新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
今回は番外編のラスト……三話目をお届けしようと思います。最後に相応しい文字数と内容となってますので、ぜひぜひ楽しみにして頂けると嬉しいです。
それでは本編スタートです。
「ず、随分高い所にありましたね……スタート地点」
「本当だよ。降りる時はしっかり掴まっててね」
「は、はいッス!」
あの後幾多の回数にも渡るあいこが繰り返され……最終的に一人勝ちをした麻弥が、僕と一緒にウォータースライダーを滑る事になった。移動するまでの道すがらで聞いたのだが、彼女は相当な金槌であり……更に言えば、水着など随分と久しぶりだと言う事らしい。
「まあ、今はこの時を楽しもう。そうしたら今怖いと思ってる事も楽しくなってくるはずだよ?」
「そうッスね。ありがとうございます」
「……と、そろそろかな?」
そんな雑談をしている間にも、並んでいる列が少しずつ前に進み……僕たちの順番が回って来た。係員さんからの説明を受けている間に見ていたのだが、大きさは詰めればギリギリで三人乗れる程で……サイドには落ちない様にする為の手摺が着いていた。
そして、その先は真っ暗である事が分かり……これから一緒に滑る麻弥の心配をする事になってしまった。
「滑られている間は、お近くにある手摺をしっかり掴まれて下さい。そうしないと放り出されてしまいますので」
「わかりました。……麻弥、行くぞ」
「は、はい!」
一通り聞き終えた僕たちは、目の前にある浮き輪へとゆっくり乗り込んだ。そして……僕は両サイドにある手摺を掴み、麻弥は僕の後ろから手を腰に回して抱き着く体制になった。
……て、ちょっと待て!?!?!?!?!?
放り出されない様に僕にしがみつくのは、まだ百歩譲ってわかる! それは大いにわかるんだけどさ……抱き着いているって事は、彼女のそれなりにあるモノが、僕の背中に当たってるって事ですよね!?
「ちょ、ちょっと麻弥!? な、何してんの『い、言わないで下さいっす! ジブン、これでもものすごく勇気を出したんですよ!?』それは分かるんだけど、こんなのを他のメンバーに見られたら!」
「ねぇ……颯樹くん、麻弥ちゃん」
「あ、言わんこっちゃない」
麻弥とそんな会話をしていると、後ろから何やらイヤーな感覚が。それを見た周りの人なんて……如何にも『我関せず』と言う様に逃げ出してたし、更に言うなら他の三人からも感じるし……大変だこりゃあ!
「……よい、しょっと」
「ちょ、ちょっと……お、おお……お客様!? このアトラクションは二人乗りです! 三人まで乗られると色々と問題がありまして!」
係員さんの制止も空しく、そのオーラを発して来た張本人はと言うと……するりと僕の右手を掴んで引っ張り上げ、そこから自分の水着の中へと入れ込んで来た(一応、手摺を掴まなければならないのは分かっている様で……それくらいの自由は考えてくれていたらしい)。
「さ・つ・き・くん♪ キミは一生……ず〜っと私だけのモノなんだから、麻弥ちゃんとイイコトをしようったって……そうは問屋が卸さないよ?」
「あ、彩!? 今のこの状況を見てそう思うか普通!?」
「私だって、颯樹くんと二人っきりで一緒に乗りたかったのに……麻弥ちゃんだけズルいよね。ジャンケンで一人勝ちするし、あまつさえ……颯樹くんを堕とそうとするなんてさ」
僕の反論など右から左に抜けるかの様に、彩からの言葉責めを受けていた。早く滑ってしまわないと後ろもつっかえるだろうし……それでもこの状況をどうにかしないといけないと言うのが、また大変な話になって来ていた。
「ねぇ、颯樹くん。麻弥ちゃんの胸よりも、私の胸の方が気持ちイイよね? ただ大きいだけの胸よりも……感度が良くて触り心地の良い胸の方が好きだもんね?」
「彩、今ここでその発言はアウトだ! さっさと滑ってしまおう! そうじゃないと……後で何をされるかわかったもんじゃない!」
「私の質問に答えてよ……ねぇ、どうなの?」
「そろそろいい加減にしろ彩! その辺にしとかないと本当に怒るぞ!」
僕が言っても何も聞かずに暴走し始めた彩。それを見た僕の我慢も……そろそろ頂点に達しそうになっていた。こうなれば多少手荒にはなるが、身体に刻み込ませる事も考えていた。
……だが、僕よりもこの緊迫した状況に、我慢の限界に来ている人がいた。
「お客様……」
「あ、はい」
「さっさと滑りやがって下さいませ、逝って来いやコラァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
係員さんからの嫉妬とも取れそうな言葉と共に、僕らの乗るボートが蹴り入れられた。
最初から急カーブがあった事もあり、彩と麻弥は僕に確り掴まっていないと、思わず振り落とされそうなスピードでウォータースライダーは進んで行った。滑っている間に常々感じていた柔らかさにはこの際気を向けない事にして、僕はこの一瞬をやりきる事にした。
そうして最後は、ボートから放り出される形で終わったのだが……彩からの猛アピールが激しかった為、その後を怒り心頭なちーちゃんにお任せする事で、僕はなんとか乗り切る事ができた。
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「……」
「彩さ〜ん、大丈夫っすか〜?」
「……ダメだ。彩ちゃんが気絶しちゃってるよ」
暫くして昼食を取ろうと言う事になり、近くにあったフードコートへと訪れたのだが……僕の対面に座る彩が、未だに意識を取り戻していなかった。と言うのも、先程までちーちゃんからのキッツーいお説教を食らっていたので、何となくその状況がわかる僕だった。
「彩ちゃんの自業自得よ。私のダーリンに手を出した挙句に誘惑するだなんて、身の程を知れば良いのよ」
「『身の程』……って何ですか?」
「簡単に言えば『自分が何をしているのか』って事。まあ、ウォータースライダーを滑る前に1回警告はしたし、こうなったとしてもフォローは出来ないかな」
僕とちーちゃんは当然の事だと言ってのけた。彩以外のみんなもこれに賛同したのか、何処か納得した様子だった。日菜は何か思い出したようで……不敵な笑みを浮かべて麻弥に近づいた。
「それで麻弥ちゃん?」
「は、ハイ! 何でしょう日菜さん……?」
「さっきの麻弥ちゃん、さっくんに思いっきり抱きつくなんて大胆だったねぇー?」
「えっ、あ、あぁ……」
日菜が先程のウォータースライダーの一件での麻弥の行動を見て思ったのか、ニヤニヤしながら茶化してきた。当事者である麻弥も、それを聞いた時は自分が何をしたか我に返ったようで……顔を真っ赤に染めて両手で顔を隠した。僕も顔を赤くしながらみんなから視線を逸らしてしまった。
それを聞いたイヴは、どこか尊敬の眼差しで麻弥の事を見てきたが……ちーちゃんはドス黒いオーラを浮かべて、麻弥に笑みを浮かべていた。
「麻弥ちゃん? その話……もっと詳しく聞かせてくれるかしらね?」
「ヒィィッ‼︎ち、千聖さん⁉︎じ、ジブンホントに金槌なので颯樹さんに思いっきり抱きついてしまって、その……‼︎」
ちーちゃんからの圧が強かったのか、麻弥はしどろもどろになりながら弁明した。しかし彼女は納得していない様で、まだ黒い笑みを浮かべたまま麻弥に威圧を出していた。
麻弥もその時のちーちゃんを見た時、涙目になってガタガタ震えていた。
「あーあー、あの千聖ちゃんは納得するまで治まらないからなぁ〜。二人の分までお昼買ってこよーよ〜」
「そうだね。あまり脂っこい物は食べるのを控えた方が『あたしポテト食べたーい!』言った傍からぁ!」
「私が買い物にお付き合いします!」
「みなさーん! ジブンを置いて見捨てないで下さーい‼︎」
麻弥が僕達に助けを求めるがあの状態のちーちゃんを相手にしないといけないため、僕達は昼ごはんを買う口実でその場を離れた(相手にしたら後で僕がちーちゃん美味しく頂かれるから)。
そしてその場を離れて数分後……戻ってきた僕達が目にしたのは、未だに気絶している彩と、彼女の隣で項垂れている麻弥の姿があった。
「お待たせ〜って、さっきよりも凄い沈んでるが……」
「「颯樹くぅん(さぁん)!」」
「え、ちょっ……何いきなり! お昼ご飯持ってるんだから、抱きつくのは止してよ」
「だって聞いてよ颯樹く〜ん! 千聖ちゃんったら酷いんだよ〜! あそこまで怒ることないのに〜‼︎」
「そうですよ颯樹さ〜ん、ジブンだけ置いて一人で逃げないで下さいよ〜‼︎」
各々の思いを僕にぶつけながら二人は抱きついて来た。両手には昼ご飯を持っていて、僕はそれを危うく落としかけたのだが……何とか落とさずに持ち堪えた。そして抱きついてきた二人に注意をした。
「これに懲りたら私のダーリンに色仕掛けはしない事ね」
「「はい……」」
ちーちゃんが何かを思ったのか、彩と麻弥に軽く釘を刺した。二人は先程彼女にこってり説教された影響からか……大人しく従った。
「そ、そんな事よりお昼ご飯にしよーよ!」
「ハイ、折角買ってきたんです‼︎早く食べないと冷めてしまいます!」
「それに食べた後も思いっきり遊ぶんだし早くしようよー!」
「ハイ‼︎『腹が減っては戦は出来ぬ』です!」
「イヴちゃん、それ使い方が若干違うよー」
この空気をぶち壊そうとしているのか、しんみりとした状況を変えようとしたのかは定かでは無いのだが……日菜とイヴが昼食にしようと提案した。
……というかイヴ、分からないなら無理に使わなくていいからね。
そしてお昼を食べ終えた後、僕らは日が暮れるまで遊ぶ事にした。さっきのウォータースライダーでは、また違った組み合わせで乗ったが。
「ふふっ、楽しいわねダーリン♪」
ちーちゃんが僕に寄り添って、一緒にウォータースライダーに乗っていた。当の本人である彼女はと言うと、満面の笑みで更に僕に体を寄り添って抱きついてきた。
「ちーちゃん、近すぎだって……」
「あら、さっきは麻弥ちゃんに抱きつかれてたじゃない? 私がやらないのはおかしいでしょ? それに正妻として当然のことをしてるまでよ♪」
当然のことと言ってのけたちーちゃんは僕の腕に抱きつきながら頬擦りをした。
「全く、調子良いんだから……」
「さ、滑りましょ♡」
そう言って僕とちーちゃんはウォータースライダーを『今度は』係員の指示に従って滑ることとなった(奇しくもさっきと同じ係員で、先程と同じ事にならなかったのは良いんだけど……係員は『またか……』という視線で僕の方を見ていた)。
コースは先程と同じで最初から急カーブだった。コースもある程度頭に入っていたが先程とは違い三人じゃなく二人なため、滑る速度が早く進んだ。
そして最後にボートから放り出されることになるが、さっきより二人して思いっきり放り出された。
しかし僕は後悔することになった。ウォータースライダーに集中してたためか、この後起こるハプニングに気づかずに……。
「ねーねー、千聖ちゃん。あたしたちを放っておいてさっくんを独り占めしようなんて……随分度胸あるよねー?」
日菜がそんな事を言っているのを露知らず、その後みんなの元に一度戻ったが、何故かちーちゃん以外全員黒いオーラを漂わせながら……僕達の方を睨みつけるような感じで見ていた。
「ど、どうしたんだみんな⁉︎」
「あら、これは一体どんな歓迎かしらね?」
僕は若干動揺しながら尋ねたが、ちーちゃんは何かを察したのか日菜達に負けないくらいの黒いオーラを漂わせながら尋ねた。
「決まってますよ……ジブン達にはあんな手厳しい事を言っておいて、千聖さんは自分だけ美味しい思いをしてたんですからね……」
「二回もお預けを食らったあたしとイヴちゃんからしてみれば、面白くない事に千聖ちゃんだったら気づくよねー」
「あら、正妻の私が美味しい思いをするのは当然の権利よ?それに麻弥ちゃん達は完全に自業自得じゃない?」
「ま、待てちーちゃん‼︎みんなも落ち着けって‼︎」
ちーちゃんと日菜達が正に一触即発の状態になっており、周りからみたらタダならぬ雰囲気であることは火を見るより明らかである。
他の客もこの状況に察してかすぐさま離れていってるのがわかる。
このままでは埒が開かないと思った僕は……思い切って、日菜たちにある提案をした。
「分かった分かった!『みんなと一回ずつ二人きりで滑る』から!だから落ち着け‼︎」
「「「「「⁉︎」」」」」
五人がその言葉を聞いた時、僕の口からそんな事を言われると思ってなかったのか……全員が驚愕した。特に『二人きり』という単語が出た時は……ちーちゃん以外のみんなはどこか嬉しそうな表情をしていた。
「今言ったその言葉に……嘘偽りはありませんよね、サツキさん?」
「さっくんなら嘘をつかないって、あたしはもう既に知ってるけど……念の為に〜、ネ☆」
「……あぁ本当だ。もうこの際だ、彩と麻弥に関してもさっきのはノーカン扱いにする。一人だけって約束だからね」
しかもさっきの件があったので、麻弥達もノーカンとして扱うことを約束した。二人も僕とまた滑ることが出来るのか嬉しそうだった(特に彩)。
「やっ「ただし彩!」…な、何颯樹くん⁉︎」
「さっきと同じ事をしたら……次回のレッスンの時、彩だけ二倍にするから覚悟しててね」
「う!うぅ……。」
さっきと同じ事をさせないためにも……『彩だけレッスン二倍』と、予め釘を刺しておいた。当の本人もそれに応えたのか表情を暗くさせた。
その後は何事も無くゆっくりと楽しむ事が出来た。まあ、あそこまで釘を指したら大丈夫だったかな。
そして翌日から行われたレッスンや、ロケやお仕事などでは……いつも以上のコンディションで臨む事が出来たのだった。
今回はここまでです!如何でしたか?
次回の投稿からは、本編へと戻っていきたいと思いますので……更新をお待ち下さい。一応内容自体は頭の中にありますので、あとはそれを書き記していくだけですので
それではまた……次なる更新にてお会いしましょう。
今回も感想や評価など、お待ちしております(新規の読者様が増えてくれて、僕としては本当に嬉しいです!)。