シャングリラ・フロンティア 赤猫亭の冒険   作:タマヤ与太郎

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大分遅れましたが2話です。ようやっと表題の【赤猫亭】メンバーが揃いました。


2:女4人も寄れば喧しい

 

 

< 赤猫亭

 

ミオ:緊急事態発生、浮上出来次第クランハウスに集合

 

ライア:なになに、何かユニークでも出たの?

 

ユイ:何かトラブルでもあったの……?

 

ミオ:征服人形と契約した

 

ライア:え

 

ユイ:えっ

 

ライア:まじで? ミオそういうの興味ないわー婚活必死過ぎwwwwとかいってたじゃん

 

ミオ:そこまでは言ってない。あとでケツバットな

 

ライア:横暴だー! あと包丁の腹でフルスィングするのはケツバットって言わない

 

ミオ:黙れスタングレネード。私のユニバースでは言うんだ

 

ユイ:えーと……それで、その事で集合、でいいのかな

 

ミオ:それも含めて今後の方針について話し合いたい

 

ライア:おっけ

 

ユイ:うん、早めに上がるね

 

 

 

マナ=289と契約した次の日の朝。前線拠点に戻った後ログアウトしたミオ……

本名・三上(みかみ) 澄火(すみか)は、

幼馴染でありクランメンバーである2人に連絡を済ませ、

感慨深げにため息を一つついた。

 

「まさか征服人形と契約することになるとはな……」

 

三上澄火ことミオはシャングリラ・フロンティアのプレイヤーとしては古参の、

サービス開始当初からプレイしているプレイヤーだ。

『黒剣』『午後十時軍』のようなトッププレイヤー達にこそ及ばないが、

幼馴染(クランメンバー)達と共に新大陸に踏み込み、

レベルキャップの開放も済ませたひとかどの開拓者である自負はある。

サンラクの連れていた征服人形、サイナを始めとする征服人形たちについても、

契約をするために血道を上げることにこそ興味はなかったが、欲しくなかったと言えば嘘になる。

 

しかし、各タイプに出会う確率、そして出会えても相性次第では契約もできないとあり、

半ばあきらめていた所に今回の件。棚から牡丹餅と言っても過言ではないだろう。

正直浮かれている。口の端が吊り上がるのを我慢できない。

マナ=289の前でこそむっつりと押し黙っていたが、

契約を打診された時は笑みを堪えるので必死だった。

 

「……少しは、愛想よくした方がいいだろうか」

 

ちらりと部屋の隅にある姿見に目をやれば、口の端が吊り上がった自分が見えた。

寝起きのままだったのでぼさぼさの寝癖頭に、

目つきの悪い仏頂面が常と化した化粧っ気のない顔。

同年代と比較しても小柄でスタイルも控えめ、顔立ちはまあ整っていると思える程度か。

あまり自分の身なりや言動に頓着のない澄火であったが、

これからNPCと長く付き合っていくには、

わずかばかりでも愛想よくした方がいいかと自問し……

 

「……うむ、無理だな、人間染みついたものは抜けん」

 

自嘲気味に苦笑し、姿見から視線を外す。

昔から前から数えた方が早い体格のせいでからかわれることが多く、

舐められないようにと強気で、威圧的にと努めてきた結果、いつしか素と化した。

 

「まあ、治る気も治す気もないがな。あるがままにだ」

 

ふん、と鼻を鳴らして部屋を出る。今日は休日、

15歳、まだ学生の身分と言えど大手を振ってゲームをしていい日だ。

とはいえ栄養補給もトイレ休憩もなしにプレイできるほど甘くはない。

まずは朝食を、と台所に向かい、丁度朝食を作っていた母と談笑しながら朝食。

手早く済ませ、家業である食堂の方に顔を出し、仕込み中の父に挨拶してから部屋へと戻った。

 

「……さて」

 

ふんす、と鼻を鳴らし、シャングリラ・フロンティアを起動。

澄火の意識はVRマシンを介し、開拓者・ミオへと変換されていった。

 

 

 

 

「――――――む」

 

確認(あっ)契約者(マスター)、おはようございます!」

 

「うむ、戻ったぞ」

 

むくりとベッドの上で体を起こせば、傍らの椅子に座っていた征服人形(コンキスタドール)が朗らかに笑う。

そのシルエットには四肢があり、襤褸切れのようだった衣服は新調したのか、

ダイバースーツの上から軍服を羽織ったような恰好へと様変わりしていた。

髪型もきちんと整えられており、青みがかった黒髪をうなじで縛り、

初対面の時の土左衛門のような有様が嘘のようだ。

流石に口には出さなかったが。

 

「新しい手足の調子はどうだ、過不足ないか?」

 

肯定(はい!):破損した装備、および地上活動用の各種装備の補充は完了しています。

 外に出ていた時、何かと声をかけられたのはちょっと大変でしたけど……」

 

「マナ型、だったか。あまり人前に出てこないタイプの奴らなんだろう?

 物珍しさから自分もワンチャン契約できるんじゃ、と思う輩もいようさ。

 ……ふむ、そうだな。289……ツバ……」

 

契約者(マスター)? 私が何か?」

 

「名前だ。お前の固有名称。マナ=289などと何度も言ってられんからな。

 ……ちと苦しいが、ツバキ。今からお前の名前はツバキと呼ぶ」

 

その宣言を聞いたマナ=289……ツバキは一瞬きょとん、とした後、

意味を理解したのかぱぁ、と華が咲くような笑みを見せた。

 

感謝(ありがとうございますっ!):不束者ですが……」

 

「まあ、なんだ。喜んでもらえたようで何より。そういえばツバキ、

 私が戻る前に誰も来なかったか?」

 

思案(えーっと):特に来客などはありませんでしたけど」

 

「ならいい。ツバキ、これから私の仲間と引き合わせる。

 クランメンバー……と言って分かるかは知らんが、とにかく仲間だ。

 一応顔を覚えておけ」

 

了解(はい)契約者(マスター)のお友達ですか……

 どんな方々なんでしょう?」

 

その問いにミオは宙を見つめ、少し考えた後に口を開く。

 

「一人は大人しい魔術師だ。人当たりも良い。一応な。

 もう1人は……たとえるならスタングレネードだ」

 

疑問(あのー)音響手榴弾(スタングレネード)は人物評として不適当では?」

 

「会えば分かる。リビングで待つぞ、ついてこい」

 

ミオはベッドから飛び降りると、

未だ頭上に疑問符を浮かべたままのツバキを連れて個室から出た。

 

 

 

 

リビングで待つことしばし。

この家は台所のついたリビングの三方に個室、一方に出口、という構造をしている。

3つの個室の内、ミオたちが出てきた方以外の部屋の扉が開き、2人の開拓者(プレイヤー)が現れる。

 

「あ、ミオちゃん、おはよう。その子が例の?」

 

1人は見るからに魔術師然とした恰好の、大人しい印象を受ける少女。

 

「おっはよー諸君! うお、ほんとに征服人形じゃん、見たことない型の子だ!

 こういう子も爽やかスポーティーな感じでいいねえ……ふむぐっ」

 

もう1人は鍛冶職人や溶接工といった風体の、元気という言葉を練って固めたような印象の少女。

こちらはツバキを無遠慮にじろじろと観察していたためにミオに押しのけられたが。

 

納得(なるほど)スタングレネード(あかるくてうるさい)……」

 

「だろう? ……さて、各々揃ったな。新入りもいる、自己紹介から始めよう。

 クラン【赤猫亭】クランリーダー、ミオだ。こんななりだが前衛を張っている」

 

ミオが腕組みをしながら呟き魔術師の少女に視線を向ければ、少女はこくんと頷いた。

 

「わたしがサブリーダーのユイ。魔法使いだよ。ミオちゃんはこうとっつきづらいかもだけど、

 ちょっと素直じゃないだけだからきにしないであげ「うるさいだまれ」……ね?」

 

「相変わらずツンデレかましてますなあミオは! ……どうどう剣を抜くのはなしよリーダー?

 あ、あたしはライア! 鍛冶師だよ! ミオの武器はあたしが作りました!

 一応あたしもサブリーダー! まあクランメンバーあたしらしかいねーけど!」

 

大笑いするライアに唖然としながらツバキが周囲を見れば、

確かに各メンバーの個室が3つしかなければ、家具も3人分しかない。

 

「このクランはいわゆる身内団というやつでな。大勢の寄り合い所帯なんてものは、

 やりたい奴だけがやればいいのだ。……さて、ツバキ、お前の番だぞ」

 

了解(はいっ):マナ型征服人形製造番号289、機体名称[マナ=289]、

 先程契約者(マスター)ミオから固有名をいただきまして、ツバキとお呼びください!」

 

「よろしくね、ツバキちゃん」

 

「よろしくー!」

 

各々の面通しを終え、奥から持ってきた予備の椅子にツバキを座らせ、

改めてミオは立ち上がり周囲を見回す。

 

「さて、これで面通しが終わったわけだが……今後の方針について話し合いたい。

 現状我々『赤猫亭』は密林を越え、その向こうにある各種異種族の、

 もっと厳密に言えば鉱人族(ドワーフ)の住む山へと向かうべく攻略を進めていたわけだが……

 これを一時中断したい」

 

鉱人族(ドワーフ)。新大陸に点在する異種族の1つで、

両腕が金属で構成されており、鍛冶に高い適性を持つ。

時折前線拠点に訪れる魚人族(マーマーン)の戦士ル・アラバの持つ大太刀「大海峡」を始めとし、

数々の業物を作った種族としても知られている。

また、新大陸で可能になった要素の1つ、種族変更を行う『改宗(コンバージョン)』により

プレイヤーも鉱人族へとなれるとあり、

生産職、特に武器防具を扱う者達ににわかに人気が出てきている種族でもある。

そこへと到達するための攻略を中断する、とあれば、仲間内から不満の声も出よう、

と覚悟していたミオだったが、

返ってきたのは肯定的な返事だった。鍛冶職のライアからもだ。

 

「ミオちゃんが理由もなくこういうこと言う訳もないし……なんとなく理由も察したし、ね」

 

「そうそう! 当てて進ぜよう……ずばりリヴァイアサン攻略に乗り出すんでしょ!」

 

リヴァイアサン。ユニークモンスター・天覇のジークヴルム戦の後に現れた巨大な鉄の鯨。

元々は星の海を渡りこの惑星、シャングリラ・フロンティアへとやってきた

3つの移民船の1つで、

現在は今も稼働する神代の技術をふんだんに使ったダンジョンとして開放されている。

その思惑を当てられ、ミオの頬がにやりと吊り上がった。

 

「ご名答だ。説き伏せるつもりではいたが、ライア、お前には反対されると思ったがな?」

 

「ちっちっち、他ならともかくリヴァイアサンなら大賛成さ!

 何せあそこには今も稼働する神代の技術がある!

 ならつまり、あたしのもう1つの目的を果たすに不足はないということさ!」

 

「ああ、そう言えば隠し職になるのに神代のアイテムがいるんだったっけ、ライアちゃん」

 

「おうともさ!」

 

かつて鍛冶職がたむろする掲示板に投下されたいくつかの爆弾、

そのうちの1つ、隠しジョブ『古匠』。

神代系のアイテム分析に有用な初期職業、考古学者から派生するジョブで、

ツチノコことサンラクも愛用する武器群、甦機装(リ・レガシーウェポン)制作に必須とあり、

鍛冶職が血眼になって転職用アイテムを探し回っている。

 

「まあ詳しい条件はちょっとよーわからんけど、

 神代の機構が今も残るリヴァイアサンならなんか分かるっしょ。

 後単純にあそこめたくそ楽しそうだしさー。

 気分転換がてらに行くのも良いよね。確か征服人形用装備とかあるしあそこ」

 

「え、そうなの?」

 

「どうも正規品ではない臭いけど互換性はあるらしいよ? 

 正規品じゃないとはいっても征服人形の製造元と同じ技術だろうし、

 しっかり動作はすんじゃないかな」

 

「ああ、その話は私も聞いていた。

 それもあるし……私のいきたい理由としては半分がたライアの強化と息抜きのためだ。

 ライアの作った武装は私が使う事になるし、正直攻略も行き詰っていた。

 ライアを強化し、そうして作られた装備をもって密林攻略の足掛かりにしよう、という訳だな。

 あと半分はツバキの強化だ。基本的な装備は取り戻したようだが、

 リヴァイアサンならさらなる武装強化も望めよう。

 というわけでだ、これより我ら【赤猫亭】はリヴァイアサン攻略に乗り出す!

 各員の奮起を期待する!」

 

「「「了解(ラジャー)!」」」

 

かくして、征服人形ツバキを含めた【赤猫亭】4名によるリヴァイアサン攻略がはじまるのであった。

 

 




【赤猫亭】メンバーは親の代から付き合いのあるガチ幼馴染3人です。
ライアんちが自動車修理工、ユイんちが農家。

2話のお届けが大分遅くなりましたが、諸事情で3話もちょっと遅くなりそうです。
Pixivの方の某お祭りがありまして……合間合間でちまちま書き進めていくつもりでは居りますが。

見切り発車で始めた作品ですが、どうかよろしくお付き合い願えれば。
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