新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
昨日の彩り更新より日は空いておりませんが、本日はパス病みの本編を投稿しようと思います。この話を書いているバックで《呪術廻戦》をBGM代わりに流しているので、ちょっとやりにくかったり(ただ、現在進行形で2期が放送されているので、その復習も兼ねていたりします)(;^ω^)
今回で文化祭準備Partを終わり、次回以降から文化祭本番Partに入ろうかと思います。またその時にパスパレ以外の他バンドメンバーも出す予定なので、楽しみにしてもらえると嬉しいです。
それでは、本編スタートです。
最後までごゆっくりとお楽しみ下さい。
「……はい、今日の練習はここまで! 最近は日に日に暑くなって来てるから、水分と塩分の補給を忘れないでね!」
『はいっ!』
颯樹くんの一際大きな声がスタジオ中に響き、私たちは今日のレッスンを終えた。ココ最近はライブ等の大きな案件が無い代わりに、ソロでのテレビや雑誌等のオファー等が増えて来ていて、私個人としても、パスパレ全体としても少しづつ確実に前に進んでいる。
その中でも私はリーダーも兼ねているので、お仕事やライブ等に関しての打ち合わせにも顔を出し、果てには事務所の外で活動する際の申請も颯樹くんと一緒に動いてる。
……ここまで慌ただしく、なんて結成当初は予想して無かったけど、やっぱり私たちの事を少しずつ知ってくれてるって証拠なんだよね。そう考えると、すごく嬉しいな。
そんな事を考えていた私を他所に、他の皆は散り散りに捌けて行った。練習着から更衣をする為に退出するとか、最後の確認の為に一度集まってミーティングみたいな事をしていたり。
私だって、まだまだ成長していかないと。
そう意気込んでメンバーの後に続こうとした時、私の耳に何やら聞き慣れない言葉が聞こえて来た。
「じゃあ、颯樹さん。千聖さん。軽く先ずは台詞の読み合わせをして、その後に実際に演技をしましょうか」
「わかった」
「異論は無いわ」
……あれ? 颯樹くんって、そう言うお仕事のお話って貰っていたんだっけ? 私が思い出せる限りでは、それは無かったと思うんだけど……。
「ん、彩ちゃ〜ん。何してるのー」
「あっ、ごめんね日菜ちゃん!」
私が颯樹くん達に気を取られていると、扉からひょっこりと顔を出した日菜ちゃんに呼び掛けられた。その傍にはイヴちゃんも一緒に居たので、なかなか来ない私を心配したんだろうとこの時に気づく事になった。
……颯樹くんと千聖ちゃん、ここ最近は目に見えて一緒に居る日が増えたよね……。二人は幼馴染だから仕方無いけど、それを考えたって近頃の二人一緒の頻度は、私から見ればかなり目に余る程の多さだよ。
もしかして、今回の事に関しても千聖ちゃんが何か一枚噛んでるのかも? 颯樹くんの未来のお嫁さんになるであろう立場の私としては、少し心配になっちゃう……。
「彩ちゃーん、行くよー?」
「……はっ! ごめんね、今行くー!」
……今は聞かないけど、何れ全部話して貰うからねっ。
そう思った私は、日菜ちゃんとイヴちゃんの所に小走りで向かい、練習着への更衣をする際に使っている更衣室へと向かう事にした。
そして、そこでの話と言えば。
「さっくんってさ、あたし達のマネージャー業務の事もそうだけど、色々本当に手を抜かずに頑張ってるよねー」
「はい! まさにブシの心意気ですね!」
「ごめん、ちょっと何言ってるかわからない……」
「世の中興奮することがいっぱいありますがー」
「もういいぜ!」
「………おっ! 今のツッコミ、すっごくるるるんっ♪て感じだったよ!」
日菜ちゃん流で言う所の"凄く良かった"と言う意味だ。彼女からの最高の賛辞とも捉えられる。
自分自身、テレビの前で発揮できたらなと心底思う。
……まあ、お笑い芸人さんのモノマネをするアイドルという構図は目新しいというか、斬新とも言えるけど。
「二人は颯樹くんたちが何をしてるか知ってるの?」
「知らなーい」
「私もです」
「そっかぁ」
やっぱり私としては、三人が何をしてるのかは純粋に気になる所……邪魔にならない範囲で、だけど何かサポートをしてあげられたら……。
「ねーねー」
「??」
「どうかしたの、日菜ちゃん」
そんな事を考えて居たら、日菜ちゃんが私たちに突然声をかけて来た。一体何を言い出すんだろう……?
「あたし達三人でさ、さっくんに恩返しすると言うのはどうかなっ! 流石に練習中だと怒られちゃうから、その後とか文化祭の終了後なんかに時間を使って、思いっきり『るんっ♪』てして貰おうよ!」
日菜ちゃんにしてはまともな意見だ。……るんっ♪というのが気になるところだけど、断る理由はない。
「そうだね、やろっか!」
「私も賛成です!」
「よーし、じゃあまたおいおい考えよっかー!」
話を終えて更衣室へ辿り着き、足早に着替えを終えてから二人に別れを告げ、三人の様子を覗きに行く。
……どうやら颯樹くんが麻弥ちゃんと千聖ちゃんのレッスンを受けているようだけど、目的は何だろう? ドラマのお話でも来たのかな? ……ううん。彼は私たちのマネージャーだからそんなはずはない。
と言う事は、文化祭の劇か。
「……すごい、真剣だ……」
演劇に拙い私にも分かるくらい、三人の様子は本気だった。遠巻きに話を聞く限りだと、麻弥ちゃんと千聖ちゃんが颯樹くんに指導をしていて、それを颯樹くんが聞いて活かしている、と言った感じだ。
パスパレのお仕事をしてる時も、学校生活や私生活でも無駄が無くカッコイイ颯樹くんだけど、そんな彼が今度は演劇なんて……私、アイドルって立場じゃなかったら、今この場で告白しちゃいたいくらいだよ。
「颯樹くん……カッコイイ……うひゃあっ!」
「……っ、誰だ!」
痛たたた……思いっきり顔から行っちゃったよ……。思わず颯樹くんからは怒られちゃったし……反省反省。
「彩ちゃん?」
「そんなところで何してるんですか?」
レッスンをしていたみんなが練習の手を止めて、私の元へ駆け寄って来る。すごく邪魔してしまったようで気が重い。
「ご、ごめんね………」
「覗き見をするなんて、趣味が悪いわよ」
「ごもっともです………」
千聖ちゃんに頭が上がらない。
「みんなが何をしてるのか気になって………」
「なら直接聞けばいいじゃない」
「秘密にしているのかなぁって………」
「全くもう、彩はおっちょこちょいだな」
颯樹くんの手を借り起き上がると、みんなが手にしていた台本のタイトルをチラリと見る。そこに書かれていたのは。
(シンデレラ………?)
「僕は最初断ったんだけどね。まあ、ちーちゃんから色々買われたのなら、それに応えるのが義務でしょ」
「あはは……さて、再開しましょうか。時間は幾らあっても足りませんから」
「了解」
「わかったわ。彩ちゃんはそこで見ていて頂戴」
千聖ちゃんからそう言われて、私は椅子を借りて演劇の稽古を見学させて貰う事にした。その様子はまさに『演者』……私たちパスパレのメンバーとして活動するそれとは別で、今の三人は本当にその関係者と思しき姿だった。
「(カッコイイ……益々颯樹くんに惚れちゃう……)」
一つ一つのセリフの言い回しや立ち振る舞い、見ていて感情を刺激させられる様な演技の数々は、恐らく千聖ちゃんがレクチャーした物だろう。
それを短期間で物にした颯樹くんもすごいけど、千聖ちゃんもさすがの一言だ。子役時代からやっているだけあって、人に演技を教えるのが上手いのかな?
「彩ちゃん。見ていてどうだったかしら?」
一通りレッスンを終えた千聖ちゃんが、私の方を向いて声をかける。
「うん!すごかったよ!!」
語彙力は無いけれど、私は心からの賛辞を送る。
「そう。そう言って貰えると私もやった甲斐が有るわ」
「今は彩さんだけが見ている前でしたが、本番ではもっとお客さんも来ますので、確り練習しましょう」
「そうだね。今の結果に満足せず、もっと見応えのある物にしないと」
私からの感想にさも当然と返す三人を見ていると、演技中もそうだったけど、終わった後ですらも物足りないと言った雰囲気だった。そして私が居る事もお構い無く、また話し合いに戻っていた。
……すごいな、颯樹くん達……。もしあの場に私が居たならまた違ったんだろうけど、今回は期間がそこまで無い中でのこの三人。
「(やっぱり……颯樹くん、カッコイイ……)」
自然とそんな言葉が溢れる。
……額から汗を流しながら、必死にレッスンに励む姿が愛おしくてたまらない。不潔と言われようが、愛する人の物だと考えるだけで、そんな考えは一切無くなる。
……私って、変態なのかな? 否、これは純愛だ。
「とりあえず今日はここまでですかね」
「そうね」
「ふぅ、お疲れ様」
演劇の稽古が全て終わる頃には、時計の針は丁度21時を示していて、スタジオが閉まる時間が迫っていた。
「みんな、お疲れ様〜!」
レッスンに夢中になってた三人に差し入れをしようと、私は休憩室から持って来た、タオルと冷えたスポーツドリンクを差し出す。実は稽古の真っ最中に休憩室へと移動して、三人分のタオルと飲み物を持って来ていたのだ。
「……ありがとう、彩。受け取るよ」
「あら、ありがとう彩ちゃん」
「えへへっ♪」
汗をタオルで拭いながらスポーツドリンクを飲む颯樹くんと千聖ちゃんの姿を見ていると、まさに『共演者』と言う姿が想像出来る。二人が小さい頃からの幼馴染だから、と言うのもあるだろうけど、考える事や行動のリズムがほぼ同じだった。
私も、颯樹くんと幼馴染だったら……なんて考えちゃうんだけど、私が彼に迷惑をかけてばかりになるかも…、あはは…。
「今日はここまでにしましょう。颯樹さんの上達速度を鑑みるなら、あと数日のうちに本番を想定した通し練習をしても良さそうですね。一先ず、お疲れ様でしたッス!」
「「お疲れ様、麻弥(ちゃん)」」
「(わっ、二人って声がハモるとこうなるんだ)」
それはオーケストラが如し。少し大幅な表現だけど彼と共通すると言うだけで羨ましく思う。
「彩ちゃんもそろそろ帰ったらどう?」
「そうですよ!明日も朝が早いんですし」
「ううん。せっかくだからみんなと帰りたいな」
家の方向は全然違うけど、今日はそんな気分。
なんだか、今は颯樹くんと千聖ちゃんの二人だけにしたくない様な……そんな感情が溢れ出る。
「それじゃあ、みんなの家を経由する形にしようか。日菜とイヴは先に帰ってるだろうし『呼んだー?』うわっ!?」
「もう……盗み聞きなんて趣味が悪いわよ?」
ひょこっと二人が扉越しに姿を現す。タイミングバッチリなのは良いんだけど、まさかレッスンが終わるまでずっと待ってたのかな?
「ねぇねぇ呼んだ?呼んだよね?」
「お◯呂スキー?」
「えぇっと………ソーダ割り!」
「ウィスキーのことかな」
「何をしているのかしら?」
全く、千聖ちゃんの言ってる通りだ。今日の日菜ちゃんはボケ倒す日なのかな?
「……全くもう。じゃあ、みんなで帰ろうか」
「「「さんせーい!」」」
「レッスン終わりだと言うのに、三人とも元気が有り余ってるわね……」
「あはは、羨ましいです」
颯樹くんのその一言で、私たちはスタジオを出発して各々の家へと向かった。その際に颯樹くんが行く先々で頭を下げられ続けたのはまた別の話。
「ねーねー、さっくんお泊まりしていーいー?」
「ダメ、紗夜からは『日菜はお泊まりをさせずにそのまま真っ直ぐ帰宅させて』って言われてるんだから」
「むー、さっくんのケチ!」
……相手が同じパスパレのメンバーだからって、絶対に私は負けないからねっ!
「さ、颯樹くん! 私も……」
「彩もダメ」
喉から漸く出た決死の言葉も、颯樹くんから返された高速のブーメランが私に突き刺さる。
「どうして……」
「彩がOKなら日菜も許可を出さなきゃいけなくなる。心配しなくてもまた次の機会に設けるから、その時に」
「うぅ……」
この後家が隣同士の二人は、私たちの知らない様な関係を築いているのかな? 気になる、すごく、気になる……。
「それじゃあ私はこれでー!」
日菜ちゃんとも別れを告げて、私と千聖ちゃんと颯樹くんの三人になる。
「ねぇ……颯樹くん、千聖ちゃん」
「ん?」
「彩ちゃん、どうかしたのかしら?」
私がそう問い掛けると、二人は私の方を向いて来た。歩いてる途中に質問なんてよそ見してるのと同じだけど、ここは思い切って聞かなきゃ。
「……今回の演劇、どうして颯樹くんが演者として出る事になったの?」
「それは……」
「私が麻弥ちゃんに提案したの」
私からの質問に颯樹くんは口を噤んだけど、それを見た千聖ちゃんが彼の代弁をする。
「元々は薫と共演する予定だったのだけれど、無理を言って変えてもらったのが経緯よ」
「どうしてそんな事をしたの?」
素直な疑問をぶつけてみるも、千聖ちゃんは薄く笑みを浮かべこう答えた。
「あなたにそれを説明する必要があるのかしら」
「質問を質問で返さないでよ、千聖ちゃん。……私には知る必要が無い、そう言いたいんだよね?」
「だったら?」
いつも以上に冷たい反応を見せる千聖ちゃん。淡々と答え続けるその様子は、これ以上踏み込むなと言う脅しとも見て取れる。
「千聖ちゃん。何だか今日は、感じ悪いよ」
「そう?」
「うん」
「ダーリンはどう思うのかしら?」
「まあ、彩の言い分は確かだよね」
そうだよね、と彼に相槌を打つ様に答えようとした私の言葉に被せるみたいに……颯樹くんはこうも続けた。
「でも、ちーちゃんの言い分も分かるよ。実際、彩はまだまだ足りない。当人の苦労を理解出来るのは、その苦労を知り経験した者のみ。もし、仮に彩がちーちゃんと同じ苦しみを経験したとして、同じ様に平然として居られる?」
……彼が何を言っているのか、理解できない。
千聖ちゃんは分かったように頷いているけど、やっぱり私にはわからない。……それがなんだかすごく悲しい。二人だけ共感できているというか、レッスンをしている時みたいな、そんな感覚だ。
「………ごめんなさい」
私がこれ以上口を開く事はなかった。千聖ちゃんもそうなんだけど、今日の颯樹くんは……いつも以上に怖く見えてしまったから。もし、あの場でさらに言おうものなら、彼をもっと怒らせてしまう。
……それだけは、何としてでも避けないと。
「今日のところは帰るよ。これ以上長居をすると要らぬ傷を負うからね」
「そう……だね。おやすみなさい、また明日会おうね」
「ええ、またね」
私は二人に別れを告げて、自分の家の扉を開いた。そして家の中に入る私を見届けた二人は、お互いがはぐれない様に手を繋いで、家への帰り道を歩いていた。
「(千聖ちゃんと颯樹くん……二人が一緒だと、私の付け入る隙が全く無いよ……。花音ちゃんの時もそうだけど、二人はもう行く所まで行っちゃったのかな……)」
玄関で靴を脱いだ私は、お母さんからの軽い注意と頼み事を聞いた後に自室に入った。そして着替える事も忘れ、制服のままベッドへと倒れこんだ。
「(許せないよ……千聖ちゃんと花音ちゃんばかり、颯樹くんと良い思いをしちゃって。私なんて、あの時からずっと前に進めてないのに。私も……彼と、そう言う事……出来たらなって、思ってるのに)」
私はそんなやるせない思いを抱きながら、毛布に思わずシワが出来ちゃうくらい、右手で強く拳を作った。
悔しいよ……悔しい、悔しい悔しい悔しい悔しいっ!
確かに、私は千聖ちゃんよりも颯樹くんと出会うのが遅かったよ? 知識量でも千聖ちゃんには敵わない……でも、まさか花音ちゃんが颯樹くんを先に奪っちゃうなんて……予想だにしてなかった!
「(あの時も思った事だけれど、もうここからは絶対に手加減しない……颯樹くんと結ばれるのは、この私なんだ。千聖ちゃんと花音ちゃんの手から、必ず奪ってみせるからっ!)」
そんな事を考えて居たら、お母さんから呼び出しがかかったので、手早く着替えを済ませて夕食(……と言うより、もうこの時間だと夜食になるのかな)を食べる事にした。
……絶対負けない。
覚悟しててね……千聖ちゃん、花音ちゃん。颯樹くんの事は死んでも渡さないから!
今回はここまでです。如何でしたか?
次回は前書きでも少し触れていましたが、文化祭本番Partに入ろうと思います。その後は閑話感覚で数話程度書いた後に、夏休みの話を書こうと思いますので、投稿をお待ち頂けると幸いです。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
次の更新はR-18かパス病み本編……またはコラボか何かになるのかは、事前通達を致しますのでお待ちくださいませ。