新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆さま、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。


 この度は一ヶ月超えの長期休暇を頂きまして、本当に申し訳ございませんでした。当初書くと言う目標を立てていた話すら満足に書けず、この体たらくのまま7月に突入……と言う事案は流石にお話にならないと思い立ち、パス病みの本編を進める次第となりました。

 ただ、お待たせした割りにはその対価に見合わないクオリティで……尚且つ、原作キャラが名前だけしか出てないと言う、本末転倒な事態となっております事、ご了承くださいませ。


 それでは、本編スタートです。

 最後までごゆっくりとお楽しみ下さい(今回は珍しく後書きにてオリキャラのプロフィール掲載をしようと思ってますので、最後まで見て貰えると嬉しいです)。


第三十七話

「……蒸し暑っつい……こう言うじっとりとした時期に、真夏日級の暑さが襲いかかると、疲れた体に大打撃だよ……」

 

 

 文化祭が終わって暫くした頃……そんな事を考えつつ、僕は街中を軽く散歩していた。今日が土曜日となっていて、尚且つ幸運にもお仕事の予定が無い日だったので……どうせならと気分転換に外へ繰り出していたのだ。

 

 

 だが、蓋を開けてみれば多少マシになったと思った疲労感がドッと押し寄せて来た。それもそのはず、ここ暫くは雨が降ったり止んだりの気まぐれな天気が続いており……傘が一時たりとも手放せない日が続出している。

 

 その影響が強く出たのかどうか定かじゃないが、いつもなら元気いっぱいな彩や日菜でさえも、終始ぐったりモードだったのは記憶に新しい所だ。

 

 

 これを緊急事態と見た僕は、急遽社長に相談を行い……何とか数日分の休暇を取得する事に成功した。とは言えど、毎度毎度この調子が続くと本業にも関わるので、各自体調管理を怠らない様にと言う厳命は下す事にしたけれども。

 

 

「さて……どうしようか。考えられるこの後の行動として適切なのは、早めに夕飯の買い物を済ませて、あとは自宅でのんびりする方が良い様な気が」

「あ、あの……」

「んー?」

 

 

 僕はまだ思考回路の定まらない脳に発破をかけ、突如として聞こえて来た声の方角に耳を傾けた。こんな時に宗教勧誘の類が来るともなった場合、流石に僕としても堪忍袋の緒が切れかかる事案なので……軽く聞き流して、丁重に追い払ってやろうかと考えてすら居た。

 

 だが、先程声を掛けてきた人物の方を見ると、そんな考えは即座に吹き飛ぶ事になった。何故なら……。

 

 

「お久しぶりです、お兄様。またお会い出来て光栄です」

「り、莉々……?」

 

 

 ──僕の義妹(いもうと)である……黒い髪をロングヘアにしていて、アメジストを思わせる様な瞳で前髪の所に髪留めを着けた少女──白咲(しらさき) 莉々(りり)が、車の中からひょこっと顔を出して此方に手を振っていたのだから。

 

 


 

 

「はふぅ……生き返った……」

「それは何よりです、兄様。ちょうど兄様のご自宅にお伺いしようと思っていた所だったので、ここでお会い出来たのはラッキーでした」

「本当に安心したよ。まさかここで莉々に会えるなんて」

「颯樹様、私めもお会いできて光栄でございます。お父上の一件があって以降、私共やお嬢様も心配しておりました」

「その節はすみません、ご心配をおかけしました」

 

 

 莉々からの呼びかけに因って、彼女の家が所有している車の後部座席に乗車した僕は……呼び止めてくれた張本人と、それを運転している執事さんにお礼を言う事になった。最後にこの車に乗ったのは、だいたい7〜8年前か……そう考えると、今現状で味わっている感覚が、とても懐かしい物に思えてきてしまう。

 

 

「しかし……まさか兄様にお会い出来るとは、神様も良きご縁を恵んでくれたものです。私、ずっとお会い出来る日を心待ちにしていました」

「ははっ、そう言ってくれると嬉しいよ」

「お嬢様は兼ねてより、颯樹様やそのご家族様の動向を危ぶんで居られました。一度この地を離れられたと知った時は、お嬢様が大層悲しんで居られたのをよく覚えております」

 

 

 執事さんからの言葉で、僕は自身の右腕に伝わる暖かい感覚に気付かされた。この手の事案はちーちゃんで経験済なので、軽く頭を撫でれば済むかと思っていたのだが、莉々は此方の顔を見ずに僕の方へと擦り寄り、すぽりと肩に自分の頭を置いていた。

 

 

 ……な、なんてスムーズな……。

 

 まあ、さっき本人も言ってたしね。これくらいは好きにさせてあげないと、後々苦しくなるのは僕の方だ。

 

 

「それにしても、お元気そうで何よりです。母もこの場に立ち会えたならどれだけ良かったか……」

「違いありませんな。して颯樹様、今は何をなさっているのですか?」

「高校に通いながら、一人暮らしをしてます。……ただ、昔馴染みの我儘で事務所に所属してる身ではありますが」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、隣でしがみついて居た莉々の抱き締める力が強くなった様に感じられた。若干痛いのと気持ちいいのが混ざり合っているけど、今は聞かれた事に答えるのが先。

 

 

「ほう、それはまた。事務所に所属して居られると言う事は、もしや……何かお仕事を?」

「ええ。アイドルグループのマネージャーを」

「それはそれは……」

「最初は大変でした。楽器経験者が極小数しか居ない上、結成して日も経たずにお披露目ライブ……それがエアライブ、ともなれば」

「それは何故、その様な決断に至ったのでしょうな。普通であればひと月かふた月程は様子を見る物でしょうに」

 

 

 僕は今現時点で自分の身に起きた事を、話せる範囲で執事さんに話して行った。この車が向かう先は僕の自宅だったので、自宅に帰るまでの暇潰しではあったのだが……話をして行くに連れて、聞いている二人の表情が何処か曇りを見せているのが理解出来た。

 

 反射的に莉々は、解けそうになっている拘束を締め直す始末だし、執事さんの話している声色も事務的な口調から少しずつ変化して来ていた。

 

 

「それはなかなか大変でございましたな。お話を聞いている限りでは、メンバー内での諍いも絶えないとお見受けしますが」

「本当ですよ。最初はてんでバラバラ……足並みも一向に揃わないし、考え方だって勿論違う。そのクセ、メンバーの中には一筋縄では行かない問題児だって居る。何度匙を投げたくなったか分かりやしませんよ」

「ハッハッハ、人生とは何事もそう上手く思い通りとは行かないもの。ですが、それもひとつの経験ですな」

「……仰る通り。返す言葉もありませんよ」

 

 

 そうして話していると、次第に見慣れた風景が僕の視界に入って来た。どうやら……自宅の近くまで来たみたいだ。思いの外話し続けていると時間を忘れてしまうらしい。

 

 そして少しした頃、先程まで鳴っていたタイヤの回転音が途切れた為、僕は助手席側から窓の外を見る事にした。

 

 

「着きましたぞ。此方で間違いありませんな?」

「……はい、その通りです」

「しかし、こうして見るとお懐かしゅうございます。以前お伺いした時は颯樹様は、とても可愛らしく……それが今や、この様にご立派になられて。きっと母上殿の育てがよろしかったのでしょうな」

「その言葉は是非母に仰って下さい。喜ぶと思いますよ」

「ご尤もですな」

 

 

 そんなやり取りをした後、僕は後部座席のドアを開けて外に出ようとしたのだが……肝心の莉々がまだ離れず、車内から出られず仕舞いだった。

 

 

「莉々、家に着いたよ。離れてくれると嬉しいな」

「……絶対に離しません。折角お会い出来たと言うのに」

「やれやれ……」

「ふぅむ、弱りましたな……では、颯樹様。私めからこんな提案をさせて頂きたく」

「聞きましょうか」

 

 

 僕は執事さんから唐突に持ちかけられた提案に、少しの間耳を傾ける事にした。これで莉々の気が済むなら万々歳ではあるのだが、僕としては少々懸念点があるのも事実だったりする。

 

 

 ……そして、提案された事と言うのは。

 

 

「え? 僕の自宅に、莉々を一晩泊めて欲しいと?」

「左様でございます。お嬢様は一貫して颯樹様から離れようとしませんし、その内には久しぶりにお会いして嬉しかったと言う感情もございましょう。で、あるならば。私めから奥様には帰宅後に軽く一言添えておきます故、お嬢様の事を一晩お願いできませんか?」

 

 

 ……なるほど、確かに。

 

 久しぶりに会えて嬉しかったと言うのと、未だに僕から離れたがらない事を鑑みるなら、この提案を承諾する方が理に適っている。幸い彼女のサイズに見合う服は、自室のタンスの中に何着かあったはずなので、それを貸し与えれば問題は無いだろう。

 

 

 ……そうと決まれば。

 

 

「分かりました。謹んでその提案、お受け致します」

「快いお返事に感謝致します。つきましては、何れ我が白咲家にも足をお運び頂きたく存じますが」

「ええ、その際は此方から日程等を折り返しご連絡する形でも宜しいですか?」

「其方がその様に為さるのでしたら、私共はそれをお引き受け致しましょう。お嬢様のお迎えなのですが、翌日の夕方頃を見ておりますので何卒」

「はい、構いません」

 

 

 その様に段取りを整えつつ、僕は莉々を一晩自宅に泊める事になった。この手の事務作業は今までに何度か経験したものの、やはり本職の人が行なうと、進行スピードに一切の無駄が無い様だった。

 

 そうした後に執事さんは車を器用にUターンさせ、白咲家のあるであろう方角に向かって走らせ去って行った。

 

 

 そして僕と莉々は自宅の扉を開けて入り、玄関先で靴を脱ぎ揃えてリビングへと足を進めた。実は家を空けたのはほんの2時間程前だったのだが、まさかお客さんをその間に迎える事になろうとは予想していなかったのが事実だ。

 

 

「さて、軽く作ってしまおうかな。最近は茹だる様な暑さが続いてるし、ツルっと食べられる様に素麺を湯掻くつもりなんだけどどう?」

「それは名案です。でしたら、私も何かお手伝いを」

「有難いお誘いだけど、今回は遠慮しとこうかな。完成するまで時間は要さないから。その代わりと言ってはなんだけど……自室を好きに使って良いよ。多少の事なら目を瞑ったげる」

 

 

 僕がそう言うと、莉々の表情がすごく柔らかくなった様な気がした。まるで……彼女の周りに、色とりどりの満開の花々が咲き誇っているみたいだった。莉々の自宅でもこれは同様なのだが、他人様の家に厄介になる時は、粗相が無い様にと言うのが暗黙のルールとなっている。

 

 お互いにキチンと良識を弁えているからこそ、この様なルールを締結できるのだが……これがいつものメンバーだと話が随分違って来る。やれ秘密の宝物捜索だの、私物を勝手に漁って持ち帰るだの……プライバシーも何もあったもんじゃない気がする。

 

 

 そんな話をして莉々を2階に送り出すと、僕は台所の電気を付けて料理に取り掛かった。と言っても素麺の束を2つ箱から取り出して、既に加熱した状態にした水の入ったお鍋に留め具を外した素麺を入れ、頃合の時間まで湯掻くだけなのだが。

 

 その合間に卵を割ってフライパンで錦糸玉子を作り、ロースハムを短冊切りにしてトッピング出来る状態にする。まあ、これはぶっかけうどんにする時も同じ様な感じなのだけれど。

 

 

 そうして湯掻いた素麺を穴空きのザルに移し、程良く水気を切った後は予めボウルに張っていた氷水の中に素麺を移し替え、トッピング用の錦糸玉子とハムを別皿で用意すれば……頃合だろう。

 

 そしてできた頃合で莉々を2階から呼び出し、最後に彼女の手伝いの元……木製の器に麺つゆを注ぎ、つゆの濃さを薄める為に氷を一つずつ用意する事にした。

 

 

「わぁっ、涼やかで美味しそうですね♪」

「そう言ってくれると嬉しいかな。それじゃあ」

 

 

いただきます

 

 

 二人合わせて食前の挨拶を口にし、各々ボウルに入った素麺にお箸を使って手を伸ばし始めた。……うん、我ながら良い出来かもしれない。莉々も喜んでくれているし、今日の夕飯を素麺にして正解だったね。

 

 彼女がいつも味わっている様な、大層な食事とかでは無いけれど……たまにはこう言うのを経験するのも必要だろう。

 

 

「……ところで、兄様?」

「ん……んぐっ。どうしたの、莉々?」

「先程車の中でお聞きしたのですが、兄様のサポートされているアイドルグループ……もしや、プロの方々なのですか?」

「うん、そうだよ。ただ、まだデビューして日は浅いから駆け出しってのが一番しっくり来るけどね」

「なるほど……」

 

 

 僕から投げ掛けられた答えに納得した様子の莉々は……自分が先程取った分の素麺を、再び食べ始めた。その様は一枚の画を見ている様に美しく、こう言う作法が綺麗で食べ方にも何処か品があり……誰に対しても模範的な接し方が出来る女性を、俗に言う大和撫子と言うのだろう。

 

 今までパスパレのメンバー達に触れて、個性的な面々をその身で感じてはいても……この様な、流れる様に美しく……それで居て佇まいが綺麗な存在は、東京(こっち)に帰って来てから初めての部類だ。

 

 

「……? どうかしたのですか、兄様?」

「あ、ああ……ごめんね、莉々。莉々の食べ方一つ一つがすごく綺麗で、その……見惚れてた」

「っっっっっっ!?」

 

 

 その答えを聞いた途端、莉々は瞬間で顔を真っ赤に染め上げてしまい、食べている素麺を勢いよく飲み込んでしまい、かなり()せ込んでしまった。これに関しては僕が全面的に悪いので、彼女の背中を優しく摩りながら落ち着かせる事にした。

 

 

「に、兄様……。お、お願い……ですから……」

「どうしたの、莉々」

「わたし、以外には……こう言う事はしないで下さいっ。勘違いの元になります、からっ」

「あ、あはは……善処するよ」

 

 

 莉々から放たれた言葉が否応無く突き刺さった。

 

 ……うっ、心掛けては居るけど、相手がその気にしてしまうんだから怖いんだよなぁ……アッハッハッハッハッハ……ハハ……うん、気を付けよ。

 

 

 そうしたひと幕もあり、素麺を二人とも食べ終えた後。

 

 

「あの、兄様……」

「どうかなさいましたか、お嬢様?」

「ふぇっ!? で、では……その……」

 

 

 そんな前置きを置いて……莉々は、こんな要求を僕にして来たのだった。

 

 

「昔、みたいに……。私と兄様の二人っきりでお風呂に、入りませんか……?」

 

 

 ……ゑ?

 

 どうやら、僕の精神耐久実験が二人だけのこの自宅にて執り行われるみたいです。




 今回はここまでです。如何でしたか?

 次回の更新は、今回の様になるべく遅くなる事の無い様に善処致しますので……更新通知をお待ち頂けると幸いです。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。

 最後に……投稿日である本日、6月27日は……【Pastel*Palettes】のキーボード担当である、若宮 イヴのお誕生日です!


Happy birthday、イヴ!






 そして……最後に、今回のお話より初登場しましたオリジナルキャラクターのプロフィールを公開致します(苗字の読み方がある人物と似てるけど、間違えないでね?)。


【名前】白咲(しらさき) 莉々(りり)
【性別】女 【年齢】15【学年】中学三年生
【誕生日】4月29日【学校】月ノ森女子学園
【性格】真面目で曲がった事を好まない
【身長】154cm 【体重】本人の意向により非公開
【イメージCV】鈴木みのり
【設定】
 月ノ森女子学園に通う中学三年生で、清楚で純真で真面目な大和撫子の印象が強く、一見すれば窓際の令嬢のようなか弱さが伺えるが、名家のご令嬢というだけであり、芯はとても強く、行動に迷いを見せる事が無い。だが如何せん思い込みが激しい一面があり、それとやる気に生真面目さが空回りを見せる事が多く、失敗も多いのが玉に瑕。

 月ノ森女子学園へと通うきっかけは、一種の社会勉強として言う物。本人にその気は無く、ただ『普通の女子高生として過ごしたい』と思っているらしいのだが、家族からしてみれば、彼女が学内で何か粗相をやる気が気で気が無いからと心配との事。


 颯樹の事は『兄様』と呼び慕っており、彼の両親と自分の両親に繋がりがあるとの事を巧みに利用し、あの手この手でアピールするとか。なお、それに関しての思い切りはかなりいい。

 ……ちなみに余談だが、周りから言わせて貰えば、莉々に関しては『莉々(さん)って、もしかして重度のむっつりスケベなのでは……?』と思ってるらしい。


【服装】
 和装の確しっかりとした装いが多く、年相応のした事が颯樹の家に宿泊に行った時くらいしか無い。黒髪のロングヘアで、アメジストを思わせる眼をしている。
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