒な戦いを続け、最強を目指した。自分がノア以上であり、唯一無二の存在であると証明する為に。
それに対する来訪者たちの答えは――――――自爆だった。それも母星ごと。何でやねん。
いや、あの……惑星のコアに憧れのノアさんもいるんですが。いくら手に負えなくなったからって、自分の星を爆破する奴がどこにいる。ここにいますか、そうですか。
ちなみに、改良型スペースビーストは俺の力で「Xニュートリノ」という量子状態にして宇宙へ逃がしていた上に、俺自身は超新星爆発程度では死なないので、来訪者の自爆は不発に終わったと言える。ざまぁ。
さらに、爆発の影響で出来た次元の歪みを通って、現地の怪獣を従えつつM78星雲「光の国」で気ままに一暴れしていたのだが、追跡して来たウルトラマンノアと交戦状態に陥り、死闘の末にノアの究極技の一つ「ノア・ザ・ファイナル」で道連れにされ、逃がしたスペースビーストと同じような状態で元の宇宙へ帰還。
母星も俺も使い捨てた来訪者を追う形で地球へと飛来し、勝手に絶望していたヘタレ研究員「
全ては、俺が俺である為に……。
だが、計画は順調に進み、十八年越しにようやく復活したのに、俺でさえドン引きするような目に遭い続けた
主人公補正+初登場補正+最終話補正というトリプルコンボを叩き出した
しかし、俺は不死身のウルティノイド。以前と同様に魂だけは生き延び、マルチバースへの逃亡に成功した。詰めが甘いぞ、孤門。お前は一週間の謹慎だ。
その後は、粉々になった魂の欠片がそれぞれ別の平行世界へと渡り、好き勝手に生きている。中華系の躁鬱なクソガキを手下にイキっているかもしれないし、変な戦争に首を突っ込んで自分が人形になっているかもしれないし、はたまた「諦めるな!」と励まされた子供に憑依転生してほくそ笑んでいるかもしれない。
そして、俺はどうやらポケモンが存在する世界に転移したらしいのだが――――――、
『何故にポリゴン?』
どういう訳か、野生のポリゴンに憑依転生してしまっていた。
しかも、俺の闇に影響されたのか、姿形が変異し、タイプまでも変わってしまっている。
具体的に言うと、本来赤い部分が真っ黒になり、瞳は狂気の真紅に染まっている。タイプはあく/どくの複合のようだ。
さらに、ポリゴンがうろついていた場所が、とんでもない修羅場だった。
『さぁ、早く私を殺したらどうだ?』
一人の少女が、別の少年少女を前に挑発している。その表情は誰から見ても狂っており、とても正気とは思えない。
実際、正気ではないのだろう。俺には見える。あの少女に取り憑く、粘着質な闇の化身が。
どうやら、俺の同族かつ最終進化形態である漆黒のポリゴンZが憑依して操っているようである。
『私を殺さなければ、そいつは死ぬぞ。技を掛けたのは私なんだからな。いくらでもやり直しは利く』
「くっ……!」
『だが、私を殺せばこいつの絶望がウィルスとなって世界中の人間とポケモンの精神を汚染し、互いに死ぬまで殺し合うだろうなぁ』
「テメェッ!」
『さぁ、選ぶがいい。世界を見捨ててそいつを助けるか、そいつを見殺しにして世界を救うか。私はどちらでも構わんがなぁ!』
意気揚々と語るポリゴンZの話を要約すると、自分の死をトリガーとする全人類とポケモンの滅亡のスイッチを、目の前の少年少女に押させようというのだ。それも仲間の命を天秤に掛ける形で。むろん取り憑いている少女も、彼らの仲間なのだろう。
うわー、引くわー。外道もいいとこじゃん。人の事言えないけど。
『ックックック! 全ての人間の信頼関係を失わせ、ポケモン諸共自滅させる事が、私の目的だったのだ!』
何かヤプール人みたいな事言ってる。そう言えば遣り口もそっくりだな。胸糞悪い。俺みたいに、もう少し華やかにやったらどうだ。
「くっ……チクショウ……!」
おお、迷ってる迷ってる。そりゃそうだよな。自分の行動如何で世界の命運が決まるのだから。
事実、もしもあいつが少女を殺した場合、世界中に“販売”されてしまっているポリゴンを通じて汚染が広がるようになっている。俺もポリゴンだから、それが分かる。
だが、考えている余裕はもうない。ポリゴンZの状態異常を受けた人間はすぐにでも死ぬ。
『何を迷う! 世界とは言え、所詮は他人だろう? そいつと天秤にかける程の存在なのかぁ? 目の前で苦しんでいるそいつを見殺しにしてまで生かしたいのかぁ!?』
おうおう、煽りよる。他人の中には、そいつらの家族も含まれているだろうに。
『……しょうがねぇなぁっ!』
『何ィ!?』
俺は少女に取り憑いているポリゴンZを引き剥がし、実体化させた。俺以外が人間を弄ぶなんて、こいつはメチャ許せんよなぁ~?
あと、この器は過去にこいつらの施しを受けているようだし、借りっぱなしというのも気分が悪い。
『これで、貸し借りは無しだ』
後はあいつらに任せればいいだろう。見た所、ミュウツーを捕まえられるだけの実力はあるようだし。
『……この俺が人助けとはな』
結果的にとは言え、嫌な感じだ。それもこれも、ライトニング・ノアに込められた、
《諦めるな!》
それは皮肉か、それとも純粋な励ましか。今となっては知り様もない。
『お前に言われるまでもないんだよ、バーカ』
という事で、俺は昼ドラもかくやという修羅場を後にして、外に出た。
つーかここ、ハナダの洞窟だったのね。それもピカブイ版の。どうりでやたらと神秘的な場所だと思ったよ。現場は最悪だったがな。
さーて、これからどうしたものか。
ここがカントー地方だと言うのなら、ちょっくら観光でもしようかな、情報収集も兼ねて。さすがに捕まるのは嫌だけど、人間に接触しない事には、世情の把握もままならない。
そうしてフヨフヨとホバー移動しながら各地をうろついていた俺だが、
「フッフッフッ、今日もコイキングは活きがいいわい……今年も優勝は頂きだな!」
何か湖の畔でニヤ付く怪しいおっさんを発見した。水面に目を向けると、大小様々で色取り取りなコイキングたちが元気に泳いでいる。
どうやら、このおっさん、コイキングの養殖と品種改良を行っているらしい。金は元より、紅白や三色に鼈甲、変わりものまで揃えている辺り、さっきのポリゴンZとは別ベクトルの狂気を感じる。実はホップタウンの出身なのだろうか。あの500円で売り付けてくるオヤジの正体はこいつなのかもしれない。
う、うーん、関わるべきなんだろうか、それとも無視すべきなのか迷う所だ。こういうヤバい奴の方が案外情報通なんだが、でもあいつ、コイキングオヤジなんだよなぁ……。
「ぬ? そこにいるのはポリゴンか? それにしては色がおかしいが……」
『あっ、ヤバい、見付かった』
「ギェアアアアアア、シャベッタァアアアッ!?」
しまった、見られた拍子に喋ってしまった。俺らしからぬミスである。
とは言え、バレてしまったのなら仕方ない。さすがに俺が異世界から来た暗黒破壊神だとは気付かれないだろうし、調子を合わせて情報を得よう。あわよくば寄生したい。金有りそうだからな。
『喋ったから何だと言うのだ。それより、お前はこんな所で何をしている? たまたま通り掛かったら、変なおっさんが湖を見ながら怪しく笑ってたからビックリしたぞ』
「怪しいおっさんって……」
本当の事じゃん。フォローのしようが無いくらい怪しかったぞ。
「父さん、どうかしたのか?」
「おお、ライトか……」
すると、息子(?)と思しき少年が。生意気そうなガキだな。
「――――――とりあえず、家で話そう。立ち話も何だしな」
子供の登場で少しは頭が冷えたのか、コイキングオヤジは俺を自らの家へ招き入れた。予想通り、結構な豪邸だ。阿漕なやり方で稼いだんだろうな。
「それで喋るポリゴンくん、どうして君は喋れる? どうしてそんな姿に?」
俺をリビングのソファーに座らせ、自分もふんぞり返りながら、そんな質問をするコイキングオヤジ。目が完全に研究者のそれである。部屋中に色んな表彰状やポケモンの化石が飾られている辺り、本職はポケモンの研究家なのだろう。人は見掛けないよらないな。
『まずは自己紹介をしたらどうだ?』
「おお、そうだな。儂はヤガミ・ソウイチロウ。こっちは娘のライトだ。どうぞよろしく」
デスノートか。
つーか、娘だったのかよ、そいつ。なら短パン小僧みたいな恰好させてんじゃねぇ、紛らわしい。
『俺はポリゴンのザギだ。最近自我に目覚めてな。どうしてそうなったのかは俺も知らん。バグでもあったんじゃないか?』
俺は真実を隠しつつ、それっぽい事を言った。馬鹿正直に正体を明かしてやる筋合いはないからな。
「何だよお前、ポケモンの癖に態度デカいぞ!」
『黙れ小僧。自分の尻も拭えないガキが出しゃばってんじゃねぇ』
「何をぅ!?」
ライトが生意気な事を言って来たので、事実を指摘してやったら逆切れされた。これだからガキは。
「おいおい、馬鹿にしてくれるなよ。この子はちゃんと一人で生きていけるだけの知恵と勇気を持っている。だからこそ引き取ったんだ」
『ほぅ、孤児か。養女という訳だ』
意外だが、この可愛くないクソガキは、元々は捨て子だったようだ。自分の尻も拭えない、という発言は訂正してやろう。
「フン、分かりゃいいんだよ!」
……やっぱ殺そうかな。幸い毒々とか覚えてるし、苦しめて死なせてやれるぞ。
「ハイハイ、そこまで。話が進まないから。それで、君はこれからどうするんだい?」
俺の殺気を察知したのか、コイキングオヤジが話題を強引に変えた。
『フム……行く当てはないが、誰かの世話になる気もない。我思う故に我在り、だ。自由気儘に生きるさ』
「なら、カントー地方は止めた方が良いかもな。ポリゴンに対する差別意識があるからね」
『そうなのか?』
「ああ。実はな……」
コイキングオヤジ曰く、俺が知るゲームのポケモンは、この世界からポリゴンの力を利用して干渉した産物であり、行く行くは交流を持つつもりだったらしい。
しかし、例のあの事件があったせいで国交が絶望的になった為、こちらの世界同様、ポリゴンに罪を擦り付ける形で事を修めたのだとか。
『ただの冤罪じゃん』
「いやぁ、ぐうの音も出ないね。だけど、シルフカンパニーにはスケープゴートが必要だったんだよ。“開発者とその産物が勝手にやった”と言わなければ、会社そのものが潰れる所だったからね」
『その結果が、あの
本当にぐうの音も出ないな、とコイキングオヤジは苦笑いした。
案外、こいつがその開発者なのかも。せめてもの罪滅ぼしに会社からタンマリと貰った退職金で、趣味に走ったとか。深くは追求しないがね。面倒臭いし。
とりあえず、カントー地方に俺の居場所は無い事が分かった。
ならば、新しい土地で再スタートを切るだけである。
『……話は変わるが、お前さん、何処か海外に伝手は無いか? 俺は差別を受け入れてやる程お人好しじゃないし、かと言って全人類を敵に回す程の力はない』
あくまで今は、だがな。
「だから、海外で心機一転したいと?」
『構わんだろう? 別に何時までも世話になる気は無いし、単に逃がしてもらうだけでいい』
「断ったら?」
『そうだな……』
俺はコイキングオヤジの挑発に答える形で、シャドーボールを形成した。
『死体が二つ程出来上がるかな』
「ななななぁ!?」
ライトがチビリまくっているが、気にしない。こういうのはビビらした方の勝ちなのだ。
「それは困るなぁ。お前さんの身体には興味があるが、儂とて死にたくはない。……ちょうど近々引っ越す予定だし、一緒に連れて行ってやらん事も無いが、どうするね?」
一方、コイキングオヤジは全くビビらず、マイペースに話を進めた。狸だな、こいつ。
まぁいいさ。何の目的があるのかは知らんが、利用できる物はありがたく使わせてもらう。所詮、人間なんて俺が力を取り戻す為の道具に過ぎないんだからな。
『……なら、一時的に世話を頼むとしよう。それで、行き先は何処なんだ? イッシュか? カロスか? それともガラルかね?』
俺はシャドーボールを引っ込め、対話に応じた。ライトがホッと一息吐いている。一生そうしてろ。
そして、コイキングオヤジは答える。湖で見せた時と同じ、怪しく胡散臭い笑顔で。
「全部外れだ。儂らが次の拠点とするのは「ティアーザ地方」。太古の精霊と外なる邪神たちが眠っていると言われる、暗黒大陸さ」
◆ポリゴンZ(ティアーザのすがた)
・分類:パラノイアポケモン
・タイプ:あく/どく
・性別:不明
・特性:クリアボディ/のろわれボディ/ダークメイカー(隠れ特性)
・種族値
HP:197
こうげき:3
ぼうぎょ:5
とくこう:193
とくぼう:5
すばやさ:142
・図鑑説明
異次元に潜む悪魔にして闇の化身。人の心を試し、誘惑に負けた人間を破滅へと導く。子供一人に負けてしまう程に脆弱な身体だが、内に秘める闇の魔力は膨大であり、負の感情を糧に何度でも蘇る事が出来るという。