新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
本編を昨日に更新した余韻も冷めやらぬままに、今回も本編の最新話を更新していきますよー!(全力全開フルスロットル過ぎるので落ち着く時が欲しいよタスケテ)
それでは、本編スタートです。
「……んぁ」
何処からか雀の鳴き声が聞こえて来そうな程の暖かな陽射しを受けて、僕は重たい瞼をゆっくりと開けた。昨夜は一体どうしてたっけ……確か、学校で花音と一悶着あって、彼女と一緒に下校もしていたのはよく覚えている。
でも、記憶が無いのはそこからだ。
そう言えば頭の中に薄らとだけど、染み付いた光景があったのは思い出した。あれは何だったか……、喉の所までは出てるのに言葉にするのが難しい。そんな感覚だ。
「今何時だ……。スマホ、スマホ……」
布団から手を伸ばしてスマホを取ろうとした時、背中から何か抱き着かれる様な柔らかい感触が伝わって来た。更に言わせて貰うなら、その行動をして来た人物は小さく僕に聞こえない音量でくすりと笑ったかと思えば、腰辺りに回している手を自分の方に引き寄せて、僕を布団の中に引き戻したのだ。
……あー、なんか少しずつだけど思い出して来た。
そんな事を頭の隅に考えながら、僕はこの中に引き戻した元凶と顔を合わせる事にした。そこに居たのは。
「……ふふっ♪ 作戦大成功っ♡」
「……おはよう、花音」
「おはよう、颯樹くんっ♪ 気持ちの良い朝だねぇ〜」
水色の髪をサイドテール……今は、それを卸して腰に届くくらいまでの長髪にしている、同級生の女の子───松原 花音、その人だった。
「あの、そろそろ起きたいんだけど……この拘束を解いて貰っても良いかな」
「そうだねぇ〜、良いよっ♪」
「それと、昨日は確か風呂にも入ってないはず。まずはシャワーを浴びよ。何か身体中に違和感があるし」
「うんっ♪ じゃあお風呂でも……シちゃう?」
……全くこの子は。昨晩あんだけ激しかったろうに、それでもまだ足りないのかい……正直脱帽するよ、ここまで来ると。それか、一種の興奮状態なのかな。そこら辺は病院で診て貰わないと詳しい検査結果はわかんないんだけど。
花音の言葉を聞いた僕は、彼女を連れてシャワーへと向かう事にした。その際にお姫様抱っこをせがまれたり、お風呂でもう一回となったのだが、前者は要望通りに応えて、後者は丁重にお断りさせて貰った。
それを聞いた花音は少し不機嫌そうだったけど、此方としては起きて直ぐにもう一回なんて、正気の沙汰では無いよ、うん。何処の精力無尽蔵にあるそっち系主人公だよ全く。
そうしてシャワーを済ませ、お互いに更衣を済ませて朝ご飯を食べている途中……花音からこんな提案を持ちかけられる事になった。
「ねぇ、颯樹くん」
「ん?」
「今日は土曜日だからお互いお休みでしょ? なら、私が制服のままなのは申し訳無いんだけど、私と一日デートしない? 気の向くままに何処かへ行って遊んで、そして夕方になったら帰って来る。お母さんには事前に『友達の家に2泊してくるね』って伝えてあるから、帰りにお夕飯の買い物もして。どうかな?」
お出かけか……確かに、ここ最近はパスパレ関連で忙しなく動き回っていたし、新しいお仕事のお話は今の所来ていない。それに、ちーちゃんと麻弥が今日までお仕事で居ないから、他のメンバーには個人練習を欠かさずするように、と伝えてある。
なら、花音からのこの提案に乗らせて貰おうかな。
「……わかった。食べ終えたら少し休憩して、それから出発しようか。花音が制服で行くなら、僕もそっちの方が良いかな?」
「あっ、ごめんね……気を遣わせちゃったかなぁ」
「良いよこれくらい。洗濯機は今夜回して、明日の朝には確り乾いてる様にすれば問題無いから。どうせなら、花音のも一緒に回してしまおう。そうすれば明日にはキチンと持って帰れるよ」
「えへへっ、ありがとう♪」
そこまで打ち合わせを終えた僕たちは、簡単な朝ご飯を時間をかけて食べてから、お互いに準備を済ませてから街中に繰り出す事にした。その際に……花音から手を繋いで欲しいと言われたので、僕は自分の右手を花音の左手と繋いで応えたのだった。
まあ、その後に恋人繋ぎにする必要はあったのかな、と思ったけれど……もう行く所まで行ったのなら、これくらい安いものかな。
「ん〜、涼しい〜っ♪」
「そうだね、適度にひんやりしてて快適だ」
僕たちが今訪れているのは、自宅のある花咲川地区から少し離れている場所にある水族館だった。こっちに帰って来る前も水族館に行く機会はあったのだが、今ほど落ち着いて見に来ていただろうか……と正直不安が残る所だ。
「颯樹くん、行こっ♪」
「今日は目一杯楽しんじゃおうか。時間の許す限りね」
「うんっ♪」
僕よりも少し先に居た花音に手を引かれて、僕らは水族館の中へと足を進めた。1階フロアは深海生物たちが多く展示されていて、それを見る度に花音が驚きっぱなしだったのが印象的だ。順路を進みながら周囲に広がる光景を楽しむエリアもあり、あるエリアまでは順調に進んだ。
……だが、次に訪れた展示エリアで、僕は花音の新しい一面を見る事になった。
「うわぁ〜、クラゲがたくさん居るね〜♪」
「……なるほど、クラゲか」
そう、クラゲの展示エリアである。
水族館に行く道中で花音から聞いた話だが、どうやら彼女は大のクラゲ好きらしい。その好き度合いは鑑賞時間の長さや本人の性格からも伺えたが……極め付けは、一度本当にクラゲに触ろうと手を伸ばした事があるみたいで、その時に手を思わず痺れさせてしまったとの事で。
僕もクラゲに関しては見るのは好きだが、花音の様に実際に触れてまではちょっと遠慮したい所だ。
「ふわふわ浮かんで泳いでて、凄く気持ち良さそう……」
「確かにね」
「颯樹くんを今回ここに連れて来たのは、私の好きな景色を共有したいと思ったからなんだよ? いつもバイトや勉強とかで大変な時とか、辛い事や苦しい事があったりしたら……私は必ずここに来るんだ。だって、この景色を見ると、自分が悩んでいる事がちっぽけに見えて来ちゃって」
花音から齎された説明に、心の何処かで納得している自分が居た。確かにこのクラゲたちを見ていると、頭の中で考えているマイナスな事が全て浄化されていく様に感じるね。
……もし許されるのなら、今この時だけはアイドルバンドのマネージャーとか、白鷺千聖のお気に入り、なんて堅苦しい肩書きからも解き放たれたい物だよ……。そう言うのは基本的に気にしない質だけど、どうしても心の中で考えちゃうからね。
「……颯樹くん?」
「……ああ、ごめん。何?」
「次のエリアに行くよ♪ 私のもう一つのお気に入りがこの先にあるんだ〜」
「へぇ、それは楽しみだ。行こうか」
「うん♪」
そう言って僕たちが足を進めた先には、案の定と言うとこれは失礼に当たるが、展示エリアの中で水中を優雅に泳いだり、岩場でペタペタと歩いたりしているペンギン達が居た。どの子も見てるだけで心が癒されていくのを感じるし、確かに花音が好きになるのもわかる気がする。
そして一頻り眺めた後、僕たちは再び1階に降りて、水族館の中にあるレストランで昼食を摂る事にした。その際にした話と言えば、クラゲだったりペンギン等の話だったので、僕は時折相槌を打ちながら花音の話を聞いていた。
……まあ、クラゲを触りたいかと言われたら、そこはあまり共感できないのだが。
昼食を終えた後にその他に色々と見て周って居たら、時間も良い頃合になったので、今居る水族館を出て電車に乗って、住み慣れてる街へと戻って来た。
その後電車から降りて駅から出た僕たちは、夕飯の買い物をして、僕の自宅へと帰宅した。花音の話では母親に話はしているとの事らしいのだが、僕としてはかなり不安もあるのが現実だったりする。……まあ、彩の母親みたいな始末は御免被りたいが。
「今日は楽しかったね♪」
「そうだね。これでまたひとつ、花音について詳しく知れた気がするよ」
「ふ、ふぇぇ〜」
「……さて、遅くならないうちに夕飯を作ろうか。今夜は油そうめんにするから、花音も手伝って」
「はーいっ♪」
そう言って僕は買い物袋をテーブルの上に置いて、花音には手を洗ってくる様に伝えた。その途中で花音が迷っていたので、即座に駆け寄って洗面所まで案内をする事になったのはもう安定としか言えまい。
「へぇ〜、油そうめんって奄美群島の郷土料理なんだね〜。ちなみに颯樹くんはこれを誰から?」
「母さんから聞いたんだ。お野菜を無駄無く使うなら、この方法が一番早いって聞いたからね。普通に野菜炒めにしても美味しいんだけど、今回は少し手間をかけようかと」
「そうなんだぁ」
花音に逐一説明を挟みつつ、僕は調理を進めて行った。
そしてそこから数分後、油そうめんも出来上がって、付け合わせのお味噌汁もできた頃合で、僕たちは夕飯にする事にした。
「うわぁ、どれも美味しそう…♪」
「そう言って貰えるなら嬉しいよ。それじゃあ」
「「いただきます」」
その挨拶を済ませて夕飯を食べ始め、僕たちはお互いに目の前にある物全てを、胃の中に少しずつ入れて行った。たまに花音がテーブルから乗り出して食べさせて来たが、それは軽く窘めた後に応える事で何とか乗り切っていた。
……さて、決行するならそろそろかな。
そう考えた僕は夕食を食べた後に立ち上がり、2階の自室へ行って探し物をした。それを見た花音は不思議そうな顔をしていたのだが、こればっかりは彼女に知られてはまずいからね。
そして1階に降りた後、僕は花音の隣に座った。
「え、えっと……どうしたの、颯樹くん」
「花音。今日って誕生日だったよね?」
「え? まさか……覚えててくれたの?」
いいねいいね、その反応をしてくれるなら此方も渡しがいがあるよー?
「まあ、ちーちゃんから聞いたんだけどね。それを受けてこっちで用意してたんだ。……はい、どうぞ。その小箱の中にあるのが、花音へのプレゼントだよ」
「ありがとう……。開けても良いかなっ」
「うん、どうぞ」
「それじゃあ、失礼します」
そう言って箱を開けた瞬間、花音の眼がキラキラと輝き始めた。その中にあるのはクラゲをモチーフにしたブローチで、先週のお休みの日に雑貨屋さんで購入していた物だ。普段使いも出来るので、お出かけや少しオシャレに着飾りたい日などには持ってこいだと思っている。
「凄い……ありがとうっ♪」
「喜んでくれて何よりだ……んむっ!?」
花音からのコメントを聞いたその瞬間、僕はいきなり自分の唇が塞がれる感覚に浸った。するとそこには顔を真っ赤にして、今にも物理的に食べてしまおうと言わんばかりの花音が、そこに居た。
「えへへ…っ♡」
「……っ!」
「今日は私の誕生日……だから、何をリクエストしても良いんだよね…っ?」
「ま、まさか……」
そう身震いした……時既に遅しだった。
「この後のお風呂からで構わないけど……いっぱい、シよ♡朝はお預けだったから、夜は良いよねっ♪」
「ちょっ、花音……うわっ!?」
今朝見たまんまの表情をした花音に捕まり、僕は為す術無く連日コースになってしまうのだった。確かに今日は花音の誕生日ではあるけれど、それとこれとは話が別なんじゃ……なんて、今の花音に言っても通用しないか……。
「(颯樹くん……私と千聖ちゃんがずっとずーっと傍に居るからね♪ その為なら何でもするよ、そう……何でも、ねっ♡)」
今回はここまでです。如何でしたか?
もうこれ以上レベルを上げられないよ……誰かタスケテ……タスケテーーーーッ!
次回の更新日については未定となっておりますので、更新予告をお待ちくださいませm(_ _)m
それではまた次回の更新にてお会いしましょう。