新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
コラボ回も並行して書いていたのですが、此方の方が何と筆が早く進んでしまうと言う事実……お待ち頂いている方々には非常に申し訳無い気持ちで一杯です。
コラボPartの第2話に関しましては、早ければ今月中……遅くても来月いっぱいを目処に更新しようかと思いますので、その時までお待ち頂けますと幸いですm(*_ _)m
今回は前回のお話でお知らせしていた通りの内容となります(割とメインで話のスポットが当たってる人物は、ある程度想像が着くかな?)。
それでは、スタートです。
「……いよいよ、今日だ……」
颯樹くんの家でレッスンを行なった翌日、私は学校からの帰り道を歩いていました。今日は何も予定が無いので一安心なんだけど、明日は朝からファストフード店でのバイトのシフトがあったり、午後には事務所のスタジオを使っての本番を想定したバンド練習……普通の人が聞いたら、思わず卒倒してしまいそうな内容。
それだけでも大変なのに、今日は本番のライブで着る事になる衣装の採寸と実際にその着用を行なう……と連絡を受けています。
……でも、大丈夫だよねっ。
この時の為にご飯も少し少なめに食べたし、颯樹くん直伝のトレーニングもあるから、千聖ちゃんからのお説教を受ける羽目には絶対にならないはず……多分だけど。
「よぉ〜し。彩、頑張りますっ!」
私はそう強く意気込んで、事務所へ続く道を少し駆け足になって向かっていたのですが……。
目的地に向かっていた私の足を止める様に、私の制服のポケットに入れてあるスマホが、バイブレーション機能を使って着信を知らせていました。だいたいこの時に電話をしてくるのは、颯樹くんからのパスパレに関しての事か……お母さんからの連絡事項の二択でした。
「誰だろう……お母さんか、颯樹くんかな?」
そう思ってスマホを取り出して確認すると、ディスプレイに表示されていたのは……お母さんでした。今この時間だとお仕事をしているはずなので、普通ならばメッセージを使ってやり取りをするけれど、今回は直接電話がかかって来る形だったのです。
「……あ、もしもし? お母さん、どうしたの?」
私はその様に言葉を続けて、お母さんとの電話をし始めました。一応、パスパレのレッスンに間に合う様に、時間などは折を見て確認をする事にしました。
『急にごめんなさい、彩。今の時間だと、事務所に向かう途中でしょう?』
「うん、そうだよ。それで、何かあったの?」
『実は……私もお父さんも、今晩は帰れなくなっちゃったのよ。部下の子から当直を代わってくれないかーって』
「そ、そうだったんだ……。うん、わかった。それじゃあ、今日は由奈と」
『その由奈もお友達の家で今日はお世話になるから〜って言って、帰って来ないのよ』
私に齎された情報は……何と、私以外の家族全員が今晩は自宅に不在と言う物でした。私だけがお留守番の事態は今まで何度かあったのですが、今回の様な状況は全く経験の無い初めての事でした。
どうしよう……私、お母さんが普段作ってるみたいにお料理は出来ないし、かと言って簡単にインスタント食品で済ませよう物なら、翌日の練習で颯樹くんや千聖ちゃんに目聡く見つかってお説教を受けちゃうっ!
こんな時、未だに何も出来てない自分が情けなくなってくるよ……私がそう思ったその時、お母さんからこんな問い掛けを受ける事になったのです。
『ねぇ、彩? 確か以前、貴女を暴漢たちの手から助けてくれた……颯樹くんって男の子が居たでしょう?』
「う、うん」
『その子って、親御さんとかは一緒に居るの?』
「ううん、一人暮らしだって。千聖ちゃんから聞いたんだけどね」
私はお母さんの質問に対して、そう答えました。
……するとこの後、私の元にこんな提案が舞い込んで来ました。
『もしその颯樹くんさえ良ければ……今日一晩お泊まりさせてもらう事が出来るかどうか、聞いてみるのも良いと思うわよ?』
「……ふぇっ!?」
『貴女、帰って来てから話す事はと言えば、事務所での事とか友達の事を除けば……殆ど彼についての話よ? いつも上機嫌で私や由奈に話していたじゃない。おかげで確り名前と性格が頭に染み付いちゃったわ♪』
「ちょっ、お母さん何言って……!」
『その颯樹くんは料理もできるのよね。良いわね〜、どうせなら、彩をお嫁さんに貰ってくれないかしら。そうしてくれたら私たちも安泰だわ♪』
き、急に何を言い出すのっ、お母さんは!?!?!?!?!?!?
た……確かに私が颯樹くんのお嫁さんになったら、今のままだと出来ない事でも出来る様になるかもしれないし、一緒にお仕事しながら生活出来るから、私だってあんな事さえ言われなければ猛アタックしたよっ!
でも、颯樹くんの傍には、必ずと言って良い頻度で千聖ちゃんが居るし……それに、昨日交した約束もあるから、不用意に彼に手を触れでもしたら、千聖ちゃんの大きな雷を受けてしまいかねないよぉ!
どうにかして、今現在の不利な状況を私の有利な範囲まで持って行かないと……。
『なら、既成事実でも作っちゃえば?』
「……え?」
お母さんからのその言葉を聞いた瞬間、私の顔が高熱でもあるかの様に真っ赤に染まってしまいました。頭のてっぺんからは湯気が出ていると思われる上に、何かもう一押しでもあればコロッと倒れてしまいかねない程でした。
き、既成事実……。
それって、颯樹くんと……二人っきりで……って、何を考えてるの私ってば!?!?!?!?!? 私はアイドルで颯樹くんはそのマネージャーなのであって、そ、そんな関係になるなんて、一時の気の迷いでもし出来たとしても、あとからの仕打ちが余計に怖くなるよーーーー!
『そんな事を言うなら私も、お父さんと結婚する為に色々と手を尽くしたものよ〜。あの人は極度の恥ずかしがり屋さんだったから、バレない様にあの手この手で策を練って実行して……』
「お、お母さんっ!? 今、私外に居るんだけどっ!?」
『だったら、貴女が自らの手で颯樹くんを射止めちゃいなさい♪ 彩からの話を聞いてると、彼の事は相当手を尽くした上で奪い取ってしまわないと……絶対に後悔するわよ?』
「うぅっ……」
私はお母さんに言われた内容で、少し言葉に詰まる感覚がありました。
確かに颯樹くんはカッコイイし、何でも出来るし行動も早いから、彼の事を意識しているのは何も千聖ちゃんだけじゃないと思う。……もっと言うなら、今はまだ明るみに出てないだけで、他にもたくさん居るかもしれない。
そう考えると……お母さんのさっきの言葉も、スッと入って来るのが分かりました。
『良いかしら、彩。恋は待っているだけじゃダメよ。自分から積極的にアピールをどんどんしないと、その人に自分の気持ちは絶対に届かないわ』
「う、うん……」
『一度欲しいと決めたのなら、何がなんでも……全て捨て去る事すら厭わない覚悟で、全力で掴みに行きなさい。貴女がアイドルになりたいと言い出したあの日、貴女の気迫は私とお父さんの心を揺さぶる物だった……それを思い出しなさいっ! 貴女は私の自慢の娘なんだから!』
「お母さん……ありがとう!」
……よーし、ここから先は……もう迷わない。
例えその壁となる存在が、同じバンドメンバーだったとしても、心を許した友達でも……私は絶対に颯樹くんを諦めたりなんてしないっ!
……? 誰だろう、通話の真っ最中に……。
「……あっ、ああああああああぁぁぁ!!!!!!!!」
『どうかしたの、彩?』
「このままだとレッスンに遅刻しちゃうっ! 開始まであと1分を切っちゃったぁ!」
『……わかったわ。とりあえず、事務所の人には私から話を通しておくから、彩は練習に行きなさい。ファーストライブに向けて……確りね!』
私はお母さんにお礼を言った後に、事務所への道を全速力で駆け足で向かい始めました。さっき話していた事は、確りと心に留めておくのも忘れずに。
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「……彩、3分の遅刻だ」
「うっ、ごめんなさい……」
お母さんからの電話を終え、髪が乱れるのも気にせずに事務所へと向かった私を待ってたのは……如何にも怒ってますよ、と言った雰囲気の颯樹くんでした。彼の額には今にも青筋が立ちそうな程で、私以外の全員はもう開始数分前に既に全員揃っていて、スタジオで衣装の試着をしてると報告を受けました。
……ううっ、お母さんからの電話にすっかり時間を取られてしまった……。止むを得ない事情があるとは言え、私が悪いのには変わりないし……颯樹くんに隠し事をしようなんて、そう簡単に上手く行く訳が無いもんね……。
今は正座してるから足も痺れて来たけど、これくらいみんなを待たせた時間に比べたら、些細な事……確り罰は受けなきゃ。
「全く。本番までの日数も残り少ないと言ったのに、この体たらく……少し明日の練習をハードにしようかな?」
「ごめんなさい……次から気をつけます……」
「……彩は初犯だし、今回は注意だけで留めておく事にするよ。だけど、二回目以降からはトレーニングメニュー二倍の刑だからね。それは覚えておいて」
「わかりました……」
私のその言葉を聞いた颯樹くんは、私がフラついて倒れない様に支えに入ってくれました。立ち上がる時に若干バランスを崩しかけましたが、彼のサポートのお陰で何とか立つ事が出来ました。
そして颯樹くんに指示を貰い、私は皆の待つスタジオの方へと急ぎ足で向かいました。
……やっぱり、颯樹くんって凄く優しいな……。
颯樹くんがこんなに優しいのは、何か理由があっての事なのかな……それとも、元からだったり? ううん、どんな理由があったにせよ、私は彼の事が好き。お母さんからの言葉で、迷いも吹っ切れたし、心も決まっちゃった♪
千聖ちゃんが颯樹くんの幼馴染だって事は、話を聞いて知ってるけれど、その事と許嫁云々の話は絶対に関係ない。幼馴染だからと言って、あんな風に颯樹くんを束縛していたら、何れ心が疲れてしまう……だったら、私が彼を癒してあげないと行けないよねっ、私の持ちうる全てを使って。
「……すみませ〜ん、丸山です〜」
『あら、彩ちゃん? 入って来なさい。衣装スタッフさんたちも待ちかねていたわよ』
「失礼します」
扉をノックした先で声をかけて来たのは、千聖ちゃんでした。彼女からの承諾を受けた私は、ドアを手前に引いてスタジオの中に入りました。
中に入ると、案の定と言うべきか……千聖ちゃんからお説教を受けましたが、それも手短に終わり、私もファーストライブで着る衣装に袖を通しました。着ている途中で『これも脱ぐの!?』と言った瞬間こそありましたが、遅刻した私が何か言えた訳も無く、ただ目の前の事をこなしました。
……そして、数分後。
『入って大丈夫?』
「うん、良いよ〜!」
『それじゃあ、失礼します』
先程スタッフさんを介して颯樹くんを呼び出し、スタジオの中へと通す事にしました。いつもは練習着だったり制服とかだったけど……私たちの衣装姿を見たら、どんな反応をするのかな♪
「……はぁ〜、これはまたすごいな……」
「ふふっ、驚いてくれたみたいで嬉しいなっ♪」
「少し貴方には刺激が強いかもしれないけど、これぞマネージャーとしての特権よ。存分に私たちを見て欲しいわ♡」
ふふっ、驚いてる驚いてる。颯樹くんの驚いた顔を見たかった……と言うのはほんのオマケ程度だったんだけど、ここまでそう思ってくれるなんて、アイドル冥利に尽きるね♪
私たちの着ている衣装は、肩を出したオフショルダーの物で、私の場合は色合いがピンクを基調としている物なんだけど……千聖ちゃんだったら黄色、日菜ちゃんなら水色……と言う様に、各々のメンバーカラーに合わせた物となっていました。
外に露出している肌面積が今まで身に付けてきた服の中でも特に多く、一度屈んでしまえば隠れてる所まで見えてしまいかねない物でした。
「ねぇねぇさっくん、あたしの衣装はどう? キチンと着られたと思うんだー!」
「サツキさん、私もお願いしますっ! ぜひマネージャーの立場から見た感想を聞きたいです!」
「え、えっと……ちょっと待ってね。いきなりそんな矢継ぎ早に来られると答えられる物も時間が」
「「お願い(します)っ!」」
傍から見ている私たちを他所に……日菜ちゃんとイヴちゃんはこれでもかと身体を密着させて、颯樹くんに衣装の感想を求めていました。彼もパスパレのマネージャーである点を除けば、普通の何処にでも居る様な男の子……なので、慌ててしまう気持ちも何となく分かってしまうのでした。
……でも、ごめんね、颯樹くん。
私も今だけは……日菜ちゃんやイヴちゃんと同じ気持ちなんだ♡
「じゃあ、私も便乗して……」
「良い訳無いでしょう、彩ちゃん。貴女には私と課した約束があるわ……それを抜きにしても、今日の練習に遅刻している。そんな貴女がご褒美を貰えると思っているの?」
「私だって颯樹くんに「お説教が必要かしら?」ごめんなさい……」
「全くもう……。日菜ちゃん、イヴちゃん。そんなに身体を軽率にくっつけて……颯樹が困っているでしょう? 早く練習の準備をしなさい。本番まで時間は無いのよ」
颯樹くんに感想を聞こうとした私の行動は、いつもよりもキツイ視線で此方を睨んで来てる千聖ちゃんに、敢え無く阻止されてしまいました。心做しかいつもの笑顔が消えていて、本気で怒っている様な気がしてなりませんでした。
私にそんな注意をした後、千聖ちゃんは手を2回叩いて日菜ちゃんとイヴちゃんに対して注意をしました。二人の表情はまだ物足りないと言った物でしたが、千聖ちゃんが軽く笑ってみせると……この後の展開を重く見たのか、力無く颯樹くんから離れて行きました。
「ふふっ、これで邪魔者は居なくなったわね……♪」
「ま、まさか全部これを狙って……」
「ダーリン♪ 私の衣装姿はどうかしら?」
「ちょっ、ちーちゃんまで何なのさ……」
……私や日菜ちゃん、イヴちゃんにあんなキツイ事を言っておきながら、自分は一人だけ颯樹くんに擦り寄って、剰え何食わぬ顔で彼の事を籠絡させようなんて……アイドルである以前に、一人の女子高生としてかなり問題があるよね?
私……普段はあまり怒らないけど、あんな千聖ちゃんを見ていたら、胸の中にある不満を所構わずぶつけたくなって来ちゃう……。それはさっき擦り寄ってた二人も同じだろうけど、私の場合は昨日の事もあるから、その気持ちは一入にあると自負できる。
でも、あんなに仲が良さそうな二人を見てると……何だかモヤモヤして来るよ……私だって、颯樹くんの事が好きなのに……何でだろう……私に、一体何が足りないんだろう……。
「……うぅっ、ぐずっ」
「あ、彩さん!? 一体どうしたんですか!?」
「良いよね、千聖ちゃんは颯樹くんと幼馴染だから、好き勝手イチャつけて。でも私はそうじゃない……恋愛には出会った時間や肩書きなんて関係ないと思ってたのに……どうしてここまで何も出来ないんだろう……自分が嫌になっちゃう……」
私はスタジオの隅っこで丸くなり、少し現実逃避をする事にしました。それを見た麻弥ちゃんが心配してくれてるけど、ちょっと今はそんな気分じゃないよ……気持ちは凄く嬉しい事に変わらないんだけどね……。
そう思っていたら、後ろから肩を軽く叩かれる感覚が伝わって来ました。……誰かな……少し、そっとしてて欲しいんだけど……え、えぇっ!?
「な、なっ……何で……っ!」
「さっきちーちゃんに怒られてるのを見てさ。最初に言い出した僕があまり言えた口じゃないけど、謝らせてくれ。すまなかった」
「さ、颯樹くん……」
私の後ろから声をかけたのは、何と……今頃千聖ちゃんに構ってると思われた颯樹くんでした。その行動に驚いた私が、何か言葉を続けるより先に、彼の方から私を抱き締めて来ました。
颯樹くんの温もり……すごく温かい……っ。
でも……なんで、千聖ちゃんよりも私の事を……?
「……ごめん。ちーちゃんには申し訳無いんだけど、今回は彩にするのが妥当だと思ってね。それに、さっきの事もあるし、ちーちゃんは学校やお仕事でも人目も気にせずにくっついて来てるから……」
「……」
「……遅くなったけど。衣装、似合ってるよ」
……その言葉……今、ここで言うなんて……颯樹くんってば、反則だよ……。花音ちゃんの時も思ったけど、本当にどうして颯樹くんは女の子にここまで優しいのかな……私、今にも泣いてしまいそう……。
「……今回は彩ちゃんに大人しく譲るわ」
「良いんですか? あのままにしておいても」
「大丈夫よ。自分の仕出かした始末を忘れた訳では無いでしょうし、それに練習もあるもの。数分すれば元に戻るわ」
そんな会話が繰り広げられてるとは知らず……私は颯樹くんからのハグを、少しの間だけ堪能する事にしました。こんな形でしか甘えられないのは完全にダメな事なんだけれど、今だけ……今だけは……っ。
その後行なわれた練習では、いつもより身体が身軽になった様な感覚になりました。それが幸いして、ステップを踏む時のテンポが無意識のうちに軽やかになっていたので、私はその事実を後に聞いて驚く事となったのでした。
ちなみに……千聖ちゃんの事に関しては、練習後に私と同じ事をしていた様で、お咎め無しで治まったとの事でした。
今回はここまでです。如何でしたか?
次回はほぼ何も変更が無ければ、コラボ回の第2話を投稿しようと思います。その合間合間を使って本編の方も書くつもりでも居るので……暫くは本編とコラボ回が交互に続く形になるかと思われますので、把握の方をよろしくお願いします(コラボ回の3話目に関しては、結構投稿前にやる作業が多いので、今回みたいに時間が少しかかるかもしれません)。
それではまた、次回の更新にて。