新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆さま、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。


 今回は前回の更新分にてお知らせしていた通り、文化祭のお話へと入っていきます! そして近日中に来るであろうイヴの誕生日は、数日程時間がかかりますが、本編にてご用意したいと考えておりますので、把握の程をよろしくお願いしますm(*_ _)m

 ちなみに、イヴの誕生日当日は、パス病みとコラボをしているお方の方で作品更新がありますので、お時間があれば其方の方も併せて閲覧頂けますと幸いです。


 それでは、本編スタートです。

 最後までごゆっくりとお楽しみくださいませ。


第二十七話

「先ずは中間考査、お疲れ様と言っておこう。各々実力を出せていたならそれで良い。だが、これから先お前たちが挑む事になる壁は、今よりもっと厳しい。それを念頭に置く様に」

 

 

 6月も少しづつ中旬に差し掛かり、数日間に渡る中間考査を終えて暫くした頃……僕たちはLHRを受けていた。外の様子は今でこそ晴れ間が出ているが、ここ最近は雨が降ったり止んだりの天気を繰り返していて、服装に寄る体調管理が困難となっていた。

 

 もう少し過ごしやすくなればな……と言う僕の不安を他所に、長瀬先生からある事が告げられた。

 

 

「さて、お前たちは既に知っている事だろうが、あともう少しで文化祭の時期となる。各クラスまたは各部活動毎にそれぞれ一つ出し物を決めて、その当日の運営を行って貰う。勿論、決められた予算内で且つ学生としての本分を忘れない様にするのを前提だ」

 

 

 ……文化祭? 確かそれって、普通だったら秋くらいにやるもんじゃ無かったっけ。僕が前居た所は秋が普通だったんだけど、こっちだと初夏の時期なんだね。

 

 まあ、関東圏内の高校が全部そうかと言われれば、それはまた違うのだろうが。

 

 

「その例に漏れず……我々のクラスも、何かクラス単体で一つやりたいと思っている。何か意見がある者は居るか?」

 

 

 長瀬先生からの投げかけに、僕たちは少しの間頭を巡らせる事になった。文化祭でやる催し事と言えば、定番な物だとお化け屋敷とかスタンプラリーとか、自分たちで作った物を持ち寄って販売するバザーとか……そう言ったのが挙げられるが、ここではどうなるやらね。

 

 

 そして暫く考えていると、一人の女子生徒から喫茶店はどうかと提案が出て来たのだが、それは何処のクラスもやりたい内容らしく、争奪戦になる事が予想される為に控えて欲しいとの事だった。

 

 その後話し合いを重ねた結果、お化け屋敷をしようと言う事で話が纏まった。役割分担はまた後で話し合うとの事で。

 

 

「……よし、話が決まったなら、これでLHRは終了だ。明日からは今決めた物の準備を進めてくれ。期間がそこまで用意されてない中で申し訳ないが、成功にはお前たち生徒全員の協力が必要不可欠だ。頼むぞ」

『はいっ!』

「それと……盛谷と白鷺の2名に関しては、掃除とSHRが終わり次第職員室に来い。少し話がある」

 

 

 僕とちーちゃんは先生からそう伝えられ、清掃とSHRを終えた後に職員室へと向かう事になった。その時に花音も付いて来ると言って来たのだが、それなら下校の際に一緒に帰ろうと言う事で話をつける事にした。

 

 そしてその二つを終えた僕たちは、職員室に訪れていた。

 

 

「……来たな、盛谷。白鷺」

「お待たせしてすみません、長瀬先生」

「構わん。お前たちを呼んだのは私だ、事情があって遅れるのはやむを得ないだろう」

「ありがとうございます」

「それで、長瀬先生。お話と言うのは?」

 

 

 ちーちゃんからの質問を聞くと、先生は僕たちの方を真っ直ぐ見て話し始めた。位置関係で言えば、長瀬先生が椅子に座っていて僕たち二人が立っているはずなのに、自然と上から見下ろされている雰囲気が感じられた。

 

 それだけ先生がする話は真面目な話なんだと言う事が、この時点でよくわかった。

 

 

「うむ。実はな、お前たちに折り入って相談があるんだ」

「「相談?」」

「ああ。白鷺はもう知っているから省くが、盛谷に関しては初めてだから話すぞ。白鷺は確認の為に聞いてくれ」

 

 

 僕とちーちゃんは、互いを一瞬見合ってから頷いた。

 

 それを見た長瀬先生は、少しずつ僕たちに対しての今回の要件を話し始めた。

 

 

「実はな。ここから少し離れた所に、花咲川学園の姉妹校である私立羽丘学園がある。そことは羽丘が創立してからの縁なんだが、今年は向こうの演劇部が此方の体育館を借りて記念公演をしたいとの事だ」

「記念公演? 羽丘自体でそれは出来ないんですか?」

「可能だ。だが、今回花咲川でやると決めたのにはある理由があるからだ」

 

 

 長瀬先生はそう告げると、視線をちーちゃんに向けた。

 

 

「千聖……が理由ですか?」

「そうだ。今回向こう方の話としては、白鷺を客演としてオファーしたいとの話があった。それを考えたら、花咲川でやるのが妥当だろうと言う考えらしい」

「私は別に客演の件は構いませんが……内容の方は決めてるんですか?」

「それは担当と直に会って話し合って欲しい。ただし、お前としては盛谷が居ないと不安だろう? だから、盛谷も一緒に呼んだんだ」

 

 

 なぁるほど……そんな事が。

 

 だったら、僕もちーちゃんに同伴しようかな。

 

 

「分かりました。話し合いはいつに」

「これから行って貰う。なに、直ぐに話が纏まればそう時間もかかるまい」

「……分かりました。羽丘学園に向かえば良いんですか?」

「ああ。そこで担当の者と話を付けて来て欲しい。報告は翌日になっても構わないが、話し合いは当日中になるべく頼むぞ」

 

 

 そんな指示を受けて、僕とちーちゃんは職員室を後にする事となった。そうして職員室前で待機していた花音と合流し、三人で羽丘学園へと向かった。どうして花音が居るかと言えば、今日のバイトのシフトがどうやら彼女では無いみたいで。

 

 ……まあ、隣のクラスから聞こえて来たボヤきで、ある程度は予想できるが。

 

 

「……え、ここって……高校なんだよね?」

「ええ。ここが羽丘よ」

「いつ来ても綺麗だよね……」

 

 

 僕たちの目の前に聳え立っているのは、いつも通っている花咲川学園……とは違う、真新しい雰囲気を感じさせる進学校、私立羽丘学園だ。花咲川とは姉妹校の位置にあり、創立当初から色々な事で縁があるのだとか。

 

 そして今回羽丘に訪れた目的が、この学園の中にある演劇部の部室に行き、今度の文化祭で行なう予定の演劇について話をする事なのだが……如何せん、視線が……。

 

 

「あれ、あの制服って花咲川だよね…」

「千聖様の隣に居る男子生徒って誰だろう……もしかして」

「今回はもう一人一緒なんだね〜」

 

 

 ……なんか、非常に居た堪れないんだが。

 

 

「慣れて。私関連だといつもこうだから」

「な、なるほど……」

「ふぇぇ……」

「おや、そこに居るのは花音に千聖かい?」

 

 

 そんな声が突如聞こえたかと思うと、学園の敷地内のあちこちから黄色い歓声が聞こえてきた。……まあ、一部悲鳴みたいな声も聞こえない訳ではなかったが。

 

 

「やあ、待っていたよ子猫ちゃんたち。突然呼び出してすまないね」

「御機嫌よう、薫。話なら手早く済ませましょう。長居はしたくないの」

「おやおや……相変わらず冷たいね、千聖。だがそんなキミも可憐で儚い……」

「勝手にして。行くわよ、花音。颯樹」

 

 

 僕と花音は薫と呼ばれた人を無視しつつ、羽丘学園の校舎内に入る事にした。何処かで聞き覚えのある名前が聞こえたけど、僕の知ってる人はあんな王子様気取りしてる様な人じゃないしね。ここは関わらずに無視が安定かな。

 

 

 そうして先ずは職員室に行き、羽丘学園の入校許可証を発行して貰った後、僕たちは長瀬先生から事前に指示を受けた、演劇部の部室前に到着した。

 

 

「ここよ」

「うわっ……これはまた」

 

 

 僕たち三人の目の前には、一面真っ白で汚れが一切見当たらない部屋の引き戸が鎮座していた。話に拠ればここが演劇部の部室らしいが、どうしてもこの手のドアは開ける事を躊躇ってしまうな……。

 

 一応手は清潔に保っているけれど、こう言うのは指紋などを付けるのが烏滸がましく感じてしまうんだよね……。

 

 

 そう思っていると。

 

 

「あれ、颯樹さん?」

「ん、その声は……麻弥!?」

「はい! いやー、まさかこんな所で会えるなんて思わなかったッス……フヘヘ」

「て、言う事は麻弥が?」

 

 

 扉からひょっこりと顔を出した麻弥に聞いてみると、案の定と言うべきか。

 

 今回の示談を持ち出して来たのは、麻弥とここに居ない薫らしい。まあ後者の方に至ってはガン無視して来たので、それは彼女には言わなかったのだが。

 


 

 話を纏めると、長瀬先生が言っていた事案で間違いないとの事だ。その内容になった経緯には、羽丘と花咲川の両方の生徒からの強い要望があっての事らしい。

 

 

「ですので、千聖さんには客演として演劇に出演して欲しいんです。既に脚本等も準備できています」

「私としては嬉しい提案なのだけれど、颯樹と一緒に出る事は可能かしら? 出来れば薫以外と共演したいの」

「颯樹さんがですか……。ジブンとしてもそれは新しい試みとして面白そうではありますが、もう組んでしまったのでこればっかりは何とも……」

 

 

 麻弥の言葉が突然詰まった。

 

 ……無理も無いね。今まではちーちゃんに協力を要請して、その上で薫と一緒に演劇をするが定番だった。でも、今回は僕がここに居る。そして先日のあの告白と来れば……そうなってしまう気持ちも分からない訳じゃない。

 

 

 ただ、僕としてはちーちゃんに演劇をして欲しいと言う気持ちに変わりは無いんだよね……折角頂いたオファーを条件付きで承諾する、なんて、そんな事は余程の事が無いと認められないし。

 

 

「ねえ、麻弥」

「はい」

「そのシナリオってさ、もし仮に僕が入るとしたら書き直せたりするの?」

「出来ない……訳ではありません。ですが、書き直すとなるとまた一から構成を考えないと行けないので、そう言うのは成る可く無い様にするか、書き始める前に申請して貰えたら助かります」

 

 

 そうだよね……そうなるのが現状だよね。

 

 なら、ちーちゃんには申し訳ないけれど、今回は薫と共演して貰うしか……。

 

 

「麻弥ちゃん?」

「は、はいっ!」

「私は颯樹と一緒じゃないと出演しないわ。私が出演するのなら、颯樹と共にメインを張る物で無ければダメ。それが最低条件よ」

「し、しかし……」

 

 

 まだ煮え切らない所があるのか、麻弥はちーちゃんから目を少しずつ逸らしてそう答えた。一方の彼女の方はと言うと、これ以上の譲歩はできないと言わんばかりに麻弥を追い詰めていた。

 

 ちーちゃん、言わんとしてる事は分かるんだけど、何もそこまでやらなくても……え?

 

 

「颯樹の事なら心配要らない……私が本番までにキッチリ仕上げるわ」

「「!?!?!?!?!?」」

「ほ、本気ですか千聖さん! 演技をする大変さは千聖さんが一番よく」

「ええ、わかってるわ。だからこそ、私が徹底的に颯樹を扱き上げるの。彼にはいつも何かを貰ってばかり……今度は私から彼に何か恩返しをする番、そうだとは思わないのかしら?」

 

 

 突然何を言い出すかと思えば、自分が僕の指導役を買って出ると言い放ったのだった。確かに演技に関して学ぶなら、その道の専門家……この場合で言うんだったらちーちゃんから学んだ方が確実に良い経験にはなると思う。

 

 でもさ、こう言うのって本番の数週間前とかそんな話じゃなくて、もっとその前から、不測の事態を予め予想してやっておくとかあると思うんだけど……。

 

 

「千聖さんのその気持ちはわかりますが、ジブンとしてはやはり反対です。何度も言いますが、千聖さんの負担が確実に増えますし、何より颯樹さんがどう成長するかが不透明です」

 

 

 ……実に最もな意見だ。確かに僕は演技に関してはからっきしな上、そこから演劇の何たるかについて教えを説かれても早々と習得出来る確証が無い。麻弥の言う様に、未経験者の僕に時間を割くだけ無駄だとも思う。

 

 

「うふふっ、珍しく食い下がるじゃない?」

「これも千聖さんのためです」

「……そう。いくら麻弥ちゃんの言葉でも、こればっかりは譲る気は無いわ」

 

 

 お互いに売り言葉に買い言葉。

 

 ひとつの話し合いでここまで時間がかかると、今後の練習スケジュールにも支障が出て来るし、先生には『その当日中に話は済ませて置くように』とも言われてるから、これ以上時間をかけられないんだよ……っ!

 

 

 そう思っていた、その時だった。

 

 

「じゃ、じゃあ……こうしない? 時間がある日は毎日欠かさず練習をする。指導者に麻弥ちゃんと千聖ちゃんが着いて、颯樹くんはそれを受けて稽古に挑む……こうすれば、千聖ちゃんだけに負担をかける事無く、効率良く練習出来るんじゃないかな?」

「「え?」」

 

 

 ……え、花音……本気で言ってる?

 

 

「うんっ♪ それに私、颯樹くんが千聖ちゃんと演技している所、見てみたいな〜♡」

 

 

 ……しかも読唇術極めちゃってるよこの子!?

 

 うん、こりゃあどう言った所で逃げられないね……。

 

 

「……聞いたかしら、麻弥ちゃん?」

「松原さんは、本当にそれで良いんですね?」

「うんっ!」

「颯樹さんは、今から組むスケジュール通りに動いて、ジブンたちの指示に従って練習をする……それをキチンと守って貰いますよ?」

「やる以上は本気でやるよ。手は抜かない」

 

 

 もう言い出しっぺが余裕そうに笑ってるけど、僕としてはそんなの度外視だ。

 

 かおちゃんには後で一から説明するし、折角楽しみにしてくれている人が居るなら、それに応えないと話の筋が通らないと言う物……だったら、少々キツかろうが大変だろうが、僕は僕の出来る全てで報いなくちゃいけないよね。

 

 

「……決まりです。では、今後文化祭の日までパスパレのレッスンが終わった後に少し時間を頂きたいと思います。その空き時間を使って、演劇の稽古をしましょう。ジブンとしても、颯樹さんには何らかの形で恩を返したいと思っていたんです……」

 

 

 そう言って麻弥が僕の方に歩いて来る。

 

 その様はまるで、一人の演劇を支える裏方スタッフの様な雰囲気だった。まあ、その中にはアイドルとしての麻弥も含まれているとは思うが。

 

 

「初心者であろうと関係無く、手厳しくビシバシ鍛えて行きますので……覚悟しててくださいねっ♪」

「よ、よろしく頼むよ、麻弥」

「もちろん、私も貴方と一緒に居るから、何かあったら遠慮無く頼って頂戴ね♡」

「……よろしくね、ちーちゃん」

 

 

 そんな話をして、演劇についての話し合いは終わった。

 

 そして帰る途中に、かおちゃんが話し合いの様子を覗き見をしていた事が発覚し、家に帰る前にもう一苦労かけてしまう羽目になったのは言うまでも無かった。

 

 

「(彩さんと千聖さんが颯樹さんを好きになる気持ちは、この数ヶ月で何となく理解できました……なら、今度はそれに至った理由などを知る番です。さて、これからが楽しみですね、フヘヘ……っ♪)」




 今回はここまでです!如何でしたか?

 文化祭Partの方は、多くても3話か4話程度を予定しておりますので、更新をお待ち頂けますと幸いです。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
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