新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。


 前回のお話の最後で、次回は文化祭本番Partに入ると言っておりましたが、急遽やりたい話が出て来ましたので、その話を今回を含めて3話程やった後に文化祭本番の方に映りたいと思います。


 それでは、本編スタートです。

 最後までごゆっくりとお楽しみ下さいませ。


第三十一話

「勝ち取れ 今すぐに」

『SHOUT!』

 

 

 アタシたちRoseliaの頼れるリーダーであり、アタシの幼少期からの幼馴染の友希那──湊 友希那の歌声に導かれ、アタシたちはいつもの様にCiRCLEのスタジオを借りて練習をしていた。

 

 Roseliaが結成されてからと言うものの……以前からあった熱に更なる勢いが加わっていて、少しでも油断をしていると置いて行かれそうな程だった。まあ、目指している目標がそれくらいしないと実現できるかどうか怪しい所だから、仕方ないんだけれどね。

 

 

 ……友希那だって前を向いている。

 

 アタシも友希那に続かなきゃ。他のメンバーよりもブランクがあるんだ……ここで止まってられないよっ!

 

 

 そう思って友希那に追加の練習を進言しようとした時、その本人がアタシたちの方を見てこう言って来た。

 

 

「……紗夜、燐子」

「……っ!」

「な、何ですか……?」

「さっきの演奏だけれど、音程は正確に取れていて問題無かったわ。でも、今の音に貴女たちの気持ちが籠っていない」

 

 

 友希那から齎された苦言に、紗夜と燐子の顔が少し歪んだ気がした。アタシが演奏している傍らで聴く限りだと、二人の演奏には何の違和感も無かった。寧ろ、練習に真剣に臨んでいるとすら思えた。

 

 

 ……でも、友希那はそこを指摘した。

 

 何かあるんだ、あの二人がそこまで言われる物が。

 

 

「少し休憩にしましょう。その時間で構わないから、話して貰えるかしら。不安要素は早めに取り除きたいの」

「りんりん……」

「……わかりました、順を追ってお話します。白金さんもそれで構いませんね?」

「は、はい……。わたしも、大丈夫です……」

 

 

 二人の意思を聞いた友希那は、軽く手を叩いて休憩の合図をした。燐子の隣でドラムを叩いていたあこ──宇田川 あこはと言うと、少し顔色が悪くなった親友の事を心配そうに見ていた。

 

 そして紗夜からの一言によって、アタシたちは二人の悩み事を聞く事になった。……その内容と言うのが。

 

 

「……なるほど、そうだったのね」

「はい。颯樹が編入して来てもう数ヶ月が経ちますし、それに伴って交友関係等も変化するのは自明の理。ですが、松原さんと丸山さんの間に生じた亀裂……更に言うのであれば、丸山さんと白鷺さんはかなりの頻度で颯樹を巡って対立しています。この状況を一体どうしたものかと思いまして……」

「さ、颯樹さんとは……来期の、生徒会……で主に関わる事になる、ので……わたしも、何か出来ないか……と思ったんです……」

 

 

 紗夜から話されたのは、颯樹に関する事だった。聞けば彼の周りには彩や千聖の他にもひしめき合っているらしく……その対処を必死になって考えている、と言う事みたいで。

 

 

 颯樹とは初めて会ったあの時以来会えていないけど、紗夜や燐子と同じ学校に通ってるんだね……。そのうえで今回の事案なんだから、颯樹の人望とかが容易に想像できてしまう。更に燐子と来期の生徒会をするなんて、一体何があったのかな!?

 

 兎にも角にも、彼が元気にやっているなら、アタシとしてはホッと一安心。……でも。

 

 

「(颯樹、いつになったら会えるんだろう……。アタシはあの時の事を謝りたいのに……)」

「リサ?」

「ゆ、友希那ぁ!? ど、どうしたのっ!?」

「今井さん……? 何か、あったんですか……?」

「え、えっと……それは、その……」

 

 

 ……ヤバい! 紗夜と燐子の事だけ心配すれば良かったはずなのに、いざ自分に向けられると頭が真っ白になる……! こ、ここは知らばっくれて逃れるか、それとも正直に白状してスッキリしまうか……うぅむ、悩みどころだよ……。

 

 

「湊さん、それは私から説明させて下さい」

「あら、紗夜は何か知っているの?」

「はい。今井さんが颯樹に対してやった始末を考えれば、今のこの行動にも辻褄が合います」

「ちょっ、紗夜っ「話して頂戴、紗夜」!?」

「わかりました」

 

 

 アタシから漏れ出た驚きを無視して、紗夜は淡々とその事を語り始めた。心做しか友希那のただでさえ鋭い視線が、更に鋭さと力強さを増した様な気がしてならない。アタシとしては今直ぐにでも逃げ失せたい所だけど、それをあの二人が許してくれるかどうかは別問題なんだよね……。

 

 

 そして、数分後。

 

 

「……リサ」

「……はい」

「紗夜と燐子の心配をする前に、貴女にたっぷりとお説教をするのが先だったみたいね。私、その事初めて聞いたのだけれど」

「ひぃぃぃっ!」

 

 

 そう言った友希那は、アタシにジリジリと詰め寄って尋問する態勢に入った。それを燐子とあこは心配そうに見てるけど、紗夜はと言うと至極当然と言った表情でアタシたちの方を見ていた。

 

 

 や、やめてー! こ、こんな事想定外だよーっ!

 

 そう思ったアタシは覚悟を決めて目を瞑ったけど、目の前にいる幼馴染から告げられたのは、お説教の代わりに……こんな言葉だった。

 

 

「リサ、この事に関しての手段は如何なる物を用いても構わないわ。颯樹に今すぐ、自分の口で謝って来なさい。それが貴女への罰よ」

「ゆ、友希那……わかったよ」

「紗夜と燐子は今晩と次の日を使って良いから、その事柄への対策を考えておきなさい。同じ学校に通う者同士……そこはハッキリさせる事。良いわね?」

「はい」

「も、勿論です……!」

 

 

 そこまで言った後、友希那は少し目を瞑って精神を落ち着けていた。……そして。

 

 

「今日はここまで。燐子、紗夜、リサ……貴女たちは今言った事を確りして来なさい。そして次の練習の時に普段のメニューの倍の量をしてくれたら何も言わないわ。次のスタジオの予約を済ませておくから、今日は帰りなさい。お疲れ様」

 

 

 そう言って友希那はスタジオを後にし、まりなさんが待っているであろうカウンターの方へと向かって行った。そうして紗夜や燐子にあこも動き始め、とうとうスタジオに残っているのはアタシだけになってしまった。

 

 

 ……どんな手を使っても良いから颯樹に謝れ、か……。

 

 確かにあの方法は後になって考えたら強引だったし、颯樹の立場からしても嫌悪感いっぱいになる。そう思われても自然だし、アタシには良い薬だ。

 

 

「……帰ろう。せっかく友希那が作ってくれたチャンス、無駄にしない様にしないと」

 

 

 そこまで直ぐに考えつき、練習に使用した機材の片付け等を済ませて、アタシはスタジオの鍵を返却してから帰る事にした。

 

 

「とは言ってもな……。こんな夜遅くの時間に、颯樹って出歩いてるもんなんだっけ……? 最初に会った時がその時間帯だったから、少し感覚がバグっちゃいそう」

 

 

 ライブハウス『CiRCLE』を後にしたアタシは、家までの帰り道を一人で歩いていた。その足取りはいつもより重く、まるで重りがずっしりのしかかっているみたいだった。まあ……こんな事になったのは、一重にアタシが颯樹に強引に迫ったせいなんだけどね。

 

 

 お母さん、心配してるよね……。

 

 早く帰らなきゃ、と思ったアタシの視線の先に誰かが映り込んで来た。遠目に見てるからぼんやりとしか分からないけど、黒髪のショートヘアで、夜だと言うのに真っ黒な服を着てて片手にスマホを操作している……もしかして。

 

 

「え……? あれって……颯樹……?」

 


 

「……」

「どうしたの、急に一緒に帰ろうなんて」

 

 

 あの後颯樹とは合流出来たんだけど、アタシとしては申し訳ない気持ちでいっぱいだった。最初に出会った時があの始末だったし、かなり警戒されてるよね……。視線がさっきの友希那と良い勝負出来るくらいには鋭いし、言動がまさに怒ってる人のそれに近い気がする。

 

 

 ……やっぱり、アタシ……颯樹に嫌われちゃったかな。

 

 この事態になったのは自業自得ではあるんだけど、許されるなら過去のアタシを引っ張り出して、今すぐにでも引っ叩きたいくらいだよ。

 

 

「……何も無いのが逆に怖いんだけど」

「あ、ごめんね! アタシ、颯樹に言わなきゃ行けない事があったのに、何を言おうか思い出せなくて……」

「それはよくある事だから特に気にしないよ。寧ろ、こっちも帰り道だから、多少ピリついてるのもあるね」

 

 

 アタシがどもっているのを察したのか、颯樹の方から声が掛けられた。その気遣いはとても嬉しいんだけど……今のアタシにとっては傷口に塩を塗られた様な感覚だよ…っ!

 

 

「……あ、あの……さ」

「ん?」

「……アタシ、あの時の事……謝ろうと思って」

「あの時って? ああ、僕がこっちに帰って来て間も無い頃の話だよね?」

 

 

 ……やっぱり覚えてた。日菜から聞いていた通りの記憶力の良さだよ。

 

 これは何となくでしか無いんだけど、その三人が恋心を抱くのもなんか納得できる。だってこんな彼氏が傍に居てくれたら、たくさん甘えたくなっちゃうし、もしその人に他の女性が付き纏っていたら神経質になるのも凄くわかる。

 

 

「別に。気にしてないよ」

「……え?」

「リサにはリサなりの考えがあったんでしょう? なら、そこに僕の異論を挟み込むのはお門違いだし、絶対にやっては行けない事。これは人間関係を円滑に構成する為に必要な事だからね」

「……そ、そうだね……」

 

 

 怒られるかな、とか思っていたアタシに颯樹から投げ掛けられた言葉は、予想の斜め上を行く物だった。気にしてないなら別に良いんだけど、アタシとしては何か埋め合わせをしないと気が済まない。

 

 だってそれくらいの事をしてしまったんだ、って自覚はキチンとある。友希那も事情は把握してくれてる……なら、やらなきゃ行けないよねっ!

 

 

「颯樹、もし良かったら……なんだけど」

「何かしよう、なんて思わないで。家に送り届けるまでは一緒に居るけど、その後は直ぐに帰るからね」

「……うん」

 

 

 その言葉を最後に、アタシと颯樹の間には気まずい空気感が漂った。颯樹の言葉を聞いていると、その言葉はすごく正しいし、アタシの事もキチンと考えてくれている……でも、何だか彼とアタシの間で大きな壁があるみたいで、胸の辺りがモヤモヤする。

 

 そんな事を考えている間に、アタシの視界にはいつもの見慣れた風景が飛び込んで来た。

 

 

「……リサの家って、ここで良いんだっけ?」

「そうだよ」

「それじゃあ、僕はこの辺で。おやすみ」

 

 

 そう言って颯樹は踵を返して去ろうとする。

 

 ……確か颯樹って、一人暮らしなんだよね。つまりアタシと違って、帰っても暖かく誰かに出迎えられるって訳じゃない。全て自分でやらないといけない。……だったら。

 

 

「……あ、あのさっ!」

「まだ何か?」

 

 

 アタシの呼びかけに、颯樹は短くそう答えた。

 

 ……颯樹としては不本意だろうけど、今回だけはアタシの我儘に付き合って貰うからね!

 

 

「……今夜、ウチで泊まってかない……?」




 今回はここまでです。如何でしたか?


 次回はこの話の続きとなりますので、更新をお待ち頂けると嬉しいです(次回更新作品はR-18を予定しております)。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
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