新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆さま、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。


 今回は本編の続きをお届けしたいと思います。

 この次の話は、予定通り文化祭本番Partか……きずかなさん所とのコラボ回の続きをお届けしようと思いますので、把握の程をよろしくお願いします。


 それでは、本編スタートです。

 最後までごゆっくりお楽しみくださいませ。


第三十話

「やあ、お待たせ」

「い、いえ……」

 

 

 教室で待っていた燐子を迎えに行き、僕らは揃って校舎を出る。二人並んで歩いているけど、部活帰りの生徒からの視線が少しだけ僕たちに集う。

 

 

「今日初めて話したばかりなのに、何だか不思議な感じだね」

「そ、そうですね……」

「燐子って部活何してるの?」

「き、帰宅部、です……」

「あれ、そうなんだ? てっきり何かしらの文化部に所属してるものだと思ってたけど」

 

 

 そう感じたのは、同じ帰宅部であるにも関わらず全く見かけなかった事かな。

 

 

「人と、話すのが……少し……」

 

 

 白金さんの言葉で僕は全てを察した。

 

 

「まあ、部活に入るのが強制されてる訳じゃないからそれもありだよね。さ、行こうか」

「は、はい……」

 

 

 僕は燐子と連れ立って学校を後にする。帰り道の道中ではNFOの話は勿論の事、好きな本のジャンルや雑事に至るまでの内容を話し、次第に彼女の零す笑みも多くなって来ていた。

 

 そして、途中まで帰り道を歩いていた時だった。

 

 

「あら、颯樹。今帰りだったのね」

「ちーちゃ……千聖。お仕事お疲れ様」

「お、お疲れ様……です、白鷺さん……。(あれ……? 颯樹さん、今、何を言いかけたんだろう……)」

 

 

 僕たちの背後から声を掛けてきたのは、なんとちーちゃんだった。涼し気な夏用の私服に身を包んでいて、薄い白のフレアスカートと水色の半袖シャツが清涼感を直に感じさせていた。

 

 

「珍しい組み合わせね」

「じ、実は……」

 

 

 ちーちゃんに事の一部始終全てを伝えると、少し不満げな様子でありながらも理解してくれた様で、ため息混じりに答える。

 

 

「それはまた、随分と勝手なのね」

「僕に言われても……」

「し、白鷺、さん……」

「なにかしら?」

「あの、ごめんなさい……」

「え?」

「怒らせてしまったみたいで……」

 

 

 燐子はちーちゃんにそう言うと、申し訳無さそうにぺこりと頭を下げた。まあ、これに関しては僕も一枚関与してるのでフォロー出来るには出来るが。

 

 

「……良いわよ、これくらい。私の愛しの颯樹が頼られるなんていつもの事だから」

「私の……愛しの……?」

「あちゃぁ……」

 

 

 キョトンとした顔で告げられたその言葉。隠す気なんてさらさらない、と言わんばかりの表情だ。

 

 

「え? 私、何かおかしな事を言ったかしら?」

「い、いえ……」

「アイドルなんだから、もう少しそう言った事は控えて欲しいんだけどな……」

「失礼ね。純愛なのだけれど?」

「やめよう。その言葉だけは、絶対」

 

 

 元ネタを知ってか知らずか、ピー音が入る様な発言をさらっと告げるちーちゃん。

 

 そのネタは分かる人には分かるけど、すっごくメタい事言うんなら作品が違うからねっ!? て言うかよく知ってたねそのフレーズ!

 

 

「帰り道なら丁度良かったわ。私……今日颯樹の家にお泊まりさせて貰うから。お母さんから許可は貰っているし、演劇の練習もできるしwin-winだと思うのだけれど……どうかしら?」

「許可が貰えてるなら良いんだけど」

「なかよし、ですね………」

 

 

 僕たちの会話を聞いて、燐子はそんな言葉を吐く。

 

 

「うーん。仲良しというかなんと言うか……」

「彼も私にゾッコンなのよ♪」

「それは──「え?違うの?」」

 

 

 ちーちゃんの瞳から光が消える。サッと鞄に手を突っ込んで何かを取り出そうとしている様だけど、僕はその危険性を察してさっき言った言葉を訂正する。

 

 

「そ、そうだね。うん……それで間違い無いよ」

「(な、なんだろう……颯樹さんの言葉が、後半に連れて片言になってる様な気が)」

 

 

 3人で話しながら帰っていると、僕の家の前に着いたので燐子と別れを告げ、家の中へと入る。勿論の事だけど、そこには誰もいない。そして明かりをつけてソファに腰を預けると、その隣にちーちゃんも座る。

 

 

「お疲れのようね」

「ん?まあ、そうだね」

 

 

 それを言うならちーちゃんもでしょ、と言う僕を横目に……彼女は僕の肩に自分の頭をちょこんと乗せて来た。心做しかその瞳は明らかに不機嫌そうな物に変わっていて、この1日で起こった出来事に対しての不満を表している様だった。

 

 

「……私と花音の愛する颯樹を頼るなんて、会長はさぞ良い眼を持っているのね。でも」

「……ちーちゃん?」

「颯樹の背負う苦労は私も背負うし、花音も背負う。貴方だけに負担をかけさせる訳には行かないわ」

 

 

 僕は、漸くちーちゃんの怒りの矛先を理解する。

 

 そこまで僕を思ってくれるのは本当に嬉しいんだけど、正直なところ僕は全くと言って良い位疲労感などは無い。

 

 

「僕は大丈夫だよ、心配しないで」

 

 

 ……大丈夫。

 

 他でも無い、僕本人がそう言うのだから、きっとわかってくれるだろう。

 

 

「嘘」

 

 

 僕の頬を掴みそう告げるちーちゃん。

 

 

「あなたの顔を見ただけでわかるわ。無理をしないで、と言ってもダーリンは絶対無理をするから言わないけど……せめて、私に嘘はつかないで」

「ちーちゃん……」

「お願い。貴方がもし不測の事態に陥ったら、それを見て悲しむのは私だけじゃないのよ。だから……何かあったら私や花音に包み隠さず教えて。知っているか知らないかだけでも雲泥の差だと思うから」

 

 

 その眼差しは誰よりも真剣。

 

 それほど僕の事を思ってくれていると言うことだ。彼女の気持ちには感謝しかない。

 

 

「……うん、その時がくれば必ず話すよ」

「本当に?」

「もちろん」

 

 

 紙での契約書は書けないけれど必ず誓える。

 

 

「その代わり、ちーちゃんもちゃんと話すんだよ?」

「ええ。もちろんよ♪」

 

 

 僕たちはお互いに幼馴染だから、と言うのもあるかもしれないけれど……ちーちゃんとは家族の様な存在だからか、普段言えない様な事でも言い合って来た。

 

 

 今見えているのは、もしかしたら傍から見ればその極地かもしれない……でも、昔から関わって来た僕らにとっては、そんなの当たり前の光景だ。

 

 そんな事を思いながらも、僕たちは夕飯を済ませてお風呂まで終えて寝る準備まで整えた。……は、良いのだが。

 

 

「ん、ちーちゃん。何処に電話かけてるの?」

「決まっているでしょう? 花音の所よ♪」

「決まってるって……」

 

 

 新たな火種を持ち込もうと言うのかキミは!

 

 

「今日の事を話しておこうと思って」

「そんなネタになる様な事だった?」

「ええ。これは共有しておくべき事案よ」

「基準がわからない……」

 

 

 数コールの後花音は電話に出て、ちーちゃんが今日あった事の全てを伝える。

 

 

『へぇ〜、颯樹くんが生徒会に……。ふぅん、なるほど、そうなんだぁ……』

 

 

 通話口の向こうに居る花音の表情が伺い知れないけど、恐らく良いもので無いのは確定だろう。……あ、ちーちゃん急にスマホを操作して何するの!?

 

 

「寝る前の時間帯にごめんなさいね、花音。どうしても貴女にはキッチリ話しておかなければ、と思ったの」

『ううん、大丈夫だよっ♪ でも……そうなんだぁ……。颯樹くんが頼れるのは分かりきった事だけれど、ここまで引く手数多だと……少し妬いちゃう…っ』

 

 

 僕の制止も聞かず、ちーちゃんは通話をしている画面を音声通話からビデオ通話に切換えた。そのお陰で可愛らしい水色の寝間着に身を包んだ花音の姿が目に入ってしまった。

 

 ……出来るなら、こんな時に花音の寝間着を初めて拝みたく無かったよ!

 

 

『颯樹くん』

「は、はい」

 

 

 ……画面越しなのに、急に周囲の温度がどのくらいか冷えたと思う。と言うのは僕のやらかしの責任でもあるんだけど、ベッドの上で正座をするなんてあまり類を見ないケースだ。

 

 そんな事を思っていると、次に掛けられた言葉は……お説教では無く、この一言だった。

 

 

「無理したら、メッ!だよ!」

「……え?」

「嫌な事は嫌ってちゃんと言う! それでもやる時は必ず私たちも力になるから、一人で突っ走らないで!」

 

 

 花音の気遣いは、こっちに帰って来てからいつも感じる事だけど、本当に助かっているよ……。

 

 

「わかった。その時は相談させて貰うよ」

『ふふっ♪ じゃあ、今の約束を一ミリでも破ったら……わたしと、シようね♡』

「なっ!?」

「花音……?」

「えへへ♪」

 

 

 なになになに! 唐突にぶっ込んできたよこの子!

 

 しようね♡じゃないんだよっ! 僕だってちゃんと男ではあるけれど……それでもまだ早いと思うのは僕だけ!?

 

 

「ダーリン……?」

 

 

 微笑みの鉄仮面、なんて言われてるちーちゃんだけど、その表情に笑顔はない。まさに修羅場だ。

 

 

「ふふっ♡あ、そうだ。千聖ちゃん、あのね、この前……彩ちゃん、颯樹くんと一緒にブライダル雑誌のモデル撮影をしたみたいだよ♪」

「へぇ……?」

「あ、なぜその事を」

 

 

 次々と爆弾を投下していく花音。千聖の表情はだんだんと曇っていぬ様子を見て驚愕する。

 

 

「随分と……楽しんでるみたいね……?」

「そ、それは……」

 

 

 神も仏もこの世には存在しないのか。僕ってそんな悪い事してるかな!? さっき詰め寄って来た時以上の恐ろしさが伝わって来るし、何より少しでも変な事をすれば、今度こそろくな事にならないっ!

 

 

「ダーリン? 今度埋め合わせしてくれなくちゃ……許さないわよ……?」

「は、ハイ……」

『うふふ…っ♡』

 

 

 八方塞がり、とはこの事だろう。背後のちーちゃんを見てたら何やら不気味な笑みを浮かべてるし、通話画面越しの花音はと言えば、軽く微笑むように笑ってるし……!

 

 

『次に会う時が楽しみだね〜♪』

「心配しなくても良いわ、花音。明日は私も学校に行ける日ですもの……3人で仲良く、一緒に登下校したり学校生活を過ごしましょ♡」

 

 

 含みのある笑みが一番怖い。これほど明日を迎えたくないと思ったのは初めてかもしれないね。

 

 

「ちーちゃん、そろそろ寝ないと明日も早いよ?」

「あら、何を言っているの? 私は大丈夫よ。貴方には夜通しでキッチリお説教しておきたいもの…♪ 花音は良いかしら?」

『うんっ♡私も……颯樹くんには少しキツめに言っておかないといけないから…ね♪』

 

 

 ……あっ、これは逃げられませんね……。

 

 常日頃から彩たちには早寝早起きを徹底するとか、体型維持を確りとか厳しい事を言う事が多いちーちゃんだけど……こう言う時は、そんなのすらお構い無しらしい。

 

 

 心做しか、部屋の中の温度が絶対零度を思わせるくらいには冷えた様な気がするし、今現在僕の近くに居るちーちゃんや、画面越しに居る花音の表情が黒い笑みに変わっていたりする。

 

 

「は、はは……。マジでその件に関しては説明するから、その怒気を締まってくれると……嬉しいな?」

「それはダーリンの説明次第よ?」

『じゃあ、説明して貰っても良いかな……?』

 

 

 僕の淡い期待は何処へやら、と言う様に二人はジリジリと詰め寄って来た(約一名は画面越しなので、スマホを通してにはなったのだが)。その際彩に心の中で謝りながら、僕は二人に一から十まで全て説明する事となったのだった。

 

 

 ……マジで怒らせちゃいけない。

 

 と言うか、本気でこの二人と関わるなら、全て正直に話さないと未来が危ういよ!? 誰か助けて欲しいよ……許してもらえるなら、ね。




 今回はここまでです。如何でしたか?


 次回の更新日は未定となっておりますが、更新をする際はまた予告をしようと思いますので、楽しみにして頂けますと幸いです。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
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