妖怪学園Y Night Emperor   作:bustered

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どうも、busteredです。
またかなり遅れてしまいました……申し訳ないです。
今日で妖怪学園Yが最終回……とても辛いです……
ですが、この小説はアニメが終わっても最後まで書ききる予定です。
何卒応援、よろしくお願いいたします。
それでは本編へ。


第2話 巨大サラリーマン宮沢さんの憂鬱 その2

先の騒動から数時間が経ち、放課後。

シロウたちはYSPクラブの部室に集まり、先程の巨大な男性について調べていた。

 

「あれは学園七不思議の一つ、『巨大サラリーマン宮沢(みやざわ)さん』だね」

 

コマはパソコンを操作しながら説明した。

パソコンの画面には、その男性の写真がいくつか映っていた。

 

「あれは間違いなく、YSPクラブが解明すべき案件だよ!」

 

「七不思議って言ったら、『恋愛禁止の呪い』に続いて2つ目だな」

 

「ようやく俺も、七不思議の解決に協力できるんだね」

 

マタロウは少し興奮気味に、ジンペイは最初に解決した七不思議を思い出しながら、シロウは協力できることを嬉しそうに、それぞれ話していた。

 

「何か、出現する法則性とかあるのかな?」

 

「そうだね……これが学園SNS・Yチャンネルでの宮沢さんの出現情報を元に予測した回遊ルート」

 

コマは再びパソコンを操作し、宮沢さんが現れるルートを割り出した。

 

「なるほど……このどこかに"巨大変態マン北沢さん"が現れるわけだ」

 

「"巨大サラリーマン宮沢さん"ね……」

 

「とにかく、これよりYSPクラブは学園七不思議の一つ、巨大サラリーマン宮沢さんの謎解明ミッションを開始だ!」

 

「おー!」

 

YSPクラブの男子が七不思議解明にやる気を出す中、フブキは部室のドアの隙間から誰かが覗いていることに気が付いた。

 

「ん?アカネ、そこで何してるの?」

 

フブキにアカネと呼ばれた少女は、気付かれたことにギクッとしながら答えた。

 

「あっ……いや、何か面白そうなこと話してるなーと思って……」

 

そんなアカネをYSPクラブは快く招き入れた。

 

「興味あるの?YSPクラブ」

 

「じゃあ、今ちょうど面白くなってきたところだから一緒に行こうよ!」

 

 

 

 

 

そんなわけでYSPクラブとアカネは、巨大サラリーマン宮沢さんを調査するため、宮沢さんが出現した地点の近くの場所へと向かっていた。

 

「YSPクラブは妖怪とか霊とかそういう不思議な力を研究していくクラブで、学園の七不思議も解決するつもりなんだ」

 

一向が渡り廊下を歩いている時に、コマがアカネにYSPクラブの活動内容について説明していた。

 

「まずは、美術室から宮沢さんを監視しよう」

 

マタロウがそう言いながら渡り廊下を渡りきると、隣接している廊下の央から5人ほどの集団が歩いてきた。

 

「なんだ、あれ」

 

彼等は、Y学園の中でもかなりの権力を持った集団。

その名も、『Y学園中等部 生徒会』。

生徒会ともあって、彼等の役割はそれぞれ違う。

 

彼等の中で最もガタイがよく、スカウターのような物をつけているのは、生徒会のボディーガード、"布袋(ほてい)カイト"。

マッシュルームヘアでそこに眼鏡をかけているのは、生徒会の書記、"柿留(かきとめ)マックス"。

赤紫色の髪にカチューシャをつけているのは、生徒会の紅一点にして会計、"金仁(かねに)コマカ"。

銀髪で眼鏡をかけているのは、生徒会副会長、"参歩(さんぽ)ツトム"。

そして、彼等の先頭を歩く厳格な雰囲気を醸し出すこの少年こそ──

 

「あれは…生徒会長、"霧隠(きりがくれ)ラント"先輩。この学園を取り仕切る、権力の頂点」

 

フブキがそう言い終えると同時に、ラントはYSPクラブの面々の前で立ち止まり、話しかけてきた。

 

「ときに……君たちは新入生かな?」

 

「「は……はい!」」

 

いきなり生徒会長に話しかけられ、コマとマタロウは緊張しながらも返事をした。

 

「では、言っておく。15時からの終業時間から18時までの3時間はFST……すなわち、フリー(Free)スタイル(Style)タイム(Time)と呼ばれている。この時間は、それぞれの生徒たちがクラブ活動や自己表現のための活動をして、自分を磨く時間なのだよ」

 

「要は自由時間だろ?」

 

「シーッ!」

 

ラントは今の時間の在り方について説明をしたが、ジンペイが小声でマジレスをしかけたので、コマがそれを止めた。

 

「そんな大事な時間に、君たちは一体何をしているのかな?」

 

「巨大サラリーマン宮沢さんの調査です!」

 

ラントの問いかけに対して、ジンペイはわざとらしく敬礼しながら答えた。

 

「宮沢さん?……七不思議案件か。君たちがそれを解決できるとでも?」

 

「するつもりです!」

 

「……新しい部として登録された、YSPクラブというのは君たちのことか」

 

「そうです!」

 

先程のジンペイとは違い、コマは緊張しながら敬礼して答えた。

 

ラントは何故か唇を噛み締めながら少しの間沈黙し、やがて進行方向に向き直るとこう言い放った。

 

「学園長からの勅命で認定されたと聞いているが、私は認めていない。君たちの活動が学園の品位を損なうようなことがあれば、廃部に追い込む。」

 

「「えっ!?」」

 

「覚えておくがいい。この学園は実質、この霧隠ラントによって掌握されていることをな」

 

そう言うとラントたち生徒会は、そのまま廊下を歩いていってしまった。

 

「アイツ、そんなに偉いの?」

 

「"Yペディア"にも、生徒会長は学園長並の権力を持っているって書いてあった」

 

「何て言うか、クールだけどちょっと尖ったような人だったね……」

 

ジンペイとコマが生徒会長について調べ、シロウがラントに対する印象を呟く中、

 

「いいなぁ!やっぱ生徒会は権力を持っているもんだよねぇ!学園物アニメの王道感、出てるぅ!」 

 

マタロウは学園物の王道展開に興奮してテンションがあがっていたため、他のメンバーを少し呆れさせていた。

 

 

 

 

 

やがて一行は美術室にたどり着き、宮沢さん監視のための準備を始めた。

 

「こっちはこれでよし……」

 

「これで監視準備完了……」

 

そう言いながらマタロウとコマは、三脚のついた双眼鏡を美術室の窓にセッティングした。

この双眼鏡を覗いて、宮沢さんが来るのを待つのだ。

 

「どんと来い!巨大サラリーマン!」

 

 

 

──監視を始めてから2時間以上が経過した。

 

「どう?コマ君」

 

「来ないねぇ……」

 

今のところ、宮沢さんは姿を見せる気配が一向になかった。

 

「うぅ……」

 

シロウはかなり暇だったためか、少し船を漕ぎ始めていた。

 

「立て!立つんだジョニー!」

 

「燃え尽きたド……」

 

「ジョニー!」

 

ちなみにジンペイは眼帯とチョビ髭をつけたおじさんのコスプレをしていて、両手にグローブをつけたバケーラと共に何かの寸劇をやっていた。

 

「そこの2人!暇だからって『明日のジョニー』ごっこ、やらない!」

 

どうやら『明日のジョニー』というアニメのごっこ遊びをやっていたらしい。

マタロウにツッコまれてはいるが。

 

「2人……?」

 

「気にしないで……」

 

怨霊が見えないアカネは、マタロウの『2人』という言葉に違和感を覚えたが、そこはフブキがごまかした。

 

そんなフブキはアカネに、気になっていたことを聞いてみた。

 

「そういえば、最近アカネ元気なかったでしょ?何かあった?」

 

「えっ……そう、見える?」

 

「なんとなくだけど……」

 

「そうだね、いろいろあって……」

 

フブキがアカネに、最近の様子について聞いてみたものの、アカネは言葉を濁すだけであまり話そうとはしなかった。

 

その時である。

校舎が地響きによって、少しずつ揺れていたのである。

コマが双眼鏡から覗きこむとそこには、先の騒動の時に出現した巨大な男性──宮沢さんがいたのだった。

 

「巨大サラリーマン、キターッ!!」

 

 

 

 

 

 

一行は美術室を出て、近くの校舎の影から宮沢さんの様子を窺っていた。

 

「あんなのと、どうやって戦うの?」

 

「大丈夫!」

 

マタロウがこれから巨人である宮沢さんと戦闘となるかもしれないことに不安を感じていると、フブキが鎧のような物を持ってきた。

 

「何これ!?」

 

「立体飛行装置よ」

 

「立体飛行装置?」

 

「えっ!?それって、ヒモみたいな物がビューっと出て、ビルの間とか渡って飛んでいくやつだよね!?」

 

「う~ん、何かそんな感じ?」

 

立体飛行装置の名前を聞き、マタロウはどこぞの巨人マンガのようなものを思い浮かべて興奮していたが、フブキはあまりピンときていないからか曖昧な返事をしていた。

 

そして、実際にジンペイ、コマ、マタロウがこの装置をつけてみた。しかし……

 

「ええっ、僕も!?……っていうか、想像してたのとだいぶ違うし……」

 

立体飛行装置という名前の割りにはヒモを出すような物はついておらず、ついていたのは足の裏の巨大なバネだけだった。

そんなマタロウの落胆具合を気にもとめず、

 

「レディー、ゴー!」

 

と言いながらフブキがスイッチを押すと、立体飛行装置のバネが解放され、

 

「「「うわぁぁぁぁぁ!?」」」

 

3人は絶叫しながら勢いよく飛んでいった。

 

「これ、立体"飛行"装置というより立体"跳躍"装置じゃない……?」

 

「どっちでも同じようなもんでしょ!」

 

「そうはいかないような気が……」

 

シロウがフブキにやんわりとツッコミを入れたが、フブキは立体飛行装置にノリノリだったため、細かいことは気にしなくなっていた。

 

ちなみにシロウが装置をつけなかったのは、まだシロウがYSPクラブに入ったばかりでこれをすることを遠慮したコマとフブキの独断である。

 

「さあ、みんな!攻撃フォーメーション、『サクラサク・セブンティ』発動よ!」 

 

「了解でありまーす!」

 

「何それ!?適当なフォーメーション名に適当に返事してるし!」

 

「ヘイ、マタロウ!ヘイ、コマ君!」

 

ジンペイが空中で飛びながら装置に備えられていたロープをマタロウとコマに渡すと、3人は宮沢さんの足元に着地し、それぞれ別の方向へと再び飛んでいった。

すると、3人が持っていたロープが宮沢さんの足に絡み付き、宮沢さんの動きが止められた。

 

「あっ……ああ……ああ~っ!」

 

そして宮沢さんはバランスを崩し、その場に仰向けに倒れた。

ジンペイたちは宮沢さんに近付き、何故校内を歩き回るのかを聞いてみた。

 

「おいお前!何が目的で学園の中をうろついてた?」

 

すると宮沢さんは上体を起こし、

 

「それは……どうしても、娘に一言謝りたくて」

 

と言った。

 

「娘?」

 

そんな中、宮沢さんにある人物が近付いてきた。

 

「ん?……ア、アカネ……」

 

アカネが宮沢さんに近付くと、宮沢さんはなんとアカネの名前を呼んだ

何故、宮沢さんはアカネの名前を知っていたのか。

それは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してるのよ……お父さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「え……え~っ!?」」」」」

 

「お……お父さん!?」

 

「この巨大サラリーマンが!?」

 

そう、彼女の本名は宮沢(みやざわ)アカネ。

宮沢さんは、アカネの父親だったのだ。

 

YSPクラブの面々が驚愕する中、アカネは自分の父である宮沢さんについて語り始めた。

 

「お父さんは……私が小さい頃は、家族思いの父親でした。でも、いつの頃からか家には遅くにしか帰ってこなくなって……母も私も寂しい思いをしていました。そんな時、たまたま外で父を見かけたんです。自分よりずっと若い人にペコペコ謝っていて、すごくかっこ悪く見えて、つい言ってしまったんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、お父さんなんか大っ嫌い!私やお母さんをほったらかしにして、どんなすごい仕事してるのかと思ったら、ペコペコ頭下げてるだけの小さくて情けないサラリーマンじゃない!……私はもっと、大きくてかっこいいお父さんが欲しかった……」

 

「アカネ、私は……」

 

「小さくて情けないお父さんなんかいらない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アカネにそう言われて以来、私の心から『小さくて情けないサラリーマン』という言葉が離れなくなってしまったのです。そんな時、ある事故に巻き込まれてしまって……気がついたら、こんな大きな体になっていたんです」

 

アカネの言葉を繋ぐように、宮沢さんはそう言った。

宮沢さんは無意識の内に、もう小さくて情けないと言われないようにと心に願ったことで、その思いが宮沢さんを巨大な怨霊としたのだ。

 

「すげぇ!大きくなりたいという思いが実ったってことだな!」

 

「それって、体の大きさのことじゃないよね……」

 

ジンペイの言葉にコマがツッコんでいる中、宮沢さんの座っているところの近くの建物の影に一人の人物が現れた。

それはなんと、臼見沢だった。

 

臼見沢は自分の髪の毛を一本むしりとると、それに息を吹き掛けた。

 

「うぃふ~……」

 

すると、その髪の毛は臼見沢の息に含まれていた妖しい力によって醜く変化し、まるで血を吸うヒルのようなものになった。

 

臼見沢がヒルのような髪の毛を放つと、それは意思を持ったように飛んでいき、人知れず宮沢さんの頭に刺さった。

 

「……えっ?あっ……ああ~っ……!」

 

髪の毛に含まれていた妖しい力が宮沢さんに流れこんでいき、宮沢さんは呻き声をあげながら顔を覆った。

 

「お、お父さん……?」

 

アカネが困惑しながら宮沢さんに声をかけるものの、宮沢さんは応えない。

 

「う……う~っ……」

 

宮沢さんは呻き声をあげ続けているが、その声は少しずつくぐもっていった。

 

「腕っ!腹っ!」

 

「うわっ!」

 

妖しい力が宮沢さんを蝕んでいき、宮沢さんの腕と腹が服が破けるほどの筋肉質なものへと変化していく。

 

「お~か~お~……!サイクロ~プス!」

 

そして宮沢さんが覆っていた顔をどけると、そこには元の冴えないサラリーマンの顔はなく、代わりにギョロギョロとした赤い目と鋭いキバのはえた歪な形をした口があった。

 

宮沢さん──いや、今の彼は宮沢さんではない。

妖しい力によって暴走してしまった、"怨霊サイクロプス"となってしまったのだ。

 

「お父さん!」

 

アカネが悲痛な声で呼びかけるも、サイクロプスとなった宮沢さんには届かない。

 

「おい、お前!お前みたいなデカいだけのやつは……」

 

「ウルサイ」

 

ジンペイがサイクロプスにズバリ言おうとしたが、サイクロプスはそれが言い終わらないうちにジンペイを踏み潰した。

 

「踏み潰されちゃった!?」

 

「ところがすっとこどっこい!」

 

マタロウが驚く中、踏み潰されたはずのジンペイがピンピンした声で待ったをかけた。

 

「どこからともなく声が!」

 

「そうか!何らかのヒーロー的なアクションでかわしていたんだ!」

 

「スマホで撮ってたから見てみよう」

 

「この状況で撮るかな……」

 

マタロウのツッコミも尤もだが、とりあえず一行はフブキの撮った映像からジンペイがどこにいったのかを探してみることにした。

 

「あっ!」

 

映像をスローで見てみると、ジンペイが踏み潰される直前に、ジンペイの左方向から何かがやってくるのが見えた。

その姿は赤く、ジンペイの倍ほどの巨体。つまり──

 

「そうか、バケーラが!」

 

そう、バケーラがジンペイを突き飛ばして助けようしたのだ。

しかしその直後、ジンペイの右方向から何かがやってきた。

その姿はピンク色で小柄。つまり──

 

「えっ、モモ!?」

 

そう、モモもジンペイを突き飛ばして助けようしたのだ。

しかしバケーラとモモ、それぞれ別の方向からやって来たため、それらが衝突し、結果としてジンペイがそこから動くことはなかった。

 

「「「「「あっ……」」」」」

 

そして、助けようしたバケーラとモモ諸共、ジンペイはサイクロプスに潰されてしまった。

 

「結局潰されてんじゃん!」

 

マタロウがツッコむ中、踏み潰されたジンペイたちがタンコブをつくりながら出てきた。

 

「結構痛いですねぃ……」

 

「間一髪だったぜ」

 

「どこが!」

 

「そうだ!デカい相手にはアレだ。」

 

そう言いながらジンペイは、左耳についている通信機で通信を始めた。

 

「園等先生、"ガッコウガー"発進お願いします!」

 

「無理ぃ~、今修理中」

 

「えぇ~!?じゃあアレどうするの!?デカいし凶暴だし!」

 

「ジンペイ君、わかってるでしょ?変身して戦うの」

 

「やっぱそれね……」

 

通信の相手は園等先生だった。

ジンペイはガッコウガーなるものを要請したが、園等先生はそれは今は使えず、変身して戦うことを奨めた。

 

「ガッコウガー……?」

 

一方シロウは、また知らないワードが出てきて頭に疑問符を浮かべていた。

 

 

 

 

「こうなったら、しかたがねぇ!いくぜ!」

 

そう言ってジンペイは1枚のメダルを取り出した。

メダルの左上に歯車のマークがついていることから、それが変身メダルであることがわかる。

 

 

「変身!」

 

ジンペイが腕につけたYSPウォッチにメダルをセットすると、ウォッチからサウンドが流れた。

 

<<Y(ワーイ)!チェンジフォーム・ヨウカイヒーロー!>>

 

そしてYSPウォッチは、機械的な音声でジンペイが変身するヒーローの名前を宣言する。

 

<<剣豪紅丸(けんごうべにまる)>>

 

ジンペイがポーズをとった後に、YSPウォッチのベゼルを右に捻る。

 

するとジンペイの背後にバケーラが現れ、バケーラの体が複数の布のようなものに変化した。

布のようなものになったバケーラがジンペイの体を覆っていき、目の前に現れた鞘に納まった一振の刀を手に取ると、彼の周りで桜吹雪が舞う。

 

「紅く染まったこの体……お主の血で更に紅くなる、の巻!」

 

その言葉通り、その体は紅色に染まり、それとは対照的に白いコートをその身に纏っている。

先が緑色に光る二又の尻尾に、片方にピアスがついた猫耳。

その手に携えたるは、愛刀"霊剣(れいけん) 断絶丸(だんぜつまる)"。

侍の魂を宿す彼の名は、"剣豪紅丸"。

剣を操る、紅き猫の妖怪ヒーローである。

 

「変身、キターッ!!」

 

「兄貴、助太刀するぜ!」

 

マタロウが妖怪ヒーローの変身に興奮する中、メラが合流した。

その腕にYSPウォッチを携えながら。

 

 

 

「獅子黒……俺様の、お呼びだ!」

 

そう言いながらメラはウォッチに召喚メダルをセットする。

 

<<Y!カモン・ゴースト!>>

 

YSPウォッチからそういったサウンドが流れると、ウォッチの盤面から黒い霧が溢れ出す。

するとその黒い霧の中から、一振の刀を携えた獅子黒が現れた。

 

「変身!」

 

獅子黒の召喚が完了すると、メラはすかさずウォッチに変身メダルをセットする。 

 

<<Y!チェンジフォーム・ヨウカイヒーロー!>>

 

先程と同様、YSPウォッチは、機械的な音声でメラが変身するヒーローの名前を宣言する。

 

<<獅子王(ししおう)>>

 

そして先程のジンペイと同様に、メラはポーズをとった後に、ウォッチのベゼルを捻る。

 

すると、獅子黒の火傷痕から炎のような光が揺らめき始め、そのままメラと獅子黒は互いに拳をぶつけあった。

すると、獅子黒の体が獅子の姿を模した炎となり、メラを喰らうかの様に包み込む。

炎が晴れるとそこには、白いマントを羽織り両腕に黒い籠手を装着したヒーローがいた。

 

「暴れてぇ~……御免!」

 

その出で立ちはまるで歌舞伎役者。

その心に秘めたるは炎の魂。

燃ゆる魂をもつ彼の名は"獅子王"。

その名の通り、獅子の頂点に立つヒーローである。

 

 

 

「いくぞ、獅子の!」

 

「ガッテン、紅の親分!」

 

獅子王と紅丸は、それぞれサイクロプスの体の部位に攻撃をしかけた。

 

「膝!」

 

「肘!」

 

「肩!」

 

「尻!」

 

「腹!」

 

「乳首!」

 

「あふっ!もっとくだサイクロ~プス!」

 

二人が攻撃を続けていると、ある一点でサイクロプスがリアクションを起こした。

 

「乳首で怒ったぞ」

 

どうやら紅丸が攻撃した乳首が、サイクロプスを怒らせたようだった。

ただ、どちらかと言うと怒ったというより感じt……いや怒ったんだと思われる。

 

「ちょっと気持ちよかったのになぁ~!」

 

……やっぱりそういうことであるようだった。

サイクロプスが紅丸と獅子王目掛けて拳を振るうが、二人は難なく避けた。

しかし、サイクロプスの拳がそのまま地面に激突し、それが砕けて瓦礫となった。

そしてその瓦礫が飛んでいき、獅子王に激突した。

 

「ぐわぁー!」

 

「獅子の!……くっ、乳首をやっても気持ちよくなるだけだ。ならば……見切った!」

 

紅丸が目を付けたのは、サイクロプスの登頂部にある角──つまり、宮沢さんに刺さった髪の毛の場所であった。

 

紅丸は狙いを定めると、1枚のメダルをウォッチにセットした。

 

<<Y!エグゼキュート!>>

 

紅丸がセットしたのはコマンドメダル。

つまり、必殺技を発動するためのメダルである。

 

紅丸が飛びあがると、背中に構えた断絶丸に力が集まっていく。

 

「"(あか)一閃(いっせん)"!」

 

紅丸は必殺技の名前を宣言しながら、鞘から断絶丸を引き抜きそのまま刀を振るうと、刀から衝撃波が発せられた。

 

その衝撃波はサイクロプスの角目掛けて飛んでいき、それを根元から切り裂いた。

 

「必殺技キターッ!!」

 

ついでにマタロウが必殺技に興奮していた。

 

「サイクロォ~ッ!!」

 

妖しい力を流していた角がなくなったことで、サイクロプスは力を失い、断末魔をあげながら倒れた。

 

「成敗……セイ、グッバイ」

 

紅丸は決め台詞を言いながら断絶丸を鞘に納めた。

 

「これが……YSP……これが……妖怪ヒーロー……!」

 

シロウは初めて妖怪ヒーローの活躍を見て、目を輝かせていた。

 

「ん?」

 

すると、サイクロプスが倒れた場所から虹色の靄──もとい妖気が発生し、紅丸のウォッチに吸い込まれ、そこから3枚のメダルを生み出した。

1枚は宮沢さんの召喚メダル。

1枚はコマンドメダル。

そしてもう1枚は全体が黄金で装飾されたメダルであった。

 

サイクロプスが倒れた場所の煙が晴れると、サイクロプスだったことがうかがえるように、上半身の服が破けている宮沢さんが倒れていた。

 

「も……戻った……?」

 

「お父さん!」

 

宮沢さんが元の姿に戻ると、アカネは真っ先に、父である宮沢さんの元へと駆け寄った。

 

「お父さん、しっかりして!」

 

宮沢さんはゆっくりと起きあがると申し訳なさそうな顔をしながらアカネの方を向いた。

 

「うぅ……ごめんな、アカネ。またお前に嫌な思いをさせてしまった。やっぱりこんなお父さんは、いない方がいいよな……」

 

しかし、アカネの反応は宮沢さんの予想とは大きく異なっていた。

 

「違うの!もうお父さんのこと、そんな風に思ってないよ……!」

 

「えっ?」

 

「私、聞いたの。お父さんが死んで何日か経った頃、会社の同僚だったって人が訪ねて来て……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「係長は本当によくしてくれる人でした。僕が失敗した時もそれを庇って謝ってくれたり、何日も会社に泊まり込んでピンチになってるチームのフォローをしてくれたり……」

 

「……お父さん、が?」

 

「あの時も、僕が歩きスマホをしていたせいで、立てかけてあった資材を倒してしまい……係長は、そんな僕を助けようとして……」

 

かつての同僚は、鼻声になりながら泣いていた。

 

「係長は、僕の命の恩人なんです……!」

 

「……あの人らしいわね……」

 

アカネの母も、自分の旦那を思い出しながら静かに涙を流していた。

 

「……お父さん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今ならわかるの。お父さんは小さくなんかない。大きくて頼りになる、自慢のお父さんなの!」

 

その刹那、宮沢さんの体が光に包まれた。

光が収まると、宮沢さんの体は元の大きさに戻っていた。

 

「あぁ……アカネ」

 

「……お父さぁぁぁん!!」

 

アカネは泣きながら、元の大きさに戻った父親に抱き付いた。

そんな2人の様子をYSPクラブの面々は静かに見守っていた。

 

「彼女が小さいと思っていたお父さんは、本当は器の大きな人だったんだね……」

 

「ふーん……体がデカい方が絶対かっこいいのになー」

 

「いやいや……」

 

コマは親子の絆に感動し、ジンペイは体の大きさの方がいいと冗談混じりに言い、マタロウはそれにやんわりとツッコんだ。

 

こうして、学園七不思議の一つ、『巨大サラリーマン宮沢さん』の真相が解明された。

 

まだ2つ目ではあるが、この解決は大きな一歩となるだろう。

 

 

 

 

 

そして、

 

「……お父さん、か……」

 

宮沢親子を見て、シロウが遠い目をしながら寂しそうに呟いたことには、誰も気が付かなかった。

 

 




今回は2パートのみで終えることができました。
次回以降もこの調子でいけるようにしたいです。
それでは。
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