新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

38 / 54
 皆様、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。


 ……大変長らくお待たせ致しました。

 今回はいよいよ文化祭回後編に入って行きます。そして話の途中では、情け容赦無しの正妻争いも勃発か…っ!?


 前書きが本編更新お久しぶりにしては結構短いですが、サクサクと進めていきましょう(テンポも大事なので)。それでは本編スタートです。最後までごゆっくりとお楽しみくださいませ。


第三十五話

「丸山さん、そろそろ休憩入ろっか〜!」

「あっ、はーい!」

 

 

 お客さんの入店ラッシュの時間も過ぎて、私は空き教室に入って漸く休憩に入る事が出来た。呼ばれたらそのテーブルに行ってオーダーを聞いて担当に伝え……そこから商品を提供して、そしてまた接客の一連の流れ。

 

 

 私はファストフード店でバイトをしているので、そこに関しては特別苦に感じる程じゃないけれど……慌ただしく動き回っていた事や、直近の気温や湿度の関係もあって、普段よりも少し多めに疲労が溜まって来ていた。

 

 しかも肝心の彼はと言うと、今に至るまで全然姿を見せていなかった。その事も相俟って(これが疲労困憊になっている大元の理由なんだけど、作業中の状況下では言わない様にしてる)、私の心中は不安で埋め尽くされてる。

 

 

 ……颯樹くん、一体どうしたんだろう……隙を見つけてメッセージを飛ばしたのに、一向に既読がつかないし、折り返しの電話すら無いし……心配になっちゃうな…。

 

 

「ねっ、聞いた〜?」

「何の事?」

「ほら今年の演劇! 主役が変わったって」

 

 

 ……ん、何だろう?

 

 そう思った私は休憩している状態から少し動いて、外の様子を聞き耳を立てて伺う事にした。

 

 

「主役が変わったって、誰に?」

「あの……新しく入って来た男子生徒! 私的には薫様の方が良かったんだけどな〜。まあ、言う程上手いかどうかは分からないけど」

「私としては別に誰でも。あの人は元からそう言う立ち位置が多くて、自然とそうなっただけだと思うし。それに適任が現れたんだったら、そこまで気にする必要は無いと思うけど」

「んもぉ、わかってないなぁ……。その人はその人、薫様は薫様だよ! 薫様にしか表現出来ない魅力があるんだって〜……」

「はいはいわかったから」

 

 

 ……演劇? あれ、そう言えば以前……。

 

 

 話を聞いた私の足は直ぐに動いていて、先程までその話をしていたグループの所に着くまではそう時間を要さなかった。

 

 

「ねぇ、ちょっと話し中にごめんねっ」

「ああ、丸山さん。構いませんよ。何ですか?」

「さっき聞こえて来たんだけど、その演劇って……もしかして千聖ちゃんが出る演劇だったり?」

 

 

 私が軽くそう問いかけると、二人は何かを思い出したかの様に少し話し合っていた。そして間を空けず、私の質問に答えて来た。

 

 

「はい、そうですよ。たぶんですけれど……今上演されてる頃かと」

「!? ねっ、それって何時(いつ)からやってる!?」

「……え、ええっと……14時から開演してて、時間はそこまでかからないのでたぶん……」

「今から行ってももう終わり頃だと思いま「ごめんねっ、情報ありがとう! あとここをお願いッ!」ちょっ、いきなりどうしたんですか!?」

「丸山さん、待って! まだ午後の接客が!」

 

 

 私は店内からかけられる制止を全て振り切って、その演劇が行なわれているであろう体育館へと走る事にした。廊下を走るのはお行儀が悪いし、この場に紗夜ちゃんが居れば指導待ったナシだけど……そんな事を考えて居られる余裕は無い。

 

 

 そう考えて廊下を進んで階段を降りようとした……その時だった。

 

 

「「キャッ!」」

「ご、ごめんなさい! 大丈夫!?」

「誰ですか、急にぶつかって来るなど……丸山、さん?」

「……ち、千歌ちゃん……」

 

 

 私が勢い良くぶつかったその人物はと言うと……グレーの髪を腰まで下ろして、そのひと房を取って三つ編みにした女の子……千歌ちゃんだった。颯樹くんと一緒によく居るのを見かけるけれど、何事にも物怖じせずに真っ直ぐ向き合っていて、何処か紗夜ちゃんや千聖ちゃんを彷彿とさせる美しさを感じさせていた。

 

 

 ……えっ、待って……。

 

 ここで千歌ちゃんとぶつかったって事は……ヤバい!

 

 

「ごめんねっ、千歌ちゃん! 今急いでるから後で」

「ほぅ? ぶつかった理由も告げずにはいさよならなど、私が簡単に許すと思っているんですか?」

「今千歌ちゃんと話してる時間は無いの、早く行かないと演劇が終わっちゃ「では、私もお供します。私は松原さんには事前に話を通してから向かってましたので、貴女とは一緒なんです。お話は向かう道中でゆっくりじっくりする事にしましょうか……?」……ぁっ」

 

 

 私は千歌ちゃんから放たれる凄みに負け、彼女の提案を受けて共に体育館に向かう事となった。その道中では長々と質問形式のお説教を受けていたのもあり……道行く人たちから訝しげな視線で見られてしまったのは言うまでも無い。

 

 うぅっ、こんな事になるのなら、別のルートを使えば良かったよぉ……(と言ってももう遅いけど)。

 

 

 そう思いながら私たちは歩みを少しずつ進め、目的地である体育館に向かう事にした。その途中には千歌ちゃんが適宜話の話題を振ってくれていたのもあり、私は何とか気分を紛らわす事が出来ていた。

 

 

「へぇ〜、千歌ちゃん達のクラスの出し物ってお化け屋敷だったんだ〜」

「ええ。この話が挙がった時は、ほぼ全員乗り気でした。まあ文化祭での出し物としては定番なので、少し面白みに欠けるかもとは懸念していましたが」

「そうだったんだね……それで、状況は?」

「何の問題も無く、順調に行っていますよ。ご心配ありがとうございます」

 

 

 そんな感じで千歌ちゃんからの話を聞きながら、私も自分のクラスの事について話をしていると……体育館に辿り着く事が出来た。先程お客さんとして来ていた女の子からの証言通り、もう演劇は始まってしまっている所みたいだ。

 

 

「おや、もう始まっていましたか。シフトの都合上遅れる事は覚悟していましたが、いざこうして実感すると心に来ますね……ちょっ、丸山さん! 待って下さい!」

 

 

 私は千歌ちゃんが制止するのも構わず、体育館の入口まで駆け足で向かい、観覧している人の迷惑にならない様に……扉をゆっくり右に引いて中の様子を伺った。

 

 伺った、は良いんだけど……。

 

 

「やっぱり、上演中だから真っ暗だね……。……っ!?」

「どうしたんですか、丸山さん。そんなに慌てて駆け出すなんて」

「あっ、あぁぁぁぁぁっ……」

「丸山さん、どうかしましたか。丸山さん、丸山さん!」

 

 

 私が舞台に目を移したその時に見えたのは……なんと、千聖ちゃんが颯樹くんと口付けをしている瞬間だった。確か演目となっている内容の原作には無い内容の為、千聖ちゃんがその場でやってるアドリブなんだと気づいたけれど……私としては、嘘であって欲しかった。

 

 

 ……だって、千聖ちゃんがさり気なく見せた……あの時の私を見る時の表情。

 

 

「颯樹の事は私が頂くわ。ごめんなさいね、彩ちゃん」

 

 

 ……ハッキリ言って、我慢の限界。

 

 

 他人の好機は容赦無く叩き潰すのに、それを高みの見物でもするかの様に嘲笑いながら、自分にその機会が訪れたと分かったら、誰も寄り付かない様に画策して……自分とその人だけの二人の空間まで持って行く。

 

 友達だから、仲間だから……なんて考えていた私が、もうどうでも良くなって来ちゃう。ここまでズケズケと踏み込まれたのなら、私は千聖ちゃんを二度と許す事が出来ない。

 

 

 それくらい……絶対に、許せない。

 

 

「……何とか終わったみたいですね。……ちょっと、今度は一体何ですか! 戻りなさい、丸山さんっ!」

 

 

 問い詰めなきゃ……気が済まない。何で……私以外とそんな事をしたのか。私、ずっと颯樹くんの事を待ってたのに。まあ颯樹くんに関しては、まだ許せる。だってあの行動は千聖ちゃんが無理矢理やった事だと思うから、彼は何も悪くない。

 

 

 ……でも、千聖ちゃんに関しては話が別。

 

 ……許さない、絶対に許さない。あんな性悪女……あとで私から叩かれたって何も文句は言えないはずだ。私から颯樹くんを奪う様な真似をするなんて……絶対にその選択をした事を後悔させてやる。

 

 

「あ、彩さんどうしたんですか? そんなに息を荒くして……ちょっと、彩さん!?」

「あら彩ちゃん。ここは関係者以外立ち……キャッ!」

 

 

\バチィィィィィン!!!!!!/

 

 

「……これは予想外の差し入れね。一体私の何がお気に召さなかったのかしら」

「全部だよッ! 私にあんな酷い事を言ったのも、さっきの演劇でキスシーンを取り入れたのも……そして、花音ちゃんと結託してまで私を颯樹くんから遠ざけようとしたのも! 全部、気に食わないよっ!」

「全部、ね……」

 

 

 舞台袖に降りて来た颯樹くんと千聖ちゃんを見るなり、私は麻弥ちゃんからの制止も聞かず、千聖ちゃんの右頬に一発の強烈な平手打ちをお見舞いした。それを見た颯樹くんや麻弥ちゃん達は驚いていたけれど、私にとってはそんなの問題じゃない。

 

 

 ……私が許せないのは、千聖ちゃんただ一人。

 

 許されるのなら、ここで私が颯樹くんの唇を奪い返して、千聖ちゃんから寝取り返したいくらい。

 

 

「丸山さん!」

「ちょっとちょっと、これはどう言う事っすか!? それに其方の方は!?」

「私と同じクラスの子よ。颯樹と幼馴染らしいわ」

「な、なるほど……」

「さて、何がご不満かしら? 私たちはこの後の予定があるのだから、手短にお願いしたいのだけど」

 

 

 そう言って両開き式の扉に凭れかかった千聖ちゃんは、心底嫌そうな顔を浮かべて私と向かい合った。颯樹くんは千歌ちゃんと話し始めたし……話をするなら今が絶好の機会。

 

 

「何であんな事をしたの。それに私にあんな顔を見せて……どうしてそんな事をしたのっ!?」

「単なるアドリブよ。表情の事に関しては、貴女から見た私がそう見えていただけの錯覚だと思うわ」

「アドリブ……錯覚……? そんな事で私の気が収ま「思ってないわ。少しもね」この……っ!」

「良いわ、この機会だしはっきりと言わせて貰うわね」

 

 

 千聖ちゃんは私を鋭い眼光で睨みながら、自分の気持ちを私に向かってこう言って来た。

 

 

「邪魔」

 

 

 ……たった二文字。

 

 言葉に表したのはほんの少しだと言うのに、私の堪忍袋の緒はもうとっくに切れていた。それもそのはず、千聖ちゃんが私に対して発した言葉は……すごく簡潔で分かりやすく、それで居て私の全てを否定する。そんな言葉だったのだから。

 

 

「私からすると、貴女の様な女が颯樹の周囲をウロチョロしてるだけで、非常に目障りなの。今まではバンドメンバーだからと言う理由で黙認していたけれど、もう我慢の限界。執拗(しつこ)い女は(いず)れ嫌われるわよ?」

「それは千聖ちゃんの方だよッ! さっきから黙って話を聞いていたら、ペラペラペラペラ……よくそんな言葉がスラスラ出て来るよね、そんなに私が嫌!? 颯樹くんと仲良く話してる私を見るのが、そんなに嫌だった!?」

「ええ、正直鬱陶しいくらいに。何処かで消えて欲しかった程だわ」

「何それっ! それに颯樹くんは千聖ちゃんの所有物じゃないでしょ、颯樹くんと私が話してても何の問題も無いはずだよっ!」

 

 

 さっき千聖ちゃんから聞いた言葉が、今まで堰き止めていた私の我慢の堤防を易々と壊し、貯蓄されていた水が洪水になる程の勢いで私の口から暴言となって飛び出た。それは先程まで話し込んでいた颯樹くん達も驚いて言葉を失うくらい、そんな威力。

 

 

 私自身でもあまり想像できない程の、歯に衣着せぬ物言いと友達に対して浮かべた怒りと憎しみ。……私としてはもうこの鬱憤を誰かにぶつけずには居られなかった。多分相手がつい数分前までお説教をしていた千歌ちゃんであっても、同じ様に詰め寄って問い質していたと思う。

 

 それくらいには、演技中の千聖ちゃんがやった行動に関して私は許せない。……ううん、絶対に許さない。例え言い負かされる事になったとしても、絶対に引き下がったりなんかしない。

 

 

「あ、あのぉ……ち、千聖さん……?」

「あら、何かしら麻弥ちゃん」

「ひぃぃっ! え、えっと……そ、そろそろ舞台に上がって最後の挨拶をしなければ、いけませんので……」

「……そうね。わかったわ、今行くから少し待っててくれるかしら」

「……わかりました。すぐにお願いするッス」

 

 

 そんな話をした後、麻弥ちゃんは颯樹くん達と一緒に舞台に上がる手前まで移動した。千歌ちゃんは千歌ちゃんで、未だに膠着状態となっている私を見兼ねたのか、何処かで声をかけようかとタイミングを見計らっていた。

 

 

「時間が無いから簡潔に済ませるわよ、彩ちゃん。貴女はどこまで行っても私には遠く及ばない。それは身を以て貴女が一番よく知っている事でしょう?」

「でもっ! 私は颯樹くんの事が」

「好き……ふふっ、なぁにそれ。ここまで来るとその言葉も滑稽でしか無いわね。颯樹の心は貴女に最初から向いてないと言うのに」

 

 

 ……よくもまあ、そんな言葉がポンポン千聖ちゃんは出て来るよね……。そんな千聖ちゃんともし颯樹くんが付き合ったら、確実に千聖ちゃんの下で扱き使われる未来が想像できちゃう。……例えるなら女王とその下に仕える臣下。想像するだけで吐き気がするし目眩がする。

 

 

 颯樹くんの隣に寄り添ってあげられるのは、後にも先にも私しか居ない……私だけが、颯樹くんの傍に居て良い存在なんだ。

 

 

「もう気は済んだかしら。なら、早くこの場から潔く立ち去りなさい。私は忙しいの、貴女に構っている余裕は無いわ」

「待って、千聖ちゃん! 私はまだ」

「丸山さん、行きますよ! 無理を承知でこの場に入れたのです……これ以上の滞在は此方や向こう方にただ迷惑がかかるだけです、行きますよっ!」

「ちょっ、待ってよ……千聖ちゃん! まだ私の話は終わってない……千聖ちゃんッ!」

 

 

 そんな私の抵抗も虚しく、私は千歌ちゃんに連れられて舞台袖を後にし、体育館から遠ざかる事になった。その後舞台の方では拍手喝采の中演劇も終了し、文化祭の全ての日程を終える事となったのだった。




 今回はここまでです。如何でしたか?

 次回の更新日は未定としていますが……このお話の続きを進めるか、番外編の執筆をするか、また別作品の更新をするかの三択を考えておりますので、今暫くお待ち下さいませ。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。


 最後にはなりますが……本日、5月10日は私とXにて繋がって(相互フォローして)居られるハーメルン作家である、山本イツキさんのお誕生日となっております!

 この場を借りてお誕生日をお祝いさせて下さい。

 お誕生日おめでとうございます(翌日の花音さんの生誕祭当日は、記念回を更新出来ませんのでご了承くださいませ…(本当にごめんなさい))!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。