新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

20 / 54
 皆さん、おはこんにちばんわ。咲野 皐月です。


 今回はようやくお待たせしました……Pastel*Palettesのファーストライブ回です!(……てか、語る事が無さ過ぎるのは考えものだし何ならライブ本番は次回ですが)


 それでは、本編スタートです!


第十九話

「……」

「……」

 

 

 ファーストライブで着る衣装合わせから数日後の今日、ついにジブンたち『Pastel*Palettes』のデビューライブの日がやって来ました。集められた動機こそ様々で、最初はこのメンバーで上手くやって行けるだろうかと不安に思ってしまう事も多々ありましたが……今はそれなりに結束力も高まって、これからこの5人にマネージャーの颯樹さんを含めた6人で、手を取り合って頑張って行こうと思っています。

 

 

 そして、そんな事をジブンが考えてた他所では……未だお互いに顔を合わせて話をしようとしない、彩さんと千聖さんがまだ更衣の途中で、各々メイクをしていました。

 

 二人ともライブがあると言う事はわかってるので、その点については一安心なんですが、不用意に手を触れると今にも噛みつかれそうな雰囲気を肌で感じているんです……! 更に言うなら、ジブンたちはもう更衣が終わっているので、後は彩さんと千聖さんだけなのも余計に拍車をかけてるんです……っ!

 

 

「アヤさんとチサトさん、一昨日からずっとあの様な感じですけど……大丈夫なんでしょうか……」

「大丈夫じゃなーい? もうすぐライブも始まるし、いざとなれば切り替えれると思うよー」

「日菜さん、少しは状況という物をですね……」

 

 

 ……今、この瞬間ほど心の底から颯樹さんに居て欲しいと思った事は無いッスね。

 

 

「彩ちゃん、約束は覚えているわね?」

「うん。このライブで私が一度も噛まずミスせずにやりきれたら、颯樹くんに関して全て教えて貰うからねっ」

「約束は守るわ。まあ、一昨夜の貴女みたいに許可しても無いのにベタベタと男性に触れる様なヘマはしないから安心して」

「事ある毎に引き合いに出してくるね……良いよっ、絶対に成功させるから」

 

 

 お二人が抱いている颯樹さんへの想いの強さは、今までも何度か目撃しているので、特に驚く事じゃないんですが……こんな風に顔を合わせず、しかも売り言葉に買い言葉でやり取りをするこの光景が、ジブン的には本当に居た堪れなくて仕方が無いッス〜!

 

 

 ……どうしてお二人がこの様な始末になってしまったのかは、少し時間を遡って、昨日の練習の開始前にあった出来事をお話しなければ行けませんね。

 

 そう、あれは……確かジブンが機材調整の為にスタジオに到着し、準備を終えた頃合の時でしたね。

 


 

「……よし、これで完成です。我ながら作業にかかる時間もだいぶ抑えられて来ましたし、颯樹さんが来るまでもう少し時間がありますね」

 

 

 その時ジブンは他の方々よりも先にスタジオに入って、レッスンをする際に使う機材の調整を行なっていました。颯樹さんは諸用を片付けてから来るらしく、10分程開始時刻から遅れるとの連絡を聞いていましたので、ジブンはそれに合わせて行動をしていたんです。

 

 

 彩さんが歌う時のマイクスタンドの高さはこのくらいだったり、千聖さんや日菜さんにイヴさんはスピーカー等を経由して音を出さないと行けないので、その位置だったりを確認し、最後にマイクテストを軽く行なって……それが済んだ後に一息吐こうとした、その時でした。

 

 

「なんてことをしてくれたの、彩ちゃんッ!!!!」

「うひゃあっ!?!?!?!?!?!?」

 

 

 突如としてジブンの耳に聞こえて来たのは、千聖さんの本気で怒っている声でした。その拍子にお水を飲もうとしていた手が止まり、思わずキョロキョロと周りを確かめてしまう始末……。

 

 千聖さんの声、本当によく響きますね……。でも、ここまで怒るなんて一体何が?

 

 

 そんな事を思いながらも、未だに声の聞こえている方へと向かってドアを開けて見てみると、そこにはロッカーに挟まれた狭い室内で未だに正座をしていて半泣き状態の彩さんと、烈火の如く怒り狂っている千聖さんが居たんです。

 

 最初はジブンも半信半疑だったのですが、彩さんがジブンを見るなりその潤んだ目を此方に向けて来て……て、えぇ!?

 

 

「麻弥ちゃぁん、何とかしてぇぇぇぇ!!!!!」

「えっ、えぇっ!? そ、それは無理難題が過ぎますって彩さぁん! と言うか、一体全体どうしてそんな事に「彩ちゃん、まだ話は終わってないわよ?」あ、千聖さん……おはようございますッス」

「あら、麻弥ちゃん。おはよう。その様子だと、スタジオの機材チェックは終わっているのかしら?」

「あ、はい。つい先程終わったばかりです。あのー、差し支え無ければ何があったか教えて頂いても……?」

 

 

 ジブンは今までの状況説明を千聖さんに求め、そして回答を得る事にしました。まだ関わり始めてからそこまでは経っていませんが、このお二人は颯樹さん関連で少し面倒な事になっているのだとは薄々気づいていました。

 

 なので、この一件で少しでも知れる事が出来れば御の字だと思っているジブンが何処かに居たのも事実でした。

 

 

 そんな事を考えながらも話を聞いていると……何やら聞き逃せない驚く言葉が飛び出してきたんです。

 

 

「なるほど……千聖さんの言い分はよく分かりました。要は颯樹さんに無闇矢鱈に接触し、剰えその先に行きかねない雰囲気だったのがとても気に入らないんですね?」

「ええ。彩ちゃんは自分が颯樹に対してやっている事が、アイドルとして正しい姿じゃないと自覚していないわ。だからその事について少し説法を説いていたのよ。……颯樹の部屋に監視カメラを設置してて良かったわ。あれが無かったらどうしようかと」

「あはは……え? 今、何と?」

「え? 颯樹の部屋に監視カメラを設置してて良かった、と言ったのよ?」

 

 

 ……ジブンの勘違いじゃないッス、聞き間違いじゃ無かったみたいです!

 

 

「ち、千聖さん!? 颯樹さんの部屋になんて物を設置してるんですか!? 颯樹さんのプライベートまで知ってどうするつもりなんですか!」

「あら、颯樹の未来の正妻として重要な事よ? 何れ未来の伴侶となる身としては、家の中での様子だったり、休日の行動に細やかな表情の変化まで全部知り尽くしてる必要があるじゃない?」

「それにしたってやりすぎです!」

「千聖ちゃん、そんな話は私も聞いてないっ!」

 

 

 うわぁ……これは一体どうしたものか……。

 

 颯樹さんの事をもっと知りたいと言う認識は彩さんと千聖さんで互いに変わりない……でも、お二人の間は颯樹さんと関わって来た年数で圧倒的な壁ができている。ジブンとしては何方も応援するべきなのでしょうが、ここまで聞いてしまうと颯樹さんが不憫でならないですね……。

 

 

 そして時間も少し過ぎた頃合いで、日菜さんとイヴさんも来たので、ジブンは今起こった状況の全てを後の二人にも伝える事にしました。多かれ少なかれ颯樹さんの事は知りたいと思うでしょうし、これくらいの説明は有って然るべきですね。

 

 

「千聖ちゃん、いくら何でもそれはあたしでもるんっ♪としないよー」

「チサトさん……」

「そうね。けど、だからって解って貰おうだなんて微塵たりとも思って無いわ。貴女たちが彼と釣り合わない事は私が一番よく分かってる……だから、彼の事については私だけが知っていたら良いの」

 

 

 何処までも自分中心で、自分勝手。……しかも、さっきの言葉を例に挙げるなら、ジブンたちの意見も聞かず、颯樹さんの意志が組み込まれた形跡が無い。颯樹さんの未来の伴侶としてあるべき自分の独善的な想いをただ語っているだけ。

 

 

 ……これは、もし仮にその様な立場になれたとしても、素直に応援するなんて無理ッスね。颯樹さんと関わり始めてから期間はそこまで経っていませんが……こんな事を聞かされたら、ジブンも黙っている訳にはいきません!

 

 

「本当にそれで良いと思ってるんですか、千聖さん」

「あら、麻弥ちゃんまで私に口答えするのかしら?」

「いえ。ですが、今の千聖さんがもし仮に颯樹さんと付き合えたとしても、ジブンはお二人を応援するなんてできませんよ」

「そう、わかったわ。……彩ちゃん、約束の日までもう時間は無い……貴女の想いの強さ、見定めさせて貰うわよ」

 

 

 ジブンとの会話をそこで区切った千聖さんは、スタスタとロッカールームを後にしました。そしてその場に残ったのは、先程までジブンに抱き着いて泣き腫らしていた彩さんと、呆気に取られているジブンたちが残る事となりました。

 

 

「……どうする? 麻弥ちゃん、イヴちゃん。彩ちゃんは心持ちに変わりは無いから良いとしても」

「私は……サツキさんもチサトさんも、大切なパスパレの仲間です! その想いに変わりはありません!」

「麻弥ちゃんはー?」

「そうですね……ジブンもイヴさんと同じくですよ、日菜さん」

 

 

 そんな事を話しながら、ジブンたちもロッカールームを離れてスタジオへと向かいました。……ですが、その際に彩さんからこんな言葉が。

 

 

「麻弥ちゃん」

「……? 彩さん、どうかしましたか?」

「ねえ、麻弥ちゃん。もしもの時は……よろしくね。私は颯樹くんの事、絶対に振り向かせてみせるから」

「……わかりました。彩さんのご期待にどこまで添えられるかは分かりませんが、ジブンで良ければお手伝いさせて貰います」

 


 

 彩さんとの約束……その想いにジブンがどのくらい応えられるか、正直不安でしかありませんが、任された以上は全責任を持って果たすだけです!

 

 

「Pastel*Palettesの皆さん、開演五分前です。……っと、もうみんな準備万端かな?」

「ええ、もちろんよ」

「問題無しだよ、颯樹くんっ♪」

 

 

 控え室に入って来た颯樹さんからの声かけを受けて……先程までメイクをしていた二人も、彼の方を向いてそう答えました。こう言う時は直ぐに反応できるんですね……そんな気持ちに一瞬で変えてしまう颯樹さんが本当に凄いです。

 

 

 ……ジブンがアイドルになるなんて、今までの日々を何となく過ごしていたら絶対に考えられなかった事。ですが、この五人に颯樹さんを加えた六人で、これから頑張って行くんですよね。その先には苦労や挫折もあるかもしれない……でも、どんな時であってももう一人じゃない。

 

 ならば……ジブンのできる精一杯で、これからひたむきに頑張るだけです!

 

 

「……そうだっ♪ 開演前にみんなで円陣組もうよ!」

「もう、彩ちゃんったら……随分余裕ね?」

「そんな事言わないでよ〜! これをすれば気分も高まるかなって思ったんだ♪」

「私も賛成です! 円陣を組みましょう!」

「なら、さっくんも加わるべきだよねー?」

 

 

 彩さんからの円陣を組まないかと言う提案に、颯樹さんは若干否定気味でしたが……日菜さんや千聖さん、イヴさんは加わって欲しいのか期待の眼差しを向けていました。そして提案した張本人である彩さんに関しては、加わるのが当たり前だと言わんばかりの笑顔でした。

 

 

「……仕方ない、加わるか」

 

 

 そう言って颯樹さんは、苦笑いしながらもジブンたちの円陣に加わりました。

 

 ……アイドルの輪に男性が加わる、と言うのは世間一般からすると異様な光景かもしれませんが……颯樹さんもジブンたちの仲間と言う事実は変わらない。なら、この輪に颯樹さんが入るのは自然な事ですよね。

 

 

「それじゃあ、健闘を祈る。まあ、みんなが行くのはファンの前……輝くステージだけどね」

「うんっ♪ それじゃあ……まん丸お山に〜」

「パスパレ〜、ファイッ!」

『おー!』

 

 

 あはは……彩さん、盛大にスルーされましたね……。

 

 彩さんからの頼みもありますし、パスパレとしてのお仕事もあるので何処まで出来るかは分かりませんが、ジブンのできる範囲で頑張ります!




 今回はここまでです。如何でしたか?


 次回は……いよいよライブ本番に入りまして、その後の様子を少し書けたらと思っていますので、楽しみにしていて下さいませ。


 それではまた次回の更新にて。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。