新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんばんにちは。

 数日前に漸く一話を書き上げたのに……思いの外筆が乗ってしまって、調子に乗って書いてしまいました咲野です。次回も早ければまた数日中に投稿できる、かどうかは未定ですが、今年中に最低でも何話かは進めようと思います。


 それでは、本編スタートです。

 今回よりオリジナルキャラクターがまた新しく3人登場しますので、今回は軽く名前を覚えて貰えると嬉しいです。


第十二話

 通学路を行く途中で起こった出来事の後、僕たちは何とか遅刻する事無く花咲川学園に到着した。校舎内に入って別行動をするまで、その所々に居た女子生徒から黄色い悲鳴が聞こえてきたのだが、それは千聖にとっては我慢ならない物らしく、絡ませる力を強めて来ていた。

 

 

「それじゃあ、私は先に自分の新しいクラスに行っているわね。後で会うとは思うけれど、一旦ここまでかしら」

「うん。じゃあ、また後で」

「ええ」

 

 

 そう言って僕たちは別々になり……千聖は自分の新しい教室へと向かい、僕は事前に来る様にと指示を受けている、理事長室へと向かう事にした。

 

 

「……ここだったね。いざ」

 

 

 僕は短く意気込むと、理事長室のドアをノックしようとした。今年から新しく制服として着用している、茶色いブレザー(女子生徒は同じ色でセーラー服)も校則通りに着れていると思うので、苦言は貰う筈が無いと思っているのだが。

 

 

 そう思っていると、何処かから声が掛かった。

 

 

「ん、そこに居るのは編入生か」

「はい、そうですけど……」

 

 

 僕は今向いていた所から左手の所を向き、その呼び掛けへと答えた。するとそこに居たのは、レディース用の黒のスーツを着こなした女性教師だった。先程から当たる視線がかなり鋭い物なので、初めてこれを受けた人は苦手意識が生まれそうだ。

 

 

「悪いな。今、理事長は留守にしている。代理として私が応対する事になっている」

「そうだったんですか……」

「……つかぬ事を聞くが、盛谷 颯樹だな?」

「はい、そうです」

 

 

 その先生は僕の名前を軽く呼ぶと、隅から隅まで目を通し始めた。後で話を聞いてみたのだが……どうやら生徒会の担当をしているとの事らしく、今来ている生徒が本当にここの生徒か、加えて容儀はキチンと整っているか、等を確認していたみたいで。

 

 そうして一通り見終えると、一つ頷きながらこう続けて来た。

 

 

「なるほどな。お前がここに来る事や人物像等は事前に知っていたが、確かに。これは白鷺からの猛プッシュがあったのも納得だ」

「そ、そうなんですか……え、千聖が、ですか!?」

「なんだ、聞いてなかったのか? お前がここに転入して来る事は知っていた。だが、それはあくまで一部の生徒と教師陣のみ。そうなった理由は、白鷺から事前に頼まれていたんだ。『私の幼馴染を……颯樹を、この花咲川に通わせて頂く事はできませんか、なるべくこの事は内密にお願いします』ってな」

 

 

 ……あー、ちーちゃん、僕の知らない所でそんな事を言ってたのか……それなら納得だけど、後でたっぷり事情聴取はさせて貰うからね。

 

 

 

「自己紹介が遅れたな。私は長瀬(ながせ) 千冬(ちふゆ)。今年から2年A組のクラス担任と数学の担当教諭を受け持つ事になった。よろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「うむ。さて……先ずはお前の所属クラスだが、2年A組になっている。一年間確り面倒を見てやるからそのつもりで居る様に」

 

 

 そう言って千冬先生は、自分の右手をスッと差し出して来た。それを僕は少々戸惑いながらも受け取り、握手をして返した。

 

 

「さて、軽く挨拶を済ませた所で……次に。今から始業式がある。荷物は職員室に預けて構わない、そのまま向かうぞ」

「あ、わかりました『ここまでありがとうございます、長瀬先生。あとは私が引き継ぎます』わかりました、理事長」

 

 

 突如として聞こえた理事長の言葉に、千冬先生は短く返事をしてその場を去って行った。クラス担任を務めるとの事だったので、生徒の体育館への誘導係もするのだろうとこの時に察する事となった。

 

 

 そう思った後に後ろを振り返ると、白を基調としたレディース用のスーツに身を包んだ姫野理事長がそこに立っていた。どうやら先程まで式の準備を手伝っていて、その帰りに僕と千冬先生を見掛けたらしく。

 

 少し困り眉をしながらも微笑んだ理事長は、気を取り直すと、僕にこう問い掛けてきた。

 

 

「では、盛谷くん。今から始業式の行なわれる体育館に向かいますが、準備は出来ていますか?」

「……はい、もちろん出来ています」

「わかりました。それでは、案内しますね」

「よろしくお願いします」

 

 

 そう言って僕と理事長は、これから始業式がある体育館へ向かう事となった。そこでもやはりと言うべきか、女子生徒からの好奇な視線に晒される事となったのだが、大事な式典だと言う事で、最悪の事態は何とか回避出来ていた。

 

 

 始業式を終えた後の感想としては……生徒席から何やら期待の眼差しで見て来ている人や、今にも声を挙げたくてウズウズしてる人等が見受けられ、この後に控えるクラスでの自己紹介タイムを警戒する事となってしまった。

 

 まあ、スピーチに関して言わせて貰うなら、自分なりに上手く言えた……と思う。と言うのも、今までが共学の学校が多かった為、自分以外全員女子のアウェー感に悩まされるのが地味に辛かったのが本音だ。

 

 

 そんな事を考えながら体育館からの道を戻ると、職員室の前に千冬先生ともう一人の女性の先生が立っているのが見えた。

 

 

「ああ、盛谷。始業式はお疲れ様だったな」

「本当に疲れましたよ……これが元女子校の空気感なんですね、今までよりも数倍疲労感が来ました」

「無理も無いな。だが、じきに慣れる。取り敢えずはここに慣れろ、そこからだ」

「はい。それと……其方にいる方は?」

 

 

 僕がそんな事を質問すると、隣に居た女性はペコリと頭を下げてから自分の名を名乗り始めた。見た感じは優しそうな印象を受け、カウンセラー等の立ち位置に居そうな方だとは思ったのだが。

 

 

「初めまして、盛谷 颯樹くん。私は2年A組の副担任で現国を担当する事になりました……佐倉(さくら) 陽茉莉(ひまり)と言います。実はつい先程、盛谷くんに関してのお話を伺って居た所なんですよ」

「そうでしたか……これからよろしくお願いします」

「佐倉は今年着任した新任の教師でな、スクールカウンセラーの資格も持っているんだ。何か学校生活で困った事があったら、遠慮無く彼女を頼ると良い。勿論私でも構わんが、相談先は佐倉の方が適任だぞ」

 

 

 ……なら、困り事があったら極力佐倉先生を頼る事にしようかな。その方がわかりやすい気がする。

 

 

「じゃあ、今から教室に向かう。クラスに着いたら、私が先ずは生徒全員に連絡事項を伝える。その後に合図を出す……それと共に入って来い。呼ばれるまでは一人で気が散ると思うが、安心しろ。隣には佐倉が居るからな」

「私も初めての赴任先なので、盛谷くんとは同じ立場ですね。お互いに協力しあって頑張りましょう」

 

 

 千冬先生からの指示を受けた僕は、二人の先生の先導と共に自分の教室へと向かった。そして引き戸の前まで着くと、打合せ通りに千冬先生だけが中へと入り、教壇に立ってSHRを行い始めた。

 

 ……すごい、みんな静かに話を聞いてる……僕の前居た所はHRの時ですら真面に話を聞いてた人が少なかったぞ。

 

 

「すごいですよね……千冬先生って」

「そうですね。一言話し始めるだけで、クラスの生徒全員が集中して耳を傾けてるんですから」

「ですね。……あ、合図が出ましたよ」

「……あ」

 

 

 佐倉先生と話をしていると、千冬先生から掌を軽く丸めて手前へと引く動作が見られたので、僕は佐倉先生に軽く頭を下げてお礼を返し、教室の中へと入って行った。

 

 

「騒ぎたい気持ちは分かるがまずは落ち着け。盛谷からの自己紹介が終わった後に質問タイムを設ける。各々聞きたい事があったら、その時間を使って何なりと聞くが良い。さ、後はお前の出番だ」

 

 

 そう言って千冬先生は出入口の壁に凭れ、腕を組んで教室全体を眺める態勢に入った。そしてその外では苦笑いをしながらサムズアップをする佐倉先生が目に入った為、僕はひとつ深呼吸をしてから、自己紹介をする事にした。

 

 

「僕は盛谷 颯樹と言います。以前は長崎県の公立高校に居ましたが、一人暮らしをする事を機に東京へと戻って来ました。元女子校と言う不慣れな環境下ではありますが、皆さんと一緒にこれから頑張っていきたいと思います。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」

 

 

 そう自己紹介を終えると、案の定と言うべきか、教室中の至る所から質問をしたい旨の手が挙がり、僕は矢継ぎ早に放たれる質問の数々に答える事となった。中には見知った顔も居て、入る時以上に疲れてしまったのは言うまでも無い。

 

 

 ……と言うか待て? 彼処で手を挙げてるの、もしかしてちーちゃん? 余計な火種を巻いてしまわないか心配になるけど……どうなんだろう……信じていいのこれ、凄く不安。

 

 そして一通り回答が終わると、長瀬先生がもう一度教壇に立って僕に自分の席の場所を示した。

 

 

「盛谷の席は……ああ、出席番号が一番最後だから、外が見える窓際の席だ。覚えやすくて良いだろう」

「そうですね、覚えやすいです」

「よし。じゃあ、前の席が松原……隣が水澄になる。しっかり顔合わせは済ませておけ」

「わかりました」

 

 

 そう言われて僕は、机と机の間にある通路を通って、自分の席へと向かった。 そうして席に着いた頃合で、ふと声が掛けられた。

 

 

「久しぶりですね、颯樹。覚えていますか?」

「えっ……」

「無理もありません、実に6年ぶりです……私の事を忘れていてもおかしく無いでしょう」

「め、面目無い……」

 

 

 ……何だろう、ここ最近直ぐに心の中を言い当てられてる気がしないでも無い。まさか、僕が離れてる間に全員読心術でも身に付けたのか……?

 

 

水澄(みすみ) 千歌(ちか)です。改めて、お久しぶりです。急に転校するなんて話が挙がったので心配していましたが……ここでまた再会できるとは、思いもしませんでした。またこれから、よろしくお願いしますね」

「ああ、こちらこそよろしく。それと……松原さん、だったよね。これからよろしく」

 

 

 僕がそう声をかけると、前の席に座っていた水色の髪をサイドテールにしている少女……松原さんは少しビクッとしながらも、僕の方に向いて挨拶をして来た。

 

 

「ま、松原(まつばら) 花音(かのん)と言います……これから、よろしくお願いします……あれ? 貴方って、確か千聖ちゃんがよく話してくれていた……」

「と、言うと……千聖の友達?」

「あ、そうです。千聖ちゃんは私の親友なんです」

 

 

 松原さんの返答を聞いた僕は、ふと思って教室の中央付近に居るちーちゃんを見る事にした。すると、彼女はゆっくり微笑むと、僕にだけ聴こえる音量でこう言って来た。

 

 

『花音は信じて大丈夫よ。私からある程度の話はしてあるから、気兼ね無く名前で呼んであげて』

 

 

 ……ほんと、僕の幼馴染はいつの間に心を読める様になったんだか分かりやしないよ。

 

 

「なるほどね。僕の事は名前で良いよ、僕も松原さんの事は『花音』と呼ぶからさ」

「あ、良いんで……良いの? それじゃあ、これからよろしくね……颯樹くん♪」

「こちらこそよろしく、花音」

 

 

 そんな挨拶を済ませた所で……千冬先生が佐倉先生を呼んで、紹介を始めた。佐倉先生自身、この花咲川学園には来たばかりなのだが、過去に共学の高校を2校経験しているとの事で、スラスラと自分の名を名乗っていた。

 

 そうして佐倉先生の自己紹介が終わると、千冬先生が軽くひとつ息を吐いて、こう言い放った。

 

 

「さて……これから一年間、君たちの担任として関わるつもりだが、私は全力でここに居る全員の学校生活のサポートをさせて貰う。その際、手加減無しで事に当たる為覚悟しておく様に。良いな? わかったなら返事をしろ、分からなくても返事だ。良いな」

『はい!』

 

 

 その一言を受けた僕たちは、短く返事を返した。

 

 これは後で思った事なのだが、この形式って軍隊とかがその形に近いんじゃ……と思っていたら、それから一分後に出席簿で頭を叩かれた。解せぬ。

 

 

 その後は質問し足りなかったクラスメイトから絡まれる事態こそあったものの、予鈴のお陰で事無きを得ていた。さーて、これからどうなるやらね……頼むから、平穏無事に過ごさせて欲しい物だよ全く。




 今回はここまでです。如何でしたか?

 次回はかのちさにスポットを当てた話か、千歌との絡みを書こうか検討中ですので、投稿完了まで今暫くお待ちください。書き上がった方を先に掲載しようと思います(その後はパスパレPartの予定です)。


 それではまた次回。次回もよろしくお願いします。
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