新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
大変長らくお待たせいたしました……パス病みの方の更新をしたいと思います(本編の括りではありますが、位置的には幕間劇です申し訳ない)
今回は先にもお伝えした様に幕間となりますが、話の内容的には第三十三話の翌日の話となりますので、前回のお話も併せて読んで貰えると分かりやすいかもしれません。
それでは、本編スタートです。
最後までごゆっくりとお楽しみください。
「……つ、疲れた……」
「お疲れ様です、颯樹。そろそろ
「何とかね。住み慣れた所とは言えど、環境は未だ経験の無い元女子校……そんな中でひと月も経たずに慣れるなんて難しい話だよ」
「そうですね。不躾な事を聞いてすみませんでした」
リサとの二度目の邂逅を果たしたその翌日、僕は学校の方に登校をしていた。丁度今は四時間目が終わって昼休みに入り、教室内に居る生徒は各々自由に校内を歩き回っている頃だ。そんな中で僕はと言うと……机に突っ伏しかけており、それを見た千歌に少し苦笑されていた所だ。
授業自体はそこまでスピードが速い訳では無いので……今までやった内容を思い出しながら、で良いのだが、時折
僕に何かを教えるのが、彼女たちにとっての重荷になっていなければ良いのだが……今現在の心配の種はそこだろうか。
そんな感じで話していると。
「あっ、颯樹。ここに居たのね」
「……ん、
「こ、こんにちは……っ」
「と、燐子か。どうしたの?」
教室の後方にある扉から紗夜が姿を見せ……それに続く様に燐子が、少し緊張しながらも此方に向けて頭をぺこりと軽く下げて来た。それに僕は何でも無い様に応じ、彼女たちに用件を問おうとしたのだが……。
「おや、確かB組の氷川さんに……白金さんですか。そんなお二人が
「水澄さん……私たちは貴女に用は無いんです」
「わ、わたしたちが……用があるのは…っ」
そう言って燐子が視線を向けた先は……そっか、僕か。
「内容を聞きましょう。事と次第によっては」
「な、なにを」
「白金さん、構う必要はありません。会長の許可は既に得ていますし、目的の人物を見つけたのならば……後はそれを遂行するのみ。手早く済ませましょう」
「そ、そう……ですねっ。す、すみません……っ!」
「んなっ……キャッ!」
二人の間でそんな会話が交わされたかと思うと、千歌は燐子から軽くその場で押され……床に尻餅を着いてしまった。それに驚いている隙を見て紗夜が僕の右手を掴み、僕を急かす様に引き連れながら燐子と一緒に教室を出た。
それを見た花音は千歌の身を案じ、直ぐ様駆け寄ってフォローに入っていたが……その手を彼女は振り払い、すくっとその場に立ち上がった。
「(……私に知られたくない事がある、ですか。ならば、直接その現場を押さえます)松原さん」
「な、なに……?」
「これはあまり褒められたやり方ではありませんが、二人の後を追います。遅れない様に着いて来て下さい」
「ふぇっ、えぇっ!? ……ちょっ、ちょっと待ってよ千歌ちゃぁぁぁんっ!!!!」
「ごめんなさい、少し強引になってしまって」
「……お、お怪我は……ありませんか…?」
「心配してくれてありがとう、その程度で音を上げる程ヤワな鍛え方はしてないよ。それで、話って?」
「ええ。……でも、今はお昼時だし……お弁当でも食べながら話しましょうか」
二人に連れられて訪れた場所はと言うと……なんと花咲川学園の屋上だった。屋上に繋がる扉を開け放った僕たちの視界には、梅雨の時期には珍しく澄み渡った蒼空が広がっており、多少雲に隠されては居るものの、太陽が元気に街中を満たしていた。
更には吹き抜ける風も心地の良い物で、まさに屋上でお昼を食べるには絶好の機会となっていた。
……そう言えば屋上はと言えば。
普段からこう言う所は開け放たれて居らず、非常時以外は開放及び使用禁止に定められている所の筈だ。だが……ここにどうして来れているのだろうか?
「それは良いけど、何でここを?」
「私が登校直後に鰐部会長へ直談判したのよ。それを聞いた会長は快く承諾してくれたわ」
「……ちなみに、何て言ったの?」
「来期の新生徒会役員に色々手解きをしたい、そう言ったの」
「わ、わぁ……それって、軽く職権濫用と言う一種の校則違反じゃないの?」
僕が屋上に来た経緯を紗夜に問うと、彼女は何でも無いかの様に衝撃発言と共に回答した。それを聞くと何だか校則違反をしてる様で気が引けたのだが……紗夜が僕の為にここまでしてくれたのならば、台無しにする発言は控えるべきだよね、うん。
その後僕は燐子と紗夜に連れられ、出て来た所から最寄りにあった場所に腰を下ろし、二人が僕を間に挟んでお昼を食べる事になった。
「……さ、颯樹さんって……料理とかは…?」
「うん、一通り出来るよ。一人暮らししてるからね、これくらい出来ないと」
「ええ。彼の腕前は小母様のお墨付きなんです」
「そ、そうなんですね…っ」
「機会があったら、家に遊びに来てよ。その時はおもてなしするから」
僕のお弁当を見た燐子の問いかけにそう答えた僕は、お箸で玉子焼きを一つ摘んで口の中に放り込んだ。程良く甘く味付けされたそれは……空きっ腹の身体に強烈な刺激を与え、食欲を増加させてくれる。僕がおかずとして普段から入れている事もあり、補充を買い足す頻度としてもなかなかの数だ。
……そうして暫く各々の昼食に舌鼓を打っていると。
「……颯樹、少し気になった事を聞いて良いかしら?」
「ん、どしたの急に」
「貴方から見て……丸山さんと松原さんに白鷺さん、そして水澄さんの距離感についてはどう思うの?」
「……んぐっ。距離感、か……」
紗夜からそんな事を聞かれたので、僕は一時咀嚼する動きを止めて中に入っている食べ物を飲み込んで考えた。その隣では燐子が此方を心配そうに見つめていたので、二人の間でも重要な案件として伝わっているのだと理解出来た。
「確かに、僕から見ても異常だよ。彩は元からその質なんだろうけど……明らかに限度を超えてる」
「……そうね。貴方からの意見が聞けて良かった、これで実行に踏み切れるわ」
「ん、話が見えないよ? どう言う事?」
「わ、わたしたち……颯樹さんの、お手伝いを……」
「お手伝い?」
僕は燐子からの言葉に相槌を打つと、それを聞いた紗夜から詳細的な説明が入った。……なるほど、一人だと万が一不測の事態が起こった時に対処出来る可能性が狭まるから、それを少しでも補填する為の二人体制か。
「話はわかったんだけれど、これを僕に伝えて良いの? もしかしたらあの三人が聞いてないとも」
「構わないわ。遅かれ早かれ気付かれるでしょうし、私たちはあくまでも
「そ、それに……普段は、他の人たちの目も、ありますし……何処から見られているとも分からない、ので……」
確かにそう考えたら、あのメンツに関しては良い薬になるかもしれないね。施行する対応策次第にはなるけれど、二人の考えが多少なりとも良い方向に伝われば出来ない訳では無い。
「わかった。乗らせて貰うよ、その提案」
「ふふっ、その言葉を待っていたわ」
「わたしたちも、出来る範囲で、颯樹さんの力になりたいと思うので……なんでも、仰ってくださいね…っ」
「ああ、そうさせて貰うよ」
二人からの提案に承諾の旨を返した後は、再びお昼ご飯に舌鼓を打っていた。……それにしても、さっきから妙な視線を感じるんだよね……方向としては、今僕たちの居る場所から対角線上に伸びた辺りからなんだけども。
……ま、その視線の正体には紗夜も既に気付いているんだろうけどね。さて、気を取り直してお弁当を……ん?
「ん、どしたの? 燐子」
「ひゃっ!? え、えっと……あまりにも、美味しそうに食べるので、少し……気になって……」
「っ、白金さん!?」
「……氷川さん、これはわたしの……意志、ですからっ」
「……それなら、構いませんが……」
燐子の少し顔を赤らめて放たれた発言に、制止しようとした紗夜は面食らったのか、少し落ち着かなさそうな挙動を見せて食事を再開していた。
「……最後、玉子焼きが一つだけ残ってるけど」
「あっ……」
「燐子さえ良ければ、玉子焼き食べる? 蓋をお皿替わりにして渡すけど」
「い、いえ……直接、良いのでっ」
「(や、やけに積極的だな。ま、本人が良いなら良いか)それなら……はい、行くよ」
「ど、どうぞ…っ!」
僕は燐子にそう合図をした後、彼女の口に玉子焼きを掴んで運んだ。その時の仕草が異様に心擽られる物で、多少覚束無い手付きになったのは否めなかったのだが……何とか無事にそれを終える事が出来た。
……てか、これを他のヤツらに見られでもしてみろ……マジで学校が終わった後がキツイ! 花音と千歌は百歩譲ってまだ良いかもしれないが(いや大分良くない)、彩とちーちゃんが何しでかすやらさっぱり見当が付かないよ!?
普段から僕の事を付け狙ってるからね……何かよくない事を画策しているやもしれない。そう考えると、燐子にやったこの行動すらも地雷になりかねないもんで益々怖い!
「……ど、どう? 口に合わなかったらごめんね」
「……い、いえ……すごく、美味しいですっ。さすが一人暮らし経験者ですね…」
「お褒めに預かり光栄かな。……っと」
燐子からの感想に素直な返事を返したのとタイミングを同じくして、午後の授業開始五分前の予鈴が鳴り始めた。幸い次の授業は移動教室だったり、事前に更衣を済ませておく必要のある物では無いのだが……素行や平常点に関わる事を考えるなら、この場にこれ以上長く留まるのは愚策だろう。
「さて、そろそろ行きましょうか。授業に遅れます」
「わかった。行こっか、燐子」
「は、はい…っ」
「それと……私たちの会話を盗み聞きしてたお二人には、放課後にキチンと
紗夜の言い放った言葉に、何処からかピシャリと背筋が真っ直ぐに立った様な音が聞こえた。まあ、その出処はと言うと
そんなやり取りも済んで教室に戻った後、僕たちは午後の授業を受ける事となった。その際に詰問されたり何だりと言う事はあったのだが……僕から二人に言い放った一言で、話を盗み聞きしていた犯人はこの後の展開に軽く絶望した様な表情を浮かべていたのだった。
「(颯樹さん……。貴方の事は、わたしが、全て守ってみせますから…っ!)」
今回はここまでです。如何でしたか?
次回の更新時期については未定なのですが、また日程が定まり次第X(旧Twitter)にてお知らせをしようと思いますので、更新通知をお待ち頂けると嬉しいです。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
そして最後にはなりますが……このお話の投稿日である3月16日は、【バンドリ! ガールズバンドパーティ!】の7周年当日となります! それを記念しまして、そのソシャゲの方では最高レアリティの排出率が2倍になっていたり、普段はあまりお目にかかれない限定キャラ等もお迎え出来るかもしれませんので、気になった方はぜひ遊んで頂ければと思っています。
それともう一点だけ。3月10日まで実施していたアンケートのご協力、本当にありがとうございました。たくさんの方々から票を頂きまして、それを反映させた内容を現在進行形で制作中です。詳しくは詳細が判明してからお知らせしますので、お楽しみにお待ち下さいませ。