新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
今回は前回からの続きとなっておりますが、全パートにてとあるキャラがメインです。割と本気で時間がありませんでした申し訳ないですm(*_ _)m
それではスタートです。
「……結構買ってしまったな」
氷川家にて六年ぶりの再会を済ませた僕は、洸夜たちからの頼みで、夜の街中へと出て買い物をしに来ていた。元はと言えば僕から頼み込んだ事なので、一人で何かをすると言う事に関しては特に何も気にしていなかった。
むしろ、咎めたいのは出発前に此方をニヤケ顔で見ていた日菜の方だったりするのだが……あの様子だと始めから僕を働かせるつもりだったのか、と疑ってしまうのだった。
「まあ、これから一人暮らしをするから、それを鑑みての買い物と思えば何ら不思議も何も無いけど……」
そう思いながら両手に重たい買い物袋を持ちながら歩いていると、通っている道の左手側の方に、一軒のコンビニがあるのが見えた。
「……やめた。この状況でさらに買い物をする気にはなれんよ。三人が待ってるし、今日は素通りさせて貰おう」
「えー、買っていかないのー? 今ならお客さんも少ないから、手早く終わると思うんだけどなー☆」
「そう言う訳にも行かないの。とりあえず、僕は人を待たせてるから」
「じゃあ……アタシが片方持ってあげる。ちょうど帰り道だったしさ、乗りかかった船なら乗らなきゃ☆」
そのコンビニを横目に見ながら帰っていると、突如として左手に何やら握られた様な感覚があった。それに対して苦言を呈しはしたのだが、まるで聞く気が無い様な対応だった。
……はぁ、どこまで言っても聞いてくれない人も居たもんだ。僕としてはこの人に構ってる暇なんて無いんだが。
その人は、優に腰まではありそうな長い茶髪をハーフアップにしていて、恥ずかしげも無く肩を全て出している、露出度が高めな服装をしていた。さらに両耳にはピンクの兎のピアスが着けられていて、一目で『ギャル』だとわかる人だった。
それに、この人がさっき言っていた言葉の内容が少し気になる。……まさか、あのコンビニで働いてる店員さん? いやいや、そうだとしたら冗談だし、信じられるはずが無い。
「む、今失礼な事考えたでしょ。アタシ、見た目で勘違いされる事があるから慣れっ子だけど、健全な普通の女子高生です〜。更に言うなら、あそこはアタシのバイト先だし」
……なぜわかった?
「……何が目的なんですか? 金銭面に関してのお話でしたら、どうぞ他を当たって下さい。僕には関係ありませんので」
「だーかーらー、今から帰ろうとしてる所をキミが通りかかったから、もしアタシで良ければ手伝おうかなぁ、と思ってるだけなの!」
「そうだとしても、こんな夜更けにそんな申し出を受諾できるはずが無いでしょう。それに、初対面の相手にそこまでさせるのは申し訳無いというか」
一向に引き下がる気の無いその女性に対して、僕は少し強めに言い返す事にした。さすがに人を待たせている都合上、この人と言い争っている時間がかなりの無駄となっている。そんな状況でここまで言われたのなら、此方もそれ相応の態度と言う物があるはずだ。
……と、思っていると。
その人は僕から少し離れたかと思うと、肩に提げていたバッグの中を探り始め、それを取り出した後にある操作をし始めた。そしてそこに写っていたのは……僕の予想を遥かに超える物だった。
「これ、だ〜れだ♪」
「……っ!」
その画面に写っていた物と言うのは、幼少期の頃の僕の写真だった。目の前に居る彼女が絶対に持ち得ない物であり、それは家族や幼馴染しか知らない姿だ。
僕の驚く表情を見た女性は、次々に画面を横に弾いて写真を見せて来る。……やられた!
「アタシ、日菜からキミの話は聞いててさ……その時にグイグイと話されたもんだからね〜。キミに興味があって、何枚か譲って貰っちゃったんだ〜。ごめんね☆」
「……なるほど、発端はアイツか」
僕は心の中で、その女性に写真を軽々しく送り付けた元凶へと怒りを飛ばす事にした。まあ、アイツに関して言うなら、この程度の事くらい何でも無い様に躱すのだろうが。
「あ……そう言えば、お互いに自己紹介をしてなかったんだった。アタシ、今井 リサって言うんだ。よろしくね☆」
「まあ、知ってるならあまり言いませんけど……念の為に自己紹介を。僕は盛谷 颯樹、よろしくお願いします。今井さん」
「そんな硬っ苦しくしないでよー。アタシとキミは同い歳くらいだろうから、敬語は無し!気軽にリサって呼んでよ♪アタシも『颯樹』って呼ぶからさ☆」
そんなやり取りを済ませた後、僕はリサに買い物袋の片方を預けて歩き始めた。それを見た彼女は左手に買い物袋を持ちながら、僕の方を覗き込むように見て来た。
「ね、颯樹って好きな人とか居るの?」
「……何でそんな事を急に?」
「だってさ、見せて貰った写真に写ってたの……ほとんど幼馴染とか家族とか、あとはクラスの中で仲良くしてる子と写ってるのが殆どだったし。集合写真の類とかはあまり見なかったんだけど」
リサからの質問を受けた僕は、少しどう返答するのかに困ってしまった。初対面でいきなりそんな不躾な質問をされるとは思ってなかったし、見ていただけなら何も感じる事なんて無かったはずだ。
けど、混じりっけの無い興味津々と言った表情でこちらを見て来る彼女に、嘘を伝える訳には行かないと思ったのも事実だった。
「好きな人は居ないよ。むしろ、居たら厄介事に巻き込まれるでしょ?」
「厄介事って……。何かその言い方だと、過去に何かあったんじゃないの? それも颯樹の性格に大きく影響しちゃう様な何かが」
「別に。リサには関係無いから、この事は忘れてよ。僕だって思い出したくない事の一つや二つあるんだ……そんな極秘事項を初対面の人にズケズケと聞かれる筋合いは「颯樹ってさ、よく人から『かなりの頑固者』って言われない?」」
僕は事実そのままをリサに話したのだが、あろう事か彼女からとんでもない指摘が飛んで来た。心做しかリサの視線が鋭利な刃物を思わせるかの様に鋭くなっており、気が着けば襟首を掴まれて顔が触れ合う寸前まで引き寄せられていた。
「アタシさ……自分で言うのもなんだけど、他の人より面倒見は良いと思ってるんだ〜。だから、そう言う颯樹の視線とか仕草とか……ぜーんぶわかるよ。これは自惚れとか自意識過剰でも何でも無いから」
「く、苦し……リサ……」
「離して欲しいなら、約束して。これから先……アタシの前では絶対に嘘をついたり、言い逃れをして逃げないで。そうしてくれたら、アタシはこれ以上颯樹のプライベートに首は絶対に突っ込まないし、何かあった時に颯樹の味方になってあげられる。でもね」
僕からの苦し紛れの返答に全く耳も貸さず、リサは僕へ詰め寄った後にこんな言葉を掛けてきた。
「颯樹が嘘をついたり、何か言い逃れをしてアタシから逃げようとするなら、話は別。そしたら颯樹の事、一生アタシの傍から離れられない様にするから……覚悟してなよ?」
「……わ、わかった……わかったから、離して……」
「言質取ったからね? アタシの前では絶対に嘘ついたり、言い逃れをして逃げないで。その言葉、よく覚えておいてね」
そう言った後に、リサは先程まで掴んでいた襟首から手を離して、拘束から解放してくれた。女の子が普段出せる力とは思えないほどの握力だった為、軽く意識が飛びそうになってしまった。
……や、やばい……。あんな事を言ってしまった以上仕方が無いけど、この人……怒らせると相当怖い!
「じゃ、片方持つよ♪ 買った食材が傷まないうちに早く帰らなきゃね☆」
「ちょ、ちょっと待って。僕は今、ある人から買い物を頼まれてるんだ。左手に持ってたのは確かに僕の方だけど、もう片方はその人の家に届けないといけなくて……!」
「それじゃあ、鍵と颯樹の家の場所を記した地図があったら、アタシに任せてくれると嬉しいな。大丈夫、鍵はちゃんとポストの中に入れておくし、家の中にある物は物色しないから☆」
……心底心配になるな、この人の対応を見てると。
「ん、颯樹。アタシの事で、さっき何か言った?」
「……っ、何でもないよ。何でも無い……何でも」
「そっか♪」
……めちゃくちゃ心臓に悪いぞ、さっきの質問と気迫のダブルパンチは……生きながらに地獄を見る所だった。出来ればこんなのはこれっきりにして欲しい所だが。
そしてその後は、リサに家の住所を教えた後に鍵を渡す事で何とか事なきを得る事が出来た。先程の彼女の台詞を完全に信用する訳では無いのだが、変な使い方をされるよりは百倍マシだと考えた結果だ。
……まあ、僕としては未だ不信感マシマシなので、リサの言動などには逐一気を付けた上で、信頼出来る人に相談しようかとも考えるのだった。
今回はここまでです。如何でしたか?
次回にてプロローグは終了し、その次のお話より……主人公も新しい学校やお仕事等へと舞台を移して、CHAPTER1へと入っていきますので、何卒宜しくお願いします(完結の予定自体まだ立っていませんので、いつ終わるかは未定ですが)。
それではまた次回です。
それと……お気に入り登録して下さった方、本当にありがとうございます。この場をお借りしてお礼を申し上げさせて下さい。