新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
今回は前回お知らせしていた通り、ジューンブライド回のラストとなります。その後は文化祭Partに入っていこうと思いますので、把握のほどよろしくお願いします。
それでは……本編スタートです。
最後までごゆっくりお楽しみ下さいませ。
「ふぇぇ……、ごめんねっ? 天気予報だと晴れるって言ってたから……」
「気にしないで。僕だって今日は彩と出掛けてたし、そう思っちゃうのも無理無いよ」
僕は大雨の街中を走り抜けて、バイト上がりの花音を迎えていた。道中でお腹が空く音が聞こえたので、彼女にはみかん味のキャンディを渡したが。
「えへへっ♪」
「ふふっ、喜んでくれて何よりかな。さっ、もうすぐ着くよ」
「うんっ♪」
コロコロと口の中でキャンディを転がす花音に癒されながらも、自宅に辿り着いた僕はポケットから鍵を出して家の扉を開ける。
「ただいまぁ」
「あっ、おかえりなさーい!」
「…………えっ?」
パタパタとスリッパの音を鳴らし、エプロン姿の彩が僕たちを笑顔で出迎える。その光景を見て花音は驚き、ゆっくりと僕の方へ視線を向ける。
もちろんそれは歓迎するような物などではなく、どうして他の女がいるの? という怒りに満ちた悍ましいものだった。
「花音ちゃんもおかえり♪」
「う、うん。ただいま」
僕の横で取り繕うような笑顔を貼り付け、彩に返事を返す花音。その瞳には困惑の表情が浮かんでいた。
「ど、どうして彩ちゃんがここに?」
「あー、これは
僕は花音にこれまでの経緯を全て説明した。まあ、ブライダル雑誌のモデルになったと言うのは割愛するにしても、それ以外は説明しないと割に合わないと思ったからだ。
……そして、一頻り説明を終えたタイミングで、部屋の奥から何かが沸騰するような音が聞こえた。
「……っ、彩! 早くキッチンに!!」
「ああ〜! 大変〜!」
忙しない様子で彩は再びキッチンへと戻る。
その間に、花音を風呂場まで連れて行ってバスタオルを渡す。あれだけの雨できっと体が冷えているからだろう、とお風呂に入ってもらう予定だったのだが……。
「まずは説明してもらえるかな?」
花音の後方で阿修羅がまるでスタ○ドのように浮かび上がって、僕を睨みつける。
「え、えっと……ちなみにどこまで『全部っ♡』ア、ハイ」
僕は花音に洗いざらい全てを白状する事にした。
日中は彩と一緒にブライダル雑誌のモデルとなって、二人で撮影した事と、その帰りにカフェでお茶をして、その流れでお泊まりまでする運びになった事。
事実が事実なだけに僕の心は抉れ続けていて、下手をしたら木っ端微塵になりかねない程だった。
「そうだったんだぁ……」
「ごめん、花音。こう言うのは先に説明するべきだったよね」
「ううん、気にしてないよ。でも、そうなんだ……彩ちゃんとブライダル雑誌のモデルを……羨ましいな…っ」
頬に手を添え赤く染める花音。
やはり女性にとって、ウェディングドレスというものは特別なのだろう。結婚式は女性が主役というけれど、それに相応しい服ともなれば当然か。
「……今度機会があったらまた行こうか」
「うんっ!」
花音は満面の笑みを浮かべそう答える。
また同じ店でとなると面倒だから、別の店を調べておく必要があるな。となるとちーちゃんのも同じ様にしないとね……。
うぅ、頭が痛くなるな……。
「……颯樹くんの事情はよくわかりました。今回は大目に見ますっ」
「……申し訳無い、花音……」
「ごめんね、今日のシフトが私じゃなかったら一緒に行けたんだろうけど……でも、何個か条件があります」
花音はそこまで区切った後、僕を何か懇願する様な瞳で見て来た。……あ、これは直感でわかる。ニゲラレナイ。
「一つ目。私と一緒に今からお風呂に入ろ? 颯樹くんも雨の中を移動して来たんだし、それなりに濡れてると思うんだ♪」
「……他には?」
「二つ目。私たちの仲の良さを、彩ちゃんに見せつけよっ? まだ彩ちゃんは知らないと思うから、良い機会だと思うんだぁ♡」
「……他には?」
「最後の三つ目。今日は私と一緒に寝る事。もちろん彩ちゃんの隣でね♪」
およそ高校生には似つかわしい三ヶ条。
それは彩に自分が上の立場にあると見せつけるようなものばかりだった。
「一つ目は……まあよしとしよう。二つ目は内容によるけど、どのあたりを見せつけるつもりなの?」
「ご飯をあーんってしてあげたり、お風呂の後にマッサージしてあげたりとかかな?」
「な、ならよし。三つ目はどういうこと?」
「布団の中でする事と言ったら……たった一つだよ?」
「
そんなもの見せれるわけないじゃないか! 生命の誕生をさせるための行為だよ……? もろモザイクがかかるに決まってるじゃん!!
「ふふっ、私は良いんだよ? この話を千聖ちゃんに話しても。でも、こうされると不味い人が、今キッチンに居るんじゃないのかなぁ…♪」
……ヤバい、花音は相当な策士かもしれない。そう言うのは普段の会話で概ね察せられたんだろうけど、彩の弱い所を確実に抉って来てる!
しかも今し方服を脱ごうと手を掛けてるし、何よりチラッと花音には似つかわしくない黒いレースの下着が見えた! これ、絶対ちーちゃんの入れ知恵だよね……わかっててやってるでしょっ!?
「ふふっ、どうしたの♪ 一緒にお風呂入ろっ、颯樹くんっ♡」
「……入んないと……ダメですか?」
「うんっ♡」
僕に拒否権はない。目の前の
先ほどチラッと目にした黒いレースの下着が目に映り思わず視線を外す。その様子が面白かったのか、花音はイタズラな笑みを浮かべ距離を詰める。
「ふふっ。どうしたの?」
「い、いや……」
「颯樹くんも脱がないと風邪ひくよ?」
「わかってるんだけど……その、ね?」
察してほしい、と合図を送るも花音はそれをわかった上でスルーする。
そして躊躇いも無く上着もスカートも脱ぎ去った花音は、あられも無い姿を僕の前に見せびらかした。上下は黒いレースの下着で統一されていて、以前見た水色の物より圧倒的に刺激が強い物になっていた。
その後ブラのフックに手をかけ、僕を焦らす様に身体を前に屈めてゆっくりと外した。
「……か、花音……」
「颯樹くんだから……こう言う事も、出来るんだよ……?」
はらり、とブラが外れ花音の胸が曝け出される。
華奢な体の割にしっかりと実った二つの果実。思春期高校生が目にするには、あまりに刺激的で妖艶なものだった。
「なんで颯樹くんが恥ずかしそうにしてるの?」
「や、やっぱり慣れなくて……」
これまでの人生で女性と接する事が身内以外であまりなかった為か、みんなと話す時も少しばかり緊張する時がある。それ以上の事をするとなったら緊張を超え、心臓が口から飛び出そうな感覚に陥る。
「ふふっ、大丈夫。私と千聖ちゃんはず〜っと颯樹くんの味方だよ……だから」
そこまで言われた僕は、短い音と共に唇を奪われた。基本的な力じゃ男と女で違いがあるから、力任せに突破しようと思えば可能だけど……この花音から放たれる色気が、僕のその気概を削ぎ落としていた。
そして極め付きはキスをした後でも衰えない、恍惚なる笑み。それと尋常ではない程の艶やかさ。……彼女と一度身体を交えた時以上の感覚に浸る事となった。
「颯樹くん……私に、全て頂戴? 千聖ちゃんだけの颯樹くんじゃない……私と千聖ちゃんのモノだから♡」
「花音……」
慈愛に満ちたこの抱擁に抗う事なんてできない。
僕も自然と彼女を抱く力が強まる。
「ねぇ。颯樹くんも脱いで」
耳元でそう囁かれ、それに従い服を脱ぐ。上、そして下も脱ぎ捨て花音と同じ下着姿になる。
「ほらっ、もう一回」
花音は腕を大きく広げ胸元へと誘う。僕は惚けた脳内に身を任せ花音と肌を密着させる。雨に濡れた体がじわじわと温まり、ドクンッ、ドクンと鼓動が伝う。
「ふふっ、可愛いよ……颯樹くんっ♪」
花音から耳元でそう囁かれ、僕の理性は少しずつ溶けて行った。雨が齎した出来事の影響かは定かじゃないけど、目の前に居る花音が更に色っぽく見えてしまう。
……こんなに鼓動が収まらないのは、今まで経験が無い事だし、それは花音だって同じ事だろう。
「花音……」
「大丈夫。颯樹くんは絶対に誰にも触れさせない……私と千聖ちゃんだけのアナタだから」
花音はそう言い再び唇を合わせる。今度は啄むような感じで。
……これ以上のキスは夜にいくらでもできる、と言いたげな表情で笑い、ショーツも脱ぎ去った後に僕の手を引いて、お風呂へと入る(ちなみに入る前に僕も脱ぎました)。
二人で体を洗い合って、お湯の溜まった湯船へと浸かる。
体勢で言うなら僕が湯船の淵に凭れ、僕の体の前で花音が足を伸ばしている状態だ。
「気持ちいいね♪」
「うん」
ぎこちなく返事をする。
今僕の目の前には、白く透き通るような肌の花音が背中越しに目に映っている。……汚れなど一切なく滑らかな肌。それはまるで新雪のようで、少しでも触れてしまえば溶けてしまいそうな、それほど美しいものだった。
「綺麗だね」
「えぇ? 何が?」
思わずそう口にしてしまった。花音は後ろを振り返り、頭にクエスチョンマークを浮かべる。
「ここ」
「んっ……」
僕は湯船の中にあった腕を花音の背中に回し、そっとスーッと撫でる。それを受けた花音はピクッと体を震わせる。
「花音の身体……スベスベで気持ちいい」
「え、えへへっ……そう言われると、何だか照れちゃうな……」
さっきまで僕に色仕掛けしてたとは到底思えないくらいに、花音は顔をほんのり赤らめてそう答えた。脱衣場ではされっぱなしだったし、此方から何かしても罰は当たらないはずだ。
……思い立ったが吉日。
僕は花音の顔を軽く此方に向け、彼女を間近で見つめる事にした。
「えっ、ちょっ……颯樹くん……?」
「ねぇ……花音」
「は、はいっ」
「もしここでキスしたら、どうなるかな。しかも顎を軽く持ち上げられた状態で」
「それは……」
顔を背け、言葉を詰まらせる彼女の唇を言葉通りに奪う。
目を大きく見開き驚く花音だが、すぐに順応し体を反転させてこちらに顔を向けると、柔らかい二つの感触が僕の胸板で押しつぶされる。
長く深い口づけを終え、互いに酸素を求めて離す。
「はぁ……、はぁ……っ。ねぇ、もう一回」
「うん……」
僕たちはお互いが求めるままに、キスをし合った。お風呂場の熱で頭がぼんやりして来たのか、それとも目の前の彼女に欲情したのか……その判別までもが、もう危うくなっていた。
「颯樹くん……愛してる……っ。ずっと、私の傍から離れないでね……」
「言われなくても……花音は迷子になりやすいからね。どんな時でも手を引いてあげるよ」
「……ありがとう。ねぇ……シよっ」
花音から放たれたその言葉で限界に達し、僕は彼女の色仕掛けに堕ちた。このまま何も邪魔が入らず、ただ……花音の甘い蜜に……溺れさせて欲しい。
そんな事を思いながら、僕は花音と……。
『颯樹く〜ん、花音ちゃ〜ん!』
「「……っ!!」」
彩の呼ぶ声が風呂場まで響き、ハッと冷静さを取り戻す。
『もうすぐでご飯できるよー! あっ、あと! お洋服も置いてるからね〜!』
この行動に感謝すべきか、はたまた花音といちゃつけなくて嘆くべきか。……いずれにせよこれ以上の行為は無理だ。僕たちは距離を置き湯船から上がる。
「すっかりのぼせちゃったね」
頬を真っ赤に染めそう吐露する花音。
「確か冷蔵庫にアイスがあったはずだけど」
「ふふっ。それだと夜ご飯が入らないよ」
「少しだけさ」
「食いしん坊さん♪」
本当なら花音を……いや、これ以上は18禁になりかねないから、この場で言うのは止めよう。
そしてお風呂から出て、着替え終わった僕と花音を待っていたのは……笑顔を崩さないままで、此方を眼の笑ってない笑みで見ている……彩だった。
「颯樹くん、花音ちゃん。私は怒ってるんだよっ?」
「……すまない、彩」
「ごめんね、彩ちゃん(あのまま好きにされても良かったのに……)」
「花音ちゃん。これ以上変なことしたら……ダメだよ?」
「な、なんのことかなぁ」
「惚けても無駄。ねぇ、颯樹くん」
殺意がこもった鋭い視線が僕を突き刺す。
「は、はい……」
思わず変な声で返事を返す。
「もう! そんな事をするなら私もこれから入れて!」
「そういう問題なの!?」
「別にいいけど……」
「花音ちゃん」
「わかった……」
「それじゃあ決まりだね♪」
各々で相対する反応を見せる二人。僕の事が好きであるが故の行動なんだろうけど、せめて節度は考えて欲しい……。
その後の夕食は何だか気まずい空気になったが、穏やかに済ませる事が出来た。僕としては彩から花音から……互いに食べさせられたのもあり、結構おなかいっぱいになったけど。
……はぁ、こんな調子で今後大丈夫なんだろうか……すごく心配だ。
「「(颯樹くんの未来のお嫁さんの座は……絶対に彩(花音)ちゃんには絶対に渡さないからね……っ!)」」
今回はここまでです!如何でしたか?
次回からはいよいよ文化祭Partです!
そろそろ第二章に入ってから動きを見せていないあの人も、ついに満を持して動き出しますよ…!あ、ちなみにもう一人幼馴染関係で動く人は居ますが、その人はメインのあの人よりは出てくる数が少ないです(何故なら書く時が異様に大変なので(あと単純に苦手))。
それでは……また次回の更新にてお会いしましょう。