新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.) 作:咲野 皐月
そして……遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。今年もどうかよろしくお願いしますm(_ _)m
そんな挨拶もそこそこに、一月も終わりに近づいておりますが、新年最初の投稿をしたいと思います。今回から他作者様のオリキャラをレギュラーにお迎え致しまして、お話は進んで参りますので把握の程をお願い致します。
それではスタートです。
アイドルバンド『Pastel*Palettes』の全体レッスンが開始されて、早一時間半が経過しようとしていた。
メンバー個々の様子を見てみると、まだまだ課題も残るし発展途上な一面もあるのだが……練習に取り組む体勢としては、最初にしては上々とも取れる様だった。
「彩、力み過ぎないで! 音程は確り取れてるから、あとは一曲分歌っても息切れしない様にバランスを調整!」
「は、はい!」
「日菜は少しテンポが走り過ぎだ! もっと周りの調子に合わせて!」
「リョーかいっ♪」
マネージャーとして任命された僕は、五人の演奏している様子を見ながら、気になった所を逐一口頭で伝えていた。麻弥は元々スタジオミュージシャンとしての経験があったので、メンバー内では彩がコケた時にサポートする様にと伝えている。
そして、練習開始から二時間後。
「はい、今日はここまで。お疲れ様でした!」
僕が両手を一回叩いたのを合図に、五人の緊張感が解けてゆったりした物になった。肩で息をしている者もチラホラ居るが、まだ最初の全体練習なので無理も無いのかな……と個人的に思っていた。
そしてメンバー全員に軽く連絡事項と、今後の予定を伝えた所で今日はお開きにする事にした。個人の家庭の事情とかもあるので、ここに関してはキッチリしなければ。
「あ、あのぉ……すみません」
「ん? どうかしたの、麻弥」
「えっと……ですね。颯樹さんはジブンたちのマネージャーさん、なんですよね?」
「うん、そうなるね」
僕は唐突に麻弥から投げ掛けられた質問に対して、首を縦に振る事で返す事にした。事実……僕が担うのは彩とちーちゃんの他にも、パスパレ全体のマネージャー業務を担う事になるのだ。
「そ、その……もし颯樹さんに差し支えが無ければ、なんですが……連絡先を教えて頂きたいです」
「それって、何かあった時用の連絡手段として?」
「あ、はい。そのつもりです」
「……わかった、交換しようか。もうこの際だから、全員分受け取っておこうかな。そうすれば手間も掛からないから良いよね」
麻弥の提案を承諾した僕は、彼女との連絡先を交換した後に……イヴと日菜と彩の連絡先を受け取る事になった。ただ交換した際に、日菜と彩の二人の表情がかなり嬉々としていたが、それに関してはあまり突っ込まない事にした。
そのやり取りまで済ませた後、麻弥とイヴがレッスン室を先に退出し、残りは僕と彩とちーちゃんと日菜の4人だけとなったのだが。
「さて、僕たちも帰ろっか」
「そうだねー。あたしお腹空いちゃった『ちょっと待ちなさい、日菜ちゃん』ほぇ?」
「わ、私はお先に……『彩ちゃんもよ』はぁい」
背中にギターケースを背負って、部屋を退出しようとした日菜をちーちゃんが呼び止めたのだった。それを見た彩が空かさず出ようとしたが、それも彼女の短い一言によって制止される事になった。
呼び止めた張本人の顔はと言うと、眉間に皺を寄せて居る状態で、何処か不機嫌な事があったのだと、この時に察する事が出来た。
「まずは日菜ちゃん」
「なぁに、千聖ちゃん」
「私とダーリンが入って来るや否や、急にダーリンに向かって抱き着くのは無しなんじゃないかしら? いきなりされたもんだからビックリしていたわよ」
ちーちゃんがまず聞いて来たのは、日菜の行動についてだ。あの時はまだ怒る時では無い……と思っていた様で、彼女なりに自制していたのだと聞く事が出来た。
「えー? あたしとさっくんは幼馴染だしー、別にこれくらい普通じゃなーい?」
「そんな理由で罷り通ると思っていたら大間違いよ。もしこれで万が一にもダーリンが怪我でもしたら、どう責任を取ってくれるのかしらね?」
「なんでなんで〜? あたしはさっくんに甘えちゃいけないの〜? それって千聖ちゃんが決める事なの〜?」
「何でも何も無いわよ。彼はビックリしたの。それくらいは分かっていると思ったのだけれど?」
まあ……確かにあの行動にはビックリしたし、彼女の言い分も分からないでは無いのだが……如何せん、日菜の気持ちも分かってしまう自分が居たのも事実だ。
それは何もこの時だけに限らず、日中に花咲川学園の中庭で紗夜と二人っきりで話した時も……彼女は僕の帰郷を待っていたと言う話が聞けた。
そう考えてしまえば、日菜の行動にも自然と納得がいってしまったのだ。だからこそ、どちらをフォローするかの線引きが未だに付かないのである。
「まあまあ、二人とも落ち着いて。話の内容は聞いてるからわかるけど……そろそろ、ここの鍵を閉めるよ?」
「……そうね。休憩所があるから、着替えが終わったらそっちに移動して話しましょうか」
「はぁい。彩ちゃん行くよ〜」
「う、うん」
このままここに居たら、ずっと二人が話し込みそうだったので、僕は催促を掛けて移動させる事にした。それを聞いた彼女たちはと言うと、場所を変えてまたやろうとしているのだとか。……勘弁して下さいってば。
そうしてレッスン室を後にした僕たちは、帰宅の為にお互いの更衣室で着替えを済ませた後、その近くにあった休憩所へと足を踏み入れる事にした。
そこはテーブルが三つほど置かれていて……その両端には自動販売機や、お店で見る専門的な物では無いのだが、コーヒーサーバーなども存在していた。正しく『休憩する為の場所なのだ』と言う感じだった。
「……少し、飲み物を買おうか。一人一本ね」
「じゃあ、私は紅茶をお願いしようかしら」
「私はジュースが欲しいな」
「あたしも同じで〜」
三人からのリクエストを聞いた僕は、自分の分も合わせて四本自販機で買う事にした。彩と日菜の性格を考えると、甘い系の物を欲しがると思ったので、みかんの果肉が入っている(と言っても粒々だけど)缶ジュースを2本、ちーちゃんは紅茶と言う話なので、度々CMにも出て来る有名な物でレモンティーを選んだ。
価格は1本130円かそこら辺だったので、これくらいであるならば、たま〜に奢る事はできるのかな……と心の中で思う事になった。
「はい、頼まれてた飲み物。各々取ってね」
「ええ。ありがとう、ダーリン♪」
「ありがとう、颯樹くん! ……って、日菜ちゃんがもう飲み始めてる」
そんなやり取りを眺めながらも、話は先程の話題へと入る事になった。僕は先程購入したカフェラテを片手に、話の内容を聞く事にした。
話の内容としては、先程レッスン室を後にする前に話していた物と概ね変わりが無く……二人の熾烈なる口論を、彩がしどろもどろでわたわたしながら聞くと言う、何ともカオス地味た光景だった。
まあ、確かに……日菜のやっている事は、確実に褒められたものでは無いので、本人にはそこをキチッと正してもらう必要があるが、それを言ってしまったらちーちゃんも似たようなモノなので……お互いがお互いの傷口に塩を塗る様な行動と言っても、何ら不自然じゃないのだ。
「どうしたもんかなぁ……ん? はい」
『こんな時間にごめんなさい、颯樹。少し聞きたい事があるのだけれど……今、時間良いかしら』
「紗夜? うん、良いよ」
僕はその場に居た彩に伝言をし、休憩所の入口付近で紗夜からの電話に応答する事にした。
「で、どうしたの?」
『えっと……日菜はそこに居るかしら? もう日も沈み始めてるし、そろそろ帰宅する様に伝えたいのだけれど』
「日菜? ……あー、それならちょっとだけタイミングが悪かったかもしれないよ」
『……あの子ったら、また人に迷惑をかけて……』
そんな呆れた声が通話口の向こうから聞こえると、今度は少し威圧が感じられる様な声色で続けて来た。この状態になってしまった紗夜は、梃子でも自分の考えを曲げる事をしないので、僕でも少々手を焼く事が多いのだ。
『……日菜を出して貰えるかしら。あの子には少しキツめに話をしておきたいのだけれど』
「ちなみに、断ったら『私がそれを許すはずが無いでしょう?』……了解しました」
僕は通話口の向こうから伝わる紗夜の威圧に負け、今はお取り込み中であろう日菜へと話を通す事にした。その様を聞いた日菜はと言うと、顔をこれでもかと青ざめさせていたため、余程キツく怒られたのだと後に察する事になった。
「……はい。まあ……お互いの言い分もわかったし、治さないといけない所もわかった……それだけで充分なんじゃないの?」
「そうね。私も少し言い過ぎたわ」
「はーい」
そして暫く時間も経って、日菜とちーちゃんの言い合いは何とか治める事に成功した。治まった……と言うよりも、この場合だと『まだ煮え切らない所こそあるけど、これ以上やっても時間の無駄』と思っているのだろうが。
ちなみに彩はと言うと、終始苦笑いをしていただけであった様で、余計な爆弾を投下する事はしなかったみたいだ。そこら辺が確り出来てるだけでも、僕としては満足である。
「さて、時間も遅いしそろそろ帰ろっか」
「そうね。一緒に帰りましょ、ダーリン『えー、何言ってるの〜?』……はい?」
「さっくん、あたしに付いて来て!」
「え、ちょっと日菜!?」
「い・い・か・ら、さっさと来るの〜!」
一緒に帰ろうと誘って来たちーちゃんの間に割って入ったかと思えば、日菜は唐突にも僕の右手を掴んで走り出そうとしていた。その行動の早さには近くに居たちーちゃんだけでは無く、彩ですらもびっくりした様で。
しかも、日菜の右手を握る力が強い事もあり、容易には振り解く事が出来ないのも事実だった。
「さ、早く行くよ〜! おにーちゃんやおねーちゃんも待ちくたびれちゃってるみたいだし!」
「ちょ、いつからそんな話に『それじゃあレッツゴー!』だから人の話を聞けっての!」
僕の苦し紛れの制止も聞かず、日菜は力任せに僕を連れて自身の家へと走って行った。そしてその場に残ったのは、目の前の急展開に状況が上手く呑み込めていない彩とちーちゃんの二人だけとなってしまったのだった。
そしてこれを受けて、二人の中での共通認識として出来上がった物があったのは言うまでも無かった。
『絶対に日菜ちゃんだけには、颯樹くん(ダーリン)を任せては行けない……!』
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「着いたよ〜!」
「ひ、日菜……少し、休ませて……割とこっちは全力で走ったから、息切れが酷いんだけど……」
「そんなの知〜らないよ〜だ!」
芸能事務所にて、パスパレの初めてのレッスンが終わって数十分後……僕は日菜に連れられて、とあるマンションへと来ていた。僕の記憶が確かならば、ここに日菜の家があったはずだが。
そう考えながらも彼女の後を追い、階段を使ってその場所まで向かう事になった。
普段から運動などは欠かさずにやっているが、ここまで力の差を感じる場面は早々無かった。むしろ、男子と女子では基本的な体力の付き方が違うので、日菜よりも劣ると言う事が想像出来なかった。
だからかもしれないが、駆け足で登って息があがり掛けている僕と、ケロッとした顔で此方を見上げている日菜を見ていると、一種の情けなさすら見えてしまうのが事実だ。
そんな事知った事では無いと言った様子の日菜は、一目散に階段から少し奥側にあるドアの前まで行くと、ポケットから鍵を出して鍵穴に差し込んで回した。
そして開錠音が聞こえると同時に、ドアノブを捻りながら中に入ってこう言い放った。
「おねーちゃん、 おにーちゃんただいまー! さっくん連れてきたよー!」
「日菜、靴は揃えてって……お邪魔します」
自分の家に帰って来た事が余程嬉しいのか、日菜は靴を玄関で脱ぎ捨ててしまう始末だ。それを嗜めながら彼女の靴を並べて僕も挨拶をすると、中から紗夜と一人の青年が姿を見せた。
そんな中での次の一言は、その青年から日菜に向けて掛けられる事になった。
「帰ってきて早々元気ですね……で、誰が来たって?」
「さっくん! さっくんが帰って来たの〜!」
「さっくん……?」
青年の言葉に対してそう返した日菜は、そそくさと自分の部屋に入ってしまった。その後視線は僕の方へと向けられる事になった。
……久しぶりだからな。向こうがどれだけ覚えてるのか分からない以上、先ずは名乗りますか。
「……えっと。久しぶり、洸夜。 盛谷 颯樹です。 日菜に言わせたら 『さっくん』 らしいけどね」
「え、颯樹……。本物……?」
「偽物が来る訳ない。 それは、洸夜が一番よく分かってるだろ?」
僕の名前を聞いた青年───日菜と紗夜の兄である(過去に氷川家は三つ子なのだと聞いた事があったな)、洸夜は信じられないとでも言う様に目を丸くしていたが、僕はそんな彼に対して少し言葉を強めて現実を伝えた。
洸夜とは小学校からの付き合いなのだが、きっかけは日菜による紹介を通して出会ってからだ。昔から日菜に何かある度に色々振り回されていたので、お互いに幼馴染や身内の事などで話を弾ませていた事がある。
……と言うか、すごく懐かしいな。まあ六年も離れていたらそう感じて当然だけど、その感覚が強くなっていくのは、少しずつ感覚を取り戻しているからだろうか?
「……紗夜、 ちょっと顔抓って」
「え、ええ……」
未だに信じられない洸夜は、隣に居た紗夜に頬を抓るように頼み始めた。彼女は最初、兄である洸夜の頬を抓る事に躊躇っていたが、彼の口調が若干驚きを交えたものであった為、紗夜は恐る恐る洸夜の頬を抓る事にした。
「イタイイタイイタイ……あー、 夢じゃないらしいね」
紗夜に頬を抓られた事で現実を知ったのか、僕の方に向かい合ってそう言葉を零した。……遅いよ、洸夜。まあ、何も言わずにここに来たから、びっくりするのは無理もないけどね。
「……改めて。 ただいま、 洸夜」
「ああ……お帰り、颯樹」
今回はここまでです。如何でしたか?
今回より登場致します新たなオリキャラ……『氷川 洸夜』くんですが、彼は『板挟み』などでお馴染みの作家さんである、『希望光』さん作のオリキャラでございます。
このお話を執筆するにあたり、discordでの通話などを通して相談をさせて頂き……許可を貰う事が出来まして、今回このような形での実現となりました。本当にありがとうございます。
洸夜くんには主人公の幼馴染として、お話の中で色濃く関わって行って貰おうかと考えておりますので、楽しみにして頂けますととても嬉しいです。
長くなりましたが、本日はここまでです。
それでは皆様、いつ投稿されるかも知れない本格ですが、今年もよろしくお願いします。では次回に……待て、しかして希望せよ。