ノクスの本体がロキ・ファミリアの拠点に到着したころ..........アイズらはと言うと───
「指定されたのはここだな..........」
「うん。入ろ」
18階層の少し外れた場所。その場所にある穴倉のような酒場の扉の前に、ノクス(分身)とアイズが立っていた。この場所に来たのもあの謎のローブの人にそこで他に依頼した者たちと合流してくれと頼まれたからである。
(きな臭いけど..........このお姫さんを放っておけばまた無茶するしな..........それにこの件が事実なら捨て置けない.............)
にわかには信じられる筋ではない情報に従い、行動するのは正直言ってあまり気分もよくなければ不安でもある。だからと言って信じられないとはいえ万が一の場合も考えるとそう易々と無視するのは出来ない。
アイズは躊躇いなく扉を開けるとひとりでに入っていくのでノクスも遅れて入っていくのであった
(こういう空気は好かないな..............)
入店するとガラの悪い冒険者達で溢れていた。元々豊穣の女主人以外の酒場の空気をあまり好かないノクスは正直早く用を済ませて出たいところである。
店内を少し見まわすと前方からことらに歩いてくるものがいた。
「あれ?【剣姫】に【
「ルルネ、さん..........」
そこにいたのは以前同階層での襲撃事件に関わっていたヘルメス・ファミリア団員ルルネ・ルーイだった。
(成程........大方今回の協力者ってのはヘルメス・ファミリアか..........聞いた話じゃ主神はギルドともつながってるとか何とか.........)
腹芸が得意と聞く彼女たちの主神のファミリアだ。事の真相を深く知る可能性がある。
そこからやはりと言うべきか、ある人物が現れたことでノクスの考察は確信へと変わる
「もう1人援軍が来るとは聞いていましたが..........どういう事でしょうか?」
現れた冒険者はヘルメス・ファミリアの団長にしてレベル4冒険者である【
「初めましてアスフィさん。アルテミスファミリア所属ノクス・リータスです。どういうことかと言われれば...........そうですね、『自分から巻き込まれに行った』と言ったところですかね」
「...........成程。当初の予定では【剣姫】のみが来る予定だった、と..........どちらにせよ第一級冒険者二人とは心強い。よろしくお願いします【
お互い握手を交わし、挨拶を済ませると今回の依頼についての詳細を説明してもらうのであった
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「にしても今回は【
俺達は今、アスフィさん率いるヘルメスファミリアの面々と24階層まで降りてきていた。
「最初にも言いましたけど今はちょっと特殊な状況なので本来のステイタスよりは落ちてますけどね」
「それでも索敵魔法を使えるといううのは今回はかなり助かります」
俺達が関わっている依頼は24階層で起きたモンスターの大量発生の原因調査だ。依頼主は俺達に接触してきたローブの奴だ。恐らく奴はギルド中枢の使い辺りではないかと踏んでいる。というのも情報が早すぎるし、色々と知りすぎている気がするからだ。ルルネルーイさんが今回依頼を受けたのもファミリアの弱みに付け込んでらしいので余計にギルドの関与を疑ってしまう。
「まぁ、お役に立てたようでいいんですが.............結構な数がいますね」
大量発生を感知したのはいいのだが、数が尋常じゃない。それこそ食糧庫までの道中を埋め尽くさんばかりの数だ。下手すれば階層中の半数近くが集まってたりするのではないだろうか
「それほどですか?」
「正直想像以上です.............っと、此処です。さて、どの程度..........うわぁ............」
目的地まで進むと見晴らしがいい高台に辿り着いたので、ノクスが眼下を覗き込むとそれはそれはうじゃうじゃと大量のモンスターがいた。はっきり言って気色悪い.............
「これは騒ぎになるはずだよ...............」
引き気味にルルネルーイもそう呟き、他の面々も若干顔を引きつらせている
「全員..............」
「待って」
アスフィさんが全員に戦闘指示を出そうとしたところでアイズがそれを制する。
「私にやらせて」
アイズは恐らくランクアップに伴う感覚の調整がしたいのだろう。自分にも経験があるが直後の感覚の差異は結構な違和感なのだ。
とは言え───
「すいませんアスフィさん。俺もやらせてもらっていいですか?」
「ノクスさんも?」
「装備更新したばっかなので感覚を馴染ませたいんです」
「ノクス。その............」
「アイズ。別に嘘じゃない本心だ。それに流石に多少の消耗はするだろ?あの調教師が出張ってこないとも限らない。消耗は出来る限り抑えておくべきだ」
確かにアイズ一人で戦わせることに危うさがないとは言わない。勿論実力的には問題ないだろうが、どこかこの件に固執しすぎているきらいがある。一応は年上として監督責任みたいなものはあるだろうし、純粋に少々心配だ。
「...........わかった」
「まぁ、今は本来のステイタスより落ちてるからアイズがメインだ。それに本来のスタイルでもないしな」
正直今アイズとどっちが強いと言われれば十中八九アイズが上だ。何せいまは二刀流じゃない。ロストヴェインに干将莫邪の片割れを合わせるのは重さや剣の性能的にもバランスが悪い。しかもステイタスにも下方補正がかかっているのだから余計だ
「だからそんなに不貞腐れるな。半分以上は多分アイズが捌くことになる。頼りない年上ですまないがよろしくな」
「ごめん」
「気にすんな。ほら行くぞ」
ポンと優しく頭に手を乗せて先に眼下のモンスターの元へと降りていく。
(数が数だしな..............スピード特化のアレで行くか)
「
直ぐに全身を雷で纏う。そして───
「迅雷!」
雷が収束し、ノクスの身体は白く発光する。
迅雷はノクスがアイズとの模擬戦で身に着けた技のことである。この技だが、名前がないままであったが、流石に名前がないのは効率面等から不便なので最近つけたのだ。
その状態でノクスはモンスターが無数にいる中へと斬り込んでいった
「あれ?剣姫?いかないの?」
「.............行ってくる」
ノクスに手を乗せられた頭に自身の手を乗せて俯いていたアイズはルルネの言葉を受け、直ぐに剣を抜きノクスを追うように飛び降りていった。
そのアイズの頬が若干朱くなっているのには........きっと誰も気が付かないのであった
「............やっぱ段違いの切れ味だな..........」
掃討し終わるまでにさほど時間もかからず、丁度アイズと背中合わせの状態でノクスは手中に収まるロストヴェインを見て呟く
まるで溶けるように相手を切断できるのだから、使いこなせていても戦慄を隠せない。今回はさらにその上で、剣の切断と相性がいい雷の付加魔法を使ったのだから余計にそう感じる。
「流石だな!剣姫!この大軍を短時間で片付けちゃうなんてさ!」
「レベル5と聞いてましたが、もしやランクアップされたのですか?」
すると後ろからルルネルーイにアスフィがモンスターの討伐を確認して歩み寄ってくる。
「うん」
「成程.............ランクアップ直後の感覚のズレが起こります。それを実践で調整していたわけですね」
「【剣姫】も凄かったけど【
「確かにこれで本来のステイタスより落ちているというのは驚きですね。それに意思疎通もできる実体を持った分身に加え、剣としての性能の高さ.............魔剣と言うにはあまりにも逸脱していますね」
アスフィは最初にノクスの状況を話した時に多少の剣の説明もしていたので、ロストヴェインの如何に逸脱した剣かと感嘆する
「まぁ、どうやったらこんなものが生まれるか自分でも不思議ですよ」
「もう少しその剣について聞きたいところですが、今は..............」
アスフィがそう言って視線を向ける先、すなわち俺たちの目的地である食糧庫に向け話はそこそこに歩み始めるのであった。
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(まるで胃に向かってる食べ物になった気分だな..............)
ノクス達は食糧庫のある洞窟を塞いでいた植物の蔦のようなものを焼き払い、内部へ進軍していた。ノクスが抱いた感想通りというべき光景が広がっており、あまり気分のいい景観ではない。
「ん?これって............魔石、だよね?」
するとルルネが足元にいくつかころがっている魔石を拾い上げる。どうやら何体かは内部に侵入できたものの、ナニカによって倒されたようだ。
そのナニカってのは恐らく.............
「ッ!来るぞ!!」
ノクスとアイズがいち早く自身らに迫る悪意のようなものを感知した瞬間、壁から三体の食人花モンスターが出現する。
「各自迎撃!」
アスフィの指示の元ヘルメス・ファミリア団員らは直ぐに動く。流石と言うべきか、非常に統率の取れた行動にノクスも感心する。
そしてノクスも直ちに剣を抜き放つと、攻撃に伸ばした触手を片っ端から斬り刻んでいく。ノクスは現状本来のステイタスではないが凄まじい速さだ。しかし、当然それ以上に現状ではアイズが速い
(アイズの奴ホント速いな...........援護するのも大変だ)
アイズのずば抜けた動きにヘルメス・ファミリアの面々は援護や連携は出来ず、アイズがやや単独で前に出過ぎなのを支援できるのはこの場ではアイズの次にレベルの高いノクスのみ。と言っても本来のステイタスではないのでかなり気を引き締める必要が──────
「ッ!アイズ!伏せろッ!!」
「ッ!」
気を引き締めなければと考えていると直ぐに事態は動く。アイズをまるで分断するためかのように壁がまるで生き物のように脈動する。ノクスはすぐさまアイズに指示を飛ばすと..........
「
「
凄まじい密度の風圧がまるで竜のブレスかのような勢いでノクスの剣から放たれると、アイズを分断しようとした壁をズタボロに穿つ。ノクスがもつ技の中でも獄炎についでの破壊力を持つ一点特化型の大技だ。瞬時に使った大技はこの場の判断として確かに間違いではなかった。
だが、間違いではなかったが正しくもなかった
「しまッ!?」
技の凄まじい風圧に耐えるため、しっかりと踏みとどまっていたが故にノクスは直ぐに動けなかった。直ぐに動けなかったその隙をついて壁は再び動き、アイズを完全に分断する。
「クソッ!なら.......ッ!」
ノクスはすぐさまもう一度風で穴をあけてやると考えた束の間、すぐさま食人花は触手をノクス目掛けて殺到させる。大技である以上攻撃を躱しつつ放つのは不可能だ。こうなってはアイズと合流するのは後回しだ。
「アスフィ!剣姫が!!」
ルルネが団長であるアスフィに掛け合おうとした所、隙と判断した食人花は触手を濁流の如く唸らせ叩きつけようとする。
「
瞬時にノクスが二人の前に躍り出ると、風を纏った剣を一閃すると、先程の一点への風圧ではなくノクスの前方広範囲を高密度の風圧が吹き荒れ、殺到していた触手すべてを細切れにする。
「今はコイツらだ!アイズなら問題ない!」
「っく........くそぅッ!」
ルルネはノクスの言葉に悔しそうにするが、事実目の前の敵をどうにかしないといけない以上無理に動けば仲間を危機にさらす。
(アイズなら大丈夫...........無茶するなよ)
事実援護云々を考えていたノクスだがアイズなら単独でもどうと言うことはない。ただ少々無理をしがちというか、無理ができてしまう所が心配だ。
(獄炎使いたいけど.........拙いよな.......雷と風でどうにかするしかない)
植物相手と言う事もあり獄炎......火が使えるレイルは非常に強力だが、反面辺りの壁も恐らくその色合い的にみて組成は植物に近いのだろう。であれば燃え移れば獄炎の性質上味方が危険だ。結果使える属性は雷と風。どちらも十分に通用するが、獄炎であればすぐに倒しきれる分歯痒いと言った感想を抱かずにはいられない。
「そちらからこっちに来てくれるとはな」
「!」
分断されたアイズの前にはあの赤髪の調教師が現れる。ダンジョンの悪戯とでも言うべきか、アイズと調教師の戦い.............冒険者と悪意ある派閥との戦いの火蓋が切って落とされるのであった
お久しぶりです。本当にお久しぶりです。
長らく更新が止まていたのは私生活の事もありますが数週間パソコンが壊れたと思ったら実は壊れてなかったといったへんてこなトラブルに見舞われてしまいPCが使えなかたうえ、今住んでる場所の回線が間違って切断され数日インターネットが使えなかったりと中々にせわしない日々を過ごしておりました。次更新予定なのはよう実をそろそろと考えています。
にしても皆さん翌日の予定とかについていきなり連絡が来たらどう思いますか?じつはつい一時間前(AM1時頃)に家のバイト先の店長から突如シフトはいれないかと聞かれたんですよねぇ..........しかもAM11時半からは入れないか、と。二回目ですし店長ってやっぱり常識ないんだなぁと思いました。他の店員さんはちゃんとした時間に連絡をくれるので余計にそう思ってしまえます。ちゃんとした時間であれば応えましたが流石に今回のを許すと他の人に同じことしかねないと思いますし、自分としてもそんな時間に頼んでくる人の望みを聞きたくないので無視を決め込みます。自分はこんな常識がない人にならない様にしたいと強く思わされる出来事でした。
と、愚痴をたらたらと書き綴ってすいません。最近.........というよりは今年入ってチャリのブレーキのケーブルが切れたり、タブレットのデータがすべて消えたり、タブレットの液晶割ってしまったりとトラブル続きで少しへこんでいたので変に熱が入ってしまいました。それでは改めて今回もここまで読んでくださりありがとうございます。ペースも落ちてコメント返信もできていませんがすべて読ませていただいています。本当に暖かいコメントにとても嬉しく思っています!どうかこれからもよろしくお願いいたします!!