新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆さま、おはこんばんにちは。どうも二ヶ月も本編の執筆を長期休暇しておりました阿呆の咲野 皐月でございます(と書かれたホワイトボードを首から提げながら)


 颯樹「作者、今の今まで何をやっていた?」
 千聖「本当よ。聞かせてくれるわよね?」


 ……ウマ娘やプリコネ、グルミクにガルパに……やってました。


 二人「「私(僕)たちは?」」


 ……誕生日回書いたじゃん。


 千聖「それで許されるはずが無いじゃない?」
 颯樹「罰として、暫くパス病み一本に絞れよ」


 ……鬼です出番減らされても文句言えな……ま、マジで待って。どっから持って来たその弓……え、なんでこっち向けるのかな? 待って引き分けの態勢に入ったんだけど勘弁してってば=(;゚;Д;゚;;)⇒グサッ!!(矢が貫通した)


(本編始まります)


第四話

「さて……何処から調べたもんかね」

 

 

 ちーちゃん達の乗る車を一旦離れた僕は、海沿いの道をひたすらに歩いていた。今まで倉庫の所にはあまり来た事が無く、見た事があると言っても……それはドラマでしか知り得なかった景色だ。

 

 そんな景色を真新しそうに眺めるのと並行して、今回請け負った役割をもう一度思い出していた。

 

 

「連れ攫われた彩の乗った車は見てるけど、それが何処にあるかが分かんないと意味無いんだよな……。先ずは奥から調べてみるか?」

 

 

 僕はそうやる事を決めると、海に一番近い場所にある倉庫へと向かった。扉は引き戸の形になっていて、取っ手を掴んで引いて開ける方式みたいだ。倉庫自体がかなり大きな建物の様で、それもあるのか……扉がかなり重さを感じた。

 

 

「……まぁ、やってみないとわからんな。そんじゃま……とりあえず開けてみますか!」

 

 

 僕は少し短めに息を吐くと、力の限りを振り絞って金属製の扉をゆっくりと引いて開けた。するとそこには、一人の男が寝そべって寛いでいたのが見えた。

 

 

「あ? 何だよ兄ちゃん。オレに何か用か」

「あ、えっとですね。僕はある人を探してまして」

「ほう? 探し人か……。探偵サマか何かなのかよ」

「探偵では無いです。けど、不審な行動を見かけてしまったので、ちょっとお聞きしたくて」

 

 

 その男と少し話をしていたのだが……僕は何点か不自然な所に気付いた。先ずは、話している時の口調は兎も角として除外するのだが……最初に違和感を感じたのは『探偵サマ』と言うフレーズだ。

 

 この言葉を使うのと言えば……主に犯人グループのメンバーが、警察等の公務員を蔑称で呼ぶのが、まさにそうだろう。

 

 

 次に二つ目は、僕と話してる時の態度だ。

 

 普通に話しをすれば良いのにも関わらず……片手を後ろに回して、何やら確認をする動作をしていたのだ。例えるならばそう……腰またはベルトの辺りに取り付けた何かが、ズレない様に確かめている様で。

 

 

「ここには居ねえよ。疑うなら、見てみるか?」

「お気遣いありがとうございます。見たところ、そこまで広くないみたいなので……直ぐに要件は済ませられるかと」

「そうか」

 

 

 僕と話をしていたその男は、少し後ろに後退をしてこの先へ進む様に促した。それを見た僕は、近くにあった通路を通って他の広間へと向かおうとした……のだが。

 

 

「……死ね」

 

 

 その短い一言と共に、先程の男がナイフを取り出して向かって来ていた。その動きは非常にスムーズで、何か習い事の中で武術系の稽古をしていたか……或いは、元傭兵か軍隊の所属なのかと思わせる程だった。

 

 

「足元がお留守だよ」

「んなっ!? ……ぐあっ!」

 

 

 男からの襲撃を受けた僕は、その男の軸足である左足を横一直線に自身の右足で払い除け……バランスを崩させて転ばせた。軽く転んだ程度では何とも無いようで、直ぐに立ち上がって態勢を立て直していた。

 

 

「てんめぇ……よくもやったなぁ!」

「あのですね? 僕はいきなり襲いかかられたので、自分の身を守る為にこの行動を取ったんですよ」

「御託はいいからさっさとくたばりな!」

「ちょっと待って下さい……って、危なっ!」

 

 

 僕は連続で突き出されるナイフを躱しながら、男との対話をして行く。……さすがにここまで話が通じない、なんて思いたくは無いけど……人を突然誘拐してこんな所まで連れて来るんだから、普通の人と比べちゃダメだよね。

 

 それに、僕は警察の人が来るまでの時間稼ぎをしないといけないから……無闇矢鱈に暴れられないし。

 

 

「ちょこまかと逃げんじゃねぇよ……死ね!」

「あー、もう。僕はあまり戦闘は好まないんですが……って言ってる場合でも無いか。かくなる上は!」

「何をする気だ……ぐおっ!?」

 

 

 僕が男の動きを止める為に一撃を加えた所が、どうやら男にとっての急所だったらしい。その部分を強く抑えながら、男はその場に膝を折って蹲ってしまった。

 

 

「がっ……あ、うぁぁぁ……!」

『誰だ! 誰か居るのか!』

「不味いな。……でも、時間としてはそろそろかな」

 

 

 先程の呻き声が余程響いたらしく、他に居るであろう仲間を引き寄せてしまった。……まあ、僕の見立てではそろそろ増援も来る事だろうし、僕は本来の目的を果たさないと。

 

 

「な、何だてめぇ! 何処から来やがった!」

「貴方に説明する理由はありませんよ。それでは僕はこの辺で失礼します」

「ま、待てコラ!『警察だ!』……チィッ! ここにサツが来やがったか!」

 

 

 この場を警察の人たちに任せる事にした僕は、ここから通じている通路を通って奥の部屋へと向かう事にした。

 

────────────────────────

 

 あれから、どれくらい経ったんだろう……。

 

 私の中では……今の時間の一分一秒がゆっくり過ぎる感覚が残っていて、まだ私を連れて来た人に脅されている様子が思い浮かんでいました。

 

 

「……お腹空いたな……」

 

 

 ポツリと一言零すものの、結局誰にもその訴えは届かずじまい。挙句の果てには、自分が誘拐される前に何をしていたか……と言う事も記憶があやふやになりかけていました。

 

 

「私、ここで死んじゃうのかな……。せっかくアイドルスターになる為に、色々辛い事も頑張って来たのに……全部無駄になっちゃうのかな……」

 

 

 手は辛うじて動かせるし、身体に感じる縛られた感覚もちゃんと伝わっているけど……拘束されている時間が長いせいか、少しずつ感覚が麻痺して来ているのもわかってきました。

 

 

「……もう、ここで終わりなのかな……」

 

 

 私がそう呟いた、その瞬間の事でした。

 

 

「失礼しま〜す……ここで合ってる、かな?」

 

 

 扉をゆっくりと開けて入って来たのは、私と同じか一つ上くらいの男の子でした。黒い髪を短く切り揃えていて、優しそうな雰囲気を漂わせていました。

 

 

「あ、あの……あなたは?」

「ん? ああ、君が彩で間違い無いのかな?」

「は、はいそうですけど……誰から聞いたんですか?」

「ちーちゃんから聞いたんだよ。アイドルになる為、毎日練習を頑張っていて元気な女の子が居るって」

 

 

 その男の子は私の事を知っていたみたいなので、思い切って理由を聞いてみたら……何やら、私にはちょっと聞き慣れない言葉が飛んで来ました。

 

 

「ち、ちーちゃん……って、誰ですか?」

「あぁ、ついつい呼び方で昔からの癖が出たかもしれないな。えっと、千聖……白鷺 千聖って言えばわかるかな」

 

 

 男の子からの説明で、私が何処かで聞き覚えのある名前が聞こえて来ました。

 

 

「千聖ちゃんから!?「しっ、声が大きいよ」……はっ、ごめんなさい! でも、どうしてここに?」

「キミを助けに来たんだよ。今し方相手してた男たちに誘拐される所を見てたからさ、これは放っておけないってね」

「そ、それじゃあ……!」

「うん、今拘束を解いてあげる。警察は呼んであるから安心して良いよ」

 

 

 よ、良かった……助かったんだ、私……!

 

 ……え、ちょっと待って? 仮にも助けて貰う立場でこんな事を思うのは失礼だけど……今の私の恰好ってもしかして、この男の子に全部見られちゃってる!? 大事な所までは見られてないにしても、それ以外は……って、ええっ!?

 

 

「み、見ないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「ご、ごめんね! その縛っている縄を外した後に何か羽織る物をあげるから、ちょっとだけじっとしてて!」

「う、うん!」

 

 

 私はその男の子の指示に従い、少しの間だけじっと耐え凌ぐ事にしました。男の子は私に近付いてしゃがみ込むと、両足を縛っている縄を解き始めました。

 

 

「ちょっと痛いと思うけど、じっとしてたら直ぐに終わるからね」

「う、うん……」

「……」

「(すごくカッコイイ……)」

 

 

 男の子は一言も喋らずに縄を解いていました。その手捌きは器用で……少しだけ痛みは感じたけど、それ以外は全く感じなくて、むしろ心地良いくらいでした……。その行動をしていたら、私の状態に目が行きそうな物なのに……全く見向きもしませんでした。

 

 

「……よし、足は終わったよ。次は両手かな。その場で立ち上がって、後ろを向いててくれる? その後に羽織る物をあげるよ」

「うん」

 

 

 私はその場に立ち上がって後ろを向くと、男の子は両手にある縄を解き始めました。これも同じ感覚で解き終わると、私の方に何やら柔らかい感覚が伝わって来ました。

 

 

「……今の彩の格好なんだけど、とても外に出られる状態では無いから、応急処置ではあるけれど……僕のジャケットをあげるよ。脱ぎ捨てられてる服は、きちんと持って帰らないとね」

「あ、ありがとう……ございます……」

「全然いいよ、このくらいは。と言うか……話す時、タメ口で良いよ。見た所同い歳くらいだろうし、あと敬語も要らないから」

「う、うん……」

 

 

 私は男の子が差し出してくれた右手を軽く握って……この部屋の外へと向かうことにしました。その男の子は私の顔を見ると、ゆっくり微笑んでこう言ったのです。

 

 

「それじゃあ、行こうか」

「う、うん」

 

 

 私たちは繋がれている手を確りと繋いで、部屋の外へと出ました。隣から感じられる暖かい体温や鼓動が……私に否応無く伝わって来ていて、私は今にもどうにかなってしまいそうでした。

 

 ……暖かい……♪ 出来る事なら、ずっとこのまま……この手を離したくないよ……。

 

────────────────────────

 

 その後……僕と彩は無事に警察の人の所へと辿り着く事が出来、数分前まで相手をしていた男たちはと言うと、警察官の一人に取り押さえられていた。

 

 

「救出完了です」

「お疲れ様でした、颯樹さん。彼女の方は我々で保護します。親御さんが到着され次第、送り届けますので」

「はい、それで構いません。……彩、手を離して」

 

 

 僕は未だに自分の手を握っている彩に、手を離す様にアクションをしたのだが……彼女はうんともすんとも反応を示さなかった。それどころか、握っている力を強めて来ている始末だった。

 

 ……早く離れてくれないと、一向に話が進まないんだけどな……と思っていると。

 

 

「ダーリン」

「ち、ちーちゃ……うぐぁっ!?」

「キャッ!?」

 

 

 いきなり現れたちーちゃんに……右手を取られてそのままズンズンと連れられる始末になってしまった。彼女の様子を見ようと顔を覗き込んでみると、恐ろしい程に無表情になっていた為、身の危険すら感じてしまった。

 

 

「……あ、あの!」

「……ん?」

「な、名前を……聞かせてよ!」

 

 

 近くに停められている車に乗り込む直前、彩からそんな事を言われたので、僕はなけなしの力を使って返事をした。

 

 

「颯樹……盛谷 颯樹!『早く乗りなさい、ダーリン』ちょっと待ってよちーちゃん!」

 

 

 僕が彩にそう返事をした後、ちーちゃんに車の中へと押し込まれてしまった。そしてその場には……呆然とする彩と、己の仕事を忠実に熟す警察官だけが残された。

 

 

「盛谷 颯樹……くん……。また、会えるかな……?」




 今回はここまでです。如何でしたか?


 なにぶん久しぶりにパス病みを執筆したので、稚拙な箇所とかがあるかもしれませんが……楽しんで頂けたなら幸いです(次の更新時期は未定ですので、完成まで暫くお待ちください)。

 それでは次回に……待て、しかして希望せよ。


 最後に。この小説に高評価やお気に入り登録をして下さった方へ……作者の僕から心ばかりですが、感謝の気持ちを述べたいと思います。本当にありがとうございます。

 こんな不定期更新が続く、かなり気分屋な作者が書く作品ですが……コンゴトモ=ヨロシク。

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