ペルソナ4 Another Story,Another Hero 作:芳野木
来年がペルソナだらけなのに、来年は受験生……はぁ。
PS3も持ってないしなぁ。
とりあえずPQは買います。受験生なのに。
P3キャラとP4キャラが可愛い。ベルベット組も出てるみたいなんでイゴールさんも可愛らしく……なんてことになってたらどうしよう。
エリザベスとマリーの絡みが見たいです。テオがいぢめられてるのも見たいです。マーガレットさんのちっさいverを愛でたいです。
さてさて、相変わらずの亀更新ですが本編にやっと入ります。(と言いましても、まだ片足が突っ込んでる程度なのですが)
ここまで読んでくださっている皆様には感謝してもしきれないですね。とっくの昔にフルボッコされて捨てられてもおかしくなかったのに。
「……霧?」
目が覚めたと思ったら、目の前に霧がかかっていた。また霧の夢か。
なぜか最近はずっとこんな夢ばかりだ。
それは、いつも霧の中にただ突っ立っているだけの夢で、霧が晴れたと思ったらいつのまにか目覚めている。マーガレットさんにペルソナのことは相談できても、夢のことまで相談はできないよな。カウンセラーじゃあるまいし。今度、四目内書店で夢占いの本でも買っとくか。
「…ん?」
霧の中で一瞬見えたシルエットに思わず目を擦る。できれば見間違えだと思いたい。
「…………鳴上…か?」
ちらりとだけ見えた横顔が、昨日出会った鳴上悠に見えた。夢の内容はその人の記憶に基づいて作られていることは百も承知だ。
けど、なぜ鳴上?
この夢に鳴上が出てきたことに疑問と不安を抱く。そのまま追いかけようとした俺の手首が誰かに掴まれた。
見ると、驚くほどに冷たくて、白い指が絡み付いている。
「マーガレットさん…?」
思い当たる人の名前を出すと、手首を握る力が強くなった。締め付けるような痛みにうめき声をあげる。
──あんな女と一緒にしないで、ひなた。あたしはあたしよ。
拗ねたような声がするが、あの女と呟いたその声は嫌悪感と憎悪を感じた。
「ごめん。……──」
今、俺は何と言ったのだろう?
──あの女はあたしの役割を奪ったの。ひなたから遠ざけたの。でも、大丈夫。ひなたはあたしを選んでくれる。絶対にね。
さっきまで締め付けていた部分が労るように撫でられる。相変わらず冷たい手で、撫でられる度に背中が泡だった。
──だって、そうなる運命だもん。…ね、ひなた。
運命。運命ならしょうがないかと思う反面、運命という重い言葉に違和感を抱く自分がいる。
──ひなたのことは絶対に護ってあげる。あの女からも……ひなたのいる現実からも……何もかも。
その言葉は誘惑だった。頷けば全て楽になってしまうほどの。
──愛してる、ひなた。
軽いリップノイズを響かせ、首筋に柔らかい感触が触れた。
◇◆◇◆◇◆◇
4月12日(火)
「おはようございます、日向さん」
「おはよ、ウォル」
階下に降りた俺を見て、ウォルは挨拶をしてから首を傾げる。
「気分悪そうですね。大丈夫ですか?」
「…大丈夫。なんか寝覚めが悪かっただけだから」
言って軽く頭を振る。見た夢は…たしか鳴上が出てたような出てなかったような…とりあえず曖昧な部分から考えるに嫌な夢だった。
「あ、ならコーヒーいれますね」
「ああ、うん。ありがとうな」
ウォルと一緒に暮らすのにはもう慣れた。自分で思っいたよりも早い内に。
目を擦って椅子に座る。顔を上げると、窓から見える空は曇っていた。どうもこれじゃ朝から雨が降りそうだな。
「絶対に雨降りますよね」
テーブルの上にコーヒーの入ったコップと今日の朝食を置いて、ウォルは憂鬱そうな表情をしていた。
ちなみに我が家の食事は当番制である。明日は俺が朝食を作る番だ。
「雨は嫌いか?」
コーヒーを飲んで眠気を覚ました後、トーストに噛り付く。
「嫌いというよりも苦手なんです。あのジメッとした感じが」
ウォルの出身がどこかはまだ聞いていないが、雨があまり降らない地域なのだろうか。
「それに霧も出てきますし」
「ここは霧が出やすいからな。昔はそんなに出てなかったはずだけど」
どこかで聞いた話だと、最近になってよく霧が出るようになったらしい。
「そうですね。昔はここまで酷くなかったです」
懐かしむように見えて悔やんでいるようにも見える。時折、ウォルはそんな表情をする。
「ま、すぐに昔みたいに戻るさ。なんだったら俺が霧を晴らしてみようか?」
「はは、日向さんが晴らすんですか?」
「成せば成る、かもな」
「そう、ですね。貴方ならきっと出来ますよ」
……また、変わった。俺に背を向け、窓へと近寄るウォル。柔らかい雰囲気が薄れ、ピリッと痺れるような感覚を俺に与えている。敵意とか、そんな悪意のある感情ではない。
ただ、見ている人に緊張を与えるだけだ。
「霧を晴らすことができたら……日向さんを崇め奉らなければいけませんけどね。行く行くは日向大明神としてこの土地に神社でも建てましょうか?」
「……うん、まぁ……冗談、だからな?」
スケールのでかい話に苦笑する。振り返ったウォルの顔にもいつも通りの笑顔が浮かんでいた。
◇◆◇◆◇◆◇
運命だよね、そう言いたげな顔で見られた俺は、偶然だと顔を僅かにしかめるだけだった。
2年2組。それが今年から割り当てられたクラスである。クラスメートの中には千枝や天城、花村やあいちゃんと……中々に居心地のいいメンバーが集まった。それに、あいちゃんとは席が遠いが、他の三人とは割と席が近いしな。
割とというか、天城は隣で千枝はその後ろ。花村はそのまた後ろと、半径数メートル内にいるわけだが。
うん、まずまずのスタートだ。ただ、担任が諸岡先生。通称『モロキン』なのは少しいただけない。彼はなぜか都会という場所に強い偏見を持っている。
それはもう、都会で昔何かあったのだろうかと思ってしまうほどに。
ま、それだけならいいさ。都会から越してきたせいでどんな偏見の目で見られようと、俺は気にならない。
だが、問題なのは先生が俺の伯父を知っていたことだ。生前おじさんは中学で日本史を教えていた。どこの中学かは知らないが、とりあえず教師だったのだ。つまり諸岡先生と同業者である。
さらにどうも二人は知り合いだったようだ。……ま、色々と言われた。思い出すのも面倒で、説明は省かせてもらうが。
で、話を元へと戻すことにしよう。
ため息を吐いて俺は顔を上げた。隣の席に座る天城が不思議そうに俺を見ているが、今はフォローすらもできやしない。
転校生が来ることは朝の休み時間に噂として耳に入っていた。たぶん、鳴上だろうかと予想すらしていた。
予想通り、今黒板前には諸岡先生に連れてこられた鳴上が立っている。そして、その隣には目の錯覚だろうか、見知った女性が一人。
「はじめまして!! 今日からこのクラスの副担任を任せられちゃいました、英語科の──」
いつぞやは不審者にしか見えなかったスーツ姿が、今日は妙に様になっている。ってか、勿体付けるように溜めながらこっちを見ないでくれ。
「霧野です! みんな、これからよろしくね」
パチッと完璧なウィンクを一つして、霧野さんは満面の笑みを浮かべた。
その動作にクラス中が、男子は勿論のこと女子までもが頬を染める。つい数秒前までの余所者を見るクラスの目が、一気に親しみの込められた視線を作り出していた。
素晴らしいカリスマ性、いや魅力である。……今この場においては少し無駄なものでもあるが。
クラス中に蔓延しだした空気に紛れ込ませるように、そっと息を吐いた。諸岡先生ですら顔を少し赤らめている。
転校生こと鳴上悠君は、何が起きたかよく理解できてないらしくキョトンとしていた。天然なのかただ鈍いだけなのか、それとも俺と同類か。
「じゃ、恒例の質問タイムだよ! 何か質問がある人は手を挙げてね!!」
どうもこの人は、自分が与えた影響に気が付いてないみたいだ。無邪気に悪気なく調子に乗り出した。
もちろん、諸岡先生がこの状況を見逃すわけがない。反応が少し遅れてたけどな。
「ふ、ふざけるのも大概にせんか! いいかね!? 新任の教師が…」
吠える諸岡氏。だが、相手が悪かった。
「まぁまぁ、諸岡先生もこんな感じにフレンドリーに接しないと! 気難しげな顔じゃ寄ってくる生徒も寄らなくなりますよ!」
話を遮り、霧野さんはさらに爆弾発言を何のためらいもなく投下する。
「先生がツンデレなのはわかりますけどね」
諸岡氏ツンデレ発言にクラスの何人かが噴き出した。俺も笑い声が漏れないように懸命に口元を押さえる。
「ツ、ツ、ツ……!」
わなわなと諸岡先生が震える。一応はツンデレの意味を理解しているのか、顔色も色々と変わっておもしろい。
けど、まぁ、ここらで終止符を打たないとな。ツンデレ扱いされた諸岡先生よりも、一人取り残された鳴上が気の毒だ。
「霧野先生。そろそろ隣の転校生が可哀想なんで、生徒との交流はまたの機会にお願いできませんか?」
口ではさりげなく言っておいて、目では「調子に乗りすぎです」と忠告はしておく。
「んー、そうだね。では、転校生君の紹介を諸岡先生よろしくお願いします」
思っていたよりもあっさり霧野さんは悪ノリをやめた。てっきり何か言いだすかと思っていたのに、あっさりし過ぎていて逆に何かあるのかと警戒してしまう──そんな俺がいた。
「あー、それからね。誠に不本意ながら、転校生の紹介をする」
何度か咳払いをし、クラス中を威嚇した諸岡先生。手遅れな気もしたがクラスの騒めきは治まった。
「ただれた都会から、へんぴな地方都市に飛ばされてきた哀れな奴だ」
……いつもの諸岡節である。都会ってそんな悪いとこじゃないのにな。住めば都って言葉もあるし、諸岡先生は一度都会に移住することを勧めたい。
「いわば落武者だ、分かるな? 女子は間違っても色目など使わんように!」
いきなり落武者扱いを受けた鳴上は目を丸くしている。無理もない。
「では、鳴上悠。なるべく簡潔に迅速な自己紹介をしなさい」
慌てたように何度か瞬きをして鳴上は、黒板に名前を書いた。その動作に慣れが入っていた。
「鳴上悠です。これからよろしく」
丁寧に書かれた名前の横で鳴上が軽く頭を下げる。顔を上げた鳴上と目が合った。
パチパチとまた瞬き。驚いた時の癖なんだろう。
諸岡先生に気付かれないように俺は笑いかけた。鳴上も目尻を弛ませる。
「む、貴様! 後ろから二列目、窓際の女生徒に妖しげな視線を送ったな!?」
ズビシッ!! そんな効果音が聞こえてきそうな勢いで、諸岡先生は鳴上を指差した。
妙に具体的なくせして、全くの的外れな指摘につい笑ってしまう。
「貴様!!」
鳴上に向けられていたはずの指が、俺の方へと向いていた。つい、が見られてしまったようだ。
「俺、ですか?」
俺じゃない場合を考えて確認する。
「そうだ! 貴様だ!」
俺だった。俺以外に誰がいるのか、そんな感じで睨み付けられた。
「なぜ笑っていた!?」
なぜ、か。最近の教師は生徒の笑顔すらも理由を問いたいらしいな。いいじゃないか、笑ってても。
「まったく、嘆かわしい! 貴様のように教師を軽んじる生徒がいるから、学校全体の風紀にも問題が出てくるのだ!」
いつのまにやら俺の存在は風紀にも関わりを持っているのか。
……ダメだな。実によくない流れだ。
「諸岡先生」
俺はふらりと立ち上がる。なるべく敵を作らないような自然な笑みを顔に貼りつかせながら。
そして、俺はこの場をおさめる魔法の言葉を呟いた。
「四目内書店……茶色の紙袋……」
クラス中の視線が俺に集まっている。諸岡先生はまだ俺を訝しげに見ているだけだ。
「…………4月9日」
ピクッと諸岡先生の眉が大きく跳ねた。顔色が徐々に悪くなってきている。
目が合った。俺はにっこりと笑いかける。諸岡先生はこめかみ辺りを引きつらせた。
しばらく、無言のやりとりが続く。
「……セ、センセー。転校生の席ここでいいですかー?」
静まりかえった教室に千枝の声が響いた。止まっていた時間が動く。フリーズしていた諸岡先生も動き出した。
軽く首をひねって後ろを見る。そうか、俺の後ろが空いていたんだったな。
「む……そうか。よし、じゃあ貴様の席はあそこだ。それと橘」
悪くなっていた顔色は元に戻り、威厳も回復させた諸岡先生は苦々しげな顔をする。
「…………さっさと座らんか」
もちろん、座りますとも。
霧野さんの職業がまさかの教師。
大丈夫、なんとかなるさ。