ポケットモンスター カオス ~暗黒破壊神は陽の目を見たい~   作:ディヴァ子

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ダークザギ:「彼は薬を打って変わってしまった」


タスマニーから来た暴れん坊

《本日未明、ミュートシティ第9地区にて、指名手配中のヤガミ・サレーナ・ウー容疑者(年齢:内緒)が遺体となって発見されました。ヤガミ・サレーナ・ウー容疑者は過去に人体実験を行った事により――――――》

 

 爽やかで健やかな朝に似付かわしくないニュースが、公衆テレビで放映されている。画面には金髪黒目の可愛らしい女性が、デカデカと映し出されていた。

 

『……お前、そんな本名だったのか』

「そうよ。だから、今の私はアマリリス・ヒペアストルム。それ以上でもそれ以下でもないわ」

『その顔は、整形でもしたのか?』

「弄ったのは髪の毛と瞳の色だけよ。色を戻せば、あのクローンと同じ顔になるわ」

『……嘘吐いてない?』

「大マジよ、失礼ね!」

 

 それを遠巻きに眺めながら歩く、ちょっと怖い美女が二人。もちろん、俺とリリスだ。

 俺はいつも通りの格好だが、アマリリスはジャパリパークのパークガイドみたいな恰好をしている。何だお前、ミライさんのファンなのか。

 そんな俺たちだが、今は朝食後の散歩をしている(ご飯はファミレスのモーニングメニュー)。腹を熟しつつ、ちょっとした観光である。ミュート博物館は興味深く、ジョウト・ベイは元カントー民から見ても奇麗だった。たーのしー。

 とは言え、何時までもブラブラしてはいられないのだが。御三家育てなアカンし。

 

『さて、まずは何の薬を買うかだな』

「一等最初に薬漬け宣言て……」

 

 何を言う。育成とは科学だ。闇雲に鍛えればいいという訳ではない。整った環境と適切な処置を施す事で、初めて身体は出来上がるのである。

 特にポケモンは伸ばせる能力に限りがある。努力値は普通510ポイントまでしか溜められず、一つの能力につき252ポイントまでしか振れない。4ポイントでステータスが1上がる関係上、無駄な数値がどうしても出てくる。それらを上手く調整して役割に特化した能力を持たせるのが、トレーナーとしての腕の見せ所だ。

 一応、栄養ドリンク以外にも戦闘経験でも積み重ねる事が出来るものの、バラつきが出てしまう。その癖、大した効果が見込めないのだから、積極的にやる意味はない。

 ま、あくまで肉体造りの話であって、精神面はまた別だがね。調整された個体ってのは、逆境に弱いからな。プロメテの子とかね。

 ようはバランスが大切なのだ。身体だけでも、心だけでもいけない。最強無敵(笑)の溝呂木くんとか、良い例だよね。あいつ戦闘能力はナイトレイダー最強だけど、メンタルはおそらく最弱クラスだし。

 そう、心身共に成熟してこそ、本当の強さが身に付くのである。そこに人もポケモンもウルティノイドも関係ない。

 

『そうなると、まずは誰かからカツアゲしなきゃいかん訳だが』

「発想がチンピラなんですが」

『ポケモンが関わらなければ差して変わらんだろう』

「それを言っちゃお終いだと思うんだけど」

『さーて、何処かにいいカモいないかなー?』

「聞けよ」

『だが断る』

「だが断られた……」

 

 そんな事よりポケモンバトルだ。おう、あくしろよ。

 しかし、目と目がってもバトルを始めるような奴は見当たらなかった。

 

「……さすがに街中じゃ無理があるんじゃない?」

『やっぱり外に出なきゃいかんか』

 

 それじゃあ、ちょっくら野外へ繰り出しますか。

 という事で、俺たちはR-1番道路に足を踏み入れた。隣町であるダイパシティと繋がる一本道で、マサラタウンの1番道路に相当する。途中、小さな町や森林地帯があるので、良い修行場となるだろう。

 ま、俺にとってはカモネギ探しでしかないがね。

 

「おい、そこのお前!」

 

 と、さっそく勝負を仕掛けられた。

 

「お前……ザギだな! 目を見りゃ分かるぜ!」

『何でお前がここにいる……』

 

 それは、よーく見知った短パン小娘、ヤガミ・ライトだった。何でいるし。

 

「いやー、父さんの手伝いもいいけど、お前の話を聞いてたら、ちょっと冒険してみたくてな!」

『そりゃあ、ようござんしたね』

 

 あんな話題でよく食い付く気になったな。俺、ポリゴンZの話しかしてないと思うんだけど。

 

「だから、父さんに頼んだら、OK貰えたんだ。“研究者たるもの、まずはフィールドワークからだ”ってね。ザギと一緒にいるのが条件だけど」

『あのコイキング馬鹿めが……!』

 

 リリスだけじゃ飽き足らず、愛娘までぶん投げて寄こすとか、ふざけているにも程がある。可愛い子には旅をさせよ的なアレか。ガッデェ~ムッ!

 

「――――――って言うか、あれ? そっちのお姉さん、サレナお姉ちゃんに似てるような……?」

「さ、さぁ、何の事かしら!? 私はアマリリス・ヒペアストルムよ!? 勘違いじゃないかなぁっ!?」

 

 というか、ついさっき身代わり(クローン)を使ってまで社会的に死んだリリスの正体が見破られるのはマズい。ここはさっさとお暇を――――――、

 

「まぁいいや。それより、勝負しろよザギ。お前も持ってるんだろう、ポケモン。オレも父さんから強いポケモン貰ったし、元々の手持ちもある。勝ったら、父さんから貰ったポケモン栄養剤セットをくれてやるぜ!」

『よし、勝負だ』「えっ、マジで!? 逃げないの!?」

 

 何を言うか。トレーナー同士、目と目が合った時から勝負は始まっているのだ。

 そう……決して薬欲しさにポケモンバトルする訳ではない、これは仕方の無い事なのである。ちょちょいと揉んで(胸じゃないし、あいつまだ胸ないよ)、さっさと努力値調整を済ませてしまうとしよう。

 さぁ、大人しく鴨鍋になるがいい!

 

「『勝負!』」

 

 ――――――短パン小僧のライトが勝負を仕掛けて来たっ!

 

『行けっ、ウルフル!』「頑張れ、イワンコ!」

 

 俺はウルフルを、ライトはイワンコを繰り出した。いきなり不倶戴天の敵同士かよ。レベルはどちらも5。相性的にはこちらが不利だ。

 とは言え、向こうはまだいわ技を覚えていない。技マシンや技レコードを使っていなければね。

 

「イワンコ、「たいあたり」!」

 

 思った通り、ノーマル技だけのようである。それはこちらも似たような物だが、一つだけ明確な違いがある。

 それは、イワンコがその辺のポケモンなのに対して、ウルフルは立派な御三家の一匹という事だ。

 

『ウルフル、「すなかけ」!』

 

 とりあえず、砂掛けで目潰しでもしたろ。

 

「甘い! そのまま突っ切って「たいあたり」!」『イワンッ!』

『ウルッ……!』「ちっ、特性は「するどいめ」か……」

 

 砂は命中したが、瞬膜のような物でガードされ、イワンコの体当たりが炸裂した。吹っ飛ぶウルフルだが、大したダメージではない。このままやり返す。倍返しでなぁ!

 

『ウルフル、「ひのこ」!』『ウルルゥッ!』

『イワァァク!』「イワンコ!?」

 

 よし、直撃。攻撃の直後だから、これは躱せまい。

 しかも、上手いこと火傷も負った。このまま押し切ってやる!

 

『ウルフル、連続して「ひのこ」だ!』『ウルァアッ!』

 

 ウルフルの火の粉の連打がイワンコに当たる。

 そう、これが御三家の力。低レベルでタイプ一致技を習得出来るのである。所詮火の粉だが、ノーマル技を仕掛けるよりは効き目があるだろう。

 

『キャイン……!』「くそっ、戻れイワンコ!」

 

 手負いでは回避もままならず、いわタイプとしては防御性能の低いイワンコは堪らずダウン。ウルフルに軍配が上がった。ついでにレベルも1アップ。少しだけ強くなった。

 

『ウル~ン♪』『よし、良くやったぞ、戻れ』

 

 だが、こちらも手負いである事には変わりが無いので、一先ず引っ込めて次に備える。

 

「次はお前だ、ゼニガメ!」『ゼニィッ!』

『クラトン、行って来い!』『クラァ~!』

 

 次のカードはゼニガメとクラトン。これまた5レベルの天敵同士。嫌がらせかな?

 今回は御三家同士の戦いだが、やっぱりこっちの方が不利だ。どちらも水鉄砲を持っているが、こっちだけ等倍ダメージなんだからな。その上、速度で負けてるからダメージレースでも勝ち目がない。

 

「ゼニガメ、「みずでっぽう」!」『ゼニッ!』

 

 やっぱり先制された。そりゃそうじゃ。

 

『クラァ!』

 

 鈍いクラトンは回避も出来ず直撃し、

 

『クラァ~ン!』『おい』

 

 泣き喚いて戦闘を放棄した。そんな事だから絶滅したんだよ。こいつ、後でお仕置きだな。

 

「何だよ、情けない奴だな!」

『言ってやるな……』

 

 大丈夫、俺もそう思ってるから。

 

「よし、よくやったぞゼニガメ!」『ゼニゼニィ!』

 

 無邪気に喜びやがって、ムカつくなぁ!

 ともかく、これで1:1。ウルフルは戦力に数えないとして、残るはラストの一匹か……。

 

「次は俺のフェイバリットだ! 行け、コイキング!」

『最後はお前だ、ハウボル! 狩って来い!』

 

 そして、お互いに最後のポケモンを繰り出した――――――って、パープルジラフのコイキングだとぉ!?

 しかも、15レベルって。こいつだけ明らかに強さが違うぞ。こいつアレだな、ソウイチロウから譲り受けた奴だな、絶対そうだ!

 しかし、どんなにレベルが高かろうと、所詮はコイキング。タイプ的にも有利なハウボルが負ける筈が……。

 

「コイキング、「りゅうのいかり」!」『ゴァアアアッ!』

『何でだよぉ!? 避けろ、ハウボル!』『ボルァアアン!』

 

 まさかの龍の怒りをぶっ放して来やがった。何でポケカの技覚えてるし。このレベルで龍の怒りなんて食らったら即死するだろうが!

 だが、ハウボルはギリギリで躱してみせた。素早さは無いに等しいこいつだが、初期技で転がるを覚えている。今回は攻撃ではなく移動手段として使ったのだ。何かドロイディカみたいだな。

 しかし、避けるだけでは勝てないし、奴さんも座して見ているつもりはないらしい。

 

「撃て撃て! 「りゅうのいかり」からの「ハイドロポンプ」だぁ!」『ゴィィイイッ!』

 

 龍の怒りどころか、ハイドロポンプまで織り交ぜて来た。砂が舞い散り、水飛沫が上がる。

 

『クソッ、とにかく今は逃げろ!』『ボルボルゥウウッ!』

 

 そんな猛攻の中、ハウボルは転がって逃げ続けた。よくやっているが、このままではじり貧だ。

 うーむ、どうした物か。こっちの技は木の葉と砂掛けくらいしかない。命中率を下げてくさ技でダメージを与えていくのがベストだが、問題はその隙が無いという事である。こんな暴風雨の中で足を止めたら、一瞬で薙ぎ倒されてしまう。

 

『いや、待てよ……』

 

 さっきからコイキングが散水しまくっているおかげで砂が濡れ、辺り一面泥だらけだ。

 

『――――――ハウボル、「どろかけ」だ!』『ボルゥッ!』

 

 俺の指示を受け、ハウボルはコイキングに泥を掛けた。転がりながら。

 砂を掛けられるなら、泥を撒けない道理はない。スリップをし兼ねない危険な賭けだが、どちらにしろ悠長に砂掛けを食らわせている余裕は無いのだから、こっちも勝負を仕掛けるべきだろう。

 

『ギャォオオオオオッ!』

 

 泥を目に掛けられたコイキングが、ギャラドスみたいな悲鳴を上げてる。将来が心配だな。

 

『よし、まずは撥ね飛ばせ!』『ボルァッ!』

 

 コイキングがラピュタの末裔になっている間に、転がるを数回叩き込む。

 

「コイキング、しっかりしろ! 「りゅうのいかり」!」『ゴァアアアアッ!』

『……今だ、「このは」を叩き込め!』『ハウボルンッ!』

 

 さらに、どうにか反撃しようと龍の怒りを撃ち出した瞬間を狙って、木の葉を叩き込んだ。目もロクに見えない状態で乱れ撃ちなど、素人のやる事だぜ。

 

『もう一度、「このは」!』「「ハイドロポンプ」!」

 

 そして、最後の一撃が交錯し……コイキングだけが倒れた。ハウボルも僅かに掠ったが、等倍ダメージしか受けないんだよ。ましてや直撃しないとなれば、倒れる理由は無かった。

 さすがにレベル差があったから、瀕死寸前になってしまったがね。

 

『よくやったぞ、ハウボル』『ボルボル~♪』

 

 うんうん、今日のMVPは確実にお前だな。後でいっぱい薬をあげよう。

 

『さぁ、賞品を頂こうか!』

「うぅぅ……うぁあああああああああああん!」

 

 だが、薬をくれる筈のライトは、コガネシティのトラウマ娘が如く大泣きし始めた。

 

「ザギがイジメるぅううううううっ!」

 

 さらに、大変失礼な事を言いながら逃亡を図りやがった。悪足掻きしやがって!

 

『おい、人聞きの悪い事を言うな! つーか、何処へ行く! 待ちやがれこの野郎! (ヤク)よこせ、(ヤク)を!』

「チンピラどころかヤクザもんなんですけど!? ……あ、ちょっ、待ってよ!」

 

 仕方が無いので、俺たちは後を追った。どうやら森に逃げ込んだらしい。それが女子の逃げ込む場所か。

 

『あの馬鹿め。遭難されても面倒だ。さっさと――――――』

 

 とっ捕まえよう。

 そう言おうとして、言えなかった。何故なら、

 

「きゃああああああああああっ!?」

 

 ライトとの物と思しき悲鳴が聞こえて来たからである。

 

「ザギ、これは……」

『ああ……』

「『このままじゃ、薬(金)が手に入らなくなる!』」

 

 俺たちはその森――――――「オルタリカの森」に突入した。




◆ヤガミ・ライト

 天才的発明家にして優秀な科学者、ヤガミ・ソウイチロウの養女。
 物心が付く頃には既に天涯孤独の身であり、ありとあらゆる手段を講じて生き延びて来たが、ある日盗みに入った家がソウイチロウの研究所で、その度胸と知恵を見込まれて迎え入れられた。口は悪いが、かなりのファザコン。
 彼女の出生には謎が多く、本人すら知らない多くの秘密を抱えている……。
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