新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)   作:咲野 皐月

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 本編の更新、誠に遅くなって申し訳ありませんでしたぁ!


 今回は前回の続きとなりますので、最後まで見て頂けたら嬉しいです。


 それでは本編スタートです。


第七話

「ま、待ってよ日菜! 引っ張らないでって!」

「さっくんが遅いのがいけないんだよー♪ ほら早く早くー♪」

 

 

 僕は日菜に腕を引っ張られながら、街中を走り回っていた。……そして肝心の行き先に関しては、まだ聞き出せていない上に、彼女の走る速さが速すぎるため……全速力で走るのが精一杯だった。

 

 

「もー、さっくん体力無さすぎるよ〜。女子のあたしに負けるなんて情けないなー」

「こ、これでもバレーボールや……弓道とか、してたんだぞ……! それでも追いつけないって、どんな体力してんだよ……!」

「だらしなーい♪ ほら、早く早くー♪」

 

 

 そう言われて僕は、日菜に合わせて走るスピードを上げていく。……そうして走っていると、ある建物が目に入った。

 

 

「はあっ……はあっ……ここは……事務所……?」

「そうだよ〜! ほらほら、早く! 社長さんには話を通してあるから〜!」

「ま、待てよ……。少し休ませ……」

 

 

 そんな僕の言葉も聞かず、日菜は事務所の中に入って行った。息を切らしながら僕が中に入ると……。

 

 

「ダーリン?!」

「はあっ……、はあっ……。そ、その声は……ち、ちーちゃん……? ぜぇ……」

「大丈夫!?!? すぐにお水を持って来るわ!」

「日菜がいきなり走るから、あまりついていけなかったんだよ……。ぜぇ……」

 

 

 そうして僕はちーちゃんからのアシストを受け、何とか一息つくことが出来た。見た所……ここは、会議室? 

 

 

「具合はどうかしら?」

「なんとか落ち着いたよ……日菜は本当に時と場合を考えて行動してくれ……」

「まだ入所して少ししか経ってないもの……私から強く言い聞かせておくわね『おや、お取り込み中かね?』あ、社長。彼が件の人物です」

「キミが千聖くんの言っていた盛谷 颯樹くんだね。私はここの社長だ」

 

 

 僕は社長と呼ばれた人に自己紹介をして、互いに握手を交わした。そして向かい合って座る事になり、ちーちゃんは僕の隣で話を聞くみたいだ。

 

 

「それで、社長さんが僕になんの御用でしょうか?」

「うむ。……単刀直入に言おう。キミにこの事務所に所属して欲しいのだ」

「僕がこの事務所に?」

「そうだ」

 

 

 社長さんはそう言うと、僕に所属して欲しい理由などを述べて行った。

 

 

 話を詳しく聞いてみると、どうやらちーちゃんからの猛プッシュが事前にあったらしく、婚約発表の手引きをしたのも社長だと言うのだ。

 

 その発表を行なった翌日から……必死になって何処の事務所も猫の手を借りたいくらいに捜索をしていたのだと。そして帰って来たタイミングで彼女からの連絡を受け、お話……基、スカウトするのが今日のこの時間になったのだと言う。

 

 

「非常にありがたいお話なのですが、本当にこの事務所に所属してよろしいのでしょうか?」

「構わないよ。むしろ、こちらとしては願ったり叶ったりだ。千聖くんの推薦ともあれば、素質は十分だと見込めるからな」

「……わかりました。その話、お受けします。これからよろしくお願い致します」

「よし。では早速だが『し、失礼しま〜す!』おぉ、丸山くんか。ちょうど良い所に来てくれた」

「彩? どうしたんだ」

 

 

 いきなり会議室に入ってきたのは、何と彩だった。以前見た時とは装いが変わっていて、セミロングの髪をツインテールにしており、上着は黄色を基調としたハートがプリントされたTシャツで、下はピンクの長ズボンだった。

 

 

「丸山くんも来た所で、キミに幾つか頼まれて欲しい事がある」

「頼まれてほしいこと、ですか。それは?」

「……実は、丸山くんと千聖くんのマネージャーを頼まれてはくれないか」

「ちーちゃん……千聖と彩の? それは大丈夫ですが……どうしてその二人なんですか?」

 

 

 僕がその理由を社長に聞いてみると、少ししてこんな答えが返ってきた。

 

 

「先も言ったと思うが、この事務所には千聖くんの推薦で入った。であるならば、それに見合った仕事と言うのをして欲しいのだよ。丸山くんに関しては、面白い事を聞いたのでな」

「面白い事……?」

「キミ……暴漢二人の魔の手から、丸山くんを助けたそうじゃないか。その様が格好良かったと彼女から聞いたのだ」

 

 

 その言葉を聞いて、僕の脳裏に昨日起こった光景が思い起こされた。

 

 確かにあれは……彩と僕が初めて出会ったキッカケになったし、誰かに話したくなる気持ちも分からんでもないんだけど……よりにもよってそれを話すかなぁ。

 

 

「えへへ……つい喋っちゃった」

「……まったく。わかりました。その話、お受けします」

「ありがとう。次に……キミには、今から発足される新ユニットの方でもマネージャー業務に着いて欲しい」

「新ユニット? 一体どんなグループなんですか?」

 

 

 次に頼まれたのは「今から発足されるユニットのマネージャーをして欲しい」と言う事だった。

 

 

 何だか『マネージャー』と聞くと、芸能界では誰かの担当に着いてスケジュールなどをビッシリ管理している人……とか、運動部ではよくあった方式だけど、部のメンバー全体を支える存在で、主に主将や監督などから指示された事を熟す、影の立役者みたいなそんな感じがするね。

 

 そう思う僕を他所に、社長はこの提案をした経緯を説明し始めた。

 

 

「昨今、世間ではガールズバンドなる物が流行っているそうでは無いか。それを聞いた我々は、我が事務所でもガールズバンドを発足させる事にしたのだ」

「ただし、ガールズバンドと一括りに言っても……私たちは『アイドル』の一面を持っているわ」

「つまり『事務所発のアイドルバンド』、と言った感じなんですね。それで、肝心のメンバーは?」

「それなんだが、今ここに居るマネージャーであるキミを含めた、千聖くんと丸山くんで三人……レッスンスタジオの方にあと三人居る。それで全員だよ」

 

 

 つまりそのアイドルバンドはメンバーが5人居て、そのうちの二人がここに居る……そして後の三人は先にスタジオにて待機している、と。

 

 早い話、僕は今ここに居る二人の他にも、バンド全体のマネージャーも務めないといけない……というわけか。

 

 

「なるほど。今お会い出来ますか?」

「ああ、可能だ。スタジオの方に案内しよう。二人もついてきてくれたまえ」

「はい、わかりました。ダーリン、行きましょう♪」

「さ! 颯樹くんも行こっ♪」

 

 

 僕は社長とちーちゃん、彩に連れられてレッスンスタジオとやらに足を進め……そしてスタジオの前の扉に来ると、僕は意を決してドアを開けた。

 

 

「失礼しま『さっく〜ん!』ぐほぁ!?」

 

 

 なんかいきなり体当たりされたんだが……。しかもどてっぱらに来たから、本当に痛い……。

 

 

「もう、私のダーリンに向かってそれは失礼じゃないのかしら? 日菜ちゃん」

「えー? だってるんっ♪て来たんだも〜ん♪」

「ひ、日菜さん……お気持ちは察しますが、いきなりは良くないかと思いますよ?」

「むー」

 

 

 そう言って日菜は僕から離れてくれた。離れる前に頬を膨らませていた所を見るに、まだまだし足りないと言うのはすぐに察する事が出来た。

 

 その直後に先程仲裁に入ってくれた人が、僕の前に歩いて来た。茶髪をショートカットにしていて、眼鏡をかけた人だ。

 

 

「あ、貴方がジブンたちのマネージャーさんで間違い無いですか?」

「ああ。僕は盛谷 颯樹だよ。よろしく」

「はい! ジブン、大和(やまと) 麻弥(まや)と言います。よろしくお願いします」

「麻弥だね。よろしく。そちらの銀髪の子もアイドルバンドのメンバー?」

 

 

 僕が麻弥と握手を交わした後にそう聞いてみると、その子は聞いてて元気になる様な声で挨拶をして来た。

 

 

「はい! 若宮(わかみや) イヴと言います! どうぞよろしくお願いします!」

「イヴだな。もしかして、イヴは日本人と外国人のハーフだったり?」

「ええ、その通りよダーリン。彼女は日本とフィンランドのハーフね。留学生……と言えば話がわかるはずよ」

「そうだったのか。フィンランドから日本まではるばるご苦労さま。これからよろしく」

 

 

 そうして僕はイヴとも握手を交わし、自己紹介を終える事が出来た。

 

 

「さて、顔合わせも済んだ所で……そろそろ本題に入ろうか」

「僕がこのアイドルバンドのマネージャー、ということですよね? 他に何か?」

「ダーリン、まだ分かっていない事が有るわよ」

「他に何かあったか?」

 

 

 僕がちーちゃんにそう聞き返すと、その傍に居た社長から返答が聞こえて来た。

 

 

「君たちの役割とバンド名……そして、全体を纏めるリーダーの指名だよ」

 

 

 ……通常、活動する上で役割やバンド名などは非常に重要な意味合いを持っていて、特に今挙げた2つはチームの言わば『魂』と言う立ち位置にある。

 

 それが決まっていない、と言う事は……活動して行く上で大きな支障を来たす事になってしまうのだ。

 

 

「……まだ決まっていなかったんですね。それにリーダーもですか……」

「何を聞いていたのかね……キミにはマネージャー業務を担当するアイドルと、バンドを組むと言う事しか伝えてないはずだが」

「……つまり、僕たちにはこれからバンドの名前とリーダーを決めてほしいということですか?」

 

 

 僕が社長の言葉にそう答えると、それには否定の言葉で返事が返ってきた。

 

 

「いや、それはこちらの方で考えている。バンド名は『Pastel*Palettes』……そして、リーダーは丸山くんだ」

「ふぇっ!? わ、私ですか!?」

「うむ。そして丸山くんにはボーカルを、千聖くんにはベース、氷川くんはギター、大和くんはドラム……若宮くんはキーボードをお願いしたい」

「なるほど……ちなみに経験者は?」

 

 

 僕が一通り聞いてみると、ゆっくりと手が挙がった者が一名居た。……麻弥だ。

 

 

「あ、それはジブンですね。ここに来る前はアルバイトでスタジオミュージシャンをしてたんですよ」

「なら麻弥は問題ないとして……他の4人は?」

『…………』

 

 

 見ての通り、バンド経験無し。しかもギター担当のオーディションは一昨日行なわれたばかりで、日菜が一回で合格したくらいな物との事で。

 

 

「彩は……元々研究生だった所を、今回の抜擢って訳か」

「うん……私にできるかな……」

「始めから諦めてたら何も出来ない。僕もできる限りのサポートをするから、一緒に頑張って行こう」

「……! うん、私たち頑張るよ!」

「……次にだ。唐突で大変申し訳無いが、我々の方で準備を進めさせてもらった」

 

 

 今日は驚く事が多いな……メモを取りながら話を聞いてみようか。

 

 

「アイドルバンドというからには……もしかして、ライブの準備ですか? まだ練習もほとんどしてないというのに。日程の方は決まってるんですか?」

「急で申し訳ないが、お披露目ライブの日は今日から二週間後だ」

「2週間後ですか……今から練習したとしても間に合うかどうか……」

「そこに関しては策を考えている。音源はプロのバンドの物を流そうかと案がでている」

 

 

 社長の言葉を聞いたこの場の全員が、驚愕に満ちた物になった。それはそうだろう。みんなは『アイドルバンド』として集められたにも関わらず……求められている事は『アテ振りで誤魔化してくれ』と取られてもおかしくない事だからだ。

 

 

「……それで本当にいいんですか? 自分たちの練習の成果を発揮できなくて何がバンドですか」

「お披露目ライブで失敗は許されない。どうか、わかって欲しい『なら、僕から代案を出します。少々荒療治にはなりますが』……ほう、何かね?」

 

 

 僕は少し目を閉じて、息を落ち着けた。そしてみんなの目を見てこう伝えた。

 

 

「今から二週間後のライブの日まで……僕の方で練習場所を提供します。そしてお披露目ライブの日を迎えるまで、時間がある時は全て練習に当てようと考えてます」

「へぇー。所謂スパルタって事かな?」

「ええ。そうでもしないと、間に合いませんよ。大丈夫です。今大変な思いをすれば、今後はグッと楽になります」

 

 

 僕の言葉を聞いた社長は、腕を組みながら暫しの思慮に耽っていた。自分が提案した事をそのまま押し通すか、僕の意見も考慮して考えるべきか……それを見定めているのかな、と僕は思う事が出来た。

 

 そして、少しして。

 

 

「ふむ……確かにマネージャーのキミが言うのならそうした方がいいのだろうね。ただし、成功しなかった場合は……」

「ええ。それ相応の処罰は受けます。そうなって当然の事をしてますし、僕は彼女たちが一体どこまで出来るのかを見てみたいんです」

 

 

 僕は社長に自分の想いを伝えた。それを聞いた社長の眼がすぅっと細くなったが……僕は臆せずに返事を待つ事にした。

 

 

 彼女たちにとっては初めてのライブ……当然演奏やダンスのミスは許されないし、やっても居ないのに初めから匙を投げる様な事など……馬鹿馬鹿しいにも程がある。もしそれで仮に成功したとしても、残るのは虚無感と喪失感……更に言うなら、時間が経過する毎に分かっていく大きな穴。

 

 ならば……全員がどこまで出来るのかをこの二週間で見定めつつ、ライブの準備を進めるしかないと思ったのだ。

 

 

 そして時間も経ち、社長がゆっくりと口を開いた。

 

 

「……わかった。キミの話を飲もう」

「ありがとうございます。これから練習の時間に当てますので今日はこれで失礼します」

「では、二週間後を楽しみにしている。……期待してるよ、颯樹くん」

「わかっています。それじゃあ練習を始めようか」

『はい!』

 

 

 僕の一声を受けて、練習が始まった。

 

 まだ楽器は不慣れなメンバーが多い様で、軽くやっていたちーちゃんと麻弥が先行する形となり、練習は行われて行った。

 

 

「確かに動きがぎこちないな。麻弥と千聖は慣れてるからいいだろうけど……彩とイヴ、日菜がまだまだだな」

「うっ」

「誰でも最初はミスがある。そこからミスをどれだけ少なくできるかが大事だからね」

「はい! ミスなくライブを成功させられるように頑張ります!」

 

 

 気になった所を彩に指摘したのだが、彼女の答える様子は緊張している様子が丸分かりなくらいだった。その様はアイドルバンドのリーダーとして抜擢されたと言われても、殆どの人が首を横に振りそうなものだ。

 

 

「……緊張のし過ぎもダメなのだけど……この先が思いやられるわ……」

「ですね……。初ライブもそんなに遠いわけでもありませんし……」

「えー? あたしたちならよゆーじゃなーい?」

「日菜ちゃんは分かってないわね。初めてのライブがどれだけ大変か……」

「(まあ、日菜ならそう言うと思ったけどね……)」

 

 

 ボソリと心配事を口にするちーちゃんと麻弥に、あっけらかんとした様子で日菜がそう答えたものだから……この先の事が一気に心配になってしまった。

 

 何事も無く……順調に、みんなのパスパレとしてのお披露目ライブが終わってくれたら、僕としては大満足なのだが。

 

 

「さあ、私たちには時間が無いわ。練習しましょう」

「はい! 今言われた箇所を重点的にこなして! 分からないなら聞いても良いから努力する……それを忘れないで!」

 

 

 それから僕たちは休憩時間以外を練習に全て費やし、全員が疲れを感じるまで続けたのだった。




 今回はここまでです。如何でしたか?


 主人公が引越しを済ませて2日目の内容が、次回で終わりとなる予定です。更新まで今しばらくお待ちくださいませ。


 それでは次回に……待て、しかして希望せよ。

 今回も感想を是非。


 いつもの様に高評価やお気に入り登録の程、お待ちしております。


【追記】

 一日遅れになりますが、7月17日はRAISE A SUILENのギター担当でPoppin'Partyのファンである空色少女……朝日 六花ちゃん(ロック)の誕生日です!お誕生日おめでとうございます!
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