新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆さま、おはこんにちばんは。咲野 皐月です。

 今回は昨年12月に投稿しておりました、彩がメインとなる水着回の2話目をお届けしようと思います。


 それでは、前置きが短いですが……本編スタートです。


真夏の恋に鮮やかな彩りを添えて:②

「ん〜っと、颯樹の家は何処だったかな〜」

 

 

 汗も止まらなくなるほどの陽射しが降り注ぐ夏のこの頃、そう呟きながらアタシは、花咲川学園に程近い住宅街を歩いていた。その周囲を見渡してみると、涼やかな風鈴の音が風に乗せて聞こえたり、家の中から賑やかな声が聞こえて来た。

 

 

「何処も彼処も風流だね〜。さて、アタシも本題に取り掛からなきゃ☆」

 

 

 そうして暫く歩いた先で着いたのは、先程見かけた一軒家と何も変わらない住宅だった。だが、アタシにとって重要なのはそこではない。問題なのは『ここに誰が住んでいるのか』と言う事。

 

 ……そう、今回アタシが訪れた場所と言うのは。

 

 

「おっ、住所の通りなら……颯樹の家はここか☆」

 

 

 颯樹──盛谷 颯樹の自宅である。

 

 本当は友希那とあこの勉強を見なくてはならず、その関連で無理を言ってバイトをお休みさせて貰ったのだが……翌日の朝になり、開口一番に紗夜から告げられた一言でアタシの予定が完璧に潰れてしまった。

 

 

 その言葉と言うのが……。

 

 

『湊さんと宇田川さんは、今井さんが居ると極端にダラケてしまいます。ですので、今日は私たちの事はどうぞお気になさらず。久々のお休みですので、存分に羽根を伸ばして来て下さい』

 

 

 ……と言う事である。友希那は確かにちょっとサボり癖が強いし、あこも勉強に関しては大が着くほどの苦手だ。それ故に課題も溜まりやすいので、アタシも手伝える範囲での協力を今までやって来た。

 

 何だったら……今年も要請されるんじゃないか、と身構えてすら居た現状だ。

 

 

「けど、紗夜に一日任せて大丈夫かな……そのうえ、頼みの綱の燐子ですら、今日は生徒会の仕事があると言って居ないし……あの二人の根を上げる顔が想像できるなぁ〜」

 

 

 まあ、その二人には日頃溜まっていたツケを精算する良い機会だとも思うので、キッチリ紗夜に絞られて来て欲しいとは思うのだが。弱音を吐いて逃げ出すのは、頂点を目指すバンドのリーダーや、それを支えるメンバーがして良い所業で無いのは確かだ。

 

 

「ま、皆にはちょっと悪いけど……今日は思いっきり休暇を楽しんで来て、お土産にその日の話でもしてあげますか☆」

 

 

 あの二人の事をそう割り切ったアタシは、肩に提げたショルダーバッグの中から鍵を取り出し、彼の家の鍵穴に差し込んだ。

 

 

 ちなみに今使っている鍵は、こころに頼み込んで用意して貰った颯樹の家の合鍵で、それが見つかった当時はと言うと、本人を欺くのに凄く手間がかかったんだよね……。颯樹ったら一挙一動全部見逃さ無いし、挙句の果てには行動まで先読みされた上で対策を打たれるもんだから、本っ当に自分のペースに持って行くのがこれまた大変。

 

 同じバンドに所属してる日菜ですらも、颯樹の眼からは逃げられないらしく、面白くないを通り越して少々イライラも溜まっていたりする。

 

 

「……おっ、思った通り鍵穴ピッタリ♪ それじゃ、失礼して……颯樹〜、居る〜?」

 

 

 そう一言入れたアタシは、解錠を済ませたドアをゆっくりと手前に引いて家の中へと入った。一応家主に用事があるから来たので、確認を取る事も忘れなかった(鍵を開けた後にするのはなんか変だけど)。

 

 

 そんなアタシの眼前に飛び込んで来た光景は……。

 

 

「えっ、リ、リ……リサちゃんっ!? どうして颯樹くんの家に……ひゃあっ!」

「あ、彩!? ちょっと、大丈夫!?」

 

 

 アタシが見た光景はと言うと、リビングに面しているキッチンで料理をしている彩の姿だった。その彩はと言うと、アタシが入って来た事が完全に予想外らしく、料理をしている手を少し滑らせてしまって転倒してしまった。

 

 

 ……はぁ……しょうがない、ここはお姉さんがバッチリ助けてあげますかっ☆ そう思ったアタシは彩の所に向かい、彼女の手を取って助けた後、料理の手伝いをする事にした。

 

 彩が作ろうとしていた物がそこまで難しい物では無かったので、アタシは彩に少しずつ教えながら作って行った。

 

 

 そしてその後、大きな物音に気づいたであろう颯樹が降りて来たので、アタシは彩と一緒に洗いざらい説明をする羽目になったのだった。まあ、あの大きな音は寝ている人にも充分聞こえる音だったし、耳が良い颯樹なら一発で起きて来るよね……うん、それに関しては彩にキッチリ言っとかないと。

 


 

「なぁるほどねぇ……。元々は千聖もこのお出かけに来るはずだったんだ」

 

 

 そして朝ご飯や準備を終えたアタシたちは、目的地に向かう為の電車へと乗っていた。途中の道すがらで聞いたのだが、元々は千聖も加えた三人でお出かけしようと計画していた様で。けど、その千聖は前日の夜になって、急遽お仕事に呼ばれてしまい……参加を見送ってしまったのだとか。

 

 

 千聖の意気消沈っぷりが想像できるなぁ……。颯樹とのお出かけで一番舞い上がってたの、多分だけど彩以上に千聖がそうだったはずだもん。

 

 アタシが千聖の立場だったら、絶対立ち直れなかったな……自信持って言う事では無いんだけど。

 

 

「まあ、ちーちゃんには後で埋め合わせをする。その要求にさえ、僕が気をつけてたら良いんだから」

「うわっ、颯樹って結構バッサリ〜。これじゃあ千聖や彩だけじゃなくて……同じバンドメンバーのヒナや麻弥とかの苦労も想像できるなぁ〜」

「うん……でも、颯樹くんは優しいから、いつも助けられてばっかりだよ♪ それに……すっごく可愛い所もあるし♡」

 

 

 ……おおっ? 何だかそう言われると、アタシすごく気になっちゃうな〜☆ 颯樹の可愛い所はどんなだろ……やっぱり可愛い女の子が近くに居るんだから、慌てて顔を真っ赤に……あ、ヤバッ。

 

 

「いだっ!」

「リサ、何考えてんの」

「もう……いきなり女子高生の頭に手刀落とすとかナシでしょ〜。しかも相っ変わらずの加減知らず。傷痕になったらどうするの……」

「反省して」

「はーい、わかりましたよーだ」

 

 

 アタシは颯樹から降ろされた所を抑えながら、その場凌ぎの空返事で何とかやり過ごす事にした。そして彼の横に居る彩はと言うと、非常に居た堪れなさそうな顔をしながら、アタシに向かってぺこりと申し訳無い旨を無言で伝えていた。

 

 ……なぁるほど。これは目的地に着いた後、それとなく彩にこっそり聞いてみようかな……? もしかしたら、颯樹の意外な一面が見れるかも、なんてね☆

 

 

 ……あ、ヤバッ。

 

 

「何考えてんの」

「いだっ!!!!!」

 

 

 ……颯樹、海に行ったら覚悟してなよ?

 

 アタシを本気にさせた事、悔やんでも悔やみきれない程後悔させてあげるんだから。

 

 

 そんな事を思いながらも電車は流れる様に進み、今回のアタシたちが向かう目的地である『久里浜海浜公園駅』へと到着した。海浜公園と名前にある通り、近くには遊具などもある公園も併設されているのだが、その奥に行くと一面真っ青な海が広がっている。

 

 夏場は家族連れやカップルなど……多くの人で賑わう観光地となってるらしく、都心部から離れてこそ居るが、ここで夏のひと時を過ごす人が多いのだとか。

 

 

 今回彩が訪れようと思ったきっかけは、どうやら高校生活も残り少なくなって来た夏の終わり……そこで思いっきり羽根を伸ばして遊ぶ事で、高校生最後の夏を満喫したかったみたいで。

 

 そして駅に辿り着き、改札を抜けて広がっていたのは。

 

 

「うわぁ〜、キレイだね〜」

「ホントだね〜。アタシ、もしかしたらすっごく良い所に居合わせたかもしれないっ☆」

「あはは……僕としては巻き添え食った様な感覚だけど」

 

 

 目の前に広がるキレイな海を見ても、颯樹の声色は何処か怖いまま。アタシとしてはすっごく楽しみなんだけどな〜? こう言う時くらいピリピリするのはナシにして、たくさん遊べば良いのに……やっぱり、颯樹の立場からしてみると、今回は少し気が向かなかったのかな。

 

 

「……よし。颯樹くんっ!」

「な、何……彩……? え? しかもなんで僕の両手を包む様に握ってんの?」

 

 

 アタシがそんな事を考えている最中に、彩は颯樹の手を握って何かを訴えかけようとしていた。その様子に颯樹は少し驚いていて、この行動の意味を問おうとしている……って事は、もしかして隙あり?

 

 

「今日一日まるまる使って……私は、颯樹くんの彼女になりますっ! だから、私と一緒に夏のひと時を楽しもうよ♡大丈夫、私と一緒に居るこの時間は、絶対に後悔なんてさせないから♪」

「お、おぉ……」

 

 

 あー、彩ってば大胆だねー☆

 

 周りに人が居るにも関わらず、この好きな人に向かって一直線な所……さすが彩って感じ♪ じゃあ、アタシもやってみようかな?

 

 

「颯樹〜、アタシも『リサちゃんはダメだよ?』えー? 別に良いじゃん彩〜。颯樹の独り占めは良くないぞー?」

「リサちゃんはダメだよ? わかった……?」

 

 

 ……怖っ! なんかアタシの知ってる彩じゃないっ!

 

 アタシが颯樹の所に擦り寄った瞬間、確実に彩の目の色が変わった! ハイライトが消えてないのは唯一の救いだけれど、それを差し引いても恐ろしさを感じるよ!

 

 

 例えるならなんだろう……そう、紗夜だ! 友希那やあこが何かやらかした時に二人へ雷落とす時の紗夜だよ! あの彩が紗夜と同じ殺気を出すなんて……アタシは諸々完璧に予想外なんだけどっ!?

 

 

「ん? お返事は?」

「ハイ、ワカリマシタ……」

 

 

 ……恋する乙女は、怒らせると怖いね〜。あはは……。

 

 そんな事を頭の片隅に置きつつ、アタシたちは揃って海岸へと足を運ぶ事にしました。……うん、彩は今後金輪際怒らせちゃいけない……絶対に怒らせたら大変な事になるっ!




 今回はここまでです。如何でしたか?


 この更新を機に筆が載りましたら、今回の続き……若しくはきずかなさんとのコラボPartか、本編の続きを投稿しようと思います。怪異症候群Partはその合間を縫ってぼちぼち書いていきますので、更新までお待ち頂けますと幸いです。


 それではまた次回の更新にてお会いしましょう。
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