新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
さて、今回は本編の第十六話をお届けします。
この後の内容は、バンドストーリーを既に読了済の方にとっては想像に難くない物なので、その投稿を今暫くお待ち下さい(ただ、原作との差異点は出しますのでそこら辺は何卒ご理解いただけます様……)
それでは、前回の続きより、本編スタートです。
「私……貴方が好きよ。誰にも渡したくないくらい」
パスパレのレッスンが終わった直後に、二人組での入浴を行う際に聞こえて来たちーちゃんからの唐突なる告白……彼女がその気なのは以前から把握していたが、今回は聞いた場所や直前の内容も相俟り、僕はかなりの衝撃を受けてしまう事になった。
そして告白を行なって来た当の本人はと言うと、いつもの様な不敵な笑みでは無く……至って大真面目と言わんばかりの真っ直ぐな瞳で此方の事を見つめていた。場所や周囲の状況を受けて、顔は若干紅潮してこそ居たのだが。
「ち、ちーちゃん……」
「私は貴方と離れた6年と言う期間の間、一度たりとも貴方の事を忘れた事は無いわよ。お母さんから聞いたでしょうけど、颯樹との思い出は今でも鮮明に思い出せる……話してと言われれば、直ぐにでも話せる位には」
その話は事前に聞いていた為、僕も既に承知している案件だ。
「私は、この先の人生で例え何があっても、貴方を一途に愛し続けるわ。だから……私に貴方の全てを守らせて」
「……本気なんだよね、ちーちゃん」
「ええ。私に迷いは無いわ」
……なら、僕からとやかく言うのは野暮だよね。
「ちーちゃんの気持ちはよくわかった。でも、答えは少し待って欲しい。然るべき時には必ず返事をする」
「……待ってるわ。貴方なら私を選んでくれる、信じてるから」
「その期待に応えられる様に、僕も頑張るよ」
そう言葉を交わし、僕たちは湯船に浸かった。先程ちーちゃんに押し倒されて告白された事もあり、僕の後頭部はまだ少しヒリついてこそいたのだが。最初に感じた痛みはもう引いており、今では彼女の顔をよく見る事が出来ていた。
「と言うか、二人で入る必要性はあったの?」
「勿論大アリよ? さっきも言ったと思うけど、私と貴方は小さい頃にたくさん入った仲じゃない……だから自然な事だと思うわ♪」
「全く、ちーちゃんには敵わないね。いつもいつも」
「ふふっ♪ それは褒め言葉として受け取るわね♡」
ちーちゃんがイタズラ好きなのは相変わらずだが、それに加えて人を篭絡させる言葉遣いまで達者になったらしい。僕と離れた後に一体どんな事があったら、こんなにも興奮が抑えきれなくなる様になるのだろうか。
幾ら幼馴染だからとは言え、互いに今は思春期の真っ只中で高校2年生……そんな事を言われたら誰でも意識してしまうのが常だと思うが。
「……ねぇ、ダーリン」
「ん?」
「少しそっちに行っても良いかしら?」
「ちーちゃんが良いなら、構わないけど……」
それから少しした後、僕はちーちゃんから齎された提案を受け、彼女が移動しやすい様に少しスペースを取る事にした。したはいいのだが……この直後。
「あら、何処へ行くの?」
「え? 移動をするなら、入れ替わる方が良い気が」
「貴方はそのままで、私が移動するのよ♪」
「……はい?」
……今日は本当に驚かされる事ばかりである。
そして先の話もひと段落着いて、ちーちゃんがリクエストをした通りになったのだが……。
「ふふっ♪ これで貴方の顔がよく見えるわ♪ いつまで経っても変わらない可愛い顔……ねぇ、ダーリン。もっと私を見て♡」
「……なぁるほど、そう言う事。でもこんな所をもし誰かに見られでもしたら」
「あら、二人っきりのお風呂を邪魔する存在は、何処にも居るはずが無いでしょう? もし仮にそれが彩ちゃん達だったとしても、確り順番は決めたのだから心配要らないわ♪」
「あ、そうだったよ」
……そうだった、すっかり忘れてた。
「あぁ……貴方の顔を見てると、自然と身体が吸い込まれそう……」
「あの、長風呂し過ぎると逆上せるから早く出た方が良い気がすr『ちゅっ♡』んんッ…!?」
僕はいつの間にか夢見心地になっていたちーちゃんから、突然キスを受けてしまった。今居るお風呂の熱で物事を考える脳が眠ったのか……それとも好きな人とほぼゼロ距離で触れ合えている嬉しさから来ているのか定かでは無いが、彼女とのキスがいつもより体感的に長く感じてしまった。
「んっ……はぁっ、ちゅっ♡んっ、んはぁ……あっ、あんっ♡ちゅっ♡」
「(ヤバい! ちーちゃんってもしかして、お風呂の熱で興奮してる!? この前受けた時より随分と長いんだけど!)」
「ぷはっ……逃げないで。ねぇ……もっと、深くキスしましょ……? んんっ、ちゅっ♡」
僕のかけようと思った制止も何のそので、ちーちゃんは更に密着させる具合を強めて来た。その拍子に髪を後ろで纏めていたタオルが解けてしまい、彼女の綺麗な金髪が湿気の溜まる浴場でサラリと靡く事になった。
その様はいつか見せた女豹の様で、下手したらこのまま物理的に美味しく頂かれてしまいかねない……なら、意地でも逃げ出すか、誰かに助けを求める事も考えていた。
そこまで考えた僕は、背後にあるパネルに付いている『通話』ボタンを押そうとしたのだが、ちーちゃんから顔を前に向けられた為、その行為は未遂に終わってしまった。
「ダメよ、この時間は誰にも邪魔させない……」
「そ、そんな事言ったってさ……そろそろここから出ないと、後がつっかえる「なら、あと少しだけ……♪」聞く気は無しですか!?」
もう我慢のタカが外れたちーちゃんに、為す術無くやられてしまう事すら覚悟した……その時だった。脱衣場に繋がるドアが音を立てて勢い良く開かれ、僕とちーちゃんはその方を向く事になった。
普段ならゆっくり静かに開けてと念を押すのだが、今回ばっかりは大目に見ようとすら思っていた。
……そして、そこに立っていたのは……。
「さっくん大丈夫!? 何か凄い音が聞こえたけど!」
「日菜ちゃん、いきなりお風呂場のドアを開けたら迷惑じゃ……え……?」
「彩、ちゃんに、日菜、ちゃん……?」
「ひ、日菜……、彩……。ど、どうしてここに……」
扉を隔てた先に居たのは、彩と日菜だった。僕たちの入浴が終わった後に彼女たちが入る手筈の為、ここに居る事は不自然では無い。無いのだが……二人は顔を見合せて、呆然としていた。
それもその筈。突然大きな音がお風呂場の方から聞こえて来て、何事かと駆け付けてみたらこの有様……その反応になっても致し方あるまい。
「千聖ちゃん……私にあんな条件を有無を言わさずに課して置きながら、自分はのうのうと颯樹くんとイチャコラしてたんだ……。へぇ……千聖ちゃんって、そう言う人だったんだね……」
「ち、違うのよ彩ちゃん! これには深い事情が」
「それで、さっくんは千聖ちゃんに上手く丸め込まれたクチなんでしょー? だから責められて然るべきなのは千聖ちゃんだと思うんだよねー、あたし」
「ひ、日菜ちゃんまで何を!?」
……ちーちゃんには申し訳無いけど、今が好機。
「先にあがってるよ。あとは三人でごゆっくり」
「ちょっと、私を見捨てないでダーリン!」
「「ダーリン……?」」
「……あっ……」
はい、墓穴を掘ったね。ご愁傷さま。
僕はちーちゃんのその後を既に怒り心頭な彩と日菜に任せて、更衣を済ませて脱衣場を出た。その出る直前に浴場の方から断末魔に似た悲鳴が聞こえたけど……今回に関しては完全スルーで良いかな。
そうしてお風呂を済ませてリビングに戻ると、麻弥とイヴが椅子に座って待っていたので、僕は長時間に渡って待たせていたお詫びとして、二人に海苔巻きおにぎりをもう一個ずつオマケで握って渡す事にした。
二人ともお腹がかなり空いていた様で、挨拶をした後からおにぎりを黙々と食べ進めていた。……感想は後で聞くから、まずはゆっくり食べてね。お願いだから。
そうして二人の食べる様子を見ていると、少しして三人も出て来た為、僕は追加でおにぎりを握ってから彼女たちに手渡しで渡した。ただ、ちーちゃんに関しては少し涙目になっていた為、頭を撫でて慰める事になったのだが。
そして、暫く時間が経って。
「「「「「ご馳走様でした(!)」」」」」
「はい、お粗末様。明日のレッスンに関しての連絡をするんだけど……明日は本番を想定した通し練習をするよ。その際に衣装合わせもするとの事だったから、直ぐに行なわれても良い状態にはしておいてね」
「はいっ!」
「なんだか今からわくわくして来たー!」
「もう……興奮し過ぎて明日のレッスンで躓く事が無い様にして頂戴ね? 私たちはアイドルバンドとしてデビューするんだから……」
そんな事を言えば、さっきの行動が余っ程アイドルとして恥ずかしい事じゃないのかと思ったのだが、その出処を見てみると、清々しいくらいのにっこりとした笑顔だった為、僕は喉まで出かかった言葉を口に出さない事にした。
「ねぇ、千聖ちゃん」
「何かしら、彩ちゃん」
「不躾なお願いなんだけど……ほんのちょっとだけでも良いから、颯樹くんの事を教えてくれない? 幾ら何でも知らないままなのは、どうしても割に合わなくて……」
「……わかったわ。さっきの事もあるし、ほんの少しだけ教えましょう。着替えに使った物置部屋へ来て」
僕が他の三人を落ち着かせているのを他所に、彩とちーちゃんは2階の方へと上がって行った。……二人の間に一体何があったのやらね。
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「ここなら、他の誰にも聞かれる心配は無いわね」
「うん……千聖ちゃん」
「提供する情報はほんの少しだけ。あとは貴女が私との約束を果たせるかどうかに懸かっているからそのつもりでね」
千聖ちゃんから言われた言葉に、私はゆっくりと首を縦に振って答えました。まだその時も来てないのに、秘密を知ろうなんて少し卑怯な気もするけれど……やっぱり、私も颯樹くんの事を知りたい。
そして、私が話を聞く態勢になったのを見た千聖ちゃんは……少しずつ口を開き始めました。
「私と颯樹は許嫁なの。彼とは小さい頃からの幼馴染と言うのは言ったけれど、互いの両親からのお墨付きなのよ」
「……えっ……」
い、許嫁……? それじゃ、颯樹くんは将来、千聖ちゃんと結婚する……って、事……?
「それに、私と颯樹はもうやるべき事は済ませているのよ。だから貴女が何をしたとしても、この先の未来は変えられない……素直に彼を諦めて頂戴♡」
「……待って、千聖ちゃん」
「あら、何か不満でもあったかしら?」
確かに、千聖ちゃんと結ばれる事が出来たら、その先の未来は安泰かもしれない……何不自由無く生活出来るし、幼馴染と言う関係なら、互いの事も隅々まで知ってるから喧嘩だって少ない。間違い無く最高のカップルになると思う。
でも、あんなのを目の前で見せられたら……千聖ちゃんの颯樹くんとの結婚を心から祝福する事なんて、素直に出来ない。それに……私も颯樹くんの事が好きなんだもん、それはハッキリ言わなきゃっ!
「私もね、颯樹くんの事が……友達としてじゃなく、一人の男性として好きなんだよ。千聖ちゃんと同じくらいに」
「……そう。で、それからどうするの?」
「私、颯樹くんと結ばれる為だったら何でもするよ。千聖ちゃんには絶対に負けない……あんな方法を使って颯樹くんに迫って、永遠に自分のモノにしようだなんて、そんなの絶対に間違ってる!」
これが私の覚悟。誰にも譲れない、私自身の決意。
昔からアイドルは恋愛がご法度と言うのが暗黙の了解として認識されて来た……私も、颯樹くんとあの出会い方をしていなかったら、ただ普通にアイドル活動をして、お仕事もして……トップアイドルになる為に頑張っていたと思う。
でも、私は全てを失いかけた所を、颯樹くんに助けて貰った……そして、今ここに立っている。幾ら幼馴染だからって、あんな方法で颯樹くんを落とし込むのは、そんなの絶対に間違ってる!
彼が困っているなら……私が助けなきゃ。
千聖ちゃんと比べたら、私には及ばない範囲があるかもしれない……いざと言う時に手を差し伸べられないかもしれない。でも、私だって颯樹くんの事が好き……だからこそ、千聖ちゃんには負けられないっ!
「……貴女の気持ちはよくわかったわ」
「それじゃあ……!」
「じゃあ、ここから先は手加減無しで行くわよ。私はどんな手段を使ってもダーリンを守ってみせる……貴女がどこまでそれに耐えられ、彼をモノにするのか楽しみにしてるわ」
そう言って千聖ちゃんは部屋を後にしました。
……千聖ちゃんには絶対に負けない……。やるって決めたんだ、必ずやってみせる! その為にも、まずは目の前のファーストライブに集中しなくちゃっ!
今回はここまでです。如何でしたか?
次回更新話もパスパレPartをお届けする予定では居るのですが……その更新までの間に、コラボのお話を一話か二話ほど投稿しようと考え中です。本編の更新日が大まかにでも定まって来ましたら、また改めてTwitterの方で告知させて頂きたいと思っていますので、何卒よろしくお願いします。
それではまた次回の更新にて。