「あーメンドクセー」
五条悟は辟易していた。今日もいつもの通り呪霊を祓う。いかに特級術師とはいえ、年がら年中人手不足に悩む呪術界では下っ端同然の仕事が結構来る。すぐに終わるしお土産は買えるが、さすがに飽きが来た。率直にいうとめんどくさい。
(やっぱり人材不足だよなあ。これから来る大きな波のためにも後進を育てないといけないけど、現時点で1年は恵だけだしなあ)
そんなことを考えていると今回の目標を発見。ざっと見るに2級程度の呪霊だった。五条にとってはアリを踏み潰す程度であり、思わずため息をついてしまう。
(さっさと祓って帰ろ)
呪霊に狙いを定める。呪霊は何やら反対方向に走っているが、すぐに追いつけるし、術式を使う必要もない。そう思った時だった。
パキン!!!!!と。
ガラスの割れるような甲高い音と共に呪霊が砕け散った。呪霊が消え去り、奥にいた少年が右拳を突き出しているのが見える。
(何だ?あの子が祓ったのか?いやそれにしては……)
五条が訝しむのも無理はない。通常、呪霊は呪力を用いないと祓うことができない。しかし五条の目から見て、その少年には一般人レベルの呪力しかなく、拳に呪力を込めている様子もない。だが、1つ異常な現象が起こっていることを五条は見逃さなかった。
(あの右手、呪力を削り取ってる?しかも特に術式は使っていない……何者だ?)
大気中に漂っている呪力が右手に触れた瞬間消滅しているのだ。片っ端から呪力を消し去っているそれは、しかしどんな術式も見通す六眼でも詳細がわからない。軽く困惑した五条はとりあえず声をかけてみた。
「キミ、何者?」
目隠しした不審者に声を掛けられた。上条当麻はまずそう思った。よくわからない化け物を消した直後に話しかけられたため、警戒心をいろんな意味で高めたままとりあえず返事をする。
「そっちこそ誰だよ……化け物を消したらすぐ現れた上に目隠しって明らかに怪しいんだよ!」
「ん?ああ、僕は五条悟。一応結構有名なんだけど知ってる?」
「いや全く」
全然知らない。自分のことを有名だと言ってるからアイドルなのかなー、などと妄想寄りの推測をしてみる。目隠しされてるけど顔のパーツは整ってるし。
「目隠しアイドルが人気とかどうなってんだよこの世界……」
「君なんか変な妄想してない?てかこっちも自己紹介したんだから君の名前も教えてよ」
そう言われ、上条は慌てて妄想から帰ってくる。
「俺は上条当麻。で、さっきの化け物は何だ?あんたの魔術か?」
「あれは呪霊っていうんだけど……魔術って何?」
「ん?」
「ん?」
徹底的に話が噛み合わず、上条と五条は2人揃って首を傾げることになった。
とりあえず歩きながら話そうか、と言われ、上条は五条とともに商店街を歩いていた。その間、上条はある程度の知識を手に入れることができた。
まず、この世界に学園都市はなく、魔術も(五条が話す通りなら)ないこと。
そして、その代わりに呪術というものがあり、呪霊という存在と、呪霊を祓う呪術師がいること。
「当麻が祓ったのが呪霊だね。あれ、どうやって倒したんだい?」
「俺の右手は生まれつきそういうもので、触れた異能の力を問答無用で打ち消すんだ。呪霊ってのは呪力の塊なんだろ?だから触っただけで祓ったことになったんじゃないか?」
「なるほどね。だとすると……」
そう言ったきり黙り込んでしまった五条は、少しして上条の方を向いてこう言った。
「よし!じゃあ当麻、一回捕まろっか!」
「は?」
話が進まねえ!