新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんにちばんわ。咲野 皐月です。


 今回は少し息抜き感覚で、ちょこっと番外編をお届けしようと思います(例の如く複数話連載予定ですが)。この小説ではそこそこなお出番があるCPがメインとなっておりますので、最後までお楽しみ頂けますと幸いです。


 それでは、スタートです。

 ちなみに補足なのですが、この話の時間軸は本編よりかなり先に進んでおりますので、読む際はご注意ください。


小さな迷い子たちとのお泊まり会:①

「……はい? もう一度言ってくれる?」

 

 

 まだまだ寒い日が続き、世間の中高生は受験ムードでピリピリしてるであろうこの頃……僕は、花音からの呼び出しを受けて、隣に座っているちーちゃんと羽沢珈琲店を訪れていた。

 

 

 受験に関しての進捗報告なのだが、無事に三人とも第一志望の大学から合格通知を貰い、今は次なるステージへ進む為の準備期間に入っている。花音は慶鵬女子大学へ、ちーちゃんは四ツ葉女子大学、僕は洸星大学に進学が決定した。

 

 この話を聞いた当初こそ喜んだのだが……何やらちーちゃんが花音に耳打ちで話し込んでいた所を見かけ、僕の不安は未だ晴れずとなっているのだった。

 

 

 そんな中で迎えた貴重な休日……。

 

 僕は今現在、前と右から感じる期待の視線に悩まされる事となった。

 

 

「だからね……? 私と千聖ちゃんが颯樹くんの家に住み込んで、三人で一緒に住もうって話だよ?」

「うん、話の内容はわかったんだけど、詳細的な説明を求めても良いかな。まずは誰が言い出しっぺよ、家主の許可も無しに何話し進めてんの」

「私よ♪」

「……うん、何も驚かないよ。僕は何も驚かない」

 

 

 花音から持ち掛けられた提案を聞いた僕は、こんな事を言い出した張本人を探そうとしたのだが……その発端はやはりと言うべきか、隣で未だに微笑んでいらっしゃる若手女優様だ。

 

 

 僕自身は今の状況で満足してると言うのに、そこに花音やちーちゃんが住み込んで来たら、一人暮らしをしている意味を問われてしまう。更に言わせて貰うなら、自宅の中にはパスパレメンバーが置きっ放しにしている私物等がまだ残っているので、不用意に他人を招きづらいのだ。

 

 ちーちゃんは兎も角として、花音は……うん、本人がそのつもりなら否定はしないのだが、野郎の自宅に住み込もうなんて、よく決心したな……と心の中で思ってしまった。

 

 

「でも、そうなると大学に関してはどうする? 僕の家に住み込むのなら、多少の通学時間の誤差は覚悟して貰うけど」

「そこは大丈夫よ。花音とも話し合いをして、貴方になら全部任せて良いってなったもの」

「颯樹くんって確か、車の運転免許を取ったんだよね? だったら、通学の際の送迎とかには困らないから便利かな〜って。それに……颯樹くんと一緒に居られるの、すごく楽しみだし……」

 

 

 まさかの、二人揃って覚悟は出来てるらしい。

 

 ……この二人、特に花音に関しては初めましての時から結構踏み込んで来るなとは思っていたが、二人揃った時の行動力の高さには頭が上がらないな。

 

 

「……わかった。余ってる部屋が一つあるから、そこを共用スペースとして提供するよ」

「……っ、ありがとう颯樹くん!」

「良かったわね、花音♪ これでずっと一緒よ♡」

「えへへっ♪ 私の方こそ♪」

 

 

 二人の覚悟に根負けした僕は、自宅の二階にある空きスペースを共用の私室として提供する事にした。広さに関しては二人一緒に生活しても問題無いので、そのまま物置として使用するよりは、花音とちーちゃんに使って貰う方が有意義な使い方だろう。

 

 それに……地下には楽器を演奏出来るスタジオも完備している為、バンド練習を行なうには持ってこいだろう。

 

 

「ちなみに……僕の家に住み込むと言う事は、休日もそこに居るつもり?」

「いいえ、それに関しては……新しく部屋を借りてルームシェアをしようと思うの。良さそうな物件があったから、休日は息抜きにそこでお野菜や花を自家栽培したり、料理をしたり。三人とも自宅通いが出来るとは言え、帰って寝るだけと言うのも味気無いと思って」

「うん。ちなみにそこも防音設備は確りしているし、セキュリティ面もバッチリ整ってて安心だから……」

 

 

 ……なるほどね。そこまで考えてあるなら、今後の心配は要らなさそうだ。

 

 

「わかった。じゃあそのプランで手を打とう。僕の事に関しては気にしないで、二人で思う存分『何言ってるの?』……え?」

 

 

 僕がそう言葉を続けている最中、突如として花音から続きを遮られてしまった。何か不味い事でも言ったかと思い、二人の顔色を伺ったのだが……その表情は、いつぞやの聖夜に見せたあの表情。それに加え、二人とも視線が獰猛な女豹と化してしまっていた。

 

 

 ……え? なんか、地雷……踏んじゃいました?

 

 

「そのルームシェアの件だけど、当然颯樹くんも一緒にするんだよ?」

「……はい?」

「私たちだけでこんな良い話、独占する事なんて絶対にできないわ……だから、貴方も一緒に私たちとルームシェアするのよ♪ もちろん、家賃は割り勘で済ませるし、貴方は私のマネージャーなのだから、行動を共にするのは当たり前でしょう?」

 

 

 ……うぐっ、それを言われると何も言えない……。

 

 

「それに、私と花音は貴方と生涯を共にする覚悟はもう出来ている……なら、遅かれ早かれこうするべきだと私は思ったのよ。どうかしら?」

「わ、私は……颯樹くんが迷惑じゃなければ、それが良いかな。せっかく仲良くなって、ここまで一緒に頑張って来たのに、大学生になって突然別々になるなんて、すごく寂しいから……」

 

 

 こうもハッキリ言われると、どう返事を返したら良いのか反応に困るな……しかもちーちゃんが最初に言った事と言うのは、あまり無闇に他言しない様にって条件を念頭に置いて決めたものだったんだけど。

 

 

 ……なら、僕もここらで腹を括ろう。

 

 世間一般の男子高校生なら、彼女たちの様な見目麗しい美少女から同棲のお誘いをかけられたら、間違い無く首を縦に振るだろう。それに、確か諺の中に『据え膳食わぬは男の恥』ともあったはずなので、ここでこのお誘いを断れば、周囲からのバッシング待ったナシだろう。

 

 

 と、なったのならばやる事は一つかな。

 

 

「……正直、今でも実感湧かないし、多分こんな経験は来世を生きたとしても再びあるかどうか分からない……むしろ、無い確率の方が高いだろう」

「……颯樹……」

「……颯樹くん……」

「……うん。こんな僕で良かったら、喜んでその提案を受けさせて貰うよ」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、ちーちゃんは花音の隣まで直ぐに移動して彼女の両手を取って喜び始めた。それを見た花音の方はと言うと、少し苦笑いこそしていたのだが、次第に笑顔が出てきている辺り、ちーちゃんと同じ気持ちなのだと察せられた。

 

 

 ……あ、このハーブティー美味しい。

 

 

「それじゃあ、善は急げと言う事で……早速ダーリンの家に荷物を運び込みましょ♪ お互いにバンドにお仕事にとあるから、目安は仮卒業期間中の一週間。その間に運び込んでしまえば、早ければ3月末には共同生活が始められるはずよ♪」

「うん♪ えへへっ、颯樹くんの家で三人で生活……ちょっとドキドキするけど、楽しみだなっ」

「そうね。それと、花嫁修業の方は共同生活をして行く間にちょっとずつ、少しずつ……やって行きましょう? ふふっ、今から楽しみだわ♡」

 

 

 あー、何か言ってるけど聞こえないフリしとこ。

 

 全く……こんな簡単にポンポンと話が進むなんて思いもしないし、何より返事を待たせてる人が居るんだよ? 本来その予定を今日は組んでたけど、緊急で話したいからと言われて来たから、埋め合わせも近日中にしないと……。

 

 

「ん、L○NE……あっ」

 

 

 僕がそう思いながらもメッセージアプリを開くと、そこには可愛らしい絵文字と一緒にこんな一文が。

 

 

『颯樹くんっ、今日は用事があって仕方なく予定を変更したけど……次のデートの時には私だけ構ってね♡ あっ、もちろん、約束を不意にした分だけお泊まりするって罰則も、頭の中に入れといてねっ。それじゃあ、颯樹くんの家で帰りを待ってるから……道中気をつけて帰って来てね♡』

 

 

 ……おいおい、無茶振りが過ぎるぞこんなの……。

 

 しかも、今の会話を何処かで聞いてるとか、そんな事無いよな……うん、多分きっと無いはず。いくら何でもそんな事は無い、たぶん。

 

 

「ねぇ、ダーリン」

「……どしたの、ちーちゃん」

「貴方さえ良ければにはなるのだけれど、私と花音を今晩泊めてくれないかしら? これからずっと住まう事になる家ですもの……ここから少しずつ慣らして行こうと思うの、どうかしら♪」

 

 

 ……え、本気言ってる?

 

 ちーちゃんはもうその気満々だし、花音もなんかお泊まりしたそうにソワソワしてるし……まあ、お泊まりならそこまで気にする必要も無いのかな、と思うんだけど!

 

 

 今家に帰ったらろくな事に……あっ。

 

 

「あら、何か不都合な事でもあるのかしら?」

「い、いやー、何も……無いよ?」

「颯樹くん、汗がすごいけど大丈夫……?」

「大丈夫だよ、花音。大丈夫……大丈夫だから」

 

 

 不自然な挙動をしてるのが目に入ったのか、ちーちゃんが思いっきり詰め寄ってそう聞いてきた。それを見た花音も心配してくれてるけど、此方としてはマジでのっぴきならない状況になってる気がしないでもなかったりする。

 

 それに、今この状態で二人を家に入れる訳には行かないんだよな……。もし入れてしまえば、それこそとんでもない事に……!

 

 

「花音」

「う、うんっ。颯樹くん、少しお膝の上を失礼するねっ」

 

 

 そんな事を考えていると、先程までちーちゃんが居た所に彼女と入れ替わる形で花音が座って来て、次第に僕の方まですり寄ってきた……てか、ええっ!? なんで膝の上ぇ!?

 

 

「な、何やってんのさ花音!?!?!?!?!?!?」

「颯樹くん……」

「え、な、何……」

「私たちと一緒にお泊まりするの……嫌なのっ?」

 

 

 うわっ、わかっててやってるよこの子!

 

 僕が涙目と上目遣いに弱い事を知っててやってる! そしてそれを仕込んだのはちーちゃんだよね……相変わらず、やる事成す事全部がよく計算されてるよ……流石としか言えないよホント。

 

 

「い、嫌じゃ……無いけど……」

「えへへっ、そうだよねっ♡それが聞けてよかったぁ♪」

 

 

 花音のいつもの仕草に負けた僕は、唐突に決められたお泊まり会を自分の自宅で行う事にした。こっちに帰って来てから、結構な頻度で花音とかちーちゃんとか、色々泊まりに来てる気がするんだよな……気の所為じゃなければ。

 

 

 あー、どうしよう……今家には彩が居るんだよな……。

 

 そんな状況で花音とちーちゃんをお泊まりさせるのは、確実に良くない事が起こりそうで、もう鳥肌が立ちそうなくらい怖いんだけどね。何とか穏便に済む様にしないと。

 

 

「それじゃあ、今晩はダーリンの家でお泊まりで決まりね♪」

「うんっ♪ じゃあ私は帰ったら先ずお泊まりの準備をしようかな。それが終わってから向かうね♡」

「あー、待って。何度かお泊まりしてるとは言えど、花音って無事に辿り着ける保証はある?」

 

 

 僕がそう突っ込むと、花音はわかりやすいくらいに肩を落としてしまった。それは自分が方向音痴だって事を理解してる故の事だけれど、どうもその様子を見てると罪悪感湧くんだよね……。

 

 もう、あんな事を言った手前でこんな事に罪悪感湧いてても仕方ない節はあるんだけど。どうしても心がやっぱり抉れる……。

 

 

「僕も付き添うよ。待つのには慣れてるし、道中の警護だってできるしね」

「なら、私もお供しようかしら♪ ダーリンの家とは隣同士だから、いつでもお泊まりの準備をする事ができるわよ♡」

「あはは……。それでどうかな、花音」

「うんっ♪ 千聖ちゃんや颯樹くんがそれで良いなら♪」

 

 

 ……よし、これで話は纏まったかな。

 

 今晩の食事は花音やちーちゃんも来るし、いつもより多めに用意しないとね。それに、布団も幾つか余分に用意しないといけないし、やる事が山積状態だよ。

 

 

 ただ、そうなると……僕の家で待っているであろう彩を一体どうした物か、と言うのが、一番の悩みなんだけど。

 

 

「颯樹くんっ」

「ん、花音。どうかしたの?」

「私の寝る時の布団なんだけど……颯樹くんと一緒のお布団がいいな。千聖ちゃんとも話し合いは済ませてるし、颯樹くんと一緒に寝たいな……♪」

 

 

 あれ、もしかして気付かれてた?

 

 

「……わかった。ちーちゃんとも話をしてるなら、断る理由は無いかな。それに、これからの事を考えたら慣れておく方が良いからね」

「ふふっ、ありがとう♪」

「ははは……。お易い御用だよ」

 

 

 そんな事を話しながら、僕たち三人は注文していた紅茶やケーキに舌鼓を打っていた。そしてそのお会計も済ませて、花音の家を経由する形で僕の自宅へと向かう事になった。

 

 

 ……ほんと、こんな形になろうとはね……。

 

 人生生きてたら何があるか分からない、とは言うけど、色々な事が有りすぎなのでは……と心の中で思う事になってしまったのだった。




 今回はここまでです。如何でしたか?


 次の更新も成る可く遅くならない様に頑張りたいと思いますので、気長にお待ち下さいませm(_ _)m


 それではまた次回の更新にて。
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