妖怪学園Y Night Emperor   作:bustered

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どうも、busteredです。
ハーメルンよ、私は帰ってきた!(殴

いやマジでお待たせしました。
ホントにお待たせしすぎました。
ですが、完結するまでは終わらせるつもりはありません。
え?こんな調子じゃいつ終わるかわからない?おっしゃる通りです……

とにかく、まだY学園に飽きていない&この小説のことを忘れていなければ、ぜひ見ていってください。


第3話 バック・トゥ・ザ・モーニング~それを踏んではいけない~ その2

 

ボーン……ボーン……

 

その音と共に、食堂に掛けてある振り子時計が午前9時を知らせた。

 

「これ……この音だったかも!」

 

「やっぱり……犯人はこの古時計だったんだ!」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

フブキが記憶を照らし合わせてそう言うと、マタロウはどうやら真理に辿り着いたようだった。

 

「これは学園七不思議の一つ、『呪われた古時計』だよ。噂では、この古時計は夜中に泣き出すと言われていて、その声を聞いた者は呪われるんだって……」

 

「じゃあ、私が聞いたのが、それ?」

 

マタロウは新たな七不思議を自分の考えとして説明した。

どうやら学園七不思議は学園の校舎の中のみに限らないようだ。

 

そこへ、

 

「君達。もうすぐ始業時間ですよ」

 

と5人に声をかけてきたのは、臼見沢だった。

 

「それどころじゃないんだよ」

 

「臼見沢先生って、この宿舎の管理人ですよね?あの古時計について、何か知ってますか?」

 

「あれは前の管理人がどこかからもらい受けた、いわくつきの物だと聞いています。時々妙な音がするので、つい先日も修理の人を呼んだのですが、どこにも異常はないらしくて」

 

臼見沢が古時計について説明している中、

 

「"ひでお"……"よしえ"……?」

 

マタロウは、そんな文字が時計の横に刻んであることに気が付いた。

 

「そんなことより、早く登校してくださいね」

 

そう言い残すと、臼見沢はそのまま食堂を後にした。

 

「ジンペイ君、ウォッチで調べられないかな?」

 

「怨霊の仕業ってことか、よ~し……」

 

マタロウに促され、ジンペイはそこから少し距離を離してウォッチに手をかけた。

 

「確か、こうすれば……」

 

ジンペイがウォッチを左に捻ると、ウォッチを中心として結界のように光が広がった。

 

この光の中にいることによって、怨霊を探すことができるようだ。

 

「そこか~!そこなのか~!?出てこないとしちゃうぞ~!?俺もプリっといっちゃうぞ~!?」

 

とジンペイが呼び掛けながら探すも、

 

「いやいや、ジンペイ君……」

 

「話、聞いてた……?」

 

「方向が逆だよ、ジンペイ君……」

 

3人の言う通り、ジンペイはその古時計とは真逆の方向ばかり探していたので、怨霊が出てくることはなかった。

 

しかし、ウォッチの光はその古時計をも包み込んでいて、古時計から妖気が滲み出て、顔のような形を作りだした。

 

「ぅぅ……おい!ここだよ!!っていうか話の流れでわかれよ!!」

 

流石に痺れを切らしたのか、古時計はキレ気味にツッコんだ。

 

「アンタ、なんであんなことすんのよ!」

 

とはいえ、キレたいのはフブキも同じでこちらもキレ気味に古時計に聞いた。

 

「退屈だから、暇潰しにいたずらをしていたのさ。どうだ?ウ○チを踏み続ける一日、楽しいだろ?」

 

「楽しくない!!」

 

……まあ、誰だってソレを踏み続ける一日など楽しくないだろう。

 

「これは……ただの暇潰しなんかじゃない。」

 

「「「「えっ?」」」」

 

そんな中、マタロウは、この古時計が何故このような呪いをかけるのか、その推察を話し始めた。

 

「君が夜中に時々泣いたり、時間を戻したりするのは、昔に戻りたいからじゃないのか?」

 

マタロウがそう言うと、古時計は図星を突かれたように顔を歪ませた。

 

「どういうこと?」

 

「たぶん君は、ひでおさんとよしえさんと一緒に暮らしていた頃に戻りたいんだろう?」

 

「うっ……」

 

「誰だよ、それ?」

 

「時計の横に名前が彫ってあったんだ。きっとこの時計の持ち主だった人の名前だと思う。」

 

ジンペイがその名前について聞いてきたので、マタロウはその名前を知った理由を話した。

 

そして古時計の方に向き直り、

 

「その頃に戻りたいという気持ちが、君という怨霊を作りだしたんだ!」

 

と突きつけた。

 

「そういうことか!」

 

つまりこの古時計は、かつての持ち主にもう一度会いたいという思いから怨霊となったのだった。

 

しかし、

 

「別に戻りたくなんかねぇよ!」

 

古時計はそれを否定した。

 

そして古時計は語り始めた。何故、自分が怨霊となったのかを──。

 

 

 

 

 

「誰かに俺は、子どもたちが生まれる前から、あの夫婦とずっと一緒だった。成長した息子が家を出て、娘たちも一人ずつ嫁いでいって、その寂しさも二人と一緒に分かちあった。良枝(よしえ)さんが亡くなってからも、俺と秀夫(ひでお)さんは一緒にいた。」

 

 

 

 

 

「もうこんな時間か……」

 

「ああ、もう寝なよ」

 

「じゃ、寝るとするか……」

 

 

 

 

そう、この古時計は秀夫さんが良枝さんと結婚してからずっと、秀夫さんの家族をずっと見守ってきたのだった。

 

「俺たちは家族だって……心が通じあってるって……そう思っていた……なのに!」

 

 

 

 

 

 

 

「あの人は俺のことを見捨てやがった!!」

 

 

 

 

 

 

そう、秀夫さんはある時、唐突に壁にかかっていた古時計を取り外し、それを箱に仕舞ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そうして古時計はY学園へと渡り、現在に至る。

 

「俺は捨てられて、人間が大嫌いになった……ああ!俺は人間が大っ嫌いだ!!」

 

古時計は当時のこと忌々しく思い出しながら、ここまでの経緯を話し終えた。

 

「それで今日みたいないたずらを……」

 

「ああ、昨日の夜のコイツの幸せそうな顔が憎たらしかったからな!それでその女と野良犬に呪いをかけて、いたずらしてやったのさ」

 

昨日の夜──つまりフブキが夜中にプリンを食べていたちょうどその時、古時計はフブキをターゲットに呪いをかけた、というわけだ。

 

「他にやり方なかったの!?」

 

……ツッコむべきは手法ではなく内容のような気もするが、とにかくフブキはカンカンであった。

 

そんな彼らを食堂の窓から見ている人物がいた。

 

それは先程、宿舎から出ていったはずの臼見沢だった。

 

「うぃふ~……」

 

臼見沢が髪の毛をむしりとり、それに息を吹き掛けると、その髪の毛はまるで血を吸うヒルのようなものになり……

 

……いちいちこういう説明するのは面倒くさいな、もう"妖ビル"でいいよね?もう完全にヒルだしいいよね?

 

……失礼。臼見沢が妖ビルを放つと、それが古時計の振り子に刺さった。

 

「うわっ……!」

 

古時計の振り子は妖ビルが刺さったところからブクブクと膨らんでいき──

 

「うっ……ぐ……ぐぉ~……!」 

 

──やがて爆発した。

 

「ウフフフ……"クロックマン"!」

 

そこにはもう人と共に時を刻んでいった古時計はもういない。

そこにいるのは、人を憎み、時間を操り愉悦を得る怨霊、"クロックマン"であった。

 

「ああ!」

 

「愚かな人間どもめ。懲らしめてやる」

 

クロックマンはじりじりとシロウたちに迫る。

そんなクロックマンの前に立ち塞がったのはジンペイだった。

 

「こいつは俺が倒す!」

 

ジンペイはそう言うと、一枚のメダルを取り出す指で弾きながら上へ飛ばした。

 

「お前の時間だ!バケーラ!」

 

飛ばしたメダルをそのままキャッチすると、ジンペイはそのままYSPウォッチにセットした。

 

<<Y!カモン・ゴースト!>>

 

ウォッチからボイスが流れると、ジンペイのウォッチから炎が昇り、それが形を変え、バケーラの姿となった。

 

「バケーラ!」

 

バケーラを召喚すると、ジンペイはそのまま別のメダルを取り出した。

もちろんそれは変身メダルだ。

 

「いくぜ……変身!」

 

<<Y!チェンジフォーム・ヨウカイヒーロー!>>

 

<<剣豪紅丸>>

 

ジンペイがポーズをとった後に、YSPウォッチのベゼルを右に捻る。

 

するとジンペイの背後にバケーラが現れ、バケーラの体が複数の布のようなものに変化した。

布のようなものになったバケーラがジンペイの体を覆っていき、目の前に現れた鞘に納まった一振の刀を手に取ると、彼の周りで桜吹雪が舞う。

 

「紅く染まったこの体……お主の血で更に紅くなる、の巻!」

 

その言葉通り、その体は紅色に染まり、それとは対照的に白いコートをその身に纏っている。

先が緑色に光る二又の尻尾に、片方にピアスがついた猫耳。

その手に携えたるは、愛刀"霊剣 断絶丸"。

侍の魂を宿す彼の名は、"剣豪紅丸"。

剣を操る、紅き猫の妖怪ヒーローである。

 

「時は金なり。この勝負、一瞬でケリをつけてくれよう」

 

そう言うと紅丸は早速コマンドメダルをウォッチにセットした。

 

<<Y!エグゼキュート!>>

 

紅丸が飛びあがると、背中に構えた断絶丸に力が集まっていく。

 

「"紅き一閃"!」

 

紅丸の必殺技がクロックマンに直撃する。

 

その必殺技はクロックマンを倒すには十分すぎる一撃だった。

 

「「「「やった!」」」」

 

と4人が喜んだその時。

 

ボーン……ボーン……

 

という音と共に、クロックマンの下半身に付いた振り子が光りだし──

 

 

 

 

 

「時は金なり。この勝負、一瞬でケリをつけてくれよう」

 

そう言うと紅丸は早速コマンドメダルをウォッチにセットした。

 

「あれ?」

 

「何か、今……」

 

「"紅き一閃"!」

 

その必殺技はクロックマンを倒すには十分すぎる一撃だった。

 

その時。

 

ボーン……ボーン……

 

という音と共に、クロックマンの下半身に付いた振り子が光りだし──

 

 

 

 

 

「時は金なり。この勝負、一瞬でケリをつけてくれよう」

 

と、本日3度目のセリフを紅丸を言ったところでフブキが気付いた。

 

「これもしかして、時間が戻ってない!?」

 

「その通り。5秒の時をリセットできる、それが俺様の力」

 

なんとクロックマンの能力は"時間を巻き戻すこと"であった。

今回は二回とも紅丸の攻撃が当たったが、下手をすると攻撃が全て避けられていたかもしれないのだ。

 

『なんだよそれ、キリがねぇじゃねぇか!』

 

これには紅丸に変身中のジンペイも文句を言わざるを得なかった。

 

「キリはないが、ハリはあるぞ!」

 

クロックマンはそう言って両手に巨大な長針と短針を出現させ、紅丸に襲い掛かった。

 

「何時?オヤジ!」

 

クロックマンは長針と短針を交互に向けたが紅丸はそれを避け、飛びあがってクロックマンに攻撃をした。

 

「何分?デンプン!」

 

「くだらん……!」

 

しかし、その攻撃をクロックマンは二本の針で受け止めて弾き返す。

ちなみに弾き返される前に紅丸は、クロックマンが先程から攻撃の際にダジャレを言っていることに"くだらん"と一蹴した。

 

紅丸はクロックマンに再度飛びあがり斬りかかる。

 

「何秒!?」

 

クロックマンはそれをまたまた針で受け止める。

紅丸はそれを掻い潜り、刃が届く──と思った次の瞬間、

 

「……ガビョウ」

 

という一言と共にクロックマンのもう一つの針がそれを狙っていたかのように振られ、紅丸の手から断絶丸を弾き飛ばしてしまった。

 

さらに運の悪いことに、弾き飛ばされた断絶丸は後ろで紅丸の戦いを見ていたフブキたちに飛んできたのだった。

 

「キャ~!」 

 

悲鳴をあげながらとっさに両手を重ねて頭部を守ろうとするフブキ。

 

するとその瞬間、フブキの手に小さな光がうっすらと浮かび飛んできた断絶丸をまた別の方向へと弾き返したのだった。

 

しかし、マタロウが言ったように本当に今日はいい日になるのか?と疑問を持たざるを得ないほど不運は続く。

 

弾き返された断絶丸はクロックマンが誕生した際に吹き飛ばされたテーブルやイスの方向へと飛んでいき、そこに重なっていた三つのテーブルを串刺しにするかのように突き刺さったのだ。

 

紅丸は素早く断絶丸の元へ行きそれを抜こうとするが、深く突き刺さっているせいか、なかなか抜けない。

 

「くっ……不覚……!」

 

紅丸が今の状態では戦えないことを察知したクロックマンは、フブキたちに標的を変え、じりじりと迫ってきた。

 

「まずい、このままじゃ……そうだ!」

 

この状況を打開するために、コマはある人物に顔を向けた。

その人物とは──

 

「シロウ君!」

 

「えっ!?」

 

「今こそ、君が妖怪ヒーローに変身して戦うんだ!」

 

「……ええっ!?お……俺が!?」

 

いきなり自分が指名されてシロウはかなり驚いた。

 

「一応僕も妖怪ヒーローに変身することはできるけど、あいつを倒せるほどの力は持っていない……今この状況をなんとかできるのは、君しかいないんだ!」

 

「俺しか……」

 

そう言われたシロウは周りを見た。

 

自分たちを襲おうとするクロックマン。

愛用の武器が封じられて動けない紅丸。

そして──不安そうにこちらを見つめるフブキ。

 

シロウは一度目を瞑り、自分の心を落ち着かせ──

 

「……わかった、俺やってみるよ!」 

 

──勇気を振り絞り、クロックマンの前に立ち塞がった。

 

(まずは、確か……)

 

シロウはポケットから1枚のメダルを取り出し、指先で回転させながら、

 

「ショータイムだ!ガルル!」

 

と言ってメダルをウォッチにセットした。

 

<<Y!カモン・ゴースト!>>

 

YSPウォッチからサウンドが流れると、ウォッチの盤面から赤と青の炎が螺旋を描きながら溢れ出す。

すると赤と青の炎が混ざり合い、その炎の中からガルルが現れた。

 

「ガルル!」

 

召喚されたガルルは軽く周りを見て状況を判断すると、シロウに確認をした。

 

「この状況で呼び出したってことは……やるつもりか?」

 

「うん……ちょっと緊張するけどね……いくよ!」

 

シロウは変身メダルを取り出し、小さく深呼吸をすると、

 

「変身!」

 

と言ってメダルをウォッチにセットした。

 

<<Y!チェンジフォーム・ヨウカイヒーロー!>>

 

そしてYSPウォッチは、機械的な音声でシロウが変身するヒーローの名前を宣言する。

 

<<"フェンリル">>

 

シロウがポーズをとった後に、YSPウォッチのベゼルを右に捻る。

 

すると、ガルルの体がオオカミを模した赤と青の炎へと変わり、シロウの体を螺旋を描くように被っていく。

炎をまとったシロウの頭は人間のものからオオカミのものへと変わっていき、炎が少しずつ晴れてゆく。

炎が完全に晴れると、そこには紺と赤のとても長い丈の制服のようなものを羽織り──所謂、番長スタイルである──腰に二丁のビーム銃を携えたヒーローがいた。

 

月夜(つきよ)(とどろ)くは、()咆哮(ほうこう)!」

 

その出で立ちはまさしく番長な狼男。

しかしその実は、弱きを助け強きを挫く正義の味方。

背中の服には"我狼"の文字。

腰に携えたるは"双銃(そうじゅう)オルトロス"と呼ばれる二丁のビーム銃。

狼の魂を宿す彼の名は、"フェンリル"。

悪しき魂を狩る、紅蒼の狼の妖怪ヒーローである。

 

「新ヒーロー、キターッ!!」

 

新ヒーローの誕生に大興奮するマタロウ。

 

「フェンリル……すごくかっこいい!」

 

マタロウほどではないが目を輝かせているコマ。

 

『すげーじゃんか!シロウ!』

 

相変わらず剣を抜くのに苦労しながらもシロウの初変身を祝福するジンペイ。

 

「これがシロウの……ヒーローの姿……」

 

そしてフブキは、ヒーローに変身したシロウの姿に頬を赤らめながら見惚れていた。

 

「ムフフフ……無駄無駄。どんなやつが来ようと、俺様の力の前では無力なのさ!」

 

クロックマンはフェンリルを嘲笑うと持っていた長針でいきなりフェンリルを突き刺さそうと攻撃した。

 

『「「「ああっ!!」」」』

 

「ムフフフ……他愛もない……」

 

クロックマンが攻撃したところからは土煙が上がっていた。

 

しかし──そこにフェンリルの姿はなかった。

 

「な、何!?奴は一体どこに……」

 

クロックマンが驚いて周りを見る間もなく、

 

 

 

 

 

「おい、どこを見ている?」

 

という声がクロックマンの後ろからした。

 

クロックマンは慌てて振り返ろうとしたものの、

 

「ふんっ!」

 

フェンリルはそんな隙も与えずにクロックマンの左足にカーフキックを喰らわせた。

 

「の"お"っ"!?」

 

そんなカーフキックの痛みに耐えかねたのか、クロックマンは膝をついてしまった。

 

「貴様……いつのまに俺様の後ろに……!?」

 

「いや?何てことはねえよ。お前が遅すぎるだけだ」

 

「小癪な……!!」

 

クロックマンは今度は短針の方で、後ろにいたフェンリルに攻撃したが、フェンリルは難なくそれをかわし、クロックマンの腕に乗るとそこから素早く駆け上がり、腰に携えた二丁のオルトロスを引き抜いて弾丸を発射し、クロックマンの顔面に命中させてから再びクロックマンの正面に立った。

 

「ぐうっ……!?」

 

顔面──しかも目に近いところに弾丸を当てられたクロックマンは苦悶の表情を浮かべていた。

 

「すごい……何が起きたのか全くわからなかったよ……」

 

あまりの速さにコマは呆然としていた。

 

「フェンリルはスピードに特化したヒーローなんだよ!イかすー!」

 

対してマタロウはフェンリルの特性を分析しつつも、フェンリルのかっこよさに興奮しっぱなしだった。

 

その後もフェンリルはクロックマンを翻弄しながらキックをかましたり弾丸を当てたりしていた。

 

「ぐっ……こうなったら……!」

 

流石にクロックマンもこのままではまずいと感じたのか、

 

ボーン……ボーン……

 

という音と共に、クロックマンの下半身に付いた振り子が光りだし、時を戻す──

 

 

 

 

 

 

──が、

 

 

 

「ぐうっ……!?」

 

顔面──しかも目に近いところに弾丸を当てられたクロックマンは苦悶の表情を浮かべていた。

 

「すごい……何が起きたのか全くわからなかったよ……」

 

「フェンリルはスピードに特化したヒーローなんだよ!イかすー!」

 

確かに時は戻った。

が、それはクロックマンの顔面に弾丸が命中したところからだった。

 

「バカな……何故……!?」

 

「──やっぱり時間を戻しやがったな」

 

そう言ったフェンリルは余裕な表情を浮かべていた。

 

「お前、自分で言ってたよな?"5秒の時をリセットできる"って」

 

「そ、それがどうし……はっ!?」

 

フェンリルの言葉にクロックマンはあることに気付いた。

 

「確かにお前の能力は強力だ。紅丸の必殺技を無効にしてしまうぐらいだもんな。ならどうすればいいのか。答えは簡単だ。5()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もしこの能力が連発されていたらオレ達に勝ち目はなかった。だが、お前はそれをしなかった。いや、できなかったというべきか?何せできるんならジンペイが変身する前に戻ってオレらを攻撃すればいいだけの話だものな!」

 

「ぐうぅぅぅ……!」

 

クロックマンは図星を突かれたのか、悔しそうに唸っていた。

だが──

 

「く……くっくっくっ……」

 

「な、何が可笑しいんだ!」

 

クロックマンが突然笑いだしたことに困惑するマタロウ。

 

「確かに貴様の言う通り、この能力は連発することはできないし、そういった掻い潜り方もある。だがそれでは根本的な解決にはなっていない!そんな戦い方で一体何時間かけて俺様を倒すつもりだぁ~?」

 

「……」

 

この言葉にフェンリルは何も言わなかった。

 

確かにこの戦法を使えばほぼ確実にクロックマンを倒すことができるだろう。

だが、それもクロックマンが能力を使ってしまえば一定のダメージを回復させられてしまう。

これを繰り返していけばかなりの時間を有してしまい、いずれどちらかの体力が限界になるまで続いてしまう、所謂、我慢比べになってしまうのだ。

 

拮抗する両者。

 

しかし、それを崩す者が現れた。

 

『マタロウ!なんとか奴の動きを封じこめてくれ!』

 

それは、未だに剣が抜けないジンペイだった。

 

「ええっ!?なんとかって!?」

 

いきなり指名されてかなり動揺しているマタロウ。

 

「いいからなんとかして!」

 

そんなマタロウをフブキが無理矢理前を向かせ、思い切り背中を押した。

 

「うっ……!」

 

その瞬間、フブキの手にまたも小さな光がうっすらと浮かび、押したマタロウがとんでもない勢いで吹っ飛んだ。

 

「フブキさん、何したの~!?」

 

吹き飛ばされたマタロウはフブキの力に驚きながらもなんとかクロックマンの動きを止めようと必死にクロックマンにしがみついた。

 

「うぅ……おふぅ……」

 

しがみついた場所は──クロックマンの下半身に付いた振り子のところだった。

 

そこにしがみつかれたクロックマンは頬を赤らめながら、なんとも言えない表情をしていた。

 

……まさかとは思うが、振り子ってそういうことなのだろうか……

 

「そうか!時計の動きを止めるには、振り子を止めればいい!」

 

コマの言う通り、マタロウが振り子にしがみついてからクロックマンは微動だにしていなかった。

 

『流石マタロウ!』

 

「いや、たまたまだよ……」

 

『たまたまタマタマを掴んだんだな!』

 

「違うって~!」

 

ジンペイは計らずもクロックマンの動きを止めたマタロウを下ネタを含めながら褒めていた。

 

『サンキュー!マタロウ君!』

 

フェンリルの中からシロウもマタロウに感謝していた。

 

「さあ、決めるぜ!」

 

そう言うとフェンリルは一枚のメダルを取り出し、ウォッチにセットした。

 

それはもちろん、コマンドメダルだ。

 

<<Y!エグゼキュート!>>

 

フェンリルは腰のオルトロスを引き抜いて6発ほど弾丸を発射しながら、必殺技の名前を高らかに宣言する。

 

「"シルバームーンバレット"!」

 

発射された弾丸は弧を描きながらクロックマンの周りを回っていく。

弾丸はだんだんとスピードをあげていき、弾丸の残像がまるで白銀の月を描くかのようにクロックマンを覆い隠す。

弾丸のスピードが最高潮に達すると、弾丸は一斉にクロックマンの方へと向き、その速度のままクロックマンの体を貫いた。

最高速度に達した弾丸を6発も受けたクロックマンはたまらず振り子を残して消滅した。

 

「「やった~!」」

 

コマとフブキはフェンリルの勝利にとても喜んでいた。

 

「夜明けには、貴様の魂すら残らんだろう……」

 

「決めゼリフ、キターッ!」

 

フェンリルの決めゼリフにマタロウはまたまた興奮していた。

 

すると、マタロウが抱えていた振り子から少しずつ妖気が漏れ出し、形を変え、元の古時計に戻ったのだった。

 

 

 

 

 

「うぅ……本当はわかってたさ……時計が人間と家族になんかなれる訳がない……いらなくなったら捨てられる……所詮それだけの存在なんだって……」

 

力尽き、横たわっていた古時計は自嘲気味に呟いていた。

所詮、自分は時計という"モノ"であって、人間と対等になれる訳がない、と。

シロウたちはそれに何も言えず、複雑な表情をしていた。

 

「……それは違う!」

 

しかし、それに異を唱える者がいた。

 

シロウたちが振り返ると、そこには初老の男性が立っていた。

その男性の顔を見た古時計は驚いた表情をしながら言った。

 

「ひ……秀夫さん!?」

 

「「「「「え~!?」」」」」

 

これにはシロウたちも驚きの声をあげた。

 

男性は古時計に近付き、

 

「僕は……息子の誠一(せいいち)だよ」

 

と言った。

 

古時計は思い出していた。

秀夫さんと良枝さんの間に生まれた長男、誠一のことを。

 

その誠一が記憶に残っている時よりもずっと大人になって自分の前に現れたのだ。

 

「誠一君……」

 

「まさか……本当に時計に命が宿っていたとはね……」

 

誠一は時計の目線に合わせるように、しゃがみながら古時計に話しかけた。 

 

「息子さんが、どうして?」

 

そんな誠一にマタロウが問い掛けた。

 

「知り合いに時計の修理をやっている人がいて、ここのことを教えてくれたんだ。ようやく見つけたよ」

 

「……今さら、なんだよ!」

 

古時計はそんな誠一に対して不貞腐れた態度で接していた。

しかし、誠一の口から出たのは驚きの真実だった。

 

「時計よ……父さんが君を手放したのは、余命宣告を受けたからなんだ」

 

「……余命宣告?」

 

古時計に対して誠一は語り出した。

何故、秀夫さんが何も言わずに古時計を手放したのかを──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入院が決まり、もう家に戻れないこと悟った父さんは、家に残されてしまう君を学校へと寄付することにした。だけど、お気に入りだった君を手放すのが辛くて、悲しくて、最後の言葉をかけてやれなかったらしくてね。父さんはずっと悔やんでいた。それで、僕は伝言を頼まれた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時計を見つけて、こう伝えてくれ……これまでわしと一緒にいてくれて、ありがとう。お前は苦しい時も嬉しい時もずっとそばにいてくれた、わしの大事な家族だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……うぅ……秀夫さん……」

 

そう。秀夫さんは古時計を見捨てた訳ではなかった。

ただ、最後の言葉をかけられなかっただけなのだ。

 

古時計はいつだって秀夫さんに愛されていた。

家族として大事にされていたのだ。

 

刹那、古時計の脳裏に過ったのは秀夫さんたち家族の思い出──。

 

秀夫さんと良枝さんが結婚してから時計が家に来て、息子と娘二人が生まれ、そこからずっと時を刻む時計。

子供の成長を見守り、家族が少しずついなくなってもずっと時計は時を刻んでいた。

そして、秀夫さんだけになってもずっと、ずっと──。

 

「秀夫さん……うぅ~!秀夫さん……!」

 

古時計は泣いた。

愛おしいあの頃を思い出し懐かしみ。

しかし、あの頃にはもう戻れないと悟って。

何度も、何度も思い出し、大泣きした。

 

「別れは辛いけど、あなたがすべきことは、しっかり前を向いて時を刻んでいくこと……そうでしょ?」

 

そんな古時計にフブキは語りかける。

過去にばかり囚われず、それを乗り越え今を生きていく。

それが今するべきことなのだ、と。

 

「前を、向いて……」

 

古時計はもう一度、秀夫さんとその家族を思い出した。

今まで自分は家族のために時を刻んできた。

しかし、もう家族が揃うことはなくなった。

ならば、自分はどうするべきか。

それは、今まで家族のために時を刻んできたように、これからは別の誰かのために時を刻むこと。

 

「みんな……ありがとう……ありがとう……!」

 

古時計は自分の新たな使命を見つけ、この場にいる人、そして何より──自分と共に過ごした"家族"に感謝しながら、光に包まれていった。

 

「「「「「あっ……」」」」」

 

光は徐々に大きくなっていき、やがて光が晴れるとそこには、古時計をデフォルメしたような一つ目の怨霊がいた。

 

「あなた、誰?」

 

「どうもー、"ブロッケンクロック"でっす!」

 

「ブロッケンクロック?」

 

なんと古時計は転生し、新たな怨霊、ブロッケンクロックとなったのだった。

まさかの出来事に驚く一同。

そこにある人物が現れた。

 

「おめでとう、フブキさん」

 

それは園等先生だった。

 

「園等先生!?いつからいたの?」

 

いきなり現れた園等先生に困惑したジンペイだったが、園等先生はそれをスルーし、フブキに話しかけた。

 

「あなたもついにYSP能力を開花させたわね」

 

「えっ……?」 

 

そう、先程のクロックマンとの戦いで、断絶丸を弾き返したりマタロウがとんでもない勢いで吹っ飛ばしたりした謎の光。

あれこそがフブキのYSP能力だったのだ。

 

「あなたをYSP能力者として認めるわ。これはその証よ」

 

そう言って園等先生は懐からある物を取り出してフブキに渡した。

それはもちろん──

 

「あっ!YSPウォッチだ!」

 

「その怨霊に近付けてみなさい」

 

フブキはシロウの時と同じように、ウォッチを左腕につけて、それをブロッケンクロックに近づけた。

 

すると、ブロッケンクロックの体から妖気が溢れ出て、それがウォッチに吸い込まれた。

 

そしてウォッチが光り輝き、その輝きの中から4枚のメダルが飛び出した。

 

「怨霊を浄化させたことで、その力がメダルになったの。これからはあなたにも戦ってもらうわ。妖怪HERO"クロックレディ"として」

 

園等先生はメダルの中から変身メダル──"クロックレディ"のメダルを取ってそれを見せながらそう言った。

 

「新ヒーロー、キターッ!!」

 

マタロウは新たなヒーローの誕生にまたまた興奮していた。

 

フブキも自分だけのウォッチを手に入れて嬉しそうだった。

 

「これからよろしくな!"ブロッコリーコロッケ"!」

 

「"ブロッケンクロック"でっす!」

 

ジンペイはブロッケンクロックを抱えながらそう言った。

……名前は間違っていたが。

 

誠一も、前を向いて進み出した古時計──もといブロッケンクロックを見て、安心したような表情をしていた。

 

 

 

みんなのその様子を見ていたシロウはとても嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「シロウ!」

 

シロウが振り返ると、フブキが少しだけモジモジしながらシロウを呼んでいた。

 

フブキは少し間をあけ、

 

「……私を守ってくれて、ありがとう!」

 

と笑顔で言った。

 

そんなフブキにシロウは

 

「……うん!もちろんだよ!」

 

とこちらも笑顔で言った。

 

 

 

──二人とも頬を少し赤らめながら。

 

 

 

 

 

 

──Y学園中等部生徒会室。

 

夕日に照らされた生徒会室には生徒会長の霧隠ラントと生徒会副会長の参歩ツトムがいた。

 

「YSPクラブが、古時計の謎も解明したそうです」

 

ツトムが今朝のYSPクラブが解明した七不思議について報告すると、ラントは表情一つ変えずに、

 

「思ったよりやるようだな……」

 

と、窓の外を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

──そして、Y学園のどこか。

 

「これで3つ目。面白くなってまいりました……」

 

柱に寄りかかり、臼見沢は眼鏡を妖しく光らせながら、そう呟いた。

 

 




これからもぼちぼち投稿していきますので、末長く応援していただければ幸いです。
それではまた次回お会いしましょう。
それでは。 
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