ポケットモンスター カオス ~暗黒破壊神は陽の目を見たい~   作:ディヴァ子

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ダークザギ:「TSに目覚めたウルトラマンがいるらしい」


ザギの命、リリスの命

 そして、日が沈み月が上る頃(と言っても新月だから見えないが)、俺はようやくミュートシティに到着した。

 いやー、長かった。あのお馬鹿たちのせいで空路が使えなかったからな。

 つーか、何なんだよ、このアンラッキーは。どいつもこいつも死亡フラグを乱立しやがって。最後に憑依した御婦人なんて、最終的に持病でお亡くなりになったんですけど。俺のせいなのか?

 ……とまぁ、そんなこんなで、“面白いナニカ”があるらしいミュートシティへ辿り着いた訳だが。

 

『随分ご立派な都市だな』

 

 美しく巨大な入り江を囲むように高層ビルが立ち並ぶ中心街はまさに湾岸都市で、世界的に見てもかなり高度な経済都市でもある。ショッピングはもちろんの事、博物館やムービーシアターなど文化面でも充実しており、観ていて飽きない。さすがはニュージーランティスのナンバー2(ナンバー1はオーガランドシティ)。

 逆に中心街から外に出ると自然が溢れていて、それはそれでアウトドアな楽しみを得られる。散歩気分で雄大な自然を味わえるとか、何気に贅沢だよな。

 むろん、探せば珍しいポケモンとも出会える。島全体で環境保護に敏感なので、ガラルと同じく捕獲制限が設けられているが……。

 それにしても、何でわざわざオーガランドシティじゃなくて、こっちへ行くよう仕向けたのだろうか。ホル・ホースじゃあるまいし、素直にナンバー1で良いと思うんだけど。

 

『いや……』

 

 そうでもないか。

 確かに発展こそしているが、所詮はナンバー2。一番になり切れない燻った奴らが流れ着き、停滞している。こういう輩こそ、心に隙が出来易い。追うのと同時に追われる側でもあるからな。下手に頂点に立つより拗らせる事になるのだ……俺みたいにな。

 なるほど、そういう意味では面白い場所ではある。ちょうど、ビルの屋上で死にそうな奴を見付けたしね。

 

『なら、その身体はもういらないよな? ありがたく使わせてもらおう』

「あっ……が……!?」

 

 さっそく俺を上書き保存。今回は主導権を奪い去る完全な乗っ取りである。

 

『ピカァッ!』

『ピカチュウか。とりあえず、死んでおけ』

《いやぁあああっ、止めてぇえええええっ!》

 

 まぁ、意識だけは消さないで置いたがね。俺って優しい。俺が毒々食らわせてシャドーボールで甚振ろうと、ピカチュウは絶対に助けられんがな。

 大体、今更止めても何も無いだろう。自殺するって事はつまり、手持ちポケモンの所有権を放棄するって事だろうが。後追い自殺したり、無気力になって野垂れ死ぬとか、考えなかったのか?

 辛いからと逃げ出した時点で、お前に生きる資格を失ったんだよ。人生を歩む権利をな。孤門の爪の垢を煎じて飲ませるだけじゃ足りないから、最高の生き地獄を味わってもらおうか。俺の気が済むまで、ね……。

 さて、これで一応はこの世界の親(ポリゴンZ)への義理は果たしたし、今はこの新たな肉体を存分に楽しむとしようか。ポケモントレーナーとしてな。

 

『さぁて、まずは御三家の入手からかな?』

「お呼びかなぁっ!?」

『ドワォッ!?』

 

 意気揚々と別のビルに飛び移った瞬間、見知らぬ女に声を掛けられた。

 ウェーブの掛かった紫色のロングヘア―に、隈の寄ったグルグルな目、やたらと豊満な悩ませボディ。ORAS時のオカルトマニアと同類だ。

 だが、服装が大分違っており、黒い喪服に裾が七色に変色した白衣を羽織っている。手甲でも嵌めているのか、袖から見える手は悪魔のようだった。

 あと、何故か瓶底眼鏡を目ではなくゴーグルのように頭へ掛けている。お洒落のつもりか?

 何と言うか、オカルトマニアなマッドサイエンティストって感じである。誰だこいつは。

 というか、目撃者を生かしておくのはマズい。出会ったばかりだが、早々に死んでもらうとしよう。

 

『ハヴァァッ!』

「【アンチ・フィールド】展開!」

『ファッ!?』

 

 しかし、俺が放とうとした悪の波動は不発に終わった。女の翳した掌が青白く光っているので、あれが何某かの影響を一定範囲に及ぼしているのだと思われる。

 

『貴様……それは一体……!?』

「これは【アンチ・フィールド】。ポケモンの技と特性を無効化する装置。この私の最高傑作よ!」

 

 ええぇ、何それズルい……。

 でも、傑作ってのは頷ける。技はまだしも、特性を無効にされるのは痛い。特性ありきのポケモンは特にな。

 

「もっとも、種族ごとに効果がまちまちなのが弱点ね。どちらか片方、もしくは両方封じられない時もあるし」

『それって欠陥品なんじゃ……』

 

 チートとポンコツは紙一重って事か。俺ならいらないな、それ。

 

「何をぅ!? 今現在、完全に無力化されているお前が言えた事か!?」

『うっ……』

 

 そこを突かれると痛いな。

 俺の種族は元より、今入ってる器もまだまだ弱い。ポリゴンらしい特殊能力を封じられると、単なる女子中学生でしかないのだ。

 まぁ、あくまで(・・・・)ステータスの上では(・・・・・・・・・)、だけどな。

 

「フッフッフッ、どうやら理解したようね。私は今からキミを捕獲して、徹底的に調べ上げるわ。そして、私の長年の夢を、今度こそ実現するの」

 

 と、俺が押し黙ったのを良い事に、名前も知らぬマッド女が、勝ち誇ったようにウットリとした笑みを浮かべる。気分はおそらく最高にハイって奴だろう。この恍惚具合、未来日記とかで見覚え有るぞ。これヤバい奴だ。

 

『……夢って何だよ』

「キミ、「けものフレンズ」って知ってるぅ? “向こう側”でやってたアニメ」

『ああ、アニマルガールが出て来る奴ね』

「……キミ、意外とサブカル好きだよね?」

『ほっとけ』

 

 それはそうと、けものフレンズが何だってんだよ。俺も好きだけどさ。

 ちなみに、俺はアルパカが好きだ。是非ディンブラでロイヤルミルクティーを作って頂きたい。

 

「――――――あれ、ポケモンでもやってみたいと思わない?」

 

 マッド女は本日最高のオリジナル笑顔を浮かべた。駆け抜けるより逃げ出したいんですが。

 

『それ、ただの萌えモンじゃん……』

 

 萌えっ娘もんすたぁ。

 ポケモン擬人化の一ジャンルであり、明確なコミュニティを持つ一つの極致。単に擬人化した絵という訳ではなく、本家本元は改造パッチである事が特徴で、ようするにオタクの本気である。

 

「あ、やっぱりあるんだ、そういうの」

『人間の業は深いからなぁ……』

 

 萌えもんに限らず、ポケモンだけにも留まらず、古今東西いつの時代も人は「擬人化」というジャンルを発展させてきた。災害や疫病を“妖精”や“神”と言った形で落とし込む事から始まり、今では電車や戦艦ですら萌えの対象になる。まさに人類驚異の想像力だ。ある種の病気と言ってもいいかもしれない。それくらい人は擬人化に割と拘る。

 古代人が泥と遺骸から土人形(ゴーレム)を造り上げたように、人間は無意識に物事へ自分を投影してしまうのだろう。その方が分かり易いし、親しみを持てるからである。

 だからって、生きてるポケモンを擬人化の改造手術を施すのは、ただのショッカーだけどな!

 

『ちなみに、何でそんな事を?』

「そりゃもちろん、可愛い子たちとキャッキャウフフしたいからじゃない」

『欲望に忠実ぅっ!』

 

 駄目だこいつ、早く何とかしないと……!

 

「それに、これはソウイチロウ伯父さんを見返す為でもあるわ! あんなクソ生意気な小娘が後を継ぐなんて有り得ねぇ! ……この、私がっ! 宇宙ナンバーワン大統領将軍社長閣下様だっつぅ~のぉっ!」

『あのクソオヤジがぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!』

 

 マッド女の発言に、俺は頭を抱えて盛大に叫んだ。

 何が面白い事があるだよ、つまりは面倒臭い親戚の始末を押し付けただけじゃねぇか、ふっざけやがってぇっ!

 

「という事で、大人しく捕まってちょうだい。私の栄えある未来の犠牲になるんだから、嬉しくて仕方ないでしょう?」

『どういう理屈だよ……』

「萌えもん、ゲットだぜぇっ!」

『俺は萌えもんじゃねぇっ!』

 

 タグ付けはしっかりしましょう。

 

『……勘違いするなよ?』

 

 勝ったつもりになるのは、まだ早いぞ。

 

「ハァ~ン? 何を訳の分からない事を。キミは今、全ての能力を封じられてるんだよ? 見た所、人間に憑依しているだけみたいだし、その程度じゃあ、この窮地を乗り越えられなぁぎぇえええええぃっ!?」

『調子に乗るなよ、三下が』

 

 それでもドヤ顔を続けられたのがムカついたので、マッド女に現実を教えてやった。

 すなわち、一本背負いで叩き伏せた後、腕ひしぎ十字固めを食らわせて差し上げた。

 ――――――確かに、今の俺は超能力の欠片も無い、ただの女子中学生でしかない。

 だが、俺には万年単位で蓄積された戦闘経験がある。力が無くても、身体が使い方を覚えている。

 そもそも、俺は少し前までTLTのナイトレイダーだったんだぞ。対人戦闘の訓練を受けていない筈がないだろうが。人類は防衛の対象であると同時に、病原体(きょうふ)の媒介者でもあったからな。“免疫”も任務の内なのだ。

 ようするに、その辺の小娘一人くらい、身体一つで無力化出来るって事だよ。防衛軍舐めんな。

 

「あだだだだだだっ! ギブ、ギブぅっ! ギブミーフォーエバー!」

『最初からそうしてればいいんだよ』

 

 俺はマッド女のギブアップを認め、【アンチ・フィールド】のシステムを切らせた上で解放してやった。少しでも変な動きをしたら、今度は折るからな。

 つーかさ、

 

『……よし、それじゃあ殺すか』

「ええぇっ!?」

 

 折る折らない以前に、目撃者は消さにゃならんのだよ。

 

「ままままま待って下さイーッ! 何でもしますからお許し下さぁぁあああい! 何なら、御三家ポケモンを只でプレゼント致しますからぁ! もしくは脱ぎますよ!? サービスしますよぉぅ!? パフパフですよぉおおっ!」

 

 すると、マッド女が見事なまでの土下座を決め、恥も外聞も気にしない、見っともない命乞いをし始めた。何だこの糞ビッチは。確かに身体は良いけど、鏡見ろって話だし、俺の器は女なんですけど。

 ……いや、待てよ?

 

『お前、御三家用意出来るのか? ポケモン図鑑も?』

「へっ? あ、はい。これでも一応、博士号とか持ってるので。表立った研究所はまだ無いですけど……」

 

 おお、何のかは知らんが、博士号まで持ってるのか。意外と凄い奴じゃないか、こいつ。研究所が無いのはアレだ、危ないからだな。どう考えてもマッドの類だし。殺っちゃった方が世の為、人の為、ポケモンの為なのは確実である。

 しかし、このマッド女を生かしておけば、労せず御三家ポケモンと図鑑をゲット出来る。この器、ピカチュウしか持ってなかったからな。貰える物はキッチリ頂いておきたい。

 

『お前、名前は?』

「アマリリスです。リリスって呼んで下さい!」

 

 第二使徒かお前は。淫魔の総元締めみたいな仇名で良いの?

 

『よかろう、リリス。殺すのは勘弁してやろう』

「おおっ、マジですか!」

『その代わり、お前はこれから俺の奴隷だ。精々俺の為に働くがいい。その知識と技術を活かしてな』

「………………」

『返事は?』

「イェッサー!」

 

 こうして、俺は新たな器に加えて、奴隷を一匹確保した。何か疲れた……。




◆ティアーザ地方

 赤道付近に存在する、「暗黒大陸」アザスト大陸と「鳥の楽園」ニュージーランティス諸島からなる地方。絶海の孤島故の珍しいポケモンが見られる一方、今では見られないポケモンも沢山いる。
 アザスト大陸は全体的に乾燥しており、大陸の約半分が完全無人地帯「ドリームランド」となっている。資源輸出と観光事業で成り立っている為、経済的に脆い弱点があるほか、移民に伴う人種問題や環境破壊など、内に抱える問題も多い。治安は低めで、場所によっては犯罪者の巣窟になっている事もある。
 ニュージーランティス諸島は日本よりも緩やかな四季のある温暖な地域で、多種多様な鳥ポケモンが生息している。住民と政府の努力により自然と上手く共存しているものの、国力がそこまで高くないので、輸入がストップすると一気に干上がり兼ねないのが難点。世間的には「安全な国」で通っているが、あくまで“バレていないだけ”で、普通に犯罪は起きている。
 本来は異世界のオーストラリアやニュージーランドと同じ配置だったのだが、神話に語られる太古の聖戦により、今の三日月のような形になったらしい。
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