新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆様、新年明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願いします。咲野 皐月です。


 今回もいつもと変わらずに、パス病みの本編最新話を更新致します。次回がどうなるかは……少し現時点では予想が出来ないのですが、失踪しない様に頑張りますので、気長にお待ち頂けますと幸いです。

 ちなみに、今回のお話には主人公の過去にちょっとだけ触れておりますので、これで少しだけ彼の事についても知れるかもしれませんよ?


 それでは、本編スタートです!


第十五話

「私と一緒に、お風呂……入りましょ♪」

「……え?」

 

 

 パスパレのレッスンが終わり、家主である颯樹くんからお風呂を使って良いと許可を貰って、麻弥ちゃんとイヴちゃんの帰りを待っていたその時、私はとんでもない言葉を聞いてしまいました。

 

 

「ねぇ、昔は一緒によく入ったでしょう? 来たるであろう未来を語らいながら、仲睦まじく楽しく……♪」

「そ、それはそうだけどさ、やっぱり僕たちは高校生になったんだし、そろそろそれはちょっと自重するべきじゃ」

「あら、私は別に良いのよ? それにその言葉をここで言うって事は……私の身体で、興奮しちゃってるのかしら♪」

 

 

 千聖ちゃんは颯樹くんと幼馴染だから、そう言った事も昔はしたんだろうな……と言うのは想像に難く有りませんでした。けれど、お互いに今は高校2年生。昔と比べると何もかもが違って当たり前……彼の言う事は正しく正論を述べているはずなのに、それが届いている様子は無かったんです。

 

 仕舞いには、自分の身体をこれでもかと密着させ、彼の事を誘惑し始めました。普段なら『アイドルとしての自覚を持ちなさい』とか『年頃の女子高生はそんな軽率に不祥事をしないわよ』と言っている千聖ちゃんが、この始末。

 

 

 ……颯樹くんとのお風呂……彼と一緒に入ったら、どんな感じなんだろう……。千聖ちゃんは颯樹くんと一緒に過去何回も入ってる、それは幼馴染だから有り得ない話じゃない。でも、私は……彼の事をよく知らないから、もっと颯樹くんの事を知りたい。

 

 私だってすごくドキドキしてる……想い人である颯樹くんと一緒に入れたら……なんて、アイドル活動を続けてるだけだったら、絶対に知り得なかったこの気持ち。

 

 

「あ、あのね……千聖ちゃん」

 

 

 ……感じたい、颯樹くんの全てを。

 

 たとえそれが千聖ちゃんの琴線に触れる事になったとしても……誰かから厳しい事を言われる事になろうとも、一度燃え上がってしまった恋の炎は、簡単には鎮まってくれない。それは自分が一番よく分かってる事だから。

 

 

「あら、私に何か用かしら?」

 

 

 ……仲間同士で喧嘩をするのは、絶対に良くないって事は百も承知。でも、私は……彼が、欲しい!

 

 

「今回は、私に譲って欲しいな。私も……颯樹くんと一緒にお風呂入りたいから」

 

────────────────────────

 

 先程まで聞き役に回っていた彩ちゃんから突如として聞かされた……私への『颯樹を諦めて』と言う提案は、私をイラつかせるには充分だったわ。その証拠として、彼の服を掴む手へ少し力が入った様な気がした。

 

 

「彩ちゃん、それは何でそう思ったのかしら?」

「千聖ちゃんは颯樹くんと幼馴染だから、お風呂に入るなんてそんなの普通にやってたと思う。でも、私は颯樹くんと出会ってまだ少ししか経っていないから、彼の事を全く何も知らない……なら、その機会を私に分けてくれないかな?」

「私がそれを簡単に容認するとでも?」

「思ってないよ。だけど、私は颯樹くんの事をまだ殆ど知らない……だから、私も颯樹くんと一緒にお風呂に入りたい。そして彼の事を知りたい。可能な範囲で構わない……知れるだけ全部」

 

 

 彩ちゃんの言わんとしてる事はよくわかる。事実、颯樹と彼女が出会ったのはほんの数日前……そうなったとしてもおかしくないし、私が彩ちゃんの立場でも同じ事をしたと思うわ。

 

 でもね……彩ちゃん。貴女は私に対して言ったらいけない事を言ったのよ。そこら辺の自覚は持って頂戴ね?

 

 

「知れるだけ全部……それが何処まで及ぶのかは分からないけれど、貴女は颯樹の全部を知ってどうするつもり?」

「好きな人の事を隅から隅まで知りたいと思う、それって普通じゃないの? それとも、踏み込んじゃ行けない所があるって言うの?」

「わかってないわね。貴女と彼が出会ったのはほんの数日前……そんな何も知らない様な関係の貴女が、ズケズケと彼の心の中に土足で踏み入ろうなんて、烏滸がましいと言っているのよ」

「それって全部、千聖ちゃんが都合の良いように作った当てつけじゃん! 私にも颯樹くんの事を知る権利はあると思うよ……それを邪魔される筋合いは無い!」

 

 

 ……あぁ、とことん貴女とは分かり合えないのね。

 

 先程の一言を聞いて、ここから手を引いたら考えなくもなかったのだけれど……ここまで食い下がるなら、止むを得ないかしら。

 

 

「わかったわ。じゃあ、こうしましょう。もし、今度のファーストライブ……ライブ中に一度でも噛まずにやりきり、ライブが成功したのなら、彼の事を少しだけ教えてあげる」

「ほ、ほんとっ!?」

「ええ、私は一度決めた事は必ず果たす。颯樹が東京を一度離れて、私は彼とまた会おうと心に決めたの……そして、今それは成されている。確信を持って良いわよ」

 

 

 私の投げかけられた条件に、彩ちゃんは目に見えて喜び始めたわ。今提示したこの条件は、目前に迫っている事と繋がっている……それさえキチンとやりきれば、自分の利益になる情報が手に入る。そう考えたら、喜びたくなるのも至極当然と言った所ね。

 

 ……でも、その情報提供はあくまでも『一度たりとも噛まなければ』が条件。今の貴女に、それが出来るかしら?

 

 

「でも」

「……?」

「今度のライブで一度でも噛んだり、ライブ中に機材トラブル等の不具合が発生し、それの影響で途中中断されるような事があれば……情報提供は無しよ。もしその後に何度頼み込まれたとしても絶対に教えない。それで良いわね?」

 

 

 私から彩ちゃんにあげられる、唯一の情け。本当だったら彼の過去を知るのは、この私だけで良い。私だけが彼について全てを把握していればそれで良い。でも……彼女は踏み入ろうとした。颯樹の奥深くまで。

 

 ならば……私もそれなりの覚悟と敵意を以て貴女と向き合いましょう。そうしないと、彼の全てを知ろうと言う貴女にとって失礼だと思うから。

 

 

「……わかった、その話……受けるよ」

「本当に良いのね? 後戻りはできないわよ」

「うん。千聖ちゃんだけが知っていたら良いなんて、そんなの絶対に間違ってるよ。私だって颯樹くんの事を知りたい……もし、颯樹くんが何か抱え込んでいるんだったら、私も一緒に背負うよ!」

「彩ちゃん……(さっくんの過去を知れば、平然としていられるはずは無い。あたしだって気が狂いそうだった、それが現実だもん。だと言うのに、彩ちゃんはさっくんの事を知ろうとしてる……無茶だよ、無茶にも程があるよ……)」

 

 

 私から投げかけられた質問に、彩ちゃんは少しの間を置いてからそう答えたわ。途中で麻弥ちゃんとイヴちゃんが戻って来たけれど、私は二人に事情を説明して部屋から退出させる事にした。

 

 

 ……決まりね。なら、今後は同じバンドメンバーであったとしても、情けや容赦は一切かけないわ。泣いて許しを乞うても、絶対に譲歩はしない……絶対に。

 

 

「……良いわ、交渉成立ね」

「……っ! ありがとう、千聖ちゃん『ただし』」

「約束は必ず厳守してもらうわよ。私はお情けで何かの対価を得るのが一番嫌なの。それは子役の頃から変わらない……何だったら、昔から変えた事が無いの」

「千聖ちゃん……本当に今度のライブの結果次第で、颯樹くんに関する事を話してくれるんだよね?」

「ええ、一度言った事は必ず果たすわ。だから安心して良いわよ」

 

 

 私が彩ちゃんにそう言うと、彼女は穢れを知らない真っ直ぐな瞳で私の方を見ながらそう答えて来た。

 

 

 ……颯樹と出会ってまだ数日にも関わらず、貴女はどんどん彼に近付いている。私はそんな貴女が羨ましいと思うのと同時に、軽く呆れてしまう。後先を考えないその計画性の無さや、果たして叶うのかどうかすらも分からない夢に向かい、ただひたすらに努力し続けるその純粋さ……今までの私では到底想像もしなかった道を貴女は歩んでる。

 

 貴女のその無垢な優しさを踏み躙るのは、私の心の中にある良心を痛めるかもしれない。でも、颯樹を守ると決めた以上、手段を選んでいる暇は無い。それどころか、少しでも油断をしていると、一瞬のうちに攫われてしまうかもしれない。

 

 

 もう二度と……颯樹の傍から絶対に離れないと心に誓ったの。例えそのぶつかる相手が、同じバンドメンバーであったとしても、心から信頼を寄せている親友でも。

 

 

 なら、私は今一度改めて誓うわ。

 

 私は必ず、颯樹と一緒にこの先の未来を共に歩む。誰が邪魔して来たとしても、絶対に成し遂げてみせるの。それが私の……果たすべき願いだから。

 

 

「千聖ちゃん……私、負けないよ」

「私から奪えるものなら奪ってみなさい。私は如何なる手段を使ってでも、颯樹を守ってみせるわ。例え貴女がどんな方法で迫って来たとしても、絶対に」

「あ、ちなみにお風呂の方は……」

「私との約束を果たすまでダメよ。大人しく諦めて」

 

 

 ……彩ちゃんには、死んでも渡さないわ。絶対に。

 

────────────────────────

 

「〜♪」

「……」

 

 

 数時間は経ったのかと思う程の重い空気から漸く解放された後、僕はちーちゃんと一緒にお風呂に入っていた。どうも話を聞いている限りだと、彩がそこに待ったをかけたらしいのだが、ちーちゃんがそれを一蹴した上である条件をかけたとか。

 

 僕としては……同じバンドのメンバー同士、これからお互いに切磋琢磨して、共に頑張ろうと言う雰囲気で練習を締めたはずだったが、何やらとんでもない事態が起こっていた様だ。

 

 

「ダーリン、痛くないかしら?」

「あぁ、大丈夫。程良く気持ちいいよ」

「ふふっ♪ じゃあ、続けるわね♡」

 

 

 今は彼女の機嫌が良いので、何も心配する様な事は発生していないのだろうが、個人的に少し懸念するべき要素が残りかねない。僕の思い違いならそれで構わないが、いざ手遅れになってしまった時が一番面倒だ。

 

 なので、如何なる事態が起こっても良い様に、僕の方でも対策を取るべきなのだが……果てさてどうしたものか。

 

 

「……ねぇ、ダーリン」

「ん、どうしたの。ちーちゃん」

「私は……貴方を一生賭けて守り抜くわ。ここで今、誓わせて」

「えっ、どうしたの急に……んっ!?」

 

 

 僕がその理由を問おうとしたその瞬間、ちーちゃんからキスを受けてしまった。何分突然の事だった為、座っていたお風呂用の椅子から転げ落ち、彼女を見上げる形となった。

 

 その倒れた拍子に……ちーちゃんが先程まで身体に巻いていたタオルがゆっくりと解けて、力無くタイル床に落ちたので、僕は生まれたままの姿の彼女を、その視界に捉える事となってしまったのだ。

 

 

「……んっ、はぁ……」

「ち、ちーちゃん……いったい、何を……」

「私、貴方が欲しくて堪らないの……。貴方の事を考えるだけで、もうどうにかなってしまいそう。願わくば、私の事だけを見ていて欲しい程には」

 

 

 ……なんで……そこまでして……。

 

 

「ここまでするのは、いくら私と言っても結構大変だったのよ? 彩ちゃんと出会ったのは予想外だったけど、それ以外は全部私の計画通りに事が進んだ……全ては貴方を守る為。私の名前を出してその気にさせて、貴方を簡単に転がせると思った邪魔者の目を欺く為なの」

 

 

 ちーちゃんが発した言葉の中に、不可解な所が見受けられたので、僕はそこで一言待ったをかけた。それを聞いた彼女は笑顔で応じてくれたので、治まった少しの時間を使って考える事にした。

 

 

(待てよ……あの一件はちーちゃんが知っているはずの無い事。今では大分落ち着いてるし、特に気にもしてないけど、確かその時は柄にも無く怒ってしまったのをよく覚えてる。じゃあ、ちーちゃんはこの事を何処から仕入れた……? 聞かれたとしても話すはずが無いのに!)

 

「ふふっ、貴方のお母さんから話は聞いてたのよ♪ 話を聞く限りだと散々な目にあったらしいじゃない……やれ『白鷺千聖と結婚してーなー』だの、『白鷺千聖に頼んで連絡先貰って来てよ』とか、出来もしない事を頼まれ……『白鷺千聖とヤリてぇー』だったり、『お前が白鷺千聖と幼馴染なんぞ嘘だろww』……本ッ当、聞いていて嫌になる内容ね」

 

 

 待って!? 確かにそれは言われてたけど、それを何で一字一句違わずに覚えてるの!?

 

 

「……ちーちゃん、確認するけど……その情報は何処から仕入れたの?」

「貴方の学ランやブレザーだったり、制服の胸ポケットに入れてあった盗聴器から聴いていたのよ♪ 私からお母さんに頼んで事前に仕込んで貰ったの。わざわざ宅配便まで使って♡」

「……か、母さんもグル」

「ええ♪ お陰で予定通りに事が運べたわ♡」

 

 

 ……やられた。僕自身は気にしない様にしてたつもりだったのに、ちーちゃんから見れば一目瞭然らしい。しかも母さんの伝手を使ったとなったら、これ以上の事を知られてる可能性が高い!

 

 

「ねぇ、ダーリン」

「な、なに……」

 

 

 そう言ってちーちゃんは僕の方へと近づいて来た。

 

 ……迫られている僕としては、彼女から常に漂う良い香りの影響で、物事を正常に判断できないのが現実だが。

 

 

「私、貴方が好きよ。誰にも渡したくないくらいに」




 今回はここまでです! 如何でしたか?

 最後が若干駆け足気味になった感が否めませんが、次回に繋がる内容にはできたのかな……? と思っておりますので、そこら辺も楽しみにしつつ、次の更新をお待ち下さいませ。


 それではまた次回の更新にて。

 次はコラボPart……に、なる……かもね?
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