新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんにちばんは。咲野 皐月です。


 今回も本編……なんですが、先のツイートでもお知らせした様に、当初予定していた内容から少し話の内容を変更してお届けしようと思います。


 それでは本編、スタートです。


第二十四話

「えへへっ、新しい夏服に水着も買えたし、今日は良い事尽くめだな〜♪」

「あはは……その序に僕の服まで選ぶなんて。彩の情報の速さには全く恐れ入るよ」

「選んだ水着に関しては帰ってから着てみせるから、その時に詳しく感想を聞かせてね♪」

 

 

 少し前に一学期の中間考査も終わり、五月も終盤に差し掛かってジメジメとした日が続く時期になってきたこの頃。私と颯樹くんは偶然できたお休みの日を使って、二人でショッピングモールにお買い物へ来ていた。

 

 この経緯になったのには、彼のいつも着ている服装が関係していて……曰く。

 

 

『えっ、いつもの組み合わせじゃダメなの?』

 

 

 全くもう……人の心には直ぐ気づくのに、こんな所でズボラなんて、すっごく勿体無いよっ! どうせなら千聖ちゃんや花音ちゃんにビックリして欲しいし、私の実力を見せるならまたと無い機会! 

 

 そんな訳で服屋さんに来て、颯樹くんの服装を見繕ったんだけど……想定通り。ううん、寧ろそれ以上。

 

 

「まさか颯樹くんが暗色系以外の服装もイケるなんて……これは着せ替えのしがいがあるかもっ♡もしかしたら、それが影響してモデルのお仕事も来たり♪」

「ないない。背もそこまで高くないし、僕には不向きだよ」

「謙遜することないよ♪ ほらっ、次はコレね!」

 

 

 私は見繕った服を次々と颯樹くんに着せて行って、個人的に気に入った物をプレゼントする形で購入する。次のデートで彼に着てもらう姿を想像すると、ニヤニヤが止まらない。

 

 

「本当に良かったの?」

「うんっ、私が欲しかったから買っただけだから!」

「ありがとう」

「どういたしまして♪」

 

 

 私は颯樹くんからの質問に対して、そう答えた。

 

 本当は彼の服装から何に至るまで、隅々まで全部私が見たいくらいだけど、今はまだその時じゃない。颯樹くんに振り向いて貰うまでは、こうして少しづつ距離を縮めていかないと。

 

 

 そう思っていると、颯樹くんからこんな言葉が。

 

 

「お礼と言っては何だけど、お昼をご馳走させてよ。何が食べたい?」

「美味しかったら何でも大丈夫!」

「なら、適当に歩いて見つけようか」

「うん!」

 

 

 颯樹くんからの問い掛けにそう答えた私は彼の腕をぎゅっと掴んで、その横を歩く。

 

 こんな風景でも、周りの人から見れば仲睦まじい男女のデートに見えるのかな。もし、本当に颯樹くんとお付き合いする事が出来て、一緒にお買い物とかお出かけが出来たらすごく楽しいんだろうなぁ♪ 

 

 あれ、なんだろう……ふわぁ〜、キレイ……。

 

 

「ん、どしたの彩。行くよー?」

「ねぇ、颯樹くん。これ……」

「え?」

 

 

 私の眼に偶然留まったのは、純白のウェディングドレス。フリフリも多くてすごく可愛くて……だけどその中で何処か神秘的な雰囲気すら感じる、そんな衣装。

 

 ……すっごく見ててドキドキする……見ているだけで惹き込まれてしまいそうで、虜にさせられちゃう。

 

 

「(私……今はアイドルとして新米だから、まだその時じゃないけれど……もし、トップアイドルになれて、颯樹くんと未来を歩める様になったら……)」

「あのー、すみません。お取り込み中の所宜しいでしょうか?」

「へっ、へぇあぁっ!? な、なんですか!?」

「あ、ごめんなさい! あまりにも熱心にご覧になっていたので……」

「い、いえ! 何でもありませんのでっ!」

 

 

 私はその場からそそくさと離れようとしたけど、店員さんは引き止める。

 

 

「もし良かったらなんですけど、其方のドレスを試着されてみてはどうでしょう?」

「えっ?」

「実はですね」

 

 

 店員さん曰く、店の特集を雑誌で掲載するにあたってモデルを募集していたらしい。そこにたまたま私たちが通りがかり、それで声をかけられたと言う感じだ。

 

 

「パスパレの丸山(まるやま) (あや)さん、ですよね? いつもテレビで拝見してますよ」

「あ、ありがとうございます!」

「こちらとしても、事務所の方にオファーを掛けるか非常に迷ったのですが……これも何かの縁です、ぜひお願いします!」

「……は、はいっ! 私で良ければ、そのお話を受けさせてくだしゃい!」

 

 

 うぅ、噛んじゃったよぉ……でも、お仕事じゃないから大丈夫だよね、ねっ!

 

 

「ありがとうございます! よろしければ、其方の彼氏さんもご一緒にどうぞ……お二人とも被写体として映えると思いますので、きっと良い写真が撮れます! ささっ、此方へどうぞ!」

 

 

 店員さんは半ば強引に私たちを室内へと案内する。

 

 数ある種類の中で私が選んだのは、プリンセスラインの物だった。あくまでも個人的な印象にはなるけど……これこそ結婚式に似合う衣装だと思ったからだ。

 

 

 試着するのを手伝って貰い、試写室で待つ颯樹くんの元へゆっくりと歩み寄る。

 

 

「…………おお」

 

 

 颯樹くんは私の姿を見て、大きく眼を見開いた。

 

 

「どう、かな?」

 

 

 スタッフさんに手伝って貰いながら試着したそれは、彼にとってとても衝撃的に写ったみたいで。暫く眺められていたので、驚かせようと思っていた私も思わず顔が真っ赤になってしまった。

 

 

「似合ってるよ……すごく、キレイだ」

「あ、ありがとう……っ。颯樹くんも、その格好……すごくかっこいいよ……っ」

「あ、あはは……。この服装、僕が着るにはまだ早いと思ってたんだが」

 

 

 颯樹くんはバツが悪そうに少し笑いながら、私の衣装についての感想を述べた。お互いに顔が赤く染まってるから、どっちが支えないといけないのか分かったもんじゃなかった。

 

 

 ……嬉しいんだけど、嬉しい事には変わりは無いんだけどもっ! そこは真っ直ぐ私の方を見て、サラッとキザな一言でも欲しかったな……なんてっ。

 

 

 颯樹くんの着ている衣装は、白を基調としたタキシードで、胸ポケットに白い薔薇を挿せば……正しく結婚式で着る様なそれと同じだった。

 

 

「いやー! 二人ともすごくお似合いですよ〜っ! 準備が出来ましたら此方にどうぞ! 雑誌に掲載する用に写真撮影を行ないますので、試し取りで何枚か撮影をした後、本番で何枚か撮らせて貰いますね〜。それじゃあ、先ずは彩さん単体でお願いしま〜す!」

「はーい!」

 

 

 店員さんに促されて、私は写真を撮る。

 

 ウェディングブーケを両手に持ち、微笑むような笑顔でカメラに映る。……いつもの撮影は元気溌剌っ!と言った感じで撮られる事が多いけど、今日は違う。

 

 花嫁としてこれからの幸せに胸を躍らせるような役柄で、そんな気持ちを抱いている。

 

 

 私なら颯樹くんと……。

 

 妄想の中で繰り広げられる新婚生活を思い浮かべ最高のパフォーマンスをする。

 

 

 デビューしたての時は緊張のあまり満足に応えられなかった。

……けど、今は違う。恋愛という貴重な経験を得て、私はかつての自分とは比較にならない位の成長を遂げたのだ。

 

 

 

「おっ、良いですね〜! その幸せそうな顔をもう少しカメラに向けてくださいね〜!」

 

 

 スタッフさんからのそんな指示を受けながら、私は暫く撮影を続けて行った。

 

 ……こんな経験はただ普通にアイドル活動をしてるだけじゃ、絶対に経験できなかった。でも、颯樹くんとあの日、あの時、あの瞬間……運命の出会いをしていたから、今こうして向き合えてる。そう考えたら、颯樹くんには感謝してもしきれない思いでいっぱいだ。

 

 

「……はいっ、OKです! じゃあ今度は彼氏さんも交じって撮影してみましょー!」

「颯樹くん、一緒に撮ろっ♡」

「……わかった。それじゃあ、お願いします」

「わかりました! 先ずはそうですね〜、彩さんが颯樹さんに抱き着いてみましょうか!」

 

 

 店員さんからの言葉を受けた私は、近くに置いてあった台の上にウェディングブーケを置いて、彼の腕に抱き着いた。それはもう、満面の笑みを浮かべて。

 

 

 これほどの幸福感を未だ嘗て味わった事があったかな。それってアイドルのオーディションで合格になった時かな? ……いいや、違う。もしかしたら、Pastel*Palettes(パステルパレット)のリーダー兼ボーカルになれた時かな……ううん、これも違う。

 

 

 そう、その幸せはまさに今この時だと思う。

 

 形としては偽装夫婦だろうけれど、こうして彼の横に立っていて、雑誌の特集として掲載されるのだから、私としてはこれ以上の事は無い。

 

 

 ……今はまだ颯樹くんの隣に立つに相応しくない女の子かもしれない。……だけど、私は諦めない。たとえそれが同じバンドの仲間からだろうと、バイト先が同じで共に働く仲間であったとしても、私の好きな人は私の手で必ず奪ってみせる。

 

 

「良いですね〜、お二人とも幸せな雰囲気が伝わってきますよー! じゃあ……ラストは……結婚式では定番のアレ、行ってみましょうか!」

「アレ……?」

 

 

 アレ……?

 

 ……確かに、あの流れは結婚式ではお決まりの行動。こんな事をするのは初めてだし、心臓も今までに無いくらい脈打ってる気がする。でも……隣には愛する彼が居る。

 

 落ち着いて……深呼吸。私なら出来る、私なら……絶対にやれるっ。

 

 

「お互いに向き合って……それでは、行きますよ〜!」

 

 

 その合図でシャッターが落ちる直前、私は彼の頭の後ろに手を回し、強引に唇を奪った。これこそ、待ちに待った瞬間。……私たちは今、夫婦となったのだ。

 

 

「いいですねぇ! 最高でした!」

 

 

 ほんの数秒の出来事だったけれど、私は今日と言う日を一生忘れる事は無いだろう。今は心の中が幸せで満ちていて、その余韻に浸っている。

 

 

「彩……」

「えへへっ♪ ドキドキ……してくれたっ?」

「まあね。あの場面で流石にキスは驚いたよ」

「ふふっ♡」

 

 

 恥ずかしそうに頬をかく颯樹くん。

 

 仕方ない、と言った様子で気持ちを切り替えるも、彼にはちょっとだけ気がかりな事があったみたいで……?

 

 

「ていうか、シレッと舌を入れようとしたよね」

「……あっ、バレてた?」

 

 

 結果として彼の唇を奪った事には成功したけど、そのさらに奥まで奪う事はできなかった。……本当の所はと言うと、もっと濃密で深いキスを望んでいたけど、彼はそれをされる寸前ギリギリで阻止した。

 

 まあ……私としては、そんな事を誰にでも軽率に許さない彼が好きなんだけどね。

 

 

「以上で撮影は終了になります! お疲れ様でした〜!」

「「お疲れ様でした(〜!)」」

「いやー、本当にお二方は最高のカップル……いえ、私から見れば夫婦に見えましたよー! そんな方々の撮影を担当できまして、とても光栄です!」

 

 

 スタッフさんの笑顔を見ると、私たちまで嬉しくなってしまう。それもこれも……颯樹くんと出会えたから、こんなにもドキドキしてるし、今回の撮影を行う事が出来た……それを考えたら、今くらいは余韻に浸っても良いだろう。

 

 

「あっ、もし良ければなんですが……写真を現像してお渡ししますよーと言ったら、どうですか? 欲しいですか?」

「もちろん!」

「わかりました。こちらで準備が出来次第、送付させて頂きますね」

 

 

 私と颯樹くんの結婚式の写真……これはもう部屋に飾るしかない。

 

 その写真を入れる為に新しい写真立てを買って、あっ、アルバムにも入れたい。携帯にだって保存したいし……とにかく、颯樹くんとの思い出はいくらあっても困らない。

 

 

「それじゃあそろそろ行こっか」

「うんっ!」

 

 

 試着してる衣装を返却し、元の服装へと着替えた私は彼の手を恋人繋ぎにして、店を後にした。その際に店員さんから『末永くお幸せに〜!』と聞こえたので、私としてはすごく嬉しくなってしまった(颯樹くんは終始居た堪れない顔をしてたけど)。

 

 

 その後私たちは近くにあったカフェに寄って、美味しい紅茶とケーキに舌鼓を打っていた。曰く……これは花音ちゃんと千聖ちゃんから教えられた物らしくて。

 

 

「はぐっ!?」

「……今日は私とのデートだよね。私以外の女の子の事は考えちゃ、ダメだよ……っ」

「……悪い。無神経だった」

 

 

 彼の口の中に、私のショートケーキを強引に押し込む。

 

 

 いくら颯樹くんと言えど、今は私とのデート中。他の女の子の事を少しだけでも頭の片隅にあるのだけは、絶対に許せないよ。……せめてこのデートの時くらいは、目の前に居る私の事だけ考えて欲しいな。

 

 

 そんな事を考えながら、私は彼にこの質問をした。

 

 

「颯樹くんは……私と結婚できたら、幸せ?」

「うーん。彩はおっちょこちょいだから、家事をこなせるか不安になるかなぁ」

「もぉ〜! 私だって人並みにはできるんだからね!」

「それでも心配」

「む〜」

 

 

 なかなか信用してくれない彼に頬を膨らます。私だってその気になれば、お掃除や洗濯だって……料理も出来ると思う。まだお母さんに習ってる途中だから、あまり期待以上の成果は望めないと思うけれど。

 

 ……でも、そこまで心配してくれるのは、私に対しての愛情があるからなのかな? 

 

 

 

「……っと、まあ心配になってしまうからこそ、目が離せないと言うか。今と何ら変わらないと思うよ」

「んもーっ!」

「あははっ。それじゃあ、食べたら行こうか」

 

 

 ……もしかしたら、颯樹くんのその陽だまりの様な優しさに二人は惹かれたんだろうなぁ……。そう考えたら、羨ましくなって来ちゃった。颯樹くんにもっと触れたい……貴方の全てを……知りたい。全部。

 

 

 お昼を楽しんだ後、私たちは帰路に着いた。

 

 十分ショッピングを満喫したのもあるけど、今は何より彼と触れ合っていたい。その気持ちが今の私の思考を支配している。そんな気持ちを抱きながら、私は颯樹くんにこう問い掛けた。

 

 

「ねっ、このまま……颯樹くんの家に行っても、いいかな?」




 今回はここまでです。如何でしたか?


 次回はこの続きからになりますので、更新を楽しみにお待ち下さいませ。


 それではまた次回の更新にて。


【追記】
 この話の投稿日である、5月25日はDJユニット『Lyrical Lily』に所属するDJ担当…春日(かすが) 春奈(はるな)ちゃんのお誕生日です!

 僕の方では誕生日回をご用意できませんでしたが、この作品と同時更新されている『可憐なる少女達と紡ぐ日常』にて、春奈の誕生日回が更新されております。該当作品のリンクを下に貼っておきますので、お時間があればぜひ読んで貰えると幸いです。


 そして最後に……Happy birthday、春奈!


【作品リンク】『可憐なる少女達と紡ぐ日常』
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