新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆さん、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。

 今し方「空想メソロギヰ」を聴きながら執筆作業をしているのですが……この先の展開が、何だかその手の話よろしくドロッドロになりそうだと肝を冷やしながら書いております(^_^;)


 今回は前回の続きとなります。

 当初のジューンブライド回は前回と今回の話で区切る予定でしたが、予定を変更しまして次回で区切ろうと思います。その次の話からは文化祭Partを予定しておりますので、更新まで今暫くお待ち頂けますと幸いです。


 それでは……本編スタートです。

 最後までごゆっくりとお楽しみ下さいませ。


第二十五話

「ねぇ、このまま颯樹くんの家に行ってもいいかな?」

「えっ? それは別に良いけど……何でまた?」

「今日は一緒に居たいな。私……今、颯樹くんと居たい気分だから」

「……わかった。帰りにスーパーに寄って買い物しよう。付き合って」

 

 

 私が帰り際にそう問いかけると、颯樹くんからの承諾が貰えたので……それに私は笑顔で頷いた。その時に少し腕を組んで歩いても良いか聞いたけど、歩行の妨げにならなければと言う条件の元に承諾を貰う事が出来た。

 

 

 ……えへへっ、颯樹くんのお家でお泊まり……ファーストライブ前のあの日以来だけど、それが気にならないくらいには楽しみだなっ♪ 

 

 日菜ちゃんで言う所の『るんっ♪』と言う気分で、彼の横を歩く。

 

 

「夕飯は何を食べたい? ご馳走するよ」

「やった! それじゃあ……カレーが食べたい! 野菜がごろっとしたやつで!」

「おーきーどーきー」

 

 

 私たちは最寄りのスーパーに立ち寄り、じゃがいもや、にんじんに、玉ねぎ等々……今晩のカレーに入れる食材を次々とカゴの中へ放り込む。販売されている値段も一つ一つ注視しながら、お得に買える物は見逃さない様にしていた。

 

 

 人によってカレーに入れる隠し味とかは変わると言うけれど、私の家ではよく焼肉のたれを入れる。お母さん曰く、フルーツが入ってるから美味しくなる……と言う曖昧な理由らしい。まあ、美味しいんだからそれは関係ないんだけど。

 

 

「颯樹くんの家では隠し味に何を入れるとか、そう言うのはあるの?」

「んー、そうだな……母さんからよく聞いてたのは、ヨーグルトだったかな。何でも少し混ぜると(まろ)やかになって且つコクが出るから美味しいみたいで。僕もそのやり方を教わってるよ」

「へぇ〜」

 

 

 そんな事を小耳に挟みながらも、私たちは買い物を進めてお会計を済ませ、自宅(颯樹くんのだけど)へと向かった。その際にお母さんに連絡はしてるのかと聞かれたけど、カフェでお会計をしている間に済ませておいたので、そこは問題無いよと答える事が出来た。

 

 

 そして家に辿り着いて中に入り、颯樹くんは買い物袋をテーブルの上に置いた後、フックにかかっているエプロンをサッと身に付けた。黒を基調として所々に赤のラインが縦に入っている物で、短く切り揃えられた彼の髪型と、外から中に入っても違和感の無い服装にピッタリ合っていた。

 

 

 はぅぅ……颯樹くん、すごく格好良いよ〜っ♡

 

 何でも確り着こなせる人って、モデルさんとかそう言った類の人なのかなと思ってたけど……それをして居なくてあの見栄えなら、確実に殆どの女の子が揃って涙目になるはず。……実はかく言う私もそうなんだけど。

 

 

「さっ、手を洗って来て。彩のリクエストを作るんだ、確り手伝って貰うからね……と言うか、どしたのそんなに眼をキラキラさせてこっちを見るなんて」

「……はぅぅ……すごく格好良い……」

「? 何も無いなら良いけど、早く手を洗って来てね」

「……はっ! はーい!」

 

 

 ダメダメ。私、完璧に颯樹くんに見惚れてた……。

 

 せっかく私の方から誘ってお泊まりまでこじつけたのに、こんなんじゃこの先が不安だらけだよ……確りしないと、私! 

 

 

 その後私は颯樹くんからじゃがいもの芽取りと、それを終えた後の玉ねぎも一緒にして皮剥きをお願いされた。皮剥きに際してのコツはバッチリ彼の話を聞いて理解したし、手元を滑らせなければ上手にできるはず……と思う。

 

 

「おっ。彩に包丁を持たせるのは少し危険かな〜と思っていたんだけど……なかなか良い手際じゃん」

「えへへっ、ありがとう♪ 颯樹くんの方もピーラーを使っての皮剥き、すごく良い画になるよ♡」

「ありがとう。その皮剥きとかが終わったら、少し切る時のテクニックを教えようかな。少しづつレベルアップして行かないと」

 

 

 これも何れ来るであろうお仕事の為……そして、颯樹くんと結婚する為の準備だからねっ! 

 

 

「颯樹くんっ、皮むきと芽取り終わったよ〜」

「OK。そしたらそれを切ろうか。これもやってみる?」

「……っ、良いの!?」

「良いよ。さ、その皮を剥いた物を俎板(まないた)の上に置いてくれるかな。まずはじゃがいもから」

「はーいっ♡」

 

 

 私は颯樹くんの指示通りにじゃがいもを俎板の上に置き、それを切る態勢に入った。そうすると後ろから柔らかい感覚が伝わって来て……って、えぇっ!? 

 

 

「ちょっ……えっ、えぇっ!?」

「ほら、下手に喋らない。集中して。サポートするから」

「う、うん……っ」

 

 

 うぅ……颯樹くんって、その気があるのか分からない言葉をたまに言うから困っちゃうよぉ……。でも、その優しさに花音ちゃんや千聖ちゃんは惹かれたんだよね。……かく言う私もそうなんだけど。

 

 出来れば……この時間が永遠に続いて欲しい。何の邪魔も入らず、私と颯樹くんの二人っきりの、幸せな時間が。

 

 

「彩。手が止まってるよ」

「えっ? ……あ、ああ! ごめんなさい!」

 

 

 颯樹くんに誘導されるままに、私は調理を進める。野菜を切って、お肉の下拵(したごしら)えも熟し、そして鍋に放り込んでそれを煮詰めていく。彼は口頭で簡単に説明していたけど、その工程はどれも大変なものばかり。

 

 

 いつもこれをこなしていたお母さんには、本当に頭が上がらない。それと同時に……あまり料理の手伝いをして来なかった事を後悔する気持ちも湧いてきた。

 

 ……明日からでも、お母さんに料理を習っていこうと心の中で誓った。

 

 

 カレールーも入れ終わって少しした頃……それができるまでの間、私たちはソファに腰を下ろす。二人で横に並び、目の前にあるテレビをつける事無く会話を始めた。

 

 

「今日は颯樹くんと二人きりになれて嬉しい♪」

「ほんとに?」

「うんっ!」

 

 

 颯樹くんの前で嘘なんてつくはずがない。私は満面の笑みを浮かべて、そう答える。実際に彼と居て幸せな気分になるのは事実だし、誰が何と言おうと私が颯樹くんの事を好きな気持ちは、絶対に変わらない。

 

 

「彩は本当に良い子だ。僕は……キミの様な、素直でまっすぐな子が好きだよ」

 

 

 微笑むようにそう告げて、颯樹くんは私の頭を優しく撫でてくれた。彼の温もりを感じた私は、言葉にできない程の幸福感に満ち溢れた。大好きな颯樹くんから頭を撫でて貰える……その行動の意味は人それぞれだけれど、私としてはすごく嬉しい。

 

 このまま……ずぅっと幸せな時が続けば良いのに、なんてそんな事を思ってしまう。

 

 

 ……じゃあ、今この時だから聞ける事、颯樹くんに聞いちゃおうかな。

 

 

「……ねぇ、颯樹くん」

「ん? どしたの?」

「……花音ちゃんと身体を交わらせて、どうだった?」

 

 

 その言葉で颯樹くんの表情が固まる。まさか私がこんな話題を出すなんて思ってなかった様な顔だった。……でも、私は颯樹くんが大好き。花音ちゃんや千聖ちゃんと同じか、それ以上には。

 

 だからこそ、私は彼自身の口から事実を聞きたい。彼がどんな答えを出したとしても、私の気持ちに変わりは無いから。

 

 

「どうだった、か……。そりゃもちろん、気持ちよかったってのが第一かな」

「他には?」

「花音を感じられて心地よかったと言うか、安心感があったと言うか……」

「他には?」

「あの……どうしてこんなこと聞くの?」

 

 

 私の言葉に疑問を浮かべて、そう問いかける颯樹くん。

 

 だって、花音ちゃんの返答を聞いたら、その颯樹くんがどう思ってるのかは私だって知りたくなる。もしかしたら勢いのままだったのか、それともお互いに承認があっての事なのか。

 

 

 颯樹くんの事だから、花音ちゃんと同意の上で事に踏み切ったんだろうけど、置いてけぼりになった私としては、すごく気分が落ち着かない。

 

 

「別に、私が気になっただけだよ」

「そっか」

「うん」

 

 

 これまでの幸せムードは鎮まり、私たちの居るリビングには沈黙の時間が流れる。二人しか居ないから静かになるのも仕方無いけれど、この状況になったのは私にも理由がある。

 

 

 でも、颯樹くんにはどうしても聞きたかった。

 

 ……今後私が彼と……そしてその周りに居る恋敵たちとどう向き合っていくべきか、確認する為に。

 

 

「……私ね」

「うん」

「すごく寂しかった」

 

 

 私はそう言った後、彼の胸に勢い良く飛び込んだ。あの時と同じ様に、優しくて暖かい……そんな感じ。でも、その時と違うのは、もう彼には花音ちゃんの匂いが着いてるという事。

 

 颯樹くんは花音ちゃんの事を意識してるし、花音ちゃんも颯樹くんの事を意識してる……そしてその中には、幼馴染の千聖ちゃんだって。

 

 

 ……心底あの二人が羨ましい。私だって、颯樹くんの事が大好きなのに。

 

 

「彩……」

「お願い。何も言わないで」

 

 

 戸惑う彼にそう釘を刺した私は、颯樹くんの胸に抱き着き続ける。……今はただ彼の温もりを感じていたい。胸の中で息を吸って吐き、耳を心臓に当て彼の鼓動を間近で耳にする。

 

 千聖ちゃんや花音ちゃんはこれ以上の事を……。想像するだけで気持ちがさらに昂る。

 

 

「鼓動、すごく早い」

 

 

 彼と密着して気づいた事。……これは彼自身も緊張しているからなのか、興奮しているからなのかはわからないけど、普通の状態とは程遠いんだと言う事はよくわかる。

 

 

 彼の顔を見ると、その答えはすぐに出た。

 

 ほんのりと赤らめたその表情は、間違いなくこの反応が後者だと言う事を理解した。

 

 

「(あぁ……やっぱり私、颯樹くんの事が……どうしようも無いくらい、好きなんだ。心臓の鼓動がもう抑えきれない……)」

 

 

 分かってはいた事だけど、彼を前にするとドキドキが止まらなくて……いつもハキハキ言えてる言葉も、少しタジタジになってしまって。彼の事を考えるだけで胸がポカポカして、彼に何かあったかと思うとすごく胸が苦しくなる……。

 

 ……アイドルとしての私じゃない、たった一人の女の子としての私の……最初で、最後の恋。私にとって颯樹くんは……まさしく『初恋』。そして『運命の人』。

 

 

「……ねぇ、颯樹くん。あの時も言ったと思うけれど……もう一度、言わせて欲しいな」

 

 

 颯樹くんに一言そう告げた私は、ひと呼吸おいてから彼に想いの丈を伝える。

 

 

「私は……あなたが好き。大好き。心の底から、そう思える」

「彩……」

「今すぐ返事して、とは言わないよ。だけど、私の気持ちも理解して欲しい」

「……」

 

 

 視線を外して軽く頬を掻く颯樹くん。赤らめた顔は未だ引かずそのままの状態だ。自分の中で状況整理が上手くいっていないのか……視線が少しだけキョロキョロと動いている様だった。

 

 

 そして少し時間が経った頃、彼はまっすぐ私の眼を見てこう言った。

 

 

「……あの時も言ったけど、もしかしたら彩の事を傷付けてしまうかもしれないよ。それでも良いなら、待ってて欲しい。必ず答えは出すから」

 

 

 彼のその言葉を聞いた直後、私は颯樹くんにキスをした。花音ちゃんや千聖ちゃんとした以上には、あまり感じないかもしれないけど……私なりの精一杯を込めた、永遠の愛を誓う……本命のキス。

 

 颯樹くんが望むのならば、私は一夫多妻でも一向に全然構わない……でもたった一人、私だけを選んでくれるならそれまでだけれど、彼のこの性格を考えると、あとの二人の事も大事だと言いそう。

 

 

 ……なら、私は彼にとって心の拠り所で無ければならない。絶体絶命な状況を助けて貰ったのだから、今度は私がそれに応える番だ。

 

 

「……あれ?」

 

 

 私の腕に何か固いものが当たりそこを凝視する。

 

 ズボンがテントを張るほどの盛り上がった下半身は彼の今の気持ちを表しているかのようだった。……初めて見る男の子の証、それをそっと軽く指先で触れる。

 

 

「これ、どうしたの?」

 

 

 首を傾げて、顔を真っ赤にする彼に問いかけるが顔を逸らすだけで返事は返さない。ムッと頬を膨らませた私は、颯樹くんの事を少しだけ苛める様にに指の腹で押したり、スーッとゆっくり滑らせたりする。

 

 

「どうしてこうなったの?」

 

 

 イタズラな笑みを浮かべて訊こうとするも、颯樹くんはやはり返事をしない。

 

 

「……ふーん、まあ良いよっ。カレーを食べ終えた後、お風呂には必ず入るから……」

 

 

 そう言って私は颯樹くんの首の後ろに手を回し、緩くホールドする様に彼と見つめあった。彼の戸惑ってる瞳……すごくキレイで、ちょっとだけイジメたくなっちゃう。それくらいには光があって、見ているだけでキスしてしまいそう。

 

 ……でも、それはご飯を食べた後でもできる。なら、今はここまで。

 

 

「その時に……私の事、好きにしていいから……ねっ♡」

 

 

 彼にそう告げて頬に口づけをし、カレーの入ったお鍋の火を止める。そして立ち直った彼と一緒にご飯をお皿に盛って、その上にルウをかけようとした……その時だった。

 

 

「……ん?」

「どうしたの、颯樹くん」

「……ごめん、電話だ。……はい、そうですけど」

 

 

 突然彼の方に電話がかかって来た。

 

 応答している様子から見るに、急ぎの用事とかでは無いのは分かるんだけど……相手は一体誰なんだろう? 私がそう思っていると、颯樹くんの様子が目に見えて変わる瞬間が訪れた。

 

 

「……えっ!? 傘を忘れたっ!?」

「!?!?!?」

「あー、まあ日中は傘要らずだったからね……と言う事は夕飯を用意してる時に降り始めたのかな。……とりあえず、少しの間そこに居て。迎えに行く」

 

 

 電話の相手に対してそう伝えて通話を終えた後、颯樹くんは急ぎ足でエプロンを外してフックに立て掛けて……小さなショルダーバッグを肩から提げ始めた。中に貴重品等を入れた彼は、私の方を振り返ってからこう伝えて来た。

 

 

「だ、誰だったの?」

「花音だよ。……とりあえず、今から走って花音を迎えて来る。バイト上がりだと言ってたから、お腹も空いてるはず。それでこの大雨……今の状態で花音を帰せば、確実にびしょ濡れだ。花音の分も用意しててくれたら助かる!」

「う、うんっ! わかった!」

「……頼むよ、彩っ!」

 

 

 そう言って颯樹くんは、黒い大きな傘を差して夜の街中へと駆け出して行った。確かに今は梅雨の時期に入ってるから、それを考えると妥当なのかな、と割り切る事が出来た。

 

 

 ……花音ちゃん……例え相手が友達であっても、彼を欲すると言うのなら、私は容赦しないからね。……絶対に。




 今回はここまでです。如何でしたか?

 前書きでもお知らせしました様に、ジューンブライド回は次のお話までで区切ろうと思います。そしてその後からは文化祭Partをやりながら、ヒロイン候補三人の恋心の深刻化をさせて行ければと考えていますので、何卒よろしくお願いします。


 それでは……また次回の更新にてお会いしましょう。


【追記】


 この度……本作品である『新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)』が、お相手方に『白き蝶に導かれて・・・』を執筆されている、なかムーさんをお迎えしてコラボをする事となりました。

 その際にやる内容などは協議を重ねており、現在制作が進められている真っ最中です。


 公開日時や話の内容に構成などはまだ此方の方からはお伝え出来ませんが、その時になれば読む事が出来ると思いますので、楽しみにお待ち下さいます様よろしくお願いします。


 そして……この度、この様な作品とのコラボを快く承認して下さったなかムーさんには、心より感謝を申し上げる所存でございます。今後ともご迷惑をかけるかと思われますが、何卒よろしくお願い致します。
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